多様な働き方が広がり、終身雇用制も崩壊したことで、年功序列ではない人事評価制度が求められています。
労働人口も減少しており、企業が理想の人材を確保するためには、従業員を自社にフィットする人材に育てるための人事評価システムの構築は欠かせないもの。そこで注目されているのが、『バリュー評価』です。
この記事ではバリュー評価の概要とメリットやデメリットを解説します。実際にバリュー評価を導入している企業事例についてもみてみましょう。
バリュー評価とは?
『バリュー評価』とは、従業員が「企業の価値観を落とし込んだ行動規範(バリュー)を実践できているか」を評価する制度です。『行動評価』や『プロセス評価』とも呼ばれています。
これまで、年齢や勤続年数の長さが評価される”年功序列”、または目標に対する成果や実績を評価する”成果主義”による評価に重きが置かれてきました。バリュー評価は、従来の評価主義とは異なる人事評価制度といえます。
バリュー評価の必要性
企業の人材不足は今後も続くことが予想されます。さらに、SNSの普及によって、情報や消費者のニーズは流動的となっているため、商品やサービスの寿命も短くなりました。
そのなかで、企業が生き残るためには、急速に変化し続ける市場に新しい商品・サービスを提供し続けなければなりません。
「これが正解」といえるものが少ない現代において、企業には「企業の価値観を理解したうえで、市場の急激な変化に合わせて自発的に行動できる従業員が欠かせない」といえるのではないでしょか。
バリュー評価の仕組み
バリュー評価では、仕事の結果だけでなく、普段の行動や成果に至るまでの過程も評価します。成果を出している従業員であっても、行動規範に沿った行動・過程がなければ、高い評価を与えることはできません。
ただし、行動指針の基となる企業の価値観は、抽象的なものが多いため、従業員に求める行動指針を明確にしておく必要があります。
バリュー評価のメリット・デメリット
バリュー評価は、これまでの人事評価制度にはない魅力がある一方で、デメリットも存在します。ここでは、導入前に確認しておきたい、バリュー評価のメリット・デメリットを解説します。
メリット① 企業と従業員の価値観・方向性の合致
企業の価値観はあいまいなものなので、しっかりと行動規範に落とし込むことで、従業員との足並みを揃えやすくなります。
新たな人材を採用しても、経営側や上司と価値観の不一致があれば、より自分にフィットする企業に転職してしまいます。行動規範を定め、価値観を明確にすることで企業側と従業員との価値観の相違を防ぐことができます。
メリット② 組織力の強化
従業員の足並みが揃った企業は、組織力が強くなります。組織力が強い組織では、経営者の発信が末端の従業員までそのまま伝達され、それぞれが自分の仕事と紐づけて自発的な行動を取ることができます。
チーム内はもちろん、部門間でも十分に連携が取られるため、業務効率もアップします。スピーディーに業務が進むため、消費者のニーズやトレンドを商材に反映しやすく、企業の成長も期待できるでしょう。
デメリット① 客観的な評価が難しい
成果までの行動や仕事の過程は数字で表すことができないため、客観的な評価が難しくなってしまいます。評価者を複数に増やす・評価基準を明確にするなど、導入時にはできるだけ客観的な評価をするための工夫が必要です。
デメリット② 不明瞭な行動規範では適切に運用できない
バリュー評価のメリットを享受するためには、従業員の行動規範への認識を合致させる必要があります。
一方で、不明瞭な行動規範を定めてしまうと、認識の齟齬が起きたり、公正公平な評価ができなくなったりと、バリュー評価を制度として運用できません。
バリュー評価では、基準となる行動規範を明瞭なものにして、全従業員に正しい理解を浸透させることが重要となります。
バリュー評価の導入事例
新しい人事評価制度として注目のバリュー評価ですが、運用が難しいことが難点です。しかしながら、実際に導入している企業もあり、これから導入を検討している経営者や人事部門担当者は参考になるでしょう。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社では、『ヤフーバリュー』を人事評価制度に取り入れた評価を行っています。
ヤフーバリューとは、「課題解決」「爆速」「フォーカス」「ワイルド」というヤフーが目指す4つの指針。
最上の指針は「課題解決」で、課題を解決するためのキーワードが、スピード感を持つ「爆速」、成果を出すために集中する「フォーカス」、迷ったときに選ぶなら「ワイルド」です。
ヤフー株式会社では、ヤフーバリューを浸透させるために、全従業員にバリューカードを配布しています。いつでも目指すべきバリューを意識できるため、バリュー評価のマイナス面を抑える効果が期待できます。
株式会社メルカリ
フリマアプリで有名な株式会社メルカリでは、『バリュー評価』と『OKR』を人事評価制度として導入しています。2つの制度を併用することで、個人と企業とのつながりを深め、企業のミッションが実現できる集団作りを行っています。
