メンタリングとは、人材を育成する手法の1つです。指導者と受け手がマンツーマンで信頼関係を結び、あらゆる課題に向き合いながら主体性を引き出すという方法です。
メンタリングには従業員の自主性やモチベーションを引き出すといった効果が期待できる一方、指導側の負担や効果測定の難しさといった課題も残ります。
ここでは、メンタリングの意味や語源、コーチングとの違いについて解説。メリットやデメリットにも触れながら、導入のポイントを説明します。
メンタリングとは?
メンタリングとは、人材育成や指導の方法の1つで、指導者と受け手がマンツーマンの関係を築き、対話や助言によって気づきを与えたり動機付けしたりする手法です。
メンタリングでは、指導者側を「メンター」、受け手を「メンティ」と呼びます。
メンターの語源
メンターという言葉は、紀元前8世紀末の古代ギリシャの詩人であるホメロスが著述したとされている叙事詩「オデュッセイア」が由来とする考えが有力のようです。
「オデュッセイア」では主人公オデュッセウスを助言して支える賢者が登場しますが、彼の名が「メントール」(Mentor)であったことが語源になっているとされています。
メンターの定義
日本国内においてメンタリングが普及した2000年頃には、OJT、つまり実務において人材を成長させるのがメンターという認識が一般的でした。
しかし、メンタリングやメンターといった言葉が拡大するにつれて、職業的な領域を超えて社会人としての精神的な部分も指導するという考え方も普及し、現在ではメンターの定義は広くなっています。
メンタリングとコーチングの違い
メンタリングと比較される言葉にコーチングがありますが、いくつかの点で異なります。
テーマ
1つ目はテーマの違いです。コーチングは、業務や特定の目標などのように領域を絞るのが普通ですが、メンタリングは社会人として、職業人としてといった広い領域を対象にします。
指導方法
2つ目は指導方法の違いです。コーチングでは特定の目的を達成するための技術的な支援を行うことが多いですが、メンタリングでは心理的なサポート、考え方の整理、ロールモデルの提示といった広い関わり方をします。
対象者
3つ目は対象者の違いです。コーチングは特定の業務やプロジェクトにおける目標達成を目指すことが多いので一定の経験者を対象にすることが普通ですが、メンタリングでは未経験者も対象にします。
メンタリングの目的
メンタリングの目的は、人材開発においてテクニカルな部分だけを支援するのではなく、心理面や思考面もサポートして主体的な人材を育成するという狙いがあります。
プロフェッショナルを育成するには、技術だけでなくメンタル面も育む必要があります。例えば、従業員に技術やノウハウだけを詰め込んだとしても、社会人としてのモラルや組織人として心構えなどが整っていなければ十分とは言えないでしょう。まして、精神的に追い込まれていたり仕事での充実感が欠如していたりするのは問題と言えます。
メンタリングは、メンターと信頼関係を構築することによって、技術だけでなく心理面や考え方までも広く支える手法です。他の方法よりも、思考を整え、自主性を育むという効果が期待できます。
メンタリングのメリット
メンタリング導入を検討する際に知っておきたいのが導入のメリットです。ここでは3つを紹介します。
主体性の促進
メンタリングの大きなメリットとして、従業員の主体性を促せる可能性があります。
メンタリングは、一方的にノウハウやアドバイスを与えるティーチングとは異なり、むしろメンティが自発的に思考して自力で結論を導き出すためのサポートを行う点が特徴的です。
そのため、指導を受ける部下や新人は、答えを待つ受け身の状態ではなく、自ら考えようとする習慣が身に付く効果があります。
メンタリングが定着すれば、従業員自身が目標を設定し、それに向けて積極的に取り組むといった変化が期待できるでしょう。
心理的なケア
また、従業員の精神面のケアができる効果があります。
メンタリングは、技術的な知識やスキルだけをテーマとして指導するわけではなく、メンターが精神面についても踏み込んで課題解決をサポートする手法です。
そのため、部下や新人が仕事において何かの壁に当たっていないか、健康・心理面で何か問題を抱えていないかといった点についても発見しやすく、異常がありそうな時は早期にサポートができます。
信頼関係の構築
さらに、従業員同士で信頼関係を構築させるためにも役立ちます。
