
直接部門と比べて、目標設定が難しいとされる間接部門。しかし、社員のモチベーションを保つためには、間接部門においても目標設定が重要です。
本記事では、間接部門にフォーカスを当て、間接部門の役割や代表的な間接部門、目標設定の例について解説します。
間接部門とは

間接部門とは、会社の利益に間接的に貢献する部門のことです。利益に直接的に貢献する営業部や製造部などの「直接部門」の業務を後方から支援するほか、組織の運営に関わる業務を担います。
業務内容の特徴から、「バックオフィス」「管理部門」などと呼ばれる場合もありますが、直接部門よりも位置づけが低いということは本来ありません。役割が異なるだけでどちらの部門も企業の持続的な成長には不可欠です。
組織という車を支える両輪であるべきといえるでしょう。
直接部門とは
直接部門とは、企業の売上に直接貢献する部門であり、営業部門や製造部門などが該当します。
これらの部門は、新規顧客獲得数や販売数といった定量的な目標を掲げることが一般的です。具体的には「今月の売上は◯◯円」「生産目標は◯◯個」のように数字ではっきりと設定されており、わかりやすいのが特徴です。
直接部門の業績は企業の収益にも直結し、成果は明確に評価されるため、社員のモチベーション向上にもつながります。
間接部門の役割
では間接部門は具体的にどのような形で会社の利益に貢献しているのでしょうか。ここでは、代表的な3つの役割について解説します。
組織の運営
1つ目の役割は、組織の運営です。平たく言えば、社員が日々安心して快適に働けるような仕組み・制度を整え、実行しています。
詳しくは後述しますが、企業経営に必要な資金調達や予算編成、契約書の作成、人事評価制度の構築、社内規定の作成などがその一例です。こうした作業がストップしてしまうと、直接部門の業務はもちろん、企業経営そのものが成り立ちません。
コスト削減
2つ目の役割はコスト削減です。企業の収益を上げていくための方法は、「売り上げを伸ばす」「無駄なコストを削減する」の2択です。
売上を伸ばすのが直接部門の役割であるのに対し、間接部門では業務効率化を推進したり、経費を削減したりして、最終的に企業の手元に残る利益を増やす努力をしています。
間接部門は自らが売り上げを生み出すわけではありませんが、コスト改善によって収益の最大化に貢献しています。
顧客満足度の向上
3つ目の役割は、顧客満足度の向上です。すでに多くの市場が飽和状態にある中、競合他社との差別化を図るポイントとして、顧客満足度の向上に注目が集まっています。
顧客に選ばれ続けるためには、商品の品質改善だけでは不十分です。質の高い接客を心がける、VOCを新商品の開発に生かすなど、顧客視点に立った取り組みを通じて顧客満足度を高めていく必要があります。
間接部門があれば、こうした分野にも十分なリソースを割けるでしょう。
代表的な間接部門
組織内にどれだけの間接部門を設置しているかは、企業規模や業種によっても異なります。ここでは、業種問わず代表的な5つの間接部門について、具体的な役割を解説します。
人事部
人事部は、経営資源のひとつである「人材」に関するあらゆる業務を担う部門です。
そのため、採用活動や異動や人材配置の最適化、報酬管理、労務管理、福利厚生、キャリア開発、人事制度の構築、組織開発など、業務範囲は多岐に渡ります。労務管理の業務では、法律の知識も必要です。
少子高齢化によって労働力不足が深刻化している日本では、人材の獲得競争が激化しており、人事部の重要性も年々増しています。
経理部
経理部は「企業のお金の出入り」をまとめる部門です。財務諸表・貸借対照表の書類作成のほか、日常的なお金の動きを管理記録して経営者に共有します。
決算報告の基になる数字を管理している部門であり、業務遂行には高い透明性が求められます。
混同されやすい財務部門との違いですが、財務部は経理部と連携しながら、資金調達や予算編成の策定、将来に向けた財務戦略の立案などを担う部門です。
法務部
法務部は、企業に関する契約や取引など、法律に関する業務を担う部門です。契約書の作成やリーガルチェックなどを日々こなすほか、近年では、企業のコンプライアンス対応も法務部の重要な業務のひとつとなっています。
ビジネス上、発生するさまざまな利害関係について法律面から調整を図り、社内外のトラブルを未然に防ぐことが法務部の使命です。
特許や商標、意匠などを管理するのは知的財産部ですが、企業の規模によっては法務部の中に知的財産を取り扱うチームを設置している場合もあります。
総務部
総務部は、組織経営の全体に関わる業務を一手に引き受けている部門です。総務部の仕事は大きく、「オフィス管理」「社内規定の策定」「社内イベントの企画・運営」の3つに分類されます。
