KPI管理とは、業績の重要中間管理指標となる「KPI」を適宜測定・評価し、達成に向けて必要なアクションをとるプロセスのことです。
適切なKPI管理を行うことで、プロジェクトや組織の目標達成に向けた具体的なアクションが明確になります。
本記事では、KPI管理の基本概念から実践的な手順、成功のポイントや役立つツールまで詳しく解説します。KPIを効果的に管理し、ビジネスの成果を最大化しましょう。
KPI管理とは
KPI(Key Performance Indicator)とは、企業の最終目標を達成するための中間指標です。「重要業績評価指標」や「重要目標評価指標」とも呼ばれます。
KPI管理はKPIの達成を目的に、以下のような一連のプロセスを記録・測定し、必要に応じて適切なアクションを取ることを指します。
- KPIの設定
- 途中経過の測定
- KPI結果の最終評価
KPIは業績の中間的な指標であるため、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握・分析し、問題なく進行しているかを常に確認する必要があります。適切なKPI管理を行うことで、目標達成に向けた戦略的な意思決定が可能になります。
KPI管理に欠かせない3つの用語
KPI管理を効果的に行うためには、関連する重要な用語を理解しておきましょう。
特に「KGI」「KSF」「OKR」はKPIの設定や管理に深く関係しており、それぞれの違いが理解できれば、最適な目標設定が可能になります。
用語 | 概要 |
---|---|
KGI(Key Goal Indicator) | 企業や組織の最終目標を示す指標 |
KSF(Key Success Factor) | KGIを達成するために必要な成功要因 |
OKR(Objectivesand Key Results) | 企業やチームの成長を促進する管理目標 |
KGIは最終目標そのものを指し、KPIはその目標達成に必要な中間指標です。
これらの指標を適切に組み合わせることで、より精度の高いKPI管理が実現できます。
KPI管理が重要な理由
ビジネスの現場では、KPIを設定するのが一般的ですが、単に数値目標を決めるだけでは十分と言えません。
業績計画やプロジェクト、あるいは個人の取り組みでKPIは進捗状況を正確に測定し、目標達成に向けた軌道修正を行うための指標として機能します。
例えば、「プロジェクトが予定通り進んでいるか」「期待していた成果が出ているか」を適切に把握できなければ、問題の発生に気付くのが遅れるおそれがあります。結果、対応が後手に回り、目標達成が困難になるリスクが高まるでしょう。
KPIを適切に管理し、状況の変化に応じて素早く戦略を見直せるよう、仕組みを整えてください。
KPI管理を実施する5つの手順

次に、KPI管理を実施する手順を5つに分けて紹介します。
- KGIを設定する
- KGIに沿ってKPIを設定する
- 定期的に指標を測定する
- 事後検証を行う
- 改善施策を検討する
KPI管理の手順を理解して、目標達成に役立てましょう。
1.KGIを設定する
まずは、KGI(最終目標)を設定します。
KGIは、企業やプロジェクトが最終的に達成すべき目標を数値で表した指標のことです。KPIが途中経過を管理するのに対して、KGIは「成功を測るゴール」として機能します。
例えば、KGIには「年間売上1億円達成」「利益率20%以上維持」「新規顧客500社獲得」などの具体的な数値を設定します。
KGIを設定する際に重要なのは、具体的かつ測定可能なものにすることです。曖昧な目標ではKPIを設定する際にズレが生じるため、できる限り明確に定めましょう。
2.KGIに沿ってKPIを設定する
次に、設定したKGI(最終目標)に沿って、達成に必要なKPIを設定しましょう。
KPIは、KGIに至るまでの「成果を出すための行動指標」のことです。数値化すると、進捗を可視化できます。
例えば、KGIが「年間売上1億円達成」の場合、売上は「受注件数×受注単価」で構成されることを踏まえて、KPIは「月間受注件数◯件」「平均受注単価◯万円」など、具体的な数値を設定してください。
KGIを分解し、実行可能なKPIに落とし込むことで、戦略的な目標管理が可能になります。
KGIとKPIの概要については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:KPI・KGIとは?違いや設定方法から具体例までわかりやすく解説
3.定期的に指標を測定する
KGIとKPIが確定し、プロジェクトが開始したら定期的に指標を測定しましょう。測定の頻度は、プロジェクトの期間や業務の特性に応じて設定します。
例えば、1年間の取り組みを管理する場合は、「四半期ごと」や「1ヵ月ごと」にKPIの数値を測定し、計画通りに進んでいるかをチェックします。進捗が想定よりも早い場合は、次の工程の準備を進めることで、スムーズな運用が可能です。
定期的な測定と柔軟な調整を繰り返すことで、KPI達成の精度を高めましょう。
4.事後検証を行う
プロジェクトが一区切りを迎えたら、KPIの測定結果の振り返り・検証を行います。
これまで測定してきたKPIを一覧化・グラフ化すると、時系列ごとの推移を可視化し、変化の傾向を分析します。
また、単にKPIの達成度を評価するだけでなく、「どの施策が効果的だったか」「どの時点で課題が発生したか」など、プロセス全体の振り返りも行いましょう。
検証によって「KGIに対して、KPIの設定や施策は適切だったのか」「改善すべきポイントはどこか」を客観的に把握し、次回のプロジェクトや業務改善に活かせます。
5.改善施策を検討する
事後検証を行った後は、KPI管理の精度を高めるための改善策を検討しましょう。
KPIを時系列順に管理すると、数値が伸び悩んだ時期や想定以上に成果が出たタイミングを把握できます。
