モチベーションは、人に行動を起こさせる内的な動機を指します。
モチベーションは事業業績や社員の満足度にもつながる重要な要素で、経営者や人事担当者は社員のやる気につながる施策を的確に打つことが大切です。
今回は、モチベーションの意味や種類、有名なモチベーション理論やモチベーションを高めるための施策例を紹介します。
モチベーションとは
モチベーションとは、人に行動を起こさせる内的な動機を指します。
語源は英語の「motivation」であり、和訳すると原動力や動機、刺激という意味です。つまりモチベーションは、行動や決断の直接的なきっかけとなる心理的要素と言えます。
モチベーションは、勉強やスポーツ、ビジネスなどあらゆる場面で使われる用語です。例えば、何かの目的があり、それに向けて行動する意欲が湧くことを「モチベーションが上がる」などと表現します。
人にモチベーションを与えてやる気のある状態にさせることを特に「動機づけ」と呼びますが、ビジネスにおいて経営者や人事担当者、管理者などは従業員のモチベーションの維持・向上が大きな課題の1つです。
モチベーションの種類
米国の臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは、「ハーズバーグ二要因理論」を提唱し、モチベーションには外発的要因と内発的要因の2種類があると主張しました。ここでは、2つの要因について具体例にも触れながら紹介します。
①外発的動機づけ
外発的要因とは、外部環境や制度といった動機づけ要因を指します。具体的に挙げられるのは、人事評価、罰則・懲罰、報酬・各種手当、労働環境、福利厚生などです。
これらは、労働者本人の内部的な心理や動機ではなく、むしろ環境や制度面といった周辺的な刺激で人を動かす要因であることから「外発的動機づけ」と呼ばれます。
外発的動機づけは、労働者本人の意思や個性には入り込まず、いわば「飴とムチ」のわかりやすい仕組みによって人を動かす点が特徴的です。
「報酬が低いよりも高い方が良い」という心理や「罰を受けるより受けない方が良い」という傾向は人間に共通しています。
外発的動機づけは、このような基本的な人間心理に働きかけられるため短期間で効果が得られやすいのです。
②内発的動機づけ
内発的動機づけは、興味関心や好奇心、達成欲求といった動機づけ要因です。
例えば、達成感や周辺人物からの承認、仕事への探究心、責任感などが挙げられます。
これらは金銭的な報酬や懲罰といった外的な問題ではなく、仕事そのものに直接的に関わるものです。こういった仕事に対する内的な衝動が、内発的動機づけと呼ばれます。
内発的動機づけは、外部環境や制度が仕事の目的になるのではなく、仕事そのものが目的化している点が特徴です。
報酬を得たり罰を避けたりするために仕事をするのではなく、「より良い仕事をしたい」「スキルを高めて仕事を追求したい」といった好奇心や責任感などにもとづいた動機が土台になっています。
モチベーション理論とは
モチベーションに関してはさまざまな研究があり、定番の理論もあります。ここでは特に有名な3つのモチベーション理論を紹介しましょう。
①マズロー:欲求5段階説
欲求5段階説とは、米国の心理学者アブラハム・マズローによって提唱された理論で、人間の欲求を5段階に分類した上で、低次の欲求が満たされるにつれて上位の欲求を追求するという考えです。
この理論は、現在のモチベーションの概念について大きな影響を与えました。
この説によると、第1段階では食、排泄、睡眠といった生命活動、第2段階ではリスクや不安を回避し安全・安定を求める欲求があります。
第3段階では愛情や集団への帰属といった社会性を求めるようになり、さらに第4段階では承認や尊厳を欲し、最高次の第5段階では自己実現を目指すということです。
②アルダファー:ERG理論
ERG理論とは、米国の心理学者クレイトン・アルダーファーが提唱した理論で、人間は「Exstence」(存在の欲求)、「Relatedness」(人間関係の欲求)、「Growth」(成長の欲求)の3つの欲求によって動機づけられているとする考え方です。
ERG理論は、マズローの欲求5段階説が基礎になっていますが、マズローは低次の欲求が満たされて初めて高次のものを求めるとしているのに対して、ERG理論では複数の欲求を同時に求めたり、高次欲求の次に低次欲求に移ったりする場合もあるとしています。
③マクレガー:X理論Y理論
X理論Y理論とは、米国の心理学者・経営学者ダグラス・マクレガーが提唱した理論で、人間の動機づけについて異なる2つの考え方を体系づけたものです。
