人材不足に悩む企業が増える中、社員の育成に効果的なコーチングが注目を集めています。コーチングとは、社員の主体性を引き出し、個々の特性に合わせてサポートする手法です。
双方向のコミュニケーション、テーラーメイドの対応、継続的な取り組みという3つの原則に基づいての実践が、コーチングを成功に導くカギとなります。
本記事では、コーチングの概要や具体的なやり方、期待できるメリットを詳しく解説します。
また、コーチングを導入する際の注意点や、社員の成長を正しく評価する仕組みづくりの重要性にも触れていますので、人材育成の質を高めるヒントが満載です。ぜひ最後までお読みください。
コーチングとは?意味を簡単に解説
コーチングという言葉は知っているが、その詳細は理解できていない方もいるでしょう。ここでは、コーチングの歴史や言葉の定義をお伝えしていきます。
まずは、コーチングの歴史についてです。 コーチングという言葉は、16世紀に登場したと言われています。「馬車」が語源となっていて、当時は人を目的地まで送り届ける意味で使われていました。
そこから転じて、アメリカで20世紀半ばから、個人、組織の目標達成をサポートすることを示す言葉として、ビジネス、スポーツなどさまざまな場面で使われるように変化しました。
この歴史的な成り立ちから、コーチングには「目標達成」という意味が込められていることが推測できるのではないでしょうか。
実際に、コーチングの言葉の定義は、目標達成に必要な要件を相手の話を傾聴しながら確認し、巧みな質問を用いて、自発的な思考、行動を引き出していくこととされています。つまり、コーチングに取り組むコーチは、対象者を目的地、目標まで誘導する役割を持つ人となります。
コーチングの3原則
コーチングの3原則を紹介します。
- インタラクティブ:双方向のコミュニケーション
- テーラーメイド:個々のメンバーの特性に合わせ対応
- オンゴーイング:継続的な取り組み
原則を知り、コーチングの意味を深く理解しましょう。
1. インタラクティブ:双方向のコミュニケーション
コーチングでは、コーチとメンバーの間で活発なコミュニケーションを行うことが重要です。
一方的に指示するのではなく、メンバーの考えや意見を引き出すような質問をしたり、メンバーの話に耳を傾けたりすることで、メンバーの主体性を引き出します。
このような双方向のやりとりを通じて、メンバーは自ら考え、行動するようになります。
2. テーラーメイド:個々のメンバーの特性に合わせ対応
メンバーには個性があり、それぞれ異なる特性を持っています。
コーチングでは、メンバー一人ひとりの性格や能力、目標などを把握したうえで、それぞれに合った方法でのサポートが大切です。
画一的なアプローチではなく、メンバーの特性に合わせてカスタマイズされたコーチングを行うことで、より効果的な人材育成が可能となります。
3. オンゴーイング:継続的な取り組み
コーチングは一度きりの取り組みではなく、継続的に行うことが重要です。一時的な指導では、メンバーの成長は限定的なものになってしまいます。
コーチとメンバーが定期的にコミュニケーションをとり、進捗を確認しながら、継続的にメンバーの成長をサポートすることが必要不可欠です。
継続的なコーチングを通じて、メンバーは着実にスキルアップし、自立した人材へと成長していくでしょう。
ビジネスコーチングの活用スタイル
コーチングは分野によって手法にやや違いがあります。ここでは、コーチングの種類とビジネスコーチングの活用スタイルを説明します。
コーチングの種類
(ビジネスコーチング・スポーツコーチング・エグゼクティブコーチングなど)
一般的に社員教育や人材開発で用いられるのはビジネスコーチングです。
特徴として、会社の組織目標と、個人の価値観をすり合わせるプロセスがあります。
スポーツ分野で用いられるのはスポーツコーチングで、アスリートやスポーツ愛好家などに対して、必要な思考やテクニックなどを備えさせる手法です。
エグゼクティブコーチングとは経営層といった幹部クラスを対象にしたもの。
ほかにも、人の人生設計に関わるライフコーチングや、健康分野ではヘルスコーチングなどがあります。
このようにコーチングは分野ごとに違いがあります。
ビジネスコーチングの活用スタイル
ビジネスコーチングを行う方法は大きく2つの種類があり、社内人材に実施させるパターンと、外部の専門企業に依頼するパターンに分けられます。
前者は、社内人材にビジネスコーチングのスキルを習得させる方法です。あるいは、コーチングのスキルを持っている人材を採用する方法も考えられます。
ビジネスコーチングを習得させる場合、コーチングのためのトレーニングや外部研修に参加させたり独学で勉強させたりする方法があります。コーチングスキルを持った人材を採用する場合はそういった必要はありません。
後者は、コーチングを得意とする外部の専門機関に依頼し、自社人材の能力開発をサポートしてもらう方法です。専門性の高いコーチがつくことで、高品質なコーチングを受けられます。
コーチングとコンサルティング、ティーチングの違い
「コーチング」に近しい意味をもつ言葉に「コンサルティング」や「ティーチング」があります。ここでは、コンサルティングとティーチングを説明したうえで、コーチングとの違いを解説します。
