アクティブリスニングは、企業の管理職やリーダーポジションの人材が身につけるべきスキルとして注目されています。
しかし、アクティブリスニングの効果や種類について正しく把握している人は多くいません。
本記事では、アクティブリスニングの知識を深めたい人事担当の方に向けて、概要やポイントを解説していきます。
アクティブリスニングを企業研修に導入する際に大切にすべきこともわかるので、積極的に取り入れてみましょう。
アクティブリスニングとは
アクティブリスニング(ActiveListening)は、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャース博士が1957年に提唱した「傾聴姿勢」のことです。
カウンセリングに活用できるコミュニケーション技法の一つであり、日本語では「積極的傾聴」と訳されます。近年は、カウンセリングだけでなくビジネスシーンにおいても積極的に取り入れられています。
アクティブリスニングの特徴は、会話をする中で相手の感情や事実を読み取り、主体的に把握することにあります。
相手の話を受動的に聞くだけでは、言葉に込められた本質を見極められません。アクティブリスニングによって、相手が抱える問題点や要望を発見し、自己解決へ導くことが可能です。
企業においては、特に管理職やリーダー職である人が身につけておきたいスキルだと言えます。
アクティブリスニングの効果
ビジネスシーンにアクティブリスニングを取り入れることで、企業経営を良い方向へと導く多様な効果を得られます。
企業におけるアクティブリスニングのメリットを具体的に解説していきます。
1.社内のコミュニケーションが活発になる
アクティブリスニングを身につけることで、話し相手が抱える問題の解決策を提示できるようになります。
具体的なアドバイスをするのではなく、相手自身が問題とその解決方法に気付けるよう促すことが大切です。従業員同士のコミュニケーションも活発となるでしょう。
2.人間関係が円滑になる
アクティブリスニングは社内の人間関係を円滑にする効果もあります。
そのため、新入社員の研修よりも、すでにある程度の人間関係が構築されている管理職の研修に用いられることが多いのです。
特に上司と部下間のコミュニケーション手法として有効的で、本音を伝えづらい立場の人同士が良好な関係を保てるようになるでしょう。それは結果的に、企業全体の生産性向上に繋がると考えられます。
3.ハラスメントを防止できる
アクティブリスニングによって社内の人間関係を円滑化することで、風通しの良い職場環境を生み出せます。
上下関係によるハラスメントを防止できれば、部下は上司に本音を伝えられるようになり、自身の能力も存分に発揮できるでしょう。
アクティブリスニングの種類
アクティブリスニングの手法について、2つの種類があることを把握しておきましょう。
1つ目の「バーバル・コミュニケーション」は、言葉のやりとりによって相手の話を聞く言語的コミュニケーションです。
2つ目の「ノンバーバル・コミュニケーション」は、態度や仕草などから相手の本意を読み取る非言語的コミュニケーションです。2種類の特徴を具体的に解説していきたいと思います。
バーバル・コミュニケーション
言語的コミュニケーションを用いたアクティブリスニング手法、「バーバル・コミュニケーション」をご紹介します。
1.共感する
アクティブリスニングにおいて「共感」とは「傾聴の姿勢」を指します。
会話をする相手の立場や目線に立って、「大変だったね」「悔しいね」といった共感度を示します。「自分の気持ちを理解してくれている」という安心感も与えられます。
2.相槌をうつ
会話において、「そうなんだ」「へえ~」「なるほどね」といった相槌をうつのも効果的です。
ただし、声のトーンが低かったりパターン化したりしてしまうと、「自分の話に興味がないのでは?」といった不安を与えやすいので、相槌のうち方にも工夫が必要です。
「うんうん」と深く頷くだけでも、相手の話に対する興味の深さをアピールできます。
3.パラフレージング
「パラフレーズ」とは、相手の言葉を自分なりに言い換えて繰り返す、いわば「オウム返し」のことです。
オウム返しをすることで、相手に自然と自問自答を促すことができます。さらに、「ちゃんと話を聞いてくれている」「親身になってくれている」といった好印象も与えられるでしょう。
4.オープンエンドクエスチョン
「オープンエンドクエスチョン」とは、相手が話している内容をより広げてあげるための質問のことです。
「はい」「いいえ」で会話が成り立つ「クローズドクエスチョン」の対極に位置します。
相手の話に共感しつつ、適切なタイミングで質問を投げかけることで会話がどんどん広がります。
相手がプレッシャーを感じないように、質問の仕方や内容には配慮します。
Who(だれが)、When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)と尋ねる「5W1H」も活用しましょう。
ノンバーバル・コミュニケーション
非言語的コミュニケーションを用いたアクティブリスニング手法、「ノンバーバル・コミュニケーション」をご紹介します。
