ジョハリの窓とは?人事担当が知るべき研修での活用法と導入効果

(画像=dmitriymoroz/iStock)

「ジョハリの窓」とは、心理学モデルの1つで、自己分析を行いながら他者とのコミュニケーションのあり方を探る手法です。

社内研修やグループワークで使用されるものであり、実践的な活用方法を理解することによって、人材教育に役立てることができます。マネージャーや人材開発の担当者は、「ジョハリの窓」を研修に取り入れるメリットや、ビジネス研修での活用方法を知ってくと役立つでしょう。

今回は、ジョハリの窓をビジネス研修に取り入れる方法や、職場における効果などを解説します。また、研修での具体的な実践手順や、診断結果の活用方法についても詳しく見ていきましょう。 

ジョハリの窓とは?

ジョハリの窓とは、自分と他人との間にある認識のズレを把握するための自己分析方法のことを指します。

言葉の由来は、サンフランシスコ州立大学の心理学者であるジョセフ・ルトフ(Joseph Luft)とハリ・インガム(Harrington Ingham)の名前を組み合わせたものです。

1955年にアメリカで開催された「グループ成長のためのラボラトリートレーニング」で発表されました。

ビジネスにおけるコミュニケーションの促進や能力開発などの目的で、就職活動の自己分析や社員研修などの場で活用されています。

ジョハリの窓は、「自分のことは自分が一番分かる」と思い込んでしまいがちな盲点を明らかにするものです。

自己分析を通じて自分に対する気づきを得て、他者との円滑なコミュニケーションをとる方法を探っていくのです。

さらに、ジョハリの窓によって、「自分をどれほど開放しているか」といった度合いを測ることもできます。

ジョハリの「4つの窓」の意味

ジョハリの窓では自分の特性について、開放・盲点・秘密・未知の4つの窓に分類します。

開放の窓

「開放の窓」は自分も他人も知っている自己のことを指し、この窓に該当する項目が多いときには、自分の能力や内面をほかの人が分かるように表現している傾向にあります。

逆に、開放の窓の項目が少なければ他人からは「良く分からない人」だと思われていると判断されるのです。

盲点の窓

「盲点の窓」は自分では気づいていないもものの、他人は知っている自己を指しています。

盲点の窓に該当する項目が多い場合には、自己分析があまりできていない状態にあります。

この場合には、自分では気づいていなかった性質を素直に受け入れることで、開放の窓を広げていけるのです。

秘密の窓

「秘密の窓」は自分では知っているものの、他人は気づいていない自己のことを指します。

秘密の窓に該当する項目が多い場合には、自分の中に隠していることが多く、自己開示ができていない状態にあるといえるでしょう。
個性をうまく表現できていない傾向にあるのです。

未知の窓

そして、「未知の窓」はまだ誰からも知られていない自己のことを意味しています。

新たなことに挑戦していく流れのなかで、能力を身につけていく可能性を秘めています。

一般的には、開放の窓を広げて、未知の窓を狭めていくことが良いとされているので、人材育成や人材教育を行う際にジョハリの窓は1つの方向性を形作るものとなるのです。

企業がジョハリの窓を研修に導入するメリット

ジョハリの窓は自分と他人との間にある認識のズレを把握する自己分析の手法ですが、企業研修に取り入れるとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つのポイントを解説します。

企業側が従業員を深く理解する

ジョハリの窓がビジネス研修や社員研修などで広く使われているのは、企業が従業員を深く理解できるというメリットがあるためです。

従業員ごとに本人の性格や価値観、能力には違いがあります。企業側が画一的な研修を行っても、能力の伸びに差が出てしまうのはむしろ自然なことです。

しかし、企業側が求める人材とあまりに乖離ができてしまうと、事業活動にも支障をきたしてしまうこともあるでしょう。

そこで、ジョハリの窓によって企業側が従業員をより理解できるようになれば、個別の従業員の特性に応じて効果的な育成やコミュニケーション、配置ができるようになります。

従業員の自己理解を促す

また、ジョハリの窓を導入すれば、「従業員の自己理解が深まり、自己啓発に役立てられる」という効果が期待できます。


企業側は、従業員をジョハリの窓を用いた自己分析に取り組ませることで、従業員自身が自分を良く理解し、自発的な行動に繋げていくプロセスが大切です。

組織の活性化に繋げる

ジョハリの窓を用いれば、組織の活性化にも繋がります。

研修のグループワークなどにジョハリの窓を導入すれば、お互いの性格や性質を良く理解するきっかけとなり、チームワークの強化に繋がるでしょう。その結果、従業員同士のコミュニケーションが活発になる効果も期待できます。

人材開発の担当者は、業務を円滑に進められるような環境整備の一環として、ジョハリの窓を活用してみましょう。 

ビジネス研修での効果と活用方法

先述のように、ジョハリの窓による自己分析の手法をビジネス研修に取り入れることは、さまざまな面でメリットがあります。

ただ、効果的に実践していくためにはジョハリの窓の活用方法についても押さえておく必要があるでしょう。

ここでは、ビジネス研修においてジョハリの窓がもたらす効果と活用の仕方について解説します。

ジョハリの窓が研修に導入される理由

ジョハリの窓がビジネス研修や社員研修などで広く使われているのは、「自己理解が深まり、自己啓発に役立てられる」「社内コミュニケーションが円滑になる」といった効果が期待されているからです。

