企業の事業目標を達成するためには、目標の立て方がとても重要です。「KPI・KGI」は、目標達成までのプロセスをよりわかりやすくしてくれるものです。本記事では、KPI・KGIの具体例や設定方法、設定のポイントについて詳しく解説します。
KPI・KGIを正しく理解し、効果的に活用することで、事業目標達成への道筋がより明確になります。その結果、事業の成功確率が高まり、売上アップや収益改善につながるでしょう。
経営者や管理職の方はもちろん、事業目標達成に貢献したいすべてのビジネスパーソンにとって、有益な情報となるはずです。
ぜひ、本記事を通じてKPI・KGIへの理解を深め、業務に役立ててください。
KPI・KGIとは?
企業の事業目標を着実に達成するためには、具体的な計測指標を設定し、進捗を管理していくことが大事です。
KPIとKGIは多くの業種・職種で導入されている計測指標です。目標を明確にし、さらに達成するために具体的に何をすればいいのかのイメージ化に役立ちます。
KGIは、「Key Goal Indicator」の略で、最終目標を定量的に示した指標です。日本語では「重要目標達成指標」と呼ばれます。
KPIは、「Key Performance Indicators」の略で、KGIに到達するまでのプロセスを定量的に評価するための指標です。日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれ、中間目標にも位置づけられます。
ひとつのKGIに対し、複数のKPIを設定して目標達成を目指すのが一般的です。
混同されやすい「OKR」との違いですが、OKRは「Objective and Key Result」の略で、「目標と主要な結果」と訳されます。
KGIやKPIが事業目標を着実に達成するための指標であるのに対し、OKRでは組織が一丸となって高い目標に向かい、結果として組織の生産性を上げることに主眼が置かれています。
そのため、設定される目標の難易度も異なり、KGIでは現実的な実効性が重視されるのに対し、OKRでは大胆で野心的な目標が尊重される傾向が強いです。
達成水準についても、KPIでは100%の達成を目指しますが、OKRでは高い目標を組織で共有することに意義があるため、期待される目標達成水準は60~70%とやや低めです。
KPI・KGIの違い
KPIとKGIは、どちらも目標達成を促進するための重要な指標ですが、その役割や設定方法には違いがあります。以下の表に「KPIとKGIの違い」をまとめました。
項目 | KPI(重要業績評価指標) | KGI(重要目標達成指標) |
目標の種類 | 中間目標 | 最終目標 |
目的 | KGI達成のためのプロセスを評価・管理 | プロジェクト・事業全体の最終的な成果を評価 |
具体的な例 | Webサイトへのアクセス数増加、顧客満足度向上、従業員定着率向上 | 売上目標達成、新規顧客獲得数増加、市場シェア拡大 |
測定頻度 | 比較的高頻度(日次、週次、月次など) | 比較的低頻度(四半期、年次など) |
設定方法 | KGIを達成するために必要な具体的な行動目標を設定 | プロジェクト・事業全体の最終的な目標を設定 |
関係性 | KPIを達成することでKGI達成に近づく | KGIを達成するために複数のKPIを設定 |
KPIは、KGIを達成するためのプロセスを評価・管理するための指標です。
一方、KGIは最終的に達成したい目標そのものを指し、事業やプロジェクト全体の成果を表します。
つまり、KPIを積み重ねることでKGIの達成を目指すという関係性にあるのです。
KPI・KGIを設定する4つの意義・メリット
KPI・KGIを設定する4つの意義やメリットは、以下のとおりです。
- 目標や達成の方向が明確になる
- モチベーション向上が見込める
- 進捗管理しやすい
- 客観的で公平な人事評価ができる
KPI・KGIを設定する意義やメリットを正しく理解することで、適切な指標を設定しやすくなるでしょう。
1. 目標や達成の方向が明確になる
KGIを設定する一番のメリットは、事業目標の「可視化」です。KGIを設定することで、事業の最終目標を具体的な形で従業員に共有できます。
経営層が成し遂げたい目標を可視化できれば、その下の各部門やチームの方向性も定まります。KGIという到着地を具体的にイメージできれば、到達するための工夫や努力の方法、すなわちKPIも明確になるはずです。
組織やチーム、従業員間でKGIやKPIというわかりやすい指標を共有することで、目標達成を効率的に進められます。
2. モチベーション向上が見込める
KGIは企業や部門などの最終的な目標として設定される以外に、職種によってはその下のチームや個人のレベルで設定される場合もあります。
KGIやKPIを個人レベルで主体的に定義させることは、責任感の醸成やモチベーションの向上に効果的です。
上司から与えられた目標では、他人ごとになりやすかったり、部下からみると達成したいと思えなかったりするおそれも高く、頓挫するケースも少なくありません。