バリュー評価では、「失敗を恐れず大胆にやる(Go Bold)」「チームに貢献し大きな成果を目指す(All for One)」「専門性を高め続け、オーナーシップを持って仕事をする(Be Professional)」という3つの行動規範に沿っているかが評価されます。
また、個人のOKRに対して、達成に向けた過程における成果やパフォーマンスを、3ヶ月に1回、振り返っています。
OKRとは、高い目標を達成するための目標管理手法です。組織と従業員個人の目標を連動させたうえで、難易度が高い目標を立てて、その達成度(成果)をみます。
Chatwork株式会社
ビジネスチャットツールとして圧倒的なシェアを獲得している『Chatwork』を提供するChatwork株式会社では、『バリュー評価』と『OKR』が採用されています。
バリュー評価とOKRを組み合わせることで、社の価値観とチャレンジする姿勢を人事評価に反映できているといえるでしょう。
バリュー制度では、「自然体で成果を出す」「いつも心にユーモアを」「オープンマインドでいこう」「ユーザーに笑顔を」「自分ごとで行動する」という5つのコアバリューを体言できるかを評価します。
OKRを利用した評価では、OKRの達成率は評価に連動せず、「OKRを通してどれだけチャレンジしたか」を参考にします。評価自体は、社員の評価は、業績評価・行動評価・全社業績の3つから総合的に決まり、業績評価にOKRを参考にした数字が入ります。
ワイジェイカード株式会社
ワイジェイカード株式会社はヤフーグループの一社で、ネットショップで使える特典や機能を搭載したクレジットカードを提供しています。人事評価制度には、業績評価(パフォーマンス評価)と、ヤフーと同様に『バリュー評価』を取り入れています。
このワイジェイカード株式会社では、「どれだけバリューに貢献できたか」を複数の評価者が評価します。また、従業員は400人以上と大所帯のため、人事評価システムを導入して、バリュー評価のシステム化・人事評価の負担軽減を実現しました。
その他の人事評価手法
導入事例をみてもわかるように、バリュー評価を採用する場合は、その他の人事評価システムと同時に運用されています。
バリュー評価には客観的に評価が難しいという側面があるため、そのマイナス面を補う手法を取り入れることで、制度を適切に運用しやすくなります。
コンピテンシー評価
『コンピテンシー評価』は、業績を上げている従業員に共通する行動特性を基に、従業員の評価基準を作る評価手法です。
業績を残せる従業員が、どのように行動したのか・成果につながったのかを把握し、評価基準とすることで、ほかの従業員も成果を残せる行動を起こしやすくなります。
成果ではなく、行動特性を評価することから、企業の求める人物像により近い人材を採用・育成することができます。
また、企業が求める行動規範が明確になるため、バリュー評価と同様に、企業と従業員の方向性が合致するというメリットも持っています。
MBO
『MBO』は、個人またはグループごとに決めた目標の達成度合で従業員を評価する手法です。『目標管理制度』とも呼ばれます。
個々の目標を明確にすることに加え、企業と個人の目標を合致させるため、組織への貢献を意識させることができ、自発的かつ意欲的な働きが期待できます。企業と個人の目標をリンクさせることで、最終的には企業の目標達成に繋げられます。
目標設定・管理の手法としてよく導入される手法ではありますが、保守的な目標設定になることもあるため、あえてより難易度が高い目標を設定しなければならないOKRを導入する企業もあります。
360度評価
『360度評価』とは、上司や同僚、部下など複数人が、評価対象者を多面的に評価する評価手法です。
従来、上司のみが部下の評価を行うことが常識となってきましたが、複数人で評価することで、公正公平かつ、妥当性・信頼性の高い評価を下すことができます。
企業によっては、取引先や関係企業からの声も評価として採用されるケースもあります。複数の人から評価を受けることで評価対象者が納得しやすく、自己分析を深められるため、従業員の成長や業績アップも期待できます。
客観的な評価が難しいバリュー評価では、360度評価のように複数人からの意見を参考にすることで、適切な評価をしやすくなるでしょう。
まとめ
今回は、行動規範に沿って仕事ができる従業員を評価する『バリュー評価』について、詳しく解説しました。
バリュー評価は、大手企業も採用している有用な人事評価制度です。マイナス面もありますが、その他の評価手法を上手く組み合わせることで補うことができます。
企業の価値観や理想とする人物像によってマッチする人事評価手法は異なります。現在、離職率が高い・人事評価に対する不満の声があるといった悩みがある場合は、新しい人事評価制度の1つとしてバリュー評価を検討してみてはいかがでしょうか。
より公正公平なものにしたい、評価者や管理側の負担を減らしたいという場合は、人事評価システムを導入するのがおすすめです。
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