X理論は、人間はもともと消極的な怠け者であって、組織などから命令を受けたり強制されたりしなければ働こうとしないとする立場に立っています。
一方、Y理論は人間には主体性や責任感があり、状況によっては積極的に仕事に取り組み、率先して役割を果たそうとするとする説です。
社員のモチベーションが会社に与える影響
社員のモチベーションは、会社の生産性や業績などさまざまな面で影響を与えるものです。ここでは、モチベーションが高いときと低いときに分けて影響を紹介します。
①モチベーション向上の好影響
モチベーションが高ければ、組織の生産性をアップさせ、業績の向上にもつながります。
社員の集中力の高さや創意工夫の精神、チームワークなどはいくら教育したり周知したりしても向上するとは限りません。
むしろ、社員1人ひとりのやる気を引き出すことが効果的なのです。
また、社員のやりがいや責任感が強くなり、人材開発の効果が向上することも期待できます。
仕事に打ち込むことで離職率も低下し、人材採用や労務管理業務にかかるコストが減る効果もあるでしょう。
②モチベーション低下の悪影響
モチベーションが低い状態では、仕事の成果を引き下げる可能性があります。
例えば、集中力の低下やスキルを習得する意欲の減退などが慢性化すれば、仕事効率が低下してミスやインシデントの発生も増加するでしょう。
結果として仕事のパフォーマンスを下げることになります。
また、職場の雰囲気にも影響するでしょう。仕事への意欲がなければ社内のコミュニケーションが薄れたりお互いへの配慮が減ったりして、ムードが険悪になってしまう可能性があります。
社員のモチベーションを高める人事施策
経営者や人事部担当者としては、社員のモチベーションを高めるための施策を知ってくことが大切です。ここではモチベーションを向上させる施策例を紹介します。
①インセンティブ制度
インセンティブ制度とは、成果や努力に応じて報酬を支払う仕組みです。社員は成果を出せば出すほど報酬が上乗せされるため、シンプルに仕事に取り組もうという要因になります。
インセンティブ制度は、「頑張っても報われない」「現在の報酬に不満がある」といった理由で社員が仕事に熱心でない場合には効果的な施策です。
②ストックオプション制度
ストックオプション制度とは、自社の株式を決まった価格で購入する権利を社員に付与する仕組みです。
会社が上場していたり、あるいは将来的に株式上場を予定していたりする場合、社員は自分の仕事によって大きな報酬が手に入る可能性があるため、仕事への取り組みを促す効果があります。
また、社員に株価について意識させることは、経営感覚や株主感覚といった広い視点を身につけさせる上でも有効です。
③資格・役職手当
資格手当とは、会社が定める資格を取得した社員に対して、一時金を支払ったり基本給に手当を上乗せしたりする制度です。
役職手当は、部長や課長といった役職者に対して報酬を上乗せします。どちらの手当も、金銭的なメリットを提示することで、社員に自主的な自己研鑽を促す効果がある仕組みです。
④成果主義
成果主義とは、社員の仕事の業績を評価し、それに合わせた待遇や処遇を用意する仕組みです。
中には入社年度や経験などを基準に横並びで評価する会社もありますが、成果主義は人事評価において社員個々人をそれぞれ評価する点に特徴があります。
能力の高い人に適切な待遇を用意して、さらなる貢献を期待したい場合に優れた仕組みです。
⑤年功序列の廃止
年功序列とは、入社年次や年齢、経験といった要素によって画一的に決められている待遇体系を見直し、成果や努力といった別の基準によって評価する仕組みです。
年功序列以外の評価・処遇方法の一例としては先述の成果主義が挙げられますが、その他にもチームメンバーからの評価や仕事への態度などといった軸によって評価する方法もあります。
注目の人事施策「モチベーションマネジメント」とは?
モチベーションマネジメントとは、社員のモチベーションを高めるための人事施策を指します。
モチベーションを向上させるにはさまざまな方法がありますが、行き当たりばったりのやり方や、部署ごとに一任する方法とは違い、モチベーションマネジメントは人事担当者などが方針を定め、計画的に施策を実行する取り組みです。
モチベーションを高めるために欠かせない人事評価制度の整備や福利厚生の見直し、労働環境の改善といった施策も行い、社員のやる気アップにつなげます。
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