各業界で人材不足が進む中、組織は個人の力を強化することが急務になっています。そこで注目されているのが「エンパワーメント」という発想です。
この記事ではエンパワーメントという言葉の意味やメリットとデメリット、人材育成におけるエンパワーメントのポイントなどをご紹介します。
エンパワーメントの意味
エンパワーメントは、端的に表現すると「自律性の獲得」ですが、実際にビジネスに役立てるには、その由来や歴史を理解することが欠かせません。ここではエンパワーメントの概要や、発達してきた経緯について説明します。
エンパワーメントとは
エンパワーメント(エンパワメント)は英語の「empowerment」が由来で、直訳すると「力を与える」「権限を与える」という意味です。
エンパワーメントという考え方の前提には、保健、医療、福祉、教育、企業活動といったあらゆる場面において、人はもともと何からの力を持っており、生涯にわたってその力を発揮し続けられるという認識があります。
エンパワーメントの歴史
エンパワーメントは1930年代の米国で発達した概念です。当時から米国では社会的に差別され、自分の力を発揮できないという人々が存在していました。
エンパワーメントという言葉は、そういった力(パワー)のない状態から、自分たちの権利や生活などを回復するという意味合いで使われてきたのです。
この考え方は、20世紀後半の公民権運動やフェミニズム運動、反戦運動などさまざまな場面で用いられました。
その結果、現在では、個人や集団が生活を自律的にコントロールする権利を獲得し、組織的や社会的などに影響を及ぼせるようになるのがエンパワーメントであると広く理解されています。
ビジネスにおけるエンパワーメントの特徴
企業組織や人事において、エンパワーメントは、能力開化や権限委譲という意味で用いられています。ここではそれぞれの意味を解説しましょう。
能力開花
ビジネスにおいてエンパワーメントは、社員の潜在的な能力を尊重し、その力を最大限に引き出すという考え方が基本的な方針です。
エンパワーメントの背景には、人は誰でも生まれつき素晴らしい能力を持っており、一生涯にわたってその力を最大限発揮し続けられるという発想があります。
そのため、人材の能力を開花させるために、上司が部下に何かを一方的に教えたり強制したりするよりも、むしろ主体性を引き出すことが大きなテーマです。
権限委譲
エンパワーメントにおいては「権限委譲」も大きな特徴です。
例えば、組織として目標を達成する際、上司が部下に対してその目的や方法までも指示するのではなく、一定の裁量を部下に与え、自ら考え行動させるといったマネジメント手法を採用します。
そのため、マネージャーや人事担当者の立場としては、部下が権限を持って仕事をしやすい環境を整備したり、適切なフィードバックを与えたりして支援することが重要になるのです。
エンパワーメントのメリット
エンパワーメントを意識することで、社員のリーダーシップ向上やマネジメント能力の向上、業務スピードや顧客満足度アップなどの効果が期待できます。
リーダーシップの向上
エンパワーメントでは、上司やマネージャーが部下に対して仕事の進め方や目標達成の方法を全て指示するのではなく、むしろ権限委譲を行います。
部下は誰かから指示を仰いで答えを与えられるのではなく、自分の裁量で物事を決め、それに対して責任を取らなければなりません。
そのため、当事者意識や責任感が強まり、リーダーシップの向上につながります。
マネジメント能力が身に付く
裁量権を与えられた社員は、仕事のスケジュールや時間配分などを自ら決め、リソースを有効活用して成果を出さなければなりません。
また、プロジェクトの中で「どうすれば仕事の進行を的確にマネジメントできるのか」「どうすれば他のメンバーと効果的に協働できるのか」を常に考えるようになるため、自然とマネジメント意識が育つのです。
業務スピードUP
エンパワーメントを意識することで、業務のスピードや生産性が上がる効果も期待できます。
自分に一定の裁量権が与えられていれば、何らかの決断をしたり仕事を進行したりする上で、上司に相談や報告を逐一行い、了承を得る必要はなくなります。
また、部下は自ら考える癖がつくため、トラブルの際でも解決策を自ら判断できるスキルも身に付くでしょう。
結果的に、相談や報告にかかる時間を省略できるほか、スキルも向上するため、業務のスピードが上がるのです。
顧客満足度の向上