自分自身で納得して設定するものだからこそ意義があり、何としても達成したいという意欲も強まります。
3. 進捗管理しやすい
数値化できる指標があれば、目標の進捗管理もしやすくなります。
達成すべき期限や目標値が具体化され、進捗状況が一目瞭然になるからです。「あと少しで目標達成できる」と目に見えてわかれば、目標達成までのやる気も維持しやすいでしょう。
事業目標の進捗が芳しくない場合にも中間地点でKPIの効果を測定し、早めに軌道修正できるので、最終的な損失を軽減できる可能性も高まります。
つまり、KGIを設定・KPIで進捗状況を把握・分析する仕組みの存在は、経営判断の精度向上に寄与します。
4. 客観的で公平な人事評価ができる
中間地点や最終地点の達成度合いを明確に把握できれば、上司はそれをもとに客観的でかつ公平な人事評価が行えます。目標達成の状況が曖昧では、正当な評価を下せません。
加えて、KPIの存在によって、成果だけでなくそこに到達するまでのプロセスも含めて総合的に評価できます。
施策の効果測定も容易に行えるので、未達となった場合でも上司から部下に向けた、来期に向けた具体的な改善ポイントをフィードバック可能です。
自らの貢献が適切に評価されていると実感できれば、従業員も安心して業務に邁進できるでしょう。
KPI・KGIを設定する3つのデメリット
KPI・KGIの設定には、デメリットも存在します。具体的には、以下の3つです。
- 従業員に過度なプレッシャーを与えるおそれがある
- 各部門やチームが異なる方向へ進むおそれがある
- 長期的なビジョンや戦略が軽視されやすくなってしまう
上記のデメリットも知ったうえで、KPI・KGI導入の検討を行うとよいでしょう。
1. 従業員に過度なプレッシャーを与えるおそれがある
KPIを設定すると、従業員は目標達成に向けて意識的に行動するようになります。しかし、目標達成へのプレッシャーが過度になると、従業員のストレス増加やモチベーション低下につながりかねません。
特に、達成困難なKPIを設定する際は、従業員の能力や状況を考慮し、プロセスや努力も評価対象として導入してください。
柔軟な目標調整と定期的なフィードバックの実施に努めましょう。
2. 各部門やチームが異なる方向へ進むおそれがある
KPIやKGIを各部門やチームごとに独自に設定すると、全体の戦略との整合性が取れなくなるケースも少なくありません。
たとえば、営業部門が売上目標達成をKPIに設定し、顧客獲得に注力する一方で、顧客サポート部門が顧客満足度向上をKPIに設定すると、顧客獲得と顧客満足度のバランスが崩れてしまいます。
結果として組織全体の目標達成を妨げるおそれがあります。
そのため、KPIを設定する際は組織全体の目標との整合性を考慮することや、各部門やチーム間でKPIを共有し、連携を強化することが重要です。
3. 長期的なビジョンや戦略が軽視されやすくなってしまう
KPIやKGIは短期的な成果に焦点を当てることが多く、長期的なビジョンや戦略が軽視されるケースがあります。
短期的な目標達成にばかり注力すると、企業の持続的な成長を阻害するおそれがあることも考慮しなければなりません。
たとえば、短期的な売上目標達成をKPIに設定した場合、従業員は目先の売上を出すために、顧客との長期的な関係構築を無視するおそれがあります。
KPIを設定する際には、長期的なビジョンや戦略とのバランスを考慮して、短期的な目標ばかりに目を向けるのは極力避けましょう。
KPI・KGIの設定方法
組織の目標達成に向けた重要なプロセスであるKPI・KGIの設定方法を紹介します。
- KPIの設定方法
- KGIの設定方法
KPIの設定方法
KPIを設定する手順は以下の通りです。
- KGI(Key Goal Indicator)の明確化
事業全体の成果を示す最終目標を設定
- 現状とのギャップの把握
現状の数値と目標値のギャップを確認
- ギャップを埋めるために必要なプロセスの洗い出し
たとえば、売上アップのための選択肢には、以下のような具体策を実施します。
プロセス | 具体策 |
アプローチ量を増やす | ・営業人員の増員 ・広告の強化 |
生産された製品の良品率の割合の向上 | ・顧客サービスの改善 ・商品内容の変更 |
単価を上げる | ・価格設定の見直し ・高付加価値商品の導入 |
- 重要成功要因(CSF: Critical Success Factor)の絞り込み
自分でコントロールできない要素を除外し、最も重要なプロセスを選定
- CSFの数値目標(KPI: Key Performance Indicator)の設定
過去のデータや関連指標を参考に、現実的な目標を設定
KPIは運用しながら定期的に見直し、PDCAサイクルを回して継続的に改善することが重要です。
KGIの設定方法
KGIの設定は以下の2つのステップで行います。
- 具体的な目標(ゴール)の設定
【目標設定のポイント】