オフィス管理とは、建物や応接室の管理、備品の手配、空調照明の調整、保安・防災などです。社内規定とは会社が独自で定めている規則の全般を指し、社内ルールや業務マニュアルなども含みます。
株主総会は総務が取り仕切る社内イベントの代表例です。冠婚葬祭への対応も総務事務の仕事になります。
経営企画部
経営企画部は、会社経営のベースとなる中・長期的な経営戦略を立案・実行する部門です。
組織のブレインであり、経営層のビジョンを理解するのはもちろん、市場や競合他社に関するデータ、経営学など、幅広い知識やビジネスセンスが問われます。
実際に、社内のエース的人材が登用される傾向が強いでしょう。経営企画部で立案された経営戦略は事業計画として各部門に下ろされ、経営企画部は全社的な旗振り役も担います。
間接部門の目標設定が難しい理由
間接部門の業績は数字では図りにくいため、直接部門と比較すると目標設定が難しい部分があります。
その理由は以下の3つです。
- 目標を数値化しにくい
- 業務内容が変わりやすく可視化しにくい
- 従業員のモチベーション維持が難しい
それぞれ解説していきます。
目標を数値化しにくい
間接部門の業務は、売上や生産数のように明確な数値で評価することが難しいです。
たとえば、お客様の満足度や、社内環境の改善などは、具体的な数値目標に落とし込みにくい性質があります。そのため、目標達成度を客観的に判断することが難しく、評価が曖昧になりがちです。
昇給や昇格の評価基準も曖昧であり、
経理部門など、完璧を求められるのが当たり前な部署は、通常業務をこなしても良い評価を得られず、ミスをすれば評価が下がります。
業務内容が変わりやすく可視化しにくい
間接部門の業務は、状況や外部環境の変化に応じて柔軟に対応する必要があるため、業務内容が変わりやすいです。
また、業務プロセスが複雑で可視化しにくいため、目標設定や進捗管理が難しいという側面もあります。
たとえば、IT部門のシステム運用や、法務部門の契約書作成などは、その時々の状況によって業務内容が大きく変動し、進捗状況を把握しづらいことがあります。
従業員のモチベーション維持が難しい
間接評価は目標が数値化しにくく、業務内容が変動しやすい間接部門では、従業員のモチベーション維持が難しいのが課題です。
たとえば、直接評価の営業部門の場合、目標売上を達成することで高い評価を受けられます。一方で、間接評価の場合は数字で目標設定がしづらいため、達成感が得られにくく、周りからの評価も低くなりがちです。
直接部門と間接部門で、評価基準や目標設定が異なると、従業員は不公平であると不満を持ち始めます。モチベーションを維持するためにも、あらかじめ評価基準がわかるような仕組みづくりが重要です。
間接部門で行うべき目標設定の方法
間接部門の目標設定は難しい側面がありますが、適切な方法を用いることで、効果的な目標設定が可能です。
5つのステップを基準に目標設定を行いましょう。
- 目標を数値化する
- ステップ方式で目標を定める
- 会社の目標と個人の目標を明確にする
- 役割ごとの目標設定をする
- 目標の数が多い場合は優先順位を決める
ここでは、間接部門で行うべき目標設定の方法について解説します。
1.目標を数値化する
間接部門の目標は数値化しにくいといわれますが、可能な限り数値目標を設定することが重要です。
たとえば、人事部門であれば「採用人数〇〇人」「離職率〇〇%以内」と目標を設定します。経理部門では「ミスは◯件以内」と目標設定をすることも可能です。
目標を数値化することで、目標達成度が明確になり、評価も行いやすくなります。従業員のモチベーション向上にもつながるため、目標はできるだけ数値化することが望ましいでしょう。
2.ステップ方式で目標を定める
長期的な目標だけでなく、短期的な目標も設定し、ステップ方式で目標を立てましょう。
たとえば、「今月は〇〇を達成し、来月は〇〇を達成。1年トータルで◯◯まで行う」といった具体的な計画を立てることで、目標達成への道筋が見えやすくなります。
3.会社の目標と個人の目標を明確にする
間接部門の目標設定は、会社の目標と個人の目標を明確にすることが重要です。
会社の目標を理解し、その上で個人の目標を設定することで、個人の業務が会社の目標達成にどのように貢献するのかが明確になります。また、個人の目標達成が会社の目標達成につながることで、従業員のモチベーション維持にも役立ちます。
4.役割ごとの目標設定をする
間接部門は多岐にわたる業務を担当するため、役割ごとに目標設定を行うことが効果的です。
たとえば、経理部であれば「月次決算の早期化」、総務部であれば「社内イベントの企画・運営」など、具体的な役割に応じた目標を設定します。
5.目標の数が多い場合は優先順位を決める