1.姿勢
ノンバーバル・コミュニケーションにおいて、相手の話を聞く時の姿勢はとても重要です。
リラックスした状態で話し手に身体を向けて、会話をしましょう。相手との距離感は、近すぎず離れすぎずを意識して、お互いのパーソナルスペースを守ります。
話を聞く姿勢として、腕や足を組むといった威圧的な姿勢にならないよう心がけましょう。相手から見た自分の位置は、正面もしくは斜め前が最適です。
2.視線
会話中はなるべく相手と視線を合わせることで、心の距離が縮まったような感覚を得られます。
会話中にきょろきょろしたり、視線を合わせなかったりすると、相手に不信感を与えがちです。
しかし、中には視線を合わせ続けることが苦手な人もいます。相手の様子に異変がないか、観察するようにしましょう。
3.表情や仕草
ノンバーバル・コミュニケーションの中でも、表情や仕草からは非常に多くの情報を得られます。
人間はその時の感情が無意識に行動に表れます。話し手の表情が曇っていたり、仕草が挙動不審だったりする場合は、「本音を言えずにいるのではないか」といった考察ができます。
表情や仕草から気持ちを汲み取るスキルは決して特別なものではなく、気遣いの延長線で培われるものです。
4.声のトーンやスピード
コミュニケーション中は、声のトーンやスピード、ボリュームも意識するようにしましょう。
声が大きすぎても、小さすぎても、早口であっても、話し手に心地よさは与えられません。話すペースもできる限り相手に合わせ、会話の中のリズムを保ちます。
必要となる3つの姿勢
ここでは、カール・ロジャース博士が提唱する、アクティブリスニングを行う際に意識するべき「3つの聞く姿勢」について解説していきます。
1.自己一致
自己一致とは、聞き手が誠実かつ「ありのまま」の状態であることを指します。
アクティブリスニングは相手との駆け引きではありません。相手の考えや価値観を否定したり、本音を取り繕ったりしないよう努めましょう。
そうすればお互いに信頼関係を築くことができ、話し手から自然と本音を引き出せるようになります。
2.無条件の肯定的配慮
コミュニケーションの中で、相手の良い面と悪い面に気付くことがあります。
どちらに対しても主観的な評価を下さずに、無条件に受け入れる姿勢を貫きましょう。
存在や意見を尊重してもらうことで、話し手もリラックスすることが可能です。また、自分自身を見つめながら会話をしてもらえるという効果もあります。
3.共感の姿勢
話し手に共感して、同じ立ち位置や視点で理解を示すことも大切です。世界観に共通点を感じた相手には、心を開きやすくなります。
企業研修に導入する際のポイント
企業研修にアクティブリスニングを導入する際に、意識するべきポイントを把握しておきましょう。特に、ビジネスにおいては段階的な実践が必要となります。
1.種類の基本要素を理解させる
アクティブリスニングを行う人物には、バーバル・コミュニケーションとノンバーバル・コミュニケーション、この2種類の基本要素を正しく理解させるようにしましょう。実践後により高い効果を得られます。
2.実践(ロールプレイング)
相互がストレスを感じないよう、質問や応酬の仕方を工夫しながらアクティブリスニングを実践します。
コミュニケーションではなく、ハラスメントと受け取られては本末転倒です。アクティブリスニングを通じて気付いたことを記録するのも良いでしょう。
3.役職・階層別に実施する
業務で携わるミッションが異なるため、役職・階層別にアクティブリスニングを実施するようにしましょう。
特に、大勢の従業員を理解する必要のある管理職で実践するのがおすすめです。
アクティブリスニングに関連するビジネス用語
アクティブリスニングを導入するにあたり、人事担当や管理職の方が覚えておきたい関連ビジネス用語をご紹介します。
1.パッシブ・リスニング
アクティブリスニングの効果を増幅させるために、パッシブ・リスニングも併せて実践することをおすすめします。
会話中にアクティブリスニングを使い続けると、相手に不快感や居心地の悪さを抱かせてしまうことがあります。
アクティブ(積極的)の合間には、「あなたの話を真摯に聞いていますよ」とアピールするパッシブ(受動的)な姿勢が必要となります。
むしろ、実際のコミュニケーションにおいては、パッシブ・リスニングの割合が多くなると考えましょう。パッシブ・リスニングの要素は「沈黙」「相槌」「相手の本音を引き出す言葉」の3つです。
2.アサーティブ
アサーティブとは、自分の気持ちや考えを正直に伝える態度のことであり、アサーティブ・トレーニングによってスキルを磨くことができます。
第一に、組織内の上下関係などで相手をコントロールしようとせず、対等な立場で向き合うことが大切です。
遠まわしな言い方を避けて、なるべく率直な言葉を伝えることを意識し、誠実に相手と向き合います。
そして、コミュニケーションの結果は自己責任とし、人のせいにしてはいけません。アサーティブを取り入れたコミュニケーションによって、互いを尊重し合えます。
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