- わかりやすく、誰にでも理解できる言葉で表現
- 会社全体のビジョンや戦略との整合性を確認
- 関係者全員で目標を共有し、認識を合わせる
- 具体的な目標の数値化とKGIとしての設定
- 目標達成度合いを客観的に測定し、進捗状況を管理するために数値化
- SMARTの原則に沿ったKGIの設定
原則 | 内容 |
Specific | 具体的 |
Measurable | 測定可能 |
Achievable | 達成可能 |
Relevant | 関連性 |
Time-bound | 期限付き |
適切なKGIの設定は、プロジェクトや事業の成功確率を高めます。自社の状況に合わせてこれらのステップとポイントを参考にKGI設定を行うとよいでしょう。
KPI・KGIの具体例
業種や職種ごとに適切なKPI・KGIが存在します。ここからは多くの業種に共通する2つの職種について、KPI・KGIの具体例を紹介します。
- 営業職
- マーケティング職
営業職
もともと成果が数字で表れやすい営業職では、比較的スムーズにKGI・KPIを設定できます。営業職のKGIに設定される機会が多いのは、次の3つです。
- 売上高
- 成約数
- 成約率
これらのKGIにマッチするKPIには、以下のようなものがあります。設定のポイントについては後述しますが、それぞれ期限を設定して具体的な改善率を数値で示しましょう。
- ○○ヵ月以内に見込み客への営業訪問数を○○%増やす
- 今月中に新規顧客への営業電話数を○○%増やす
- ○○ヵ月以内に見込み客の成約率を上げる
- ○○ヵ月以内に平均顧客単価を○○円から○○円に改善する
- 受注までの期間を2ヵ月から1ヵ月に短縮する
マーケティング職
営業職ほどではありませんが、マーケティング職も比較的数字で示しやすい業務が多く、特にKGI・KPIを設定しやすいのはWebマーケティング領域です。Webマーケティング領域でのKGIの候補には以下のようなものがあります。
- ECサイトの売上高
- ECサイトの商品やサービスの認知拡大
上記のKGIを達成するためには、ECサイトについて以下のようなKPIを設定するといいでしょう。
- ○○ヵ月以内に新規訪問者数を○○%増やす
- ○○ヵ月以内にPV数を○○%増やす
- ○○ヵ月以内にCVR率を○○%上げる
- ○○ヵ月以内にソーシャルメディアのエンゲージメント数を○○%増やす
効果的なKPI・KGIの活用方法
KPIとKGIを効果的に活用するには、以下の方法が有効です。
- プロセスを細分化する
- 定期的なモニタリングとフィードバックをする
- リソースを最適に配分する
プロセスを細分化する
KGIを達成するためのプロセスを細かく分解し、プロセスごとにKPIを設定します。細分化することで、どの段階で問題が発生しているのかを明確にし、適切な対策を講じられるでしょう。
たとえば、営業プロセスは以下のように細分化し、それぞれにKPIを設定します。
- リード獲得数
- アポイント獲得率
- 商談成立率
- 受注金額
各プロセスのKPIを監視することで、営業活動全体の改善につなげられます。
定期的なモニタリングとフィードバックをする
KPIの進捗状況を定期的にモニタリングし、目標との差異を分析します。
分析することで、目標に対する達成度を理解し、必要に応じてプロセスを見直せます。
フィードバックを通じて、チームメンバーは自分たちの進捗を理解し、改善点を見つけられるので、業務効率化が図れるでしょう。
リソースを最適に配分する
KPIの達成には、適切なリソース配分が欠かせません。特にCSF(重要成功要因)に対しては、優先的にリソースを割り当てる必要があります。
リソース配分の際には、以下の点を考慮するとよいでしょう。
- CSFの達成に必要な人材・予算・時間を確保する
- 非効率的な業務にリソースを割り当てていないか見直す
- 投資対効果を意識し、最大の成果が得られる領域に集中する
限られたリソースを最適に配分し、KPIの達成と効率的な事業運営を両立させましょう。
KPI・KGIを設定するときの4つの注意点
KPI・KGIは目標達成までの道のりを示すものであり、うまく機能させるためのコツがあります。ここでは、KPI・KGIを設定するときに意識したい4つのポイントについて解説します。
- 定量的な指標を設定する
- KGIとKPIの関係性を理解する
- 現実的な目標を設定する
- 期限を設ける
正しく設定し、効果的に活用しましょう。
1. 定量的な指標を設定する
まず、定量的に評価できる指標にしましょう。数値としてモニタリングできるものでなければ進捗度や達成度について、被評価者と評価者の間で認識のズレが起きやすくなるだけでなく、施策の効果検証もしづらくなります。
職種によっては目標の定量化が難しい場合もあるでしょうが、できるだけ数値に置き換えるのがコツです。
たとえば、「ECサイトのユーザー満足度を上げる」という定性的な指標については、レビューの平均評価を取り入れたり、ユーザー満足度調査を実施したりして数値化しましょう。
