企業がさらなる利益を生み出し、成長するために人材育成は欠かせません。
しかし、どのように取り組めば良いか、具体的な方法がわからないと悩みを抱える企業も多いでしょう。
本記事では、人材育成の概要や企業の導入事例など、社員の成長を促進するための具体的な施策を紹介します。
人材育成を強化し、社員のスキルアップと組織の成長を両立させるためのヒントを見つけましょう。
人材育成とは

人材育成とは、社員のスキルや能力を高め、企業の成長に貢献できる人材へと育てる取り組みです。
日本では、かつて終身雇用・年功序列・新卒一括採用を前提とした「日本型雇用」のもと、長期的な視点での人材育成が一般的でした。しかし、近年は雇用の多様化が進み、従来の育成方法だけでは対応が難しくなっています。
現在の人材育成では、社員一人ひとりが主体的に考え、組織に貢献できるスキルを磨くことが求められています。そのため、社員の自主性を尊重し、個人のキャリア目標と企業のビジョンが一致するような育成方針の設計が重要です。
人材育成をする重要性

人材育成は、企業の成長と持続的な発展に欠かせない取り組みです。企業として、社員の成長を支援することで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
人材育成が重要な理由は、以下の3つです。
- 従業員のスキル向上により、組織全体の生産性を高められるから
- 人手不足が深刻化する中、人材の長期的な活躍をサポートする必要があるから
- 企業文化や価値観への共感を醸成することにより、離職率の低下につながるから
ただし、人材育成には時間やコストがかかるため、計画的な実施が必要です。適切な研修やOJT(職場内訓練)を組み合わせて、優秀な人材の育成・企業の成長を支えましょう。
人材育成のトレンド手法11選
人事育成の施策には、さまざまな種類があります。
- MBO(目標管理制度)
- 人事評価制度
- OJT
- OFF-JT
- 自己啓発
- eラーニング
- 階層別研修
- 集合研修
- タレントマネジメント
- ジョブローテーション
- インターンシップ
人材育成の施策内容やメリットを解説するので、自社に合った施策を取り入れましょう。
1.MBO(目標管理制度)
MBOとは、Management By Objectivesの略で、社員一人ひとりの目標を企業の目標と連動させて、成長を促す組織マネジメント手法です。
1954年に経営学者ピーター・ドラッカーが提唱し、多くの企業で導入されています。
MBO(目標管理制度)の特徴は、社員が自ら考えた目標に向かって行動するため主体性が生まれやすく、高いモチベーションを維持しやすいことです。
目標を設定する際には「SMARTの法則」の活用により、成果につながりやすい設計が可能になります。
2.人事評価制度
人事評価制度は、社員の能力や成果を適切に評価し、企業の目標達成や業績のアップにつなげるための人材育成施策です。
人事評価制度の目的は、社員の成長を促進しながら組織の方向性と一致した成果を出すこと。社員の能力や働きぶり、業績などから総合的に判断します。
ただし、評価の指標が曖昧だと社員の納得感が得られず、モチベーションの低下を招いてしまいます。そのため、「評価基準の明確化」と「フィードバックの充実」が必要です。
例えば、「成果主義」「行動評価」「360度評価」など、企業の目的に応じた評価手法を組み合わせることで、公平性と成長支援を両立できます。
また、定期的な面談やスキルアップ施策と連動させることで、社員が自身の成長を実感しやすくなり、エンゲージメントの向上も期待できます。
3.OJT
OJTとは、On-the-Job Trainingの略で、職場で実際の業務を通じて行う企業内教育のことを指します。上司や先輩社員が部下に対して、実務をするうえで必要となる知識やスキルを教える実践形式の研修です。
OJTの最大の利点は、実務に即した知識やノウハウを習得できるため、研修後すぐに即戦力として活躍できる点です。 また、OJTは学ぶ側だけではなく教える側も、自身の業務を整理する機会や部下に対する指導力も養えます。
効果的なOJTを実施するには、体系的なカリキュラムを整え、定期的なフィードバックを行うことが重要です。部下の成長を支援しながら、組織全体のスキル向上を目指しましょう。
4.OFF-JT
OFF-JTとは、Off-the-Job Trainingの略で、座学を通して行われる研修のことを指します。実務を通じたトレーニングのOJTに対して、OFF-JTは体系的な知識やスキルの習得が目的です。
日々の業務に追われずに集中して学べるため、リーダーシップ研修や専門知識の習得など、高度なスキルを学ぶのに適しています。
OFF-JTの具体例として、以下の手法があります。
- 集合研修
- セミナー
- eラーニング
- 通信教育
- ワークショップ
また、外部講師を招いたり異業種交流などの研修を行ったりすることで、視野を広げる機会にもなります。