メンタリングは、メンターがメンティに対してマンツーマンで指導させる手法です。
そのため、密接なコミュニケーションの促進にもつながり、双方の考え方を深く理解させることにもなります。結果的に信頼し合える関係作りにも役立つのです。新人や若手が組織に上手く馴染めないという課題の解消にも貢献するでしょう。
メンタリングのデメリット
メンタリング制度にはデメリットもあり、導入を検討している人事担当者や管理者はあらかじめそれらを把握しておくことが大切です。ここでは3つのデメリットを紹介します。
メンターの負担
まずメンターの負担が大きいという点はデメリットです。
メンタリングは、メンティを目標に向けて取り組ませた後で上司が評価したりフィードバックをしたりすれば十分というわけではなく、むしろ密接にコミュニケーションを取る必要があります。
定期的に面談をしてメンティの悩みをヒアリングしたり、それについて丁寧に対応したりなど、メンターに求められる指導の量も質も決して低くはありません。
メンタリング制度を導入する際は、このような丁寧な指導ができるかどうか検討することも不可欠です。
教育効果のばらつき
メンターによって教育効果が異なってしまう点もデメリットです。
メンタリングは、全ての相手に通用する普遍的な方法はなく、相手によって方法を変え、さらに実施していく中で試行錯誤していく必要があります。
また、メンタリングはメンター自身の方法論もさまざまで、統一を図るのが難しいという課題もあるのです。
そのため、メンタリングを導入する際には、定期的にメンター向けの研修を実施したり、ガイドラインを策定したりといった対策も取る必要があります。
効果測定の困難
さらに、効果測定が困難だというデメリットもあります。
メンタリングは相手に合わせて悩みや課題解決をサポートし、主体性を引き出すという点が特徴です。
従業員の主体性を引き出すという狙い自体は良いものですが、実際にメンタリングをすることでどの程度改善されたのか、客観的に測定することは簡単ではありません。
最悪の場合、メンタリング制度を導入してみたは良いものの、メンターらの負担ばかりが増えて、成果が出ているのかどうかがわからないという事態にもなりかねないのです。
メンタリングの進め方・導入の流れ
メンタリング制度を導入する際に重要なのが、制度の進め方や導入のポイントを知っておくことです。
特に管理体制を構築した上でメンタリングを計画的に実施することをメンタリングマネジメントと呼びます。ここではメンタリングマネジメントのポイントについて紹介しましょう。
メンティの準備
まず指導を受けるメンティ側がいくつか準備をしておく必要があります。特に重要なのは心構えと、相談内容の整理という2つのポイントです。
まず、メンティは自分が主役なのだという当事者意識を持ち、成長するための機会なのだと捉えることが求められます。これは自発的に相談したり、フィードバックに対して素直に耳を傾けたりといった行動にも影響する要素です。
次に、考えていることや疑問、不安を具体的に整理することが欠かせません。要点が絞られていれば、メンターとの時間を有意義に活用できるでしょう。
メンターの準備
指導をするメンター側としても、心構え、スキル、対応方法などについてあらかじめ準備しておく必要があります。
心構えとは、メンターはメンティを支える側だと認識した上で、悩みの解消や成長に貢献する役割だと理解させるのが大切です。
スキルとは、ボディランゲージや質問能力、傾聴といった、コミュニケーションのためのテクニック習得することを指します。
対応方法とは、メンティの悩みや目標にどのように向き合うのかといった方針に加え、対応しきれない場合の対処法なども確認しておく必要があるのです。
運用プロセスの整理
メンターとメンティの間で運用方法を検討し、合意しておくこともスムーズな運用のために大切です。メンタリングの目的や方針について確認した上で、フィードバックの方法、実施期間や頻度などについてあらかじめ定めておきましょう。
人材育成ではメンタリングとともに人事評価制度の整備もお忘れなく
メンタリングは人材育成のための効果的な手法の1つですが、より効果を高めるためには併せて人事評価制度を整備することも欠かせません。
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