企業がさらなる利益を生み出し、成長するためには人材育成は欠かせません。
リモート下での就業が当たり前になった現代では、これまでの人材育成の手法も見直しが必要とされてきています。人材育成を強化することは、社員本人の意欲やスキル向上が期待でき、社員とともに企業としても成長していくことが可能です。
ここでは、人材育成の概要、企業導入の動向、改革のポイント、人事担当が取るべき効果的な施策について解説します。
人材育成とは
人材育成とは、社員を企業で活躍する人材に育てることを指します。人材育成により社員が成長することで、企業自体も成長が見込まれます。そのため、企業にとって人材育成は必要不可欠です。
そもそも、日本の一般的な人材育成とは、「日本型雇用」と呼ばれるシステムを基に実施されてきました。
日本型雇用とは、終身雇用、年功序列、新卒一括採用といった仕組みを前提とした従来からある日本の代表的な雇用システムです。
人材育成は、専攻などの条件を設けない新卒一括採用後に、会社でのOJTやジョブローテーションなどが一般的で、今でも広く日本で浸透している方法です。
また、人材育成では、ただ社員を一方的に教育するのではなく、企業の経営戦略の実現に貢献できる人材に育てることが求められます。
そのためには、社員の主体性な自主性を重んじることはもちろん、社員の目標と自社の目標が同じベクトルに向いていることが大切です。
トレンドな人材育成の手法とは
今トレンドになっている人材育成の手法とは、欧米諸国では採用されている「ジョブ型雇用」をベースとしたものです。
「ジョブ型雇用」とは、まず仕事内容や責任範囲、勤務地、労働時間などを限定し、それを遂行できる人材を雇う方法です。特定の仕事をこなせる人材を探すため、年齢や学歴よりもスキルや経験が重視されます。
ジョブ型雇用では、「仕事」を限定して採用活動行い、社員育成についてもその仕事におけるプロフェッショナルを育成します。
現在トレンドとなっている人材育成の手法とは、このプロフェッショナルを育てるという部分の人材育成方法を、自社に合った形で一部分取り入れる形です。
時代に合った人材育成の企業事例を2つ紹介
それでは、具体的にどのように企業は部分的にジョブ型に合った育成方法を取り入れているのでしょうか?
代表的な2つの企業事例を紹介します。
KDDIの人材育成の事例
KDDIは、2020年8月から社員の仕事に対する成果や挑戦、職務遂行能力を評価して処遇に反映する、ジョブ型雇用制度を導入しています。
それより以前から、積極的にジョブ型に近い観点での人事育成制度を実施しています。例えば、ジョブローテーション制度について、「チャレンジローテーション」「プロフェッショナルローテーション」の2つのコースを設けています。
前者は、複数の業務、部門を経験する一般的なジョブローテーションに近いですが、後者は、個々の専門性を深掘りし、さらにそれを伸ばすことを目的に部署巡ります。
専門性の高い分野で、ジョブ型の育成方法を上手く取り入れている事例でしょう。
参考文献:
KDDI「時間や場所にとらわれず成果を出す働き方の実現へ、KDDI版ジョブ型人事制度を導入」
KDDI「 統合レポート 2015 」
富士通の人材育成の事例
2020年から富士通は人材育成方針の大幅な見直しを開始。
全社員への一律な研修方法から、社員一人ひとりに対しての自律的な学び・成長を支援する場を提供するという方向へ舵を切りました。
各層に対して実施していた一律の必修研修を廃止し、自身の特性や目指すジョブに応じて選択できる形としました。ただし、自律的な学び・成長の基礎となる内容や社員として重要な知識や考え方については必修としています。
ベースとして富士通社員としての必ず身に付けてほしい内容については残しつつ、大幅にジョブ型を導入した人材育成の事例と言えるでしょう。
参考文献:富士通「人材育成・キャリアデザイン」
成果を出す人材育成改革のポイント
実際に人材育成を改革する際にポイントとなる点について、3つ紹介します。
雇用システムと合わせた改革が必要
人材育成の方法は雇用システムがベースとなって選択されます。両者は連動して導入されるべきものです。
雇用システムをどういったものに変革するかを検討の上で、人材育成の手法についても方針を決めましょう。
一部からなど徐々に導入することが大事
人材育成の方法は、社員の「キャリアアップ=自分が将来的にどう仕事をするか」に大きく影響します。
社員にとってインパクトが大きなことなので、人材育成制度を変更する場合には一部分など徐々に導入することが大切でしょう。
人事評価システムと併せて実施すること
人材育成制度を変革する際に、重要なファクターとなるのが人事評価システムです。雇用システム及び人材育成制度が改革されたにも関わらず、人事評価システムが既存のままではアンマッチでしょう。
改革により成長する部分が変わるにも関わらず、評価する仕組みがそのままでは社員のモチベーション低下にもつながりかねません。
人材育成制度を変更する場合には、併せてそれにマッチした人事評価システムを構築しましょう。
人事が取るべき人材育成の施策
人事育成の施策はさまざまな種類があります。続いては人材育成の施策の内容やメリットについて確認していきます。そして、自社に合った施策を取り入れましょう。
MBO(目標管理制度)
MBOとは、Management By Objectivesの略で社員一人一人の目標を、企業の持つ目標と連動させ、成長を促す目標管理制度です。1954年にP.F.ドラッガーが提唱した組織マネジメントの一つです。
MBO(目標管理制度)の特徴は、社員自ら主体的に考える力を養うこと。自分自身の目標にリンクしているため、一方的にやらされているだけではなく組織の成功に貢献するという参画意識を育めます。また、設定する目標が具体的なため、振り返りも行いやすく評価制度に活かせます。
