優秀でキャリアのある人材に転職されるのは、企業にとっては大きな痛手です。
将来の幹部候補を失うだけでなく、周りへの影響も無視できません。キャリアのある社員の辞める原因が人事評価への不満だとすれば、企業は人事評価制度自体を見直す必要があります。
春は転職市場も活発な季節。
終身雇用制度が崩壊した今、転職市場はますます拡大しています。キャリアある人材が流出する原因と転職を防ぐ方法を考えてみます。
従業員の不満の実態
従業員に対し、現在お勤めの会社の人事評価に満足しているかを聞いたところ、満足していないと答えた方は約7割の合計71.6%に達し、満足していると答えた方はわずか 2%でした。
※株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用した WEB アンケート方式で2014 年 10 月 28 日(火)~2014 年 10 月 30 日(木)実施
人事評価の導入する立場である経営者や人事担当者に従業員が現行の人事評価制度に満足していると思うか聞いた ところ、「満足していると思う」と答えた方が 10.5%。「やや満足していると思う」と合わせると 54.8%と半数以上が”満足してい るのではないか”と考えている実態が明らかになりました。
さらに経営者と人事担当者を分けてみると、経営者は、従業員は満足しているだろうと考える方が 69.4%という結果も明 らかになりました。
キャリア人材が転職を考える時
キャリアのある人材は戦力で、企業にとっては、まさに宝です。優秀な社員であればなおさらのこと。転職を考える理由が人事評価にある場合、次のような原因が考えられます。
評価が正当ではない
社員は上司の判断や評価が正当ではないと思うことがあります。よくある例としては、能力のない社員の昇進によってキャリアのある人材が不満を持つケースです。また、同僚の異動や左遷などの処遇について疑問や不公平感を抱くと、組織への不信や将来への不安が募ります。
こういう状況に陥ると、キャリアを正当に評価してくれそうな企業を探し始め、条件が良ければ転職を決断してしまうのです。
正当な理由を見出せない
上司に意見やアイデアを聞いてもらえない場合や積極的な提案を軽視されるなど、判断に正当な理由を見出せないようなケースでも、社員はやる気や向上心を失います。こういうケースでもキャリアのある人材は、活躍できそうな場を求めて別の企業への転職を考えるものです。
上司と相性が合わない
キャリアのある人材を評価するのは上司なので、人事評価への不満は当然上司に向けられます。一般的に、上司と相性が合わないことが理由で異動の希望を出しても、それが受け入れられる可能性は低いです。
日常的に上司の判断や行動などを理不尽と感じることが多く、今のままでは能力やキャリアを活かせないと感じると、転職を視野に入れることになってしまいます。
評価レベルが上司によって異なる
担当する部署や職種で評価基準が異なることはよくあります。
しかし、同じ職種の部署で複数いる上司の評価基準やレベルが異なると、キャリアのある人材は評価の不透明さや不公平感を抱く可能性が高いです。
キャリア人材の転職を防ぐ人事評価制度
正当に評価をされない、判断に正当な理由を見出せない、ということが転職を考える理由である場合、人事評価制度の見直しは必須です。以下のポイントをおさえておきましょう。
適正で公平である
前述の通り、キャリアのある人材が人事評価に不満を抱く背景には評価の不透明さや不公平感があります。まず、適正で公平な人事評価制度を導入すべきです。
客観的で透明性がある
どういう評価基準と評価項目で、どのように評価するのかなど、社員が納得できる客観的で透明性のある人事評価制度を導入します。その上で可視化して運用することで、上司の判断や評価、人事評価システムへの信頼性は大きく増します。
上司(評価者)の再教育
運用面では、評価者である上司の再教育も重要です。社員の信頼を得るために極力主観を排し、公平で客観的に評価することが大切です。
上司への信頼度を上げる
キャリアのある人材は優秀な社員であるケースが多いものの、上司との信頼関係が欠如している場合があります。上司は社員の考えや提案にも真摯に耳を傾け、意見が異なる時は明確に理由を説明するなど、日常的に信頼されるような言動が不可欠です。
評価と報酬の連動
社員の昇給や昇進ときちんとリンクさせることもエンゲージメントを高める重要な要素となります。
人事評価では、年度初めの目標設定と管理が欠かせません。目標や成果はもちろん、意欲や行動、プロセスにも注目して評価基準を設定します。社員と内容を擦り合わせておけば、結果に対する不満は最小限に抑えられるでしょう。
きちんとした人事評価制度があることは企業のブランディング要素となり、採用シーンでも効果的な要素として入社希望者にアピールすることができるのです。
自己評価との差がある場合、明確な違いを説明する
設定された目標を達成するような業務を行ったにもかかわらず、評価に対して社員が不満を持つようなケースでは、まず上司はフィードバック時に社員の自己評価を確認しましょう。評価と自己評価に差がある場合は、その理由を明確に説明できれば大きな問題は起きないないはずです。
円滑なコミュニケーション
キャリアある人材が転職を考えるケースの大半は、上司とのコミュニケーション不足です。人材育成の観点から、業務の内外を問わず、日常的に社員と円滑にコミュニケーションすることが大切です。評価後のフィードバックも重要で、次のステップに繋がる具体的な内容を話し合い、社員がエンゲージメントを高められるようにすることを心掛けましょう。
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