人事評価制度の歴史や変遷を振り返ってみよう!

(写真=RAGMA IMAGES/Shutterstock.com)

日本では長年、独特な雇用システムの「年功序列」と「終身雇用」制度が維持されてきました。「人事評価」では基本的に、勤続年数で給料や昇格が決まりました。この日本特有の制度に大きな転換期となったのが、バブル経済の崩壊です。1990年代以降、新たに「成果主義」が採用されたのですが、これもターニングポイントを迎えています。加えて、雇用の流動化やグローバル化、少子高齢化などから、HRテック先進国のアメリカから新たな人事評価システムが持ち込まれています。

この人事評価制度の背景や歴史について、主に高度経済成長期から現在までの変遷を中心に紹介します。

勤続年数(定期昇給、勤続給)から成果主義へ

日本では戦後、大半の企業が「終身雇用」制度を採用。社員の給料は、勤続年数(定期昇給、勤続給)や役職で決まっていました。高度経済成長の下では、生活保障型の賃金体系として効果的な制度で、社会や企業の繁栄には疑いを挟む余地はありませんでした。

しかし、1990年代に入るとバブル経済が崩壊し、日本経済は低成長期に陥り、右肩上がりの成長神話に終わりを告げたのでした。以降、日本経済は失われた10年となり、就職氷河期へ突入しました。この頃から次第に注目されたのが、社員が達成した結果や業績を重視して給料に反映させる「成果主義」です。また、「年俸主義」も台頭するようになりました。

成果主義の弊害と少子高齢化など新たな課題

個々の社員が自らの成果や業績を上げることにこだわり、それまで日本的な美徳とされてきたチームワークでは思うような効果を発揮できず、成果主義に陰りも見え始めました。さらに、社員間の競争が煽られ、部下を育てたり、仲間と助け合うという企業風土にも支障をきたし、却って成果主義の弊害が目立つようになり、期待通りの効果を挙げることが難しくなったのです。

2000年代に入ると、少子高齢化という新たな課題が大きな壁になりました。日本は世界的にもトップクラスの平均寿命を誇る国となったのですが、高齢者人口の増加に比べ、若い労働人口が減少するという問題に直面しています。

グローバル化に代表される労働の流動化も進み、仕事や労働に対する意識や考え方も従来とは異なり、1986年に施行された「労働者派遣法」の定着で、転職を繰り返す若い労働者が増えるようになったのでした。

アメリカから持ち込まれた新たな人事評価システム

この頃から、多くの日本企業が人事評価制度の模索を始め、HRテック先進国のアメリカから持ち込まれたのが新たな人事評価制度でした。主な考え方は次の通りです。

・ MBO(目標管理制度=Management by objectives)
人事評価制度であると同時に、経営手法の1つでもあり、設定した目標の達成度で評価するシステム。

・ コンピテンシー(行動評価)
職種にとらわれず共通して運用できる人事評価システムで、仕事ができる社員はどういう行動をしているのかを基準に評価する方法。

・ 360度(多面評価)
直属の上司はもちろん、役員をはじめ、同僚や部下、取引先や顧客などの利害関係者も参加し、公平で説得力があるとされる評価法。

適切な人事評価制度が必要な時代へ

社会や経済環境だけでなく、企業や働く人の意識や考え方などの移り変わりが激しくなり、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(一体性)など多様な働き方が推奨されるなか、日本の人事評価の在り方にも大きな変化が訪れています。

適切な人事評価制度を導入・運用することは、社員を公平で客観的に絶対評価し、適材適所を図ったり、採用や育成面、人事戦略の立案などでも大きく貢献しています。定期的な透明性のある評価は、社員間に説得力を持って昇給や昇進にも反映できます。

企業の方針やビジョンに基づいて、評価システムの構築や改善にもスピードが求められる時代です。今ではクラウド型の人事評価システムが主流となってきており、クラウド型の場合は操作も比較的簡単でコストも低減でき、データの2次利用も可能なのです。

人事評価制度の構築のほか、導入、運用もしやすくなってきているので、中小企業の人事担当者の業務を大きく軽減することにもなります。何より今後、企業の成長戦略には欠かせない存在となっています。

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