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人事こそ「競合」に勝つための工夫を ―i-plug 中野社長インタビュー後編―

引き続き、株式会社i-plugの代表取締役社長 中野智哉(なかの ともや)氏のインタビューをお届けします。

前編では、 学生の就活方法の変化についてお話をお伺いしました。

昨今、「攻めの人事」という言葉も耳にしますが、「攻める」とは具体的には何をしたらよいのでしょうか?後編では、人材獲得競争で勝ち抜くために、現代の採用担当者に求められることについてお話をお伺いしました。

【Profile】
中野智哉(なかの ともや)
株式会社i-plug 代表取締役社長
1978年兵庫県生まれ。
中京大学を卒業後、新聞折り込みの求人広告を扱う会社にて法人営業を経験。
その後株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて10年の間、
正社員からアルバイト、中小企業から東証一部上場企業の採用を幅広く経験する。
2010年にMBA取得のためグロービス経営大学院大学に入学。
山田氏(株式会社i-plug現CFO)と田中氏(株式会社i-plug現CHRO)に出会う。
「若者の成長を加速させるプラットフォームを創りたい」という想いから、
2012年の大学院卒業と同時に株式会社i-plugを設立。
新卒に特化したダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を提供する。


「競合企業」を知ることが第一歩


――中小企業が新卒採用を成功させるために、具体的には何をするべきなのでしょうか?

1つ目は、採用ターゲットの見極めですね。
OfferBoxを立ち上げたばかりの頃、高学歴の学生ばかりに検索が集中していました。

もちろん、高学歴の学生のほうが活躍できる職種もあるでしょう。
しかし、すべての企業や職種で高学歴の学生が活躍するとは限りません。

学歴に関わらず、その企業や職種ごとに、活躍する人に共通する特徴があるはずです。
それを見抜けないまま採用をしてしまうと、ミスマッチが発生してしまいます。

2つ目は、「競合」を知ることです。

営業職の方に「競合企業はどこですか?」と尋ねたら、きっとすぐに答えが返ってくるでしょう。

しかし、新卒採用担当の方に同じ質問をして、はっきり答えられる方はどのくらいいるでしょうか?採用は人材獲得競争です。

とくに中小企業は、マッチングを成功させるために、どの企業の誰と戦っているのかまで意識をするべきです。

――戦う相手を知らないと勝つための戦略も立てることができないということですね。

そうです。極端な話、採用広告に多額のお金を投資したら、そのぶん学生は来ます。
しかし、すべての企業がそれをできるわけではない。
しかも、必ずしも欲しい人材が来るとは限りません。


エントリーを待っていては勝てない。
アプローチは企業から

――中小企業は自ら欲しい人材を取りに行く必要があると。

ところが、「取りに行く」といっても具体的に何をしたらよいか分からない企業も多いのです。

難しく考えずとも、物理的に学生に近づいたらいいんです。連絡して会う時に、なぜわざわざ会社に来させる必要があるのでしょうか?

大学の近くのカフェや貸会議室を利用することも可能なはずです。新卒採用市場において、一人あたりの採用にかける平均金額が75万円。

貸会議室であれば1万円程度で3時間くらい借りられます 。
資金力や知名度で大手企業に勝てないのであれば、差別化して勝負を挑むべきです。

――貴社のサービス「OfferBox」も企業が学生を取りに行くスタイルですよね?

もともとは、新卒の人材紹介事業を行っていました。
その事業は上手くいく気がしなくて20日間で止めたのですが、
最中に「企業から学生にアプローチする仕組みがない」ということに気づきました。

当時のコミュニケーション方法も、メールの一斉送信などが主流で内容が薄かったのです。

そこで、企業約100社と学生約200人にインタビューを行い、双方の要望をそのまま形にしました。そこに、それまでなかった成功報酬型という要素も加えて出来上がったのがOfferBoxです。

――OfferBoxを始めてみて気付いたことは?