エンパワーメントを意識することにより、顧客満足度が向上するというメリットも期待できます。
社員一人ひとりに一定の権限があれば、顧客対応においても上司や管理者に逐一相談する必要がありません。
また、顧客の要望や不満に対しても「満足度を高めるためにどうすれば良いのか」を自発的に考えながら仕事をし、自分の責任で試行錯誤ができるため、一方的に教わる場合と比べて主体性も身に付きます。
そのため、顧客対応のスピードも質も上がり、満足度向上につながるのです。
エンパワーメントのリスク・注意点
エンパワーメントを意識することにはメリットだけでなくリスクや注意点もあります。
ここでは代表的なものを紹介しましょう。
サービスのばらつき
エンパワーメントを意識した権限委譲により、社員によってサービスの品質や方法がばらばらになってしまうリスクがあります。
指揮命令系統が強固な組織であれば、経験も知見も豊富な上司や管理者がサービスを管理するため、過去のサービスとの一貫性を保ちやすいですし、細かい品質の管理も可能です。
一方、エンパワーメントでは個人の裁量を許可するため、最低限のマニュアルを用意しておかなければ、サービスを実施する人物によってサービスのレベルも方法も異なってしまいます。
生産性の低下
エンパワーメントの施策は方法を誤ると生産性が低下する可能性もあります。
権限を委譲する場合、主体的に仕事を進めるのが得意な人物であれば効果が期待できますが、中には自分の判断で仕事をするのが苦手であったり、まだそれほどの経験を積んでいなかったりする人材もいるものです。
そのようなケースでは、仕事を任せ過ぎることによって業務の進行が遅れたり、あるいはプレッシャーで本来の能力を発揮できなかったりするリスクもあります。
失敗による企業損失
社員に裁量権を与えることの負の側面として、自己判断によって失敗が増えてしまうことは避けられません。
失敗も経験として今後の能力開発に活かすという考え方もありますが、エンパワーメントによって何でも従業員の判断に任せてしまうと、損失のリスクが増えるという点には注意が必要です。
企業のマネジメントにおけるエンパワーメント実施の方法とポイント
企業のマネジメント手法としてエンパワーメントの考え方を取り入れる場合、成功させるためのポイントを押さえておく必要があります。
組織の方向性を確認する
エンパワーメントを推進するには、まず組織の方向性を確認しておくことが大切です。先述した通り権限を委譲し過ぎると、個々人の考え方や行動にばらつきが出てしまう可能性があります。
また、裁量を与えられることが不安に感じる従業員もいるでしょう。そこで、エンパワーメントを実施する狙いや、基本的な方針については企業としてしっかり定義したうえで、リーダーから説明することが欠かせません。
また、リーダーだけでなく、組織のメンバーの意見や思いを吸い上げて相互の認識を合わせる作業も大切です。
権限委譲する体制を整える
権限を委譲するにあたって、そのための体制や決まりを整備することも大切です。
通常、会社組織で何らかの決定をする際、どのような指揮命令系統を通すのか、誰が決裁をするのかが決まっています。
エンパワーメントを推進する場合、そのような意思決定の仕組みを調整し、目標達成のためであればある程度までは個人に自由を与え、失敗した場合でも許容するように転換していく必要があるのです。
情報を公開する
情報を公開する仕組みを整備することも重要です。正確な情報がなければ的確な意思決定を行うことはできませんし、組織の中で情報が連携されていなければ業務の非効率化にもつながってしまいます。
権限を委譲された場合、これまでは管理職にしか知らされていなかった情報であっても、個々のメンバーが自主的に意思決定するために知る必要が出てくるでしょう。
このように、情報がオープンになるように環境を整備することも大切なのです。
エンパワーメント導入に向けて人事評価制度の見直しを
組織にエンパワーメントの考え方を導入するには、個人の自律性や能力を最大限発揮するような人事評価制度を整備する必要があります。
人事評価制度は、その制度設計によって従業員のモチベーションやパフォーマンスにも影響する重要なものです。
特に、権限を委譲する方法や人事評価の基準については細かい点まで吟味しなければなりません。
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