人事評価制度
人事評価制度は、社員の評価を元に育成し、企業の目標達成や業績のアップに繋げるための人材育成施策です。企業の成長のためには、社員一人ひとりの目標が企業の持つ目標と同じベクトル上になければいけません。
人事評価制度は、社員の能力、働きぶり、成績などから総合的に判断します。評価基準や指標の明確にし、公正な評価を行うことで社員のモチベーションアップにも繋がります。
OJT
OJTとは、On-The-Job Trainingの略で企業内教育のことを指します。上司や先輩社員が部下に対して、実務をする上で必要となる知識やスキルを教える実践形式の研修です。実務の上で研修を行うため、研修後には即戦力になることが期待されます。
また、OJTは学ぶ側だけではなく教える側の成長にも繋がります。どのように説明したら部下が理解してくれるかを考えながら実践するため、部下に対する指導力も養えるのです。
OFFJT
OFFJTは、Off the Job Trainingの略で座学を通して行われる研修のことを指します。OFFJTは、OJTと違って実践的なものではなく、教育的な要素の含まれる研修です。具体的には、集合研修やeラーニング、通信教育などさまざまな種類があります。
OFFJTは、座学を通してビジネスや企業成長における知識やスキルを体系的に学べます。業務から離れて効率よく学べるため、通常業務内では得られないスキルも身につけられます。
実践的なスキルの身につくOJTと、専門性の高いスキルの身につくOFFJTではそれぞれメリットやデメリットも異なります。自社にとって最適な人材育成の方法を探り、それぞれをバランスよく取り入れることが大切です。
自己啓発
自己啓発とは、本人の意思によって能力や精神面の成長を促すための訓練を指します。自己啓発は、他の施策とは違い本人の「心」の成長にも重点を置いていることが特徴です。
能力と精神の両方を成長させることによって、「より良い自分」や「より大きな目標」を目指します。
自己啓発は、読書やセミナー参加、交流会などさまざまな方法があります。自己啓発で大切なことは、本人の「やりたい」という意思。本人の意思と、会社としての方針がマッチするテーマを選び、学ぶ機会を提供することが求められます。
eラーニング
eラーニングとは、インターネットを利用した学習方法です。インターネットを使うことで、研修のための時間や場所、講師の確保といった負担を軽減することができます。社員も好きな時間に学べるため、業務に支障をきたすことがありません。
また、本人の学習状況や進捗管理もできるため、どれくらい理解したのかをしっかりと把握できます。最近ではさまざまな企業がeラーニングを提供しているため、ニッチなジャンルや最新情報などもいち早く学ぶことができるようになりました。
階層別研修
階層別研修とは、社員一人ひとりの役割を全うするために必要なスキルを養う研修です。階層別研修の特徴は、役職や役割ごとにその内容が異なること。そのため、個々のレベルに合った知識や能力を育成することが可能です。
自分の役割や求められるスキルが明確になるため、組織に貢献していくための能力を開発できます。そのため、階層別研修は役職や役割の変わるタイミングでも用いられます。
集合研修(内部)
集合研修は、企業内部で講師を招き実務に必要なスキルや知識を学ぶ研修です。業務に必要な専門的な知識を学べます。一度に多くの対象者を教育することができるため、公平で効率的です。
また、同僚や同じ部署の同士で受講させることで意見交換などもできるので、より深く学べます。
集合研修(外部)
集合研修は、外部からその分野のエキスパートである講師を招いて、専門的なスキルや知識を学ぶ研修です。
社内にはないノウハウや知識なども体系的に学べるというメリットがあります。また、不明点や気になる点は直接講師に聞くことも可能です。指導や教育にも慣れた講師から教わるので、受講する側の社員も確実に内容を理解できます。
タレントマネジメント
タレントマネジメントとは、社員の能力やスキルを特定し、その情報を人事部が把握して、組織的・戦略的に人材を管理・育成していくことです。
今トレンドのひとつとなっている、人材育成の手法でしょう。
社員一人ひとりに合わせて、長所を伸ばす形で戦略的に人材育成を行うことで、社員の得意な分野での成長が期待できます。
ジョブローテーション
ジョブローテーションとは、一定期間に複数の業務・部門を社員が経験することで様々な職種への理解を深めること、社内の円滑なコミュニケーションを目的として実施されます。
ジェネラリストが育成されやすい一方で、プロフェッショナルが育成されにくいと指摘されやすいです。ジョブローテーションの後は、プロフェッショナルとして育成するという段階を踏む方法も、近年ではよく導入されています。
インターンシップ
インターンシップとは、学生が企業などで一定期間就業経験を積む制度や、その期間を意味します。
近年では技術職に対してインターンシップを強化し、入社前から有望な学生をスカウトする手法も取られています。
自社を知ってもらう広い意味でのインターンシップに囚われず、入社前から有望な学生を鍛えることも重要な人材育成の手法です。
急激な社会変化に対応できる人材を育成しよう
人材育成の手法は幅広く「正しい答え」はありませんが、時代の変化に合った、かつ自社に合う人材育成方法を選択することが重要です。
現在の急激な社会変化の中で、社員がパフォーマンスを発揮できる仕組みを根本から変えていくことが必要でしょう。
その中でも、人材育成の重要なファクターのひとつ、人事評価システムについても再構築することは欠かせません。
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