ただし、設定数値があまりに細かすぎると、逆にその指標に振り回されてしまい、本来の目的を見失いかねません。一例として、「1日あたりの来客数や営業機会数を伸ばす」などのスパンの短すぎる数値はKPIには不適切です
2. KGIとKPIの関係性を理解する
KGIとKPIを密接にリンクさせることも大切であり、設定の順番が肝心です。まずKGIを設定し、達成のために必要な要素を掘り下げてKPIに落とし込んでいきましょう。
この作業が徹底されていないと、KGIとKPIの方向性がそろわず、計画通りに推進していたのにもかかわらずKGIが未達に終わるという状況を招いてしまいます。
KGIにKPIをリンクさせることで、日々の業務の事業目標への貢献度も明確になります。事業目標に貢献できている実感が得られるKPIであれば、ぜひ達成したいという貢献意欲もかき立てられるでしょう。
3. 現実的な目標を設定する
KGI・KPIは、頑張れば実現できる数値でなくてはなりません。前述のようにKGI・KPIは事業目標を着実に達成するための指標であり、期待される達成水準は100%です。
すなわち、物理的に達成が難しい理想的な数値目標では機能しません。途中でKPIの達成が困難と感じた場合には無理に継続せずに原因を分析し、軌道修正しましょう。
景気の悪化や競合の登場など、外部環境の変化によって当初のKPI達成が難しくなることも珍しくありません。KGIは一度決めたら基本的には変更しないものですが、KPIは状況に応じて柔軟に再設定することも視野に入れておきましょう。
4. 期限を設ける
目標を決めたら、いつまでに達成するのかの期限も区切りましょう。期限がないと、慌ただしい日常の中でつい優先度が下がったり、モチベーションが維持できなかったりして、結局頓挫しがちです。
いつまでに達成するのかという期限を設けることで、目標達成までのマイルストーン管理ができ、計画的に実行できます。
締め切りが迫ることで、もうひと踏ん張りして達成しようという強い力が発揮される場合もあるでしょう。期限を決めることで何をいつまでに終わらせなければならないのかが明確になり、チーム内の協力が得やすいのも事実です。
KPI・KGIに関連の深い用語
本章では、KPI・KGIに関連の深い用語を解説します。
- KSF(Key Success Factor)
- CSF(Critical Success Factor)
- KDI(Key Do Indicator)
- OKR(Objectives and Key Results)
KPIやKGIの理解では、これらの関連用語を知っておくことが重要です。
KSF(Key Success Factor)
KSFは「重要成功要因」を指し、特定の目標を達成するために必要な要素や活動を示します。
KGIやKPIを達成するために、どのような施策や行動が重要であるかを特定するための指標です。
たとえば、売上を増加させるためのKSFには「顧客満足度の向上」や「新規顧客の獲得」が含まれます。
KSFを理解することで、企業は重要なことに焦点を当て、リソースを効果的に配分し成果を最大化します。
CSF(Critical Success Factor)
CSFは、組織が目標や目的を効果的に達成するために集中すべき要素です。
戦略的計画と運営の成功の基盤となり、組織がリソースと努力を優先順位付けする際の指針となります。
たとえば、製品の市場投入において「タイムリーなリリース」や「競争力のある価格設定」がCSFとなることがあります。これらはプロジェクトの成功に直結する重要な要素です。
KDI(Key Do Indicator)
KDIは「重要行動指標」を指し、目標を達成するために必要な具体的行動やプロセスを示す指標です。
KDIは、KPIと似ていますが、より具体的な行動に焦点を当てています。
たとえば、KGIが「売上を前年比10%増加させる」であれば、KDIには「毎週の営業訪問数」や「新規顧客へのアプローチ数」が含まれることがあります。
KDIは、KPIやKGIと同様に、組織の成功を測定するための重要な指標として機能するでしょう。
OKR(Objectives and Key Results)
OKRは、組織が目標を定義して、その成果を獲得するための目標設定フレームワークです。
個人やチームの目標設定に寄与し、組織全体の戦略的目標と整合させ、協力と説明責任を促進できます。
OKRの設定として「新規顧客を50社獲得する」目標に対して「毎月の営業活動を100件行う」といった具体的な成果を設定することが考えられます。
KPI・KGIを理解し、効果的に活用しよう
KGI・KPIによる目標管理では、目標や達成までの具体的なプロセスを従業員自身が設定します。
指示されたものではないので、評価者・被評価者ともに、評価への納得感も生まれやすいでしょう。目標の定量化によって方向性も明確になるはずです。
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