自社の育成方針や社員の成長段階に応じて、OJTと組み合わせながら適切に導入しましょう。
5.自己啓発
自己啓発とは、本人の意思によって能力や精神面の成長を促すための訓練を指します。企業が主体となる研修とは異なり、自己啓発は本人の意思によって学ぶのが特徴です。
自己啓発には、以下のような手法があります。
- 読書
- 資格取得
- セミナー参加
- オンライン講座の受講
- 交流会への参加
自己啓発では、本人の「やりたい」という意思が重要なため、企業としては会社の方針がマッチするテーマを選ぶ必要があります。また、学んだことを実務で活かせる環境の整備で、社員のモチベーション向上・継続的な成長をサポートできます。
6.eラーニング
eラーニングとは、インターネットを利用して学習を進めるオンライン教育の手法です。インターネットを使うことで研修のための時間や場所、講師の確保などの負担を軽減できるため、通常の業務と両立しやすくなります。
また、学習者の進捗や理解度をデータで管理できるため、個人に応じた教育プランの設計が可能です。特にAIを活用したシステムは、学習履歴をもとに最適なカリキュラムを提示できるため、より効率的な学習が期待できます。
7.階層別研修
階層別研修とは、社員の職位や役割に応じて必要なスキルや知識を習得するための研修です。新入社員から管理職まで、それぞれの業務内容や責任範囲に適したカリキュラムが設計されているため、成長段階に応じた学びを得られます。
学べる内容は、以下の階級によって異なります。
社員の階級 | 詳細 |
---|---|
新入社員向け | ビジネスマナーや基本業務の習得 |
中堅社員向け | リーダーシップや業務改善の手法 |
管理職向け | 組織マネジメントや経営戦略の理解を深める |
昇進やキャリア転換のタイミングで、社員が新たな役割を円滑に遂行できるよう、適切な研修を設定しましょう。
8.集合研修
集合研修は、企業内部や外部の専門家から講師を招き、特定のテーマに沿って複数の社員が一斉に学ぶ研修手法です。
集合研修のメリットは、同じ環境で学ぶことで社員同士の意見交換が活発になり、学びを深められることです。特に、部署単位で受講すれば共通認識が生まれ、実務に直結しやすくなるでしょう。
さらに、集合研修は一度に多くの社員を教育できるため、研修の効率が高い点も特徴です。
ただし、スケジュール調整が必要になるため、通常業務とのバランスを考慮しながらカリキュラムを設計することが重要です。
9.タレントマネジメント
タレントマネジメントとは、社員の能力やスキルを把握して、組織的・戦略的に人材を管理・育成する手法です。個々の強みを活かして適材適所に配置することで、企業のパフォーマンス向上を目指します。
クラウドシステムを活用すると、社員のスキルや評価、キャリア志向を一元管理できるため、より適切な配置や育成計画が実現できます。結果、社員のモチベーション向上や離職防止にもつながるでしょう。
10.ジョブローテーション
ジョブローテーションとは、一定期間ごとに社員を異なる部署や業務に配置し、多様なスキルや知識を習得させる人材育成手法です。
ジョブローテーションには、以下のメリットがあります。
- 組織全体の理解が深まる
- 部門間の円滑なコミュニケーションが促進される
- 業務の幅広い経験を通じて、社員の適性を見極める機会にもなる
ジェネラリストが育成されやすい一方で、プロフェッショナルが育成されにくいという課題もあります。そのため、異動後に専門分野の研修やOJTを実施するなど、段階的な育成計画を組み合わせることが重要です。
企業の戦略と個々のキャリアプランを擦り合わせて、より効果的なジョブローテーションを実現しましょう。
11.インターンシップ
インターンシップとは、学生が一定期間企業で実務経験を積む制度のことです。短期間の職場体験型から、長期にわたり実務に深く関与するものまで、さまざまな形式があります。
優秀な学生に実務を通じてスキルを磨かせ、即戦力として活躍できる人材の育成が可能になります。また、学生にとっても、業界や職種への理解を深め、キャリア形成に役立つ貴重な経験になるでしょう。
インターンシップを単なる採用活動の一環にするのではなく、人材育成の第一歩として活用できれば、企業と学生双方にとってメリットになります。
成果につなげる人材育成のポイント

成果につなげる人材育成のポイントは、以下の3つです。
- 具体的な目標を設定する
- スキルマップを作成する
- 育成プランの実施とフィードバックを繰り返す
ポイントを理解して、効果的な人材育成を実現しましょう。
具体的な目標を設定する
人材育成を成功させるためには、明確な目標を設定する必要があります。目標が曖昧なままでは育成の方向性が定まらず、従業員も何を学ぶべきか迷ってしまうためです。
具体的な目標には、以下のようなものがあります。
対象 | 目標例 |
---|---|