- コンサルティングとは
- コーチングとコンサルティングの違い
- ティーチングとは
- コーチングとティーチングの違い
違いを知ることで、より一層「コーチング」の理解が深まるでしょう。
コンサルティングとは
コンサルティングとは、専門的な知見を持ったコンサルタントが、相手の現状や要望をヒアリングしたうえで、目標達成に必要な戦略プランや実行計画、組織体制などを提案することを指します。
コーチングとコンサルティングの違い
コーチングとコンサルティングとの大きな違いは、目標達成に向けた方向性を示すかどうかです。
コンサルティングでは専門性の高いコンサルタントが目標を達成するための戦略策定や施策案を提案し、実行の一部を代行することもあります。一方、コーチングは相手に考えるきっかけを与え、主体的な思考や行動を促す点が特徴的です。
ティーチングとは
ティーチングとは、経験や知識を生かし、相手に対して目標達成に向けたノウハウやアドバイスを与えることを指します。コミュニケーションは基本的に教える側が主体となり、知識や手法を提供することが主眼です。
コーチングとティーチングの違い
コーチングとティーチングは、その目的も主体も違います。
ティーチングは、知識やノウハウを教えることを目的としており、コミュニケーションの主体は教える側です。
一方、コーチングは情報の提供が目的ではなく、自ら考える癖をつけさせたり、自発的に解決策を導いたりするサポートに重きを置いています。
ビジネスコーチングの3つの効果(メリット)とは
ビジネスコーチングの効果を本章で紹介します。
- 主体性を高めて自発的な思考や行動を促す
- 潜在能力を引き出す
- 学習意欲が向上する
特に期待できるコーチングの効果を3つ厳選しました。ビジネスコーチング導入の醍醐味を本章から学びましょう。
1. 主体性を高める
コーチングは、主体性を高めることで自発的な思考や行動を促す効果があります。
コーチングは、相手に解決策を提案するコンサルティングや、知識・ノウハウを伝えるティーチングとは違い、相手の考えを引き出すことを重視する手法です。
そのため、安易に答えに頼る受け身の姿勢ではなく、自ら答えを導き出そうとする姿勢を形成します。
2. 潜在能力を引き出す
コーチングは、潜在的な可能性を引き出す効果も期待できます。
目標達成を目指す時は、今自分が持っている力よりも、さらに力を出さなければならない局面もあるでしょう。このような場合、今ある力にしか注目できなければ、狭い思考になってしまい限界があります。
しかし、コーチングは目標達成に向けて「どうすれば達成できるのか」「自分の潜在的な力を引き出すにはどうすべきか」の問いを繰り返すことで思いがけない力を発揮できることがあります。
3. 学習意欲が向上する
また、学習意欲の向上も期待できる効果です。
コーチングを通して、相手は主体的な行動を身につけます。その結果、言われたことを行うだけでなく、積極的に学習するモチベーションも獲得します。
ビジネスコーチングは意味がない? 3つの注意点(デメリットとは)
コーチングには注意点やデメリットもあります。具体的な内容は、以下の3つです。
- 効果が出るまでには時間が必要
- 効率的な育成が困難
- コーチのスキルが必要
デメリットも知って、ビジネスコーチング導入の判断材料にしてください。
1. 効果が出るまでには時間が必要
コーチングの効果が出るには時間がかかります。
コーチングはコーチとの対話の中で、思考や行動のパターンを変えていくプロセスを繰り返さなければなりません。
そのため、即効性がある手法ではありません。
2. 効率的な育成が困難
コーチングは、一方的にノウハウを提供する場合とは異なり、コーチは相手のペースに合わせながら徐々に成長していくのをサポートする必要があります。
そのため、一度に大人数を相手にできる講座とは異なり、効率のよい育成方法とはいえません。
3. コーチのスキルが必要
コーチングを行うためには、コーチの側にもコーチングスキルが求められます。
傾聴・、承認・、質問といったテクニックだけがコーチに必要なスキルではありません。コーチには強いメンタルも求められます。
また、コミュニケーションでも、相手の成長を待ちながら辛抱強く取り組む必要があります。
ビジネスシーンにおけるコーチングの成功事例
ビジネスシーンにおけるコーチングは、個人や組織のパフォーマンス向上に大きな効果をもたらすことが多くの成功事例から明らかになっています。
例えば、営業担当者のセルフコーチングによって成功したケース。
ある営業担当者は、セルフコーチングを用いて目標を明確にし、ビジネスの効率と業績を向上させました。このプロセスにより、彼は自己分析を通じて自身の強みを最大限に活かせました。(参考:ビジネスシーンでのコーチング成功談を紹介)
細川馨さんは、保険支店長時代にコーチングの世界に魅了され、その後ビジネスコーチとしてのキャリアをスタートさせました。彼の経験を通じて、多くの企業がコーチングを導入し、売上や業績を大幅に向上させられました。(参考:細川 馨さん(ビジネスコーチ株式会社 代表取締役))