2つあります。

1つ目は、日本の企業は思った以上にダイレクトリクルーティングが苦手だということです。OfferBoxでは、企業が採用したいと思った学生に「オファーする」というボタンを押します。しかし当初は、オファーボタンを押す企業がほとんどなかったのです。

これまで日本企業は、大量に送られてくるエントリーシートをみて、落とすことをひたすら行ってきました。その結果、応募者を「落とすスキル」は培われていても、「採るスキル」や「口説くスキル」は培われなかったのです。

そこで新たに、「検討中」というボタンをつくりました。検討中ボタンを押すと学生に通知がいき、学生が興味を持てば「会いたい」というボタンを押します。これは、学生から出た「SNSのように、企業に『いいね返し』がしたい」という要望から誕生しました。

2つ目は、システム上の課題です。

初期のOfferBoxは、検索をしてもピンとくる学生が出てこなかったと気付きました。
そこで、すでにその企業で働いているハイパフォーマーの特徴を分析する新機能を搭載しました。そのデータを元に、入社後に本当に活躍する学生を探し出すことが可能になりました。

また、オファーを送った、送らないといった行動や、学生がそれを承認した、しなかったという行動をAIが学習しているので、利用し続けるとどんどん自社に合った学生が優先して表示されるようになります。

更に、検索項目も増やし、適性検査を元にしたパーソナリティから検索をする事もできます。テクノロジーを進化させることで、より企業と学生が出会える機会を増やしました。

――オファーの数は増えたのでしょうか?

サービス開始初期と比較して激増しました。
しかし、オファーの数が増えたことで学生一人一人とのコミュニケーションが薄くなり、
ミスマッチが発生してしまっては本末転倒です。

そこで我々は2つの制限を設けています。

企業側ではオファー送付数。今のOfferBoxでは1人の採用枠につき、40人にオファーを送れます。一方、学生側では同時期にオファーを承認できる数を15社に制限しました。

――中小企業がダイレクトリクルーティングを行うメリットは?

採用数が何百人という数なら難しくても、10名程度であれば、企業から距離を縮めたり、
アプローチをかけていく事も難しくありません。

密なコミュニケーションをとれることは、大企業との差別化につながります。
更にそれによりミスマッチが減り、採用効率もぐっと上がります。

OfferBoxを利用している企業のほとんどは、利用開始時からオファーの数がどんどん絞られる傾向があります。だんだんと、求める学生像や、競合がはっきりしてくるのです。


「新卒採用にテクノロジーを使っている」だけでは遅れをとる

――今後、新卒採用はどのように変化していくでしょうか?

相手の気持ちを知ることや、競争相手を知ることが大切なのは今後も変らないでしょう。

しかし、学生と出会う方法やコミュニケーションの方法は、テクノロジーの進化によって更に変化していくと思います。

出会いから入社に至るまで、これまではWEBで出会ってリアルで面接を行うという2段階でしたが、今後はより複雑になっていくでしょう。

近い将来、リアルで会っているのかWEBなのか分からないという状況が実現されると考えています。

例えば、4KのVR(バーチャルリアリティ)で面接を行ったらどうでしょう?
まるで相手が目の前に存在しているかのような状態が再現できます。

――どんどんテクノロジーが代替していくようになると?

はい。代替できない部分ももちろんあります。
テクノロジーが進化して普及していくということは、その部分が標準化されてしまうということなので、それ以外を強化しなくては競合と差別化できなくなります。

私は、これからの採用担当者に求められることは大きく3つあると考えています。

戦略を考え、テクノロジーを使いこなし、コミュニケーションの質を上げる。

その中の戦略を考える事、コミュニケーションの質を上げる事はヒトが行う領域です。

テクノロジーとヒト、それぞれの強みを活かすことが今後の人材獲得競争にとって重要になっていくと考えています。

――テクノロジーの活用はどんどん当たり前になっていくのですね。
本日は勉強になるお話を聞かせていただき、ありがとうございました。