新入社員 | 入社3ヵ月以内に業務の基本的な流れを理解し、自主的に対応できるようになる |
管理職候補 | 半年以内に部下の成長をサポートできる、リーダーシップスキルを身につける |
目標設定のコツは、達成基準だけでなく期限も明確に提示することです。
また、目標設定をする際には個人の適性や経験を考慮して、無理のない範囲で挑戦できるものを設定しましょう。
スキルマップを作成する
スキルマップは、従業員のスキルや能力を可視化できるツールです。現在の能力と目標とするスキルレベルの差が明確にわかるため、重点的に学ぶべき項目を一目で把握できます。
スキルマップを作成する手順は、以下の通りです。
- 業務に必要なスキルをリストアップする
- スキルレベルを「初心者」「基本レベル」「専門レベル」などの段階で定義する
- 社員のスキルを評価する
例えば、営業職であれば「商談力」「プレゼンテーションスキル」「顧客対応力」などを指標にし、従業員ごとの習熟度を可視化します。
スキルマップは定期的に更新しつつ、従業員の成長を記録することで、企業全体の業績向上にもつながるでしょう。
育成プランの実施とフィードバックを繰り返す
従業員の成長を促すためには、育成プランの実施と定期的なフィードバックを繰り返すことが重要です。
フィードバックを行う際は、上司やメンターが1on1ミーティングを定期的に実施し、従業員が自身の課題に向き合える環境を整える必要があります。また、小さな成功を認めることで本人の成長意欲を引き出し、モチベーションを維持する工夫も欠かせません。
社員のスキルアップを支援し、組織全体の成長につなげるために、育成プランの実施とフィードバックを継続的に行いましょう。
人材育成の成功事例3選
最後に、人材育成が成功した企業の事例を3社紹介します。
- KDDI
- 富士通
- なかやま牧場
各社の成功事例を参考に、自社の人材育成にも取り入れてみてください。
1.KDDIの人材育成の事例
KDDIは、2020年8月から社員の仕事に対する成果や挑戦、職務遂行能力を評価して処遇に反映する「ジョブ型人事制度」を導入しています。
それ以前から、積極的にジョブ型に近い観点での人事育成制度を実施しています。
例えば、ジョブローテーション制度では「チャレンジローテーション」「プロフェッショナルローテーション」の2つのコースが選択可能です。
前者は、複数の業務や部門を経験する一般的なジョブローテーションに近いですが、後者は、個々の専門性を深掘りしてそれを伸ばすことを目的に部署を巡ります。
専門性の高い分野で、ジョブ型の育成方法をうまく取り入れている事例です。
参考文献:
KDDI「時間や場所にとらわれず成果を出す働き方の実現へ、KDDI版ジョブ型人事制度を導入」
KDDI「 統合レポート 2015 」
2.富士通の人材育成の事例
富士通は、2020年から人材育成方針の大幅な見直しにより、全社員への一律な研修方法から、社員一人ひとりに対して自律的な学びや成長の支援を提供する方向へ舵を切りました。
各層に対して実施していた一律の必修研修を廃止し、自身の特性や目指すジョブに応じて選択できる形としました。
ただし、自律的な学び・成長の基礎となる内容や社員として重要な知識や考え方については必修としています。
ベースとして富士通社員としての必ず身に付けてほしい内容は残しつつ、「ジョブ型雇用制度」を導入した人材育成の事例と言えるでしょう。
参考文献:富士通「人材育成・キャリアデザイン」
3.なかやま牧場
株式会社なかやま牧場は、肉牛の肥育から食肉加工、直営の総合食品スーパーでの販売までを一貫して行う企業です。
同社は、社員一人ひとりの成長と企業理念の浸透を目指し、人事評価制度の強化と教育の充実に取り組みました。その際、あしたのチームの人事評価制度を導入し、個々の努力が「見える化」したことで、公平に評価できるようになりました。
また、クラウドサービス「あしたのクラウド® HR」を活用することで、評価の管理・運用を効率化し、社員の頑張りが適切に評価される仕組みを構築しています。
これにより、社員のモチベーション向上や行動改善が促進され、現在では人事評価制度が社内に浸透し、当たり前の仕組みとして定着している良い事例です。
社員の成長につながる人材育成をしよう
人材育成にはさまざまな手法があり、絶対的な「正解」はありません。そのため、時代の変化に適応しながら、自社に最適な育成方法を選択することが重要です。
企業が成長を続けるためには、社員一人ひとりのスキル向上やモチベーションの維持を促進する環境づくりが欠かせません。そのためには、社員の主体性を引き出し、成長を支援する「人事評価システム」の構築が重要な課題です。
人材育成の強化を目指している企業の方は、業務内容・成果・人事評価・給与改定までを正確に把握・実施できる、人事評価クラウドシステム「あしたのクラウド™HR」をぜひご活用ください。

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