企業の人事部門や経営者が、人材採用や育成において注目しているのがAQです。
AQとは、逆境指数という意味です。
IQやEQは良く耳にしますが、AQという言葉には馴染みながないのではないでしょうか。
そこで、ここでは企業の注目を集めるAQの意味や注目される理由を解説していきます。
AQ(逆境指数)とは?
AQは、英語「Adversity Quotient」の頭文字をとったもので、日本訳では「逆境指数」と呼ばれています。
個人や組織が逆境に遭遇したときに、その状況への「対応力」を数値化したものです。
AQという概念は、米国ハーバード・ビジネススクール客員教授のポール・G・ストルツ(Paul G. Stoltz)博士によって考案されました。
ストルツ博士は、著書「仕事の逆境指数―ビジネス現場での『逆境』をのりこえるための行動理論」の中で、AQを次のように定義しています。
現代のビジネスマンは、否応なく日々さまざまな「逆境」と対峙しながら生きている。AQ(逆境指数)は、大きな悲劇から小さな怒りまで、あらゆる種類、レベルの「逆境」に対応するために、あなた自身に組み込まれた行動パターンのことである。
「仕事の逆境指数―ビジネス現場での『逆境』をのりこえるための行動理論」
さらに、ストルツ博士は、人間は仕事・プライベートも含め、1日に24回もの逆境に遭遇する、と述べています。
これらの迫りくる逆境に対して、どのように反応して、どう対処していくかの行動を理論化したのがAQの概念です。
IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)との違い
人間の目に見ない知識や能力を数値化したものとして、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)があります。
AQをより正しく理解するために、用語の意味を解説していきます。
IQ(知能指数)とは?
IQは、「Intelligence Quotient」の頭文字からきており、知能指数と呼ばれています。
専門の検査によって、人の知能レベルを数字で表したものです。
平均値を100としていて、IQ90やIQ110などと数値化されます。
EQ(心の知能指数)とは?
EQは、「Emotional Intelligence Quotient」の頭文字からきており、心の知能指数と呼ばれています。
自分の「感情」を認識し、それを活用して自身の行動をコントロールする能力を指しています。
AQを提唱したストルツ博士によると、成功者やカリスマ・リーダーになるための条件としては、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)よりも、AQ(逆境指数)のほうが大切であると主張しています。
RQ(心の弾力指数)とは?
AQと一緒に取り上げられることが多い指標として、「RQ」があります。
RQとは、「Resilience Quotient」の頭文字を表しており、心の弾力指数と呼ばれています。
逆境に陥ったときに、その逆境を跳ね返す能力のことを意味しています。
AQの4つの要素「CORE」
人が逆境に遭遇したときの反応は、4つの要素によって決まるとされています。
それが、「CORE」と呼ばれる4つの要素です。
Control | コントロール |
Ownership | 責任 |
Reach | 影響の範囲 |
Endurance | 持続時間 |
上記の4つの頭文字ととって、「CORE」と呼ばれています。
これら4つの要素について概要を解説していきます。
1.コントロール(Control)
逆境や困難な状況に立たされたときに、どれだけ自分の反応をコントロールできるか、といった要素です。
また、現状に対してどれだけプラスの作用を与えられるか、という側面も含まれています。
2.責任(Ownership)
どのような困難な状況になっても、第三者や環境のせいにせず、自分自身の問題と受け止めることができる責任感です。
3.影響の範囲(Reach)
自分が面している逆境が、仕事や人生にどれほどの影響を与えるか、という要素です。現時点だけではなく、逆境が将来的に与える影響についても考慮する必要がります。
4.持続時間(Endurance)
持続時間とは、現在、直面している逆境がどれぐらいの期間続くのか、という要素です。
人は逆境に立たされたとき、その問題が永遠に続くかのように捉えてしまう傾向があります。
そのため、逆境に対処するためには、持続時間を正確に見積ることが求められるのです。
さらに、ストルツ博士は、これら4つの要素をトレーニングによって強化することで、AQの数値を後天的に伸ばすことができる、と主張しています。
AQの5つの評価レベル
さらに、ストルツ博士は、数値化されたAQは5つのレベルに分けることができると書籍の中で話しています。
レベル1(最も低評価)~レベル5(最も高評価)の5段階で、次のように定義されています。
5つの評価レベル
- レベル1「エスケープ(Escape)」
- レベル2「サバイブ(Survive)」
- レベル3「コープ(Cope)」
- レベル4「マネージ(Manage)」
- レベル5「ハーネス(Harness)」
これら5つのレベルについて、具体的にどのような人が該当するかを解説していきます。
レベル1「エスケープ(Escape)」
逆境に対処する能力としては最も低いレベルで、試練や逆境に直面すると逃げ出して(Escape)しまう人です。
レベル2「サバイブ(Survive)」
逆境から受ける損失やダメージの大小にかかわらず、何とか生き残れる(Survive)人が該当します。
レベル3「コープ(Cope)」
直面した逆境や困難に立ち向かって、正面から対処(Cope)するタイプの人です。
逆境を克服したり、プラスに変えたりできるレベルではありません。
レベル4「マネージ(Manage)」
レベル4では、直面した逆境を管理(Manage)して、何とか解決しようとするタイプの人間です。
レベル5「ハーネス(Harness)」
逆境というピンチをチャンスに切り替えよう(Harness)とするタイプの人です。
困難を真正面から冷静に受け止めながら、ポジティブに考えて問題解決に向けて行動できる人です。
これらAQの5段階による評価区分は、アメリカ人1500人を対象に行われた調査をもとに、ストルツ博士が定義したものです。
さらに、リーダーや経営者にはレベル4以上の素質が求められると主張しています。
ストルツ博士も話しているように、ビジネスの現場では多くの逆境や困難に直面します。
このような逆境を乗り越えられるべき人間が、組織のリーダーや管理職のポジションに就くべきであるのは言うまでもありません。
だからこそ、企業の人事部門や経営者たちが、人材採用や教育においてAQに注目しているのです。
3タイプの対処方法
そして、ストルツ博士は、人間は逆境と対面したときの対処方法として、3つのタイプに分かれると定義しています。
その3つのタイプが以下になります。
1.「脱落組」
ビジネスやプライベートにおいて困難な場面と出会ったとき、正面から向き合うことができない人が該当します。
逆境を避けるために、その状況から逃げ出してしまうことから「脱落組」と位置づけられています。
2.「キャンパー」
その地に安住(キャンプ)する意味から「キャンパー」と名付けられています。困難や逆境が重なっても、我慢して居続けるといった対処です。
3.「登山家」
その名の通り、山を登るように困難を乗り越えようと、前向きな気持ちで逆境に立ち向かう方法です。
最も、理想的な対処方法であり、当然ながら経営者や組織のリーダーは「登山家」であることが求められます。
リーダーや経営者に向かないタイプ
ストルツ博士は、リーダーや経営者に向かないタイプについても書籍のなかで触れています。
組織や部下のAQを低下させてしまう原因として指摘しており、以下のような特徴を挙げています。
- 実行できない約束をする
- 気まぐれや思いつきで行動する
- 物事に対してネガティブ思考が多い
- 失敗という言葉を日常的に使う
- ユーモアを受け入れる余裕がない
- 新しいアイデアやチャレンジを嫌う
人事部門や経営者として組織のリーダーを選出するときに、このAQという理論は非常に参考になるものです。
また、企業内における教育や研修においても活用できる概念といえるでしょう。
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