外出自粛や移動制限が続く中、導入する企業が急増しているリモートワーク。
社員の通勤なしに業務を継続できるのは利点ですが、人事担当者が頭を悩ませるのが人事評価です。
通常のオフィスワークとの共通点・相違点を理解し、適正な社員の評価方法を定める必要があります。
この記事では、リモートワークにおける人事評価の難しさや注意点、評価基準を決定する際のポイントなどについて解説します。
新型コロナウイルスの感染拡大で急加速。政府が推進するリモートワーク
リモートワークは、在宅勤務やICTツールを用いたモバイル勤務、サテライトオフィスでの勤務など、会社以外の場所で仕事をする働き方のことを指します。
明確な定義はありませんが、「テレワーク」とほぼ同義の言葉ととらえて差し支えありません。
自宅でプライベートの時間も充実させながらキャリアとの両立をはかれるリモートワークは、朝の通勤混雑の解消や働き方改革などを目的として、2000年代から総務省を中心に各省で推進されてきました。
そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、急きょ導入を決定する企業が増えています。
しかし、急な決定からリモートワークの業務体制が間に合っておらず、対応に追われる担当者から困惑の声があがっています。
リモートワークの特徴・オフィスワークとの違い
リモートワークとオフィスワークには、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。詳しく解説していきます。
オフィスの維持コスト
リモートワークでは、オフィスワークで必須となる通勤手当、設備代や光熱費などの維持費、印刷代などの雑費といった諸経費を削減することができます。
中には、出社する社員数を制限してオフィススペースを縮小し、賃料を削減している企業もあります。
一方、オフィスでの経費を削減できる代わりに、社員が自宅で業務を行うために発生する費用については、新たな取り決めが求められます。
インターネット費用や光熱費などを企業が負担する場合には、その旨を就業規則に記載している必要があります。
プライベートとの両立
リモートワークが選択できると、これまで育児や介護で休職・退職していた社員も仕事を継続することが可能になります。
オフィスワークでも時短勤務を利用してプライベートとの両立をはかることはできますが、社員の負担が大きく、途中で退職してしまう社員も少なくありません。
労働人口の減少から売り手市場が続く状況において、労働力の流出を防止できることは、企業にとって大きなメリットになります。
事業継続性
リモートワークの体制が整っていると、社会が想定外の非常事態に陥った際にも業務を継続または早期に復活させられるため、経営のリスク分散手段としても注目を集めています。
2011年の東日本大震災や今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延など、社員の通勤が困難な状況に陥ると、オフィスワークを継続させることができません。
リモートワークが導入されている企業であれば、非常時でも事業を継続させることが可能になります。
コミュニケーションの方法
リモートワークでは、電話対応や周囲の人から話しかけられるといったことがなくなるため、自分の業務に集中しやすいといった声もあがっています。
一方、業務の確認がなかなかとれなかったり、困ったときに誰かに相談がしづらくなるなど、オフィスワークでは当たり前に行っていたやりとりができなくなることで、業務を進めづらくなるといった側面もあります。
リモートワークにおける人事評価の難しさ・注意点
直接社員の働きぶりを確認できないリモートワークにおいて、特に難しいとされているのが人事評価です。
人事担当者からよく聞かれる評価の難しさや、評価をする際の注意点を解説します。
勤怠管理
そもそも、業務時間をどう規定するのかという点から新しい取り決めが必要になります。
社員が出社してタイムカードを押すといった方法で時間を把握することができなくなるため、時間の算出が難しい側面があります。
そのため、リモートワークと同時にフレックス勤務や「事業場外みなし労働時間制」を導入する企業もありますが、その場合は長時間労働に陥らないよう注意が必要です。
働きぶりを確認できない
リモートワークにおいては、業務の遂行をある程度社員の自主性に任せざるを得ません。
PCのログイン・ログアウトの時間等で勤怠を確認することになりますが、オフィスワークのようにリアルタイムで業務態度を確認することはできなくなります。