目標の数が多い場合は、優先順位を決めて対応します。
重要度や緊急度を考慮し、優先度の高い目標から取り組むことで、効率的に目標達成を目指せるでしょう。また、優先順位を決めることで、リソースの配分も適切に行えます。
目標達成は多ければ多いほど良いので、優先順位を決め、効率的に行いましょう。
間接部門の課題
間接部門は組織経営になくてはならない存在です。しかし、直接的に利益を生み出す部門ではないが故にマネージメント上の課題も多くあります。間接部門の管理職に多い悩みは以下の通りです。
- 業務の成果を定量化しにくい
- 社員のモチベーション維持が難しい
- 仕事が属人化しやすい
まず、間接部門の業務は、直接部門のようにノルマなどの数値で管理されているものではないため、ひとり一人の貢献度も数値化しづらいのが事実です。
貢献度が明確でないと、適正な評価が行えませんし、社員のモチベーション維持も難しくなります。部署の存在意義が周知されず、社内で直接部門と対等な関係を保てなくなってしまう場合もあります。
業務が可視化されておらず、仕事が属人化しやすいのも間接部門の大きな課題です。
下記シートでは、優秀な社員を育てる間接部門特化のKPI設定方法を紹介しています。
優秀な社員を育てる必須項目
間接部門のKPI設定方法を基礎から解説
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間接部門の目標設定例
間接部門では目標設定が難しいと思っている方も多いかもしれませんが、結論から言うと間接部門でも目標設定は可能です。ポイントは、成果をできるだけ数値化できる項目を目標に設定することです。
ここでは、間接部門の中でも特に成果の数値化が難しいとされている人事部、法務部、総務部について、各部門での目標設定の例を紹介します。
関連記事:間接部門におけるKPIの設定例についてまとめた記事はこちら
人事部の目標設定の例
人事部門の業務で、成果を数値化しやすいのは採用業務です。たとえば、採用計画人数に対する達成率や採用にかかったコスト、採用に至るまでの期間、入社後の離職率などは数値化が容易であり、目標設定に適しています。
「労務環境を改善したい」のように一見、定性的な目標であっても、実施前と実施後に社員満足度調査を実施、結果を比較することで効果の数値化が可能です。
人事部は社内からの問い合わせが多い部門でもあります。近年、仕事の中で感じた感謝を「サンクスカード」という形にして社員同士で贈り合う取り組みを導入する企業が増えています。
「サンクスカード」の仕組みを問い合わせ対応にも取り込み、贈られた枚数を成果の定量化に活用するのも手です。
法務部の目標設定の例
法務部の業務は専門性が高い分、成果の評価もやや複雑になります。契約書の締結数やチェック数だけでなく、難易度や業務処理のスピードも成果の評価軸に加えられるべきです。
目標設定にあたっては、前年度の実績を参考に想定される業務を洗い出し、難易度のランク分けや各処理にかかる日数目安の計算などを行いましょう。手間はかかりますが、目標設定のベースとして必要です。
突発的な業務については、前例の有無、担当者の関与度合いなど、複数の観点から難易度を決めましょう。
このほか、社員向けの研修実施回数なども定量化できる要素です。法務部も他部門から日々相談を受ける機会の多い部署のひとつです。人事部と同様にサンクスカードを導入してもいいでしょう。
総務部の目標設定の例
総務部の業務において、成果としてもっともわかりやすいのは経費の削減率です。
備品費用や人件費、減価償却など、総務部が管轄する経費は数多くあります。他部門が干渉しない経費であれば独自の判断で改善しやすく、貢献度も明確です。
各部門で個別に手配していた消耗品の購入ルートを一本化して大口割引を適用させるなど、総務部にしかできない経費削減もあります。
総務部の場合、社内ルールや業務マニュアルの見直しによる業務効率化を目標に設定してもいいでしょう。
ミスの件数や遅延日数、社員の残業時間、他部門からの問い合わせ数などを指標にすれば、成果を数値化できます。改善提案の数・実現数そのものを評価指標にしてもかまいません。
まとめ
間接部門も会社の利益に貢献できることは間違いなく、目標設定と適切な評価によって社員のモチベーションを押し上げていくことが大切です。目標を設定して上司に進捗度を共有していく過程で業務の可視化も進みます。
「あしたのチーム」は、間接部門も含むさまざまな社員の目標設定を支援する人事クラウドです。納得感のある目標設定と人事評価の最適化を実現できる「あしたのチーム」を活用して、間接部門の士気向上を実現してみませんか。

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