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育休も副業も特別視しない。メルカリ流「性善説」の制度設計 -石黒卓弥さんインタビュー後編―

メルカリといえば、2017年10月に小泉文明社長とグループ会社「ソウゾウ」の松本龍祐社長がそれぞれ2ヶ月間の育休を取得することを発表したことも記憶に新しく、働き方の先進企業というイメージでも注目を集めています。

産休・育休期間中の給与を100%会社が保証する制度や、副業についても推奨していることなど、世の中の先を行く取り組みは、メルカリに何をもたらしているのでしょうか。前編に引き続き、同社人事の石黒卓弥さんに伺いました。

【Profile】
石黒 卓弥(いしぐろ たかや)
株式会社メルカリ HRグループ マネージャー
新卒で入社したNTTドコモでは、営業、採用育成、人事制度を担当し、事業会社の立ち上げや新規事業プロデュース等も手掛ける。2015年1月よりメルカリに参加。採用と人事企画を担当している。プライベートでは3人の男の子を育てる父親であり、三男誕生時(前職在籍時)には育休を取得した経験もある。

メルカリの男性育休は、必須でも推奨でもなく“当たり前”に
なりつつある

―日本では男性の育休取得率が約3%という状況のなか、メルカリでは対象となる男性社員の約90%が取得されているそうですね。この圧倒的な差はどこにあるのでしょうか。

石黒さん:会社の仕組みとして育休を取得することが個人の不利益にならないようにはしています。具体的には、男女問わず産・育休期間のうち一定期間は給与の100%を保証する制度などですね(注:対象者によって期間は異なる)。
狙いとしては、もちろん優秀な人材の確保が第一にあります。プライベートも含めた人生の充実を実現できる環境であれば、採用はもちろん離職者の低減にもつながる。社員のパフォーマンスも上がりますよね。
ただ、実はメルカリでは男性の育休を必須化しているわけでもなく、推奨しているつもりもありません。もはや子どもが生まれたら育休をとるのが当たり前の風土になりつつあると感じます。

―それは小泉社長の育休など、経営陣が率先して背中をみせているからなのでしょうか。

石黒さん:小泉や松本自身には、そういう想いがあるとは思います。ただ、2人が育休を宣言する前から、すでに9割が取得していましたからね(笑)。2人の育休も、ごく自然なことというニュアンスで受け止めている社員が多いようです。
経営陣だけでなく、例えばリリースしたばかりの新サービス「メルカリチャンネル」の男性担当者も育休に入りました。本人は仕事のアクセルを踏みたい時期だったでしょうし、少なからず葛藤もあったとは思います。それでも育児に専念する決断ができたのは、休んだからといってチャンスを奪われるような会社ではないという風土があるからでしょう。
たしかに日本では珍しいことかもしれませんが、グローバルに視野を広げてみると、Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグも育休を取得しましたよね。だから私たちの状況は特別なことではなく、国内ではまだまだ男性の育休が珍しいため目立って見えるだけだと思います。それが社会をリードする存在として位置付けていただいているのは、大変ありがたいことですが。

社員の副業についても教えてください。多くの企業が副業解禁には抵抗感があるなか、メルカリはなぜ寛容なのでしょうか。

石黒さん:社員一人ひとりがどういう人に成長してほしいかという考えに基づきます。具体的に言えば、“メルカリ”ではなく“マーケット”で活躍できる人になってほしいということ。そのためには社内に閉じず広い視野で学びを得ることも必要ですよね。そうした取り組みで自らの専門性を高め、メルカリの仕事に還元してくれることを期待しているんです。
副業をするもしないも、本人の自由。特に申請が必要なわけでも、会社の許可を得る必要もありません。完全に任せています。

―そこまで自由だと、組織運営に不都合は起きないのでしょうか。

石黒さん:副業だけにとどまらず、メルカリの様々な人事制度は「性善説」で設計しています。つまり、一人ひとりが自律的に働き、意思決定をすることを前提にしているからこそ、縛り付けるためにルールや決まりを設けるという発想がないんです。
実際に悪用するようなケースは皆無ですし、仮にそうなったとしても、前回お伝えしたような「OKR」と「バリュー」によるフェアな評価基準を設けているので、成果がでなかったり、私たちのバリューにあわなければ、評価が下がるだけです。

―他社が二の足を踏むような制度や働き方を実現できている、一番の理由はどこにあるのでしょうか。

石黒さん:やっぱり、「やってみよう」の精神だと思います。社長の小泉はことあるごとに「前例を忘れよう」と言うのですが、できない理由を挙げるよりもできる方法を考えるのが私たちのやり方。やってみること自体に意味があるんです。
それに、少なくとも人事制度においては奇をてらっているわけではなく、育休も副業も「こうあるべき」のど真ん中をやっているつもりです。やってみたら、社員のみんなも賛同してくれ、世の中も応援してくれた感覚ですね。

―最後に、石黒さん流の人事のあり方を教えてください。

石黒さん:人事(及び経営)と、社員の関係性をどう捉えるか次第で、あり方は変わってくると思います。人事や経営って人材配置や評価など一定の権限があるのでつい忘れがちなのですが、転勤するかしないか、育休を取るかどうか、もっと言えばこの会社で働きつづけるかどうか、最後に意思決定をするのは社員個人です。その人が今よりもさらに活躍できるよう支援し、ポジティブな意思決定ができるサポートをするのが人事の役割だと、私は思います。

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