従業員ごとに本人の性格や性質、能力には違いがあります。

企業側が画一的な研修を行っても、能力の伸びに差が出てしまうのはむしろ自然なことでもあるのです。

しかし、企業側が求める人材とあまりに乖離ができてしまうと、事業活動にも支障をきたしてしまう面もあるでしょう。

そのため、ジョハリの窓を用いた自己分析に取り組んでもらうことで、従業員自身が自分のことをよく理解し、自発的な行動に繋げていく必要があるのです。

また、グループワークなどを通じて、従業員同士のコミュニケーションを活発にさせることも有益だといえます。

お互いの性格や性質をよく理解しているからこそ、チームワークの強化に繋がるからです。

対象者が自分自身を見つめ直し、業務を円滑に進められるような環境整備に取り組んでみましょう。

ジョハリの窓の実践方法

ジョハリの窓を用いた自己分析を行うためには、手順を押さえておく必要があります。

どのような形で取り組めばよいか、順を追って解説していきます。

1.メンバーをグループに分ける

まずは、5~10人程度のグループ分けを行う必要があります。

ジョハリの窓では自分が他人からどう見られているかといった視点が必要になるため、初対面の相手とは行うことができません。

部署ごとにグループを作るなどして、お互いに相手のことを知っている人同士で実施しましょう。

2.シートを記入する

次に、メンバーに対して普段感じている印象や性格などを記述してもらいます。

紙とペンがあれば実施できますが、記述される内容の評価軸が曖昧になってしまう場合には、予め項目を列挙したシートを作成して配布するのも1つの方法です。

該当すると思われる項目に丸印をつけてもらう方式であれば、集計作業がラクになるでしょう。

シートに盛り込む項目はビジネス研修や社内研修で用いる場合には、ビジネスに関連した項目を増やすのがポイントです。

例えば、「リーダーの資質がある」「責任感がある」「向上心に満ちている」といったキーワードを挙げて、そこから4つの窓に当てはめてもらう形でシートに記入してもらいます。

記入する用紙は、本人用と他の参加者が記入するシートの2種類を用意しましょう。

3.集計方法

参加者全員がシートへの記入が済んだ段階で、集計作業を行っていきます。

集計は自分で記入した用紙と他の参加者が記入した用紙を見比べながら進めていきましょう。

自分と他人が丸印をつけていた場合には「開放の窓」に記入し、自分が丸印をつけておらず他人が丸印をつけたものは「盲点の窓」に記入します。

そして、自分が丸印をつけて他人が丸印をつけていないものは「秘密の窓」に記入し、自分も他人も丸印をつけていない項目については「未知の窓」に書き込むことになります。

一連の作業が完了してシートが完成したら、参加者同士で用紙を見せ合って意見交換をしましょう。

4.実施する際の注意点

ジョハリの窓による自己分析を実施する際には、いくつかの注意点もあります。

まず、予め作成するシートに記載する項目は、なるべくポジティブな表現を使うようにしましょう。

自己分析は心の開示を伴うものであるため、言葉選びについては特に気を配る必要があるのです。

たとえば、「臆病」という言葉は「慎重」と言い換えるといった形で、列挙するキーワードを選んでみましょう。

また、性格に触れる部分は本人が抱えるコンプレックスにもかかわってしまうため、自己分析を行うことによってかえってモチベーションが低下してしまう人もいます。

参加させるメンバー間できちんと信頼関係が構築されている状態で行い、自己分析の実施に抵抗がある人を無理に参加させてしまってはいけません。

参加者全員が無理なく行える環境を整えてみましょう。

診断結果の活用法

ジョハリの窓の診断結果は、個人と組織の両面で活かすことができます。

どのようなポイントを意識すべきかについて、それぞれ見ていきましょう。

診断結果を個人で活かす方法

診断結果を個人で活かす場合には、自分を知ることに役立てられます。

本人が自覚している部分とそうではない部分が診断によって明らかになるため、業務に対する適性やキャリアプランを練るための判断材料として活用できます。

また、何が自分に不足しているのかが分かるため、自分を高めていくための自己啓発にも役立ちます。

やみくもにスキルアップを行おうとするよりも、ジョハリの窓の診断結果を踏まえて取り組むほうが、多くの効果を期待できます。

また、キャリアプランを練るためには「キャリアパス」についても知っておきましょう。以下の記事ではキャリアパスの意味やキャリアパス制度を導入する効果、活用方法などを紹介しています。

診断結果を組織で活かす方法

診断結果を組織として活かすためには、従業員同士がお互いのことを深く理解し合うことが大切です。

それぞれの強みや苦手な部分を把握することで、チームとしてのあり方を改めて考える良いきっかけにもなるでしょう。

すぐに解決するのが難しい問題があったとしても、まずはそれぞれの現状を把握することによって、従業員同士のコミュニケーションが円滑になります。

そうした流れを作っていけば、自ずと良い職場環境が保てるはずです。

円滑なコミュニケーションは信頼関係の強化にも役立ち、結果的に個人の能力を最大限に引き出すことにも繋がります。

なお、従業員の能力ややる気を引き出すためには、人材育成の方法を理解した上で、その都度適切な施策を行うことが大切です。以下の記事では、経営者や管理者、人事担当者向けに、人材育成の基礎知識から効果、成功のポイントについて解説しています。興味がある方はぜひこちらもご覧ください。

人材育成には人事評価制度の整備が不可欠

ジョハリの窓とは、自分の特性を開放・盲点・秘密・未知の4つの窓に分類することで、より深く自己理解をするための自己分析の手法です。ビジネス研修にジョハリの窓を導入すれば、従業員が自己理解できるようになるだけでなく、企業側が従業員を深く知ることにも繋がり、組織マネジメントや人材育成という点でも効果を期待できます。

人材育成を進める上で忘れてはならないのが、人事評価制度の整備です。人材育成では従業員のやる気を引き出すことが大切で、そのためには、従業員が能力を磨きたいと自発的に思うような仕組み作りが欠かせません。以下の資料では、従業員の潜在能力を引き出す仕組みや、人事評価制度の活用術について解説しています。経営者や人事担当者の方はぜひご覧ください。

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