社員が本当に業務にあたっているのか、サボって私用に時間を使っているのではないかと、不安を感じている管理者も多く見られます。
過程を把握しづらい
働きぶりの確認が難しくなることから、業務の過程の評価が難しくなってしまいます。
毎日細かく目標を設定して、その達成度合いを確認するといった評価方法が増加していきますが、「チームと積極的に協働していた」「後輩の質問に丁寧に答えていた」など、達成までの取り組みや態度など、定量化が難しい指標を評価に組み込むことが難しくなってしまいます。
偏った成果主義に陥りがち
過程を把握しづらくなると、評価がどうしても成果主義になりがちです。
昨今は従来の年功序列型の人事評価から成果主義に移行している会社も少なくありませんが、評価が成果主義に偏りすぎることの問題も見え始めています。
成果主義のみを単に導入するだけでは、チームへの配慮や後輩の指導など、成果に直結しない頑張りが評価されなくなってしまい、社員が不公平感を抱えてしまう事態も発生してしまいます。
対面で働きぶりを確認できない状況で、成果と過程の評価バランスをどのように保っていくか、新しい評価基準が求められます。
リモートワークで社員を適切に評価するポイント
それでは、実際にリモートワークでも適切な評価を行うためには、どういった点に注意して制度を構築すればいいのでしょうか。評価のポイントを解説します。
コミュニケーションの創出
ICTツールを積極的に導入し、遠隔でもスムーズにコミュニケーションをはかれる環境を整えるべきです。
Slackなどのチャットツールや、Zoomなどのビデオ会議ツールを利用すると、タイムラグもなく、気軽に声をかけやすい体制を整えることができます。
仕事の進捗状況や業務態度を確認して評価に役立てるだけでなく、モチベーションやメンタル面を気にかけることも意識するようにしましょう。
明確な目標の設定
自宅でも社員がモチベーションを保ち、成果をあげるためには、明確な目標設定を行うことが効果的です。
達成可能かつある程度の負荷がある、社員の力量に見合った目標を立てることがポイントです。
ビデオ電話を介したチームミーティングを行ない、それぞれの目標を共有すると、より業務に対する意欲を高めることができます。
また、目標は管理者が一方的に与えるのではなく、社員が自律性をもって自分で設定することが望ましいといえます。組織目標を共有し、そこから個人目標に紐づけられるよう促してみるといいでしょう。
定期的な面談の実施
評価が成果に偏らないよう、ビデオ会議で定期面談を行い、業務に対する取り組みといった目に見えづらい部分を共有する場を設けるのも一手です。
課題に対してどのような取り組みを行ったのか、なぜそう考えたのか一緒に確認することで、管理者が業務状況を把握できるだけでなく、社員が業務を振り返り、改善点を考える契機にもなります。
職種ごとに異なる評価基準
営業やSEなど、具体的な成果物を設定しやすい職種と違い、事務職やシステム保守、後輩育成といった業務は、成果を定量化しづらく、評価基準作りが難しいとされています。
利益ではなく、経営目標から各社員のミッション、行動目標を設定すると、評価基準も明確化しやすくなります。
評価基準は社員にも明示することで、評価の属人化を防ぐことも大事なポイントです。
評価を社員と共有する
評価を下すときは、その評価になった理由も合わせて社員に共有すると、より納得感を持たせることができます。
直接顔を合わせることが少ないリモートワークという環境において、管理者が一方的に評価を付けたのでは、評価の理由を知る機会がなく、社員が不満を抱えてしまいます。
どうしてこの評価になったのか、課題はどこにあるのか、今後どんな点に期待しているのか、結論だけではなく詳細を共有することで、満足度を高めるとともに、業務に対する目的意識も喚起することができます。
明確な評価基準が設定できるクラウドツールでリモートワークを加速
お互いの顔が見えないリモートワークにおいては、業務内容ごとに社員が納得できる明確な評価基準を設定し、スムーズに共有できる体制作りが必須といえます。
コミュニケーションがどうしても不足してしまうリモートワークだからこそ、企業は意識して評価を共有し、モチベーション管理を行う姿勢が求められます。
リモートワークにおいては、クラウド上で評価を共有できる人事評価システムの活用がおすすめです。
今後もリモートワークの要請がますます強くなることが予想されますので、体制整備を行っている企業の担当者は、人事評価ツールの導入も合わせて検討してみてください。
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