上記の事例からもわかるように、コーチングは個人の成長や組織の成功に大きな影響を与える手法です。ビジネスシーンにおいてコーチングを活用することで、具体的な成果を上げることが可能です。
ビジネスシーンにおけるコーチングの失敗事例
コーチングは多くの成功事例を生み出していますが、すべてがうまくいくわけではありません。以下に、ビジネスシーンにおけるコーチングの失敗事例を紹介します。
コーチングを受けた社員が、内面的な課題をクリアにしたにも関わらず、チームに戻った際にパフォーマンスを発揮できなかったケースがあります。
これは、コーチングセッションで得た気づきや学びが、実際の業務環境にうまく適用されなかったためです。チーム内でのコミュニケーションが不足していたことが原因とされています。(参考:キーワードは「自己探究心」と「壁と向き合うこと」)
また緊急案件が発生すると、上司は部下にじっくり考えさせる時間を取らず、ティーチングに頼りがちです。
この結果、部下は自ら考える力を養う機会を失い、コーチングの効果が薄れてしまいます。ある企業では、緊急時にコーチングを中断し、指示を出すことに専念したため、長期的な成長が阻害されました。
上記の失敗事例から学ぶことは、以下のとおりです。
- 現実的な目標設定
- 適切なコミュニケーション
- 信頼関係の構築
- 継続したアプローチが不可欠
コーチングを成功させるために実践しましょう。
コーチングの資格と学び方
社内人材にコーチングを習得させたい場合、コーチングの習得方法を知っておくと役立ちます。ここでは、コーチングの資格や学び方を紹介します。
- コーチングの資格
- コーチングの学び方
コーチング資格の取得を志している方は、必見です。
コーチングの資格
コーチングの資格とは、コーチングの指導機関が認定・証明しているものです。国家資格ではなく、さまざまな民間団体が独自の基準で運営しています。
そのため、団体によって証明できるスキルやレベルが異なることに注意が必要です。一般的に、資格を取得するためには指定のトレーニングや講義を受講し、試験に合格する必要があります。
コーチングの学び方
コーチングを学ぶには、コーチ資格認定機関などが提供している養成プログラムを受講するか、書籍などを使って独学するか2つの方法があります。
指導機関によっては座学やトレーニング形式といったコーチング講座を開講しており、中には資格取得を目指すかどうかにかかわらず受講できる講座もあります。
コーチングの5つの手順
コーチングの具体的なやり方について、順を追ってお伝えしていきます。
- まずは相手を肯定し、認める
- 親身になって話を聞き、相手を理解する
- 質問することで情報を整理していく
- フィードバックで気づきを与える
- 具体的な行動をリクエストする
手順に従い、実践することでコーチングの精度は格段に向上します。
1. まずは相手を肯定し、認める
コーチングを進めるうえでは、相手と信頼感を築くことが大切なポイントになるので、慌てずに相手の話を聞くことに専念しましょう。
発言を否定せずに同じ言葉を繰り返すことで、この人は話しやすい安心感を抱かせることを意識します。
2. 親身になって話を聞き、相手を理解する
話の内容に興味を示し、相手の気持ちに寄り添って考え理解を深めます。
最終的に相手へ的確なフィードバックを与えるためには、相手が現状をどのように考えて、「どう変わりたいのか?」「何を改善していきたいのか?」を正確に把握する必要があります。そのため、コーチングの行程の中でも重要な部分となるでしょう。
3. 質問することで情報を整理していく
あらゆる角度からの効果的な質問を通して、相手の頭の中を整理して、考えを具体化していくことが大切です。「なぜ」「どうして」など、聞かれた相手が詰問されているように感じる質問の仕方は避けてください。
4. フィードバックで気づきを与える
質問する中で見えてきた、相手にアドバイスできる部分を指摘し、新たな気づきを与えます。
正しく相手のことを把握した上で、当事者以外の視点をフィードバックすることで、気づきが得られ、改善のための具体的な行動につなげやすくなるはずです。
5. 具体的な行動をリクエストする
フィードバックに基づいた具体的な行動を促し、背中を押します。しっかりと相手の考えを引き出したうえで相手に行動を促せば、一方的な指示や命令ではなく自発的な行動のきっかけと受け取ってもらえるでしょう。
コーチングの効果を高めるには
コーチングの肝は、相手のことを把握し、的確なフィードバックを返す部分にあります。この部分をコーチとなる方が、研修を受けるなどして技術を磨くことで効果を高めることができるでしょう。
しかし、コーチング対象者が多数いる場合、1人ないし数人のコーチで対象者一人ひとりとしっかりと向き合うには膨大な時間と手間がかかります。
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コーチングによる人材育成と正しい人事評価が企業成長のカギ
企業にコーチングを導入することで、人材育成の質の向上が期待できます。
企業が成長するためには、人材育成と同時に、人材の成長度合いを正しく評価する仕組みの構築も重要となります。
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