例えば、施策の実施後にKPIの達成率が向上した場合、施策が有効であった可能性が高いと考えられます。一方で、KPIの進捗が停滞した場合、業務プロセスやリソース配分に問題が生じるかもしれません。
「成功要因」や「課題」を特定し、次回のKPI設定に分析結果を活かすことで、より効果的な目標設計や施策の選定が可能になります。
KPI管理に役立つツール3選
KPI管理は、正しい手順に沿って行えば一定の効果が期待できます。よりスムーズに実施するためには、専用ツールの活用が効果的です。
次に、KPI管理に役立つツールを3つ紹介します。
- 表計算ソフト
- SFA/CRM
- 目標管理ツール
ツールを有効に活用して、スムーズなKPI管理を実現しましょう。
1.表計算ソフト
KPI管理をする際は、表計算ソフトの活用がおすすめです。代表的なツールには「Microsoft Excel」や「Googleスプレッドシート」、Macユーザー向けには「Numbers」もあります。
表計算ソフトは、ビジネスで多く活用されているソフトの1つで、特別な操作教育が不要なため、スムーズに導入できる点が魅力です。
KPI管理に活用する際は、単に数値を入力して記録するだけでなく、関数やピボットテーブルを活用して、進捗率や達成度を自動計算する仕組みも構築できます。
さらに、グラフ機能を使えばデータを可視化でき、チーム全体で状況を共有しやすくなります。
2.SFA/CRM
営業や顧客管理のKPIを効果的に追跡するには、SFA(営業支援ツール)やCRM(顧客関係管理ツール)の活用がおすすめです。
名称 | 詳細 |
---|---|
SFA | 営業活動の効率化を目的としたツール。商談件数や成約率、案件ごとの進捗状況などをリアルタイムで記録や管理できる。 |
CRM | 顧客データの管理に特化したツール。会員登録数や注文履歴、購買頻度などの情報を一元化することで、マーケティングに関連するKPIを高精度で管理できる |
SFAとCRMを連携させることで、営業・マーケティングのKPIを包括的に管理できるため、より戦略的な意思決定がしやすくなります。
3.目標管理ツール
KPIの管理をより効率的に行うには、目標管理に特化した専用ツールの活用が効果的です。
目標管理ツールは、KPI項目を設定しデータ入力や取得を行うことで、KPIの進捗状況をリアルタイムで可視化できます。
目標管理ツールを活用するメリットは、以下のとおりです。
- テンプレートがあるためスムーズに利用開始できる
- KGIやCSF(重要成功要因)などの他指標の管理も同時に行いやすい
- コミュニケーションツールなどとの連携ができる
組織全体のKPI管理を最適化したい場合や、表計算ソフトでの管理に限界を感じている場合は、目標管理ツールの導入を検討しましょう。
KPI管理で成功するためのポイント3つ
次に、KPI管理で成功するためのポイントを3つ紹介します。
- 目的を明確化する
- 管理者・社員の意識を変える
- 運用方法を最適化する
順番に見ていきましょう。
1.目的を明確化する
KPI管理に取り組む際は、まず明確なKGIを定めましょう。
KPI管理の目的は、KGI(最終目標)の達成に向けて、途中経過を測定・把握し、確実にゴールを達成することにあります。つまり、KGIが曖昧なままではKPIを設定しても意義が薄れ、効果的な運用が難しくなります。
KPI管理に取り組む際は、まず明確なKGIを定めたうえで、適切なKPIの設計が成功の鍵です。
目標を明確化するためには、目標管理シートの活用が必要となります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:目標管理シートとは?部下育成に役立つ運用方法や評価制度の整備について解説
2.管理者・社員の意識を変える
KPI管理の仕組みを導入しても、実際に運用する管理者や社員の意識が変わらなければ、期待する効果は得られません。
KPI管理は単なる業務の一環ではなく、「KGIを達成するための重要なプロセス」との認識を持ってもらう必要があります。
例えば、経営層がKGIを設定してKPI管理を推進しても、現場の社員が「単なる数値管理」ととらえると、目的が形骸化する可能性があります。
そのため、社内全体で「KPI管理はKGIの達成に欠かせない」との意識づけの徹底が成功の鍵です。
3.運用方法を最適化する
KPI管理を成功させるには、運用方法を最適化し継続的に改善していくことが重要です。
KPI管理では、業績に関連する数値の測定・入力・計算や、取り組み状況の記録など多くの業務負担が発生します。そのため、手作業による管理だけでは非効率になりやすく、継続的な運用が難しくなる可能性があります。
そこで、KPI管理を効率的かつ効果的に運用するために、適切なツールの活用がおすすめです。ツールを導入すればデータの自動収集・可視化が可能になり、リアルタイムで状況を把握できるため、迅速な意思決定ができるようになります。
適切なツールの活用や定期的な見直し、チーム全体での共有を徹底しながら、KPI管理を効果的に実施していきましょう。
KPI管理に失敗するケース

最後に、KPI管理に失敗するケースを4つ紹介します。
- KPIを定量的に計測できない
- KPIとKGIが連動していない
- ビジネス環境に対応できていない
- 従業員のネガティブな行動を引き起こしてしまう
失敗するケースを事前に把握して、効率的にKPI管理を実施しましょう。
KPIを定量的に計測できない
KPIを設定する際に数値で測定できない指標を選ぶと、進捗状況を正しく把握できず、適切な改善が難しくなります。
例えば「顧客満足度を高める」という曖昧な目標では、具体的にどの程度向上したのかを判断できません。
「リピート購入率を◯%向上させる」「問い合わせ対応の平均時間を◯分短縮する」など、測定可能な指標に置き換えるようにしましょう。
KPIとKGIが連動していない
KPIは、最終目標であるKGIを達成するための中間指標ですが、この2つの整合性が取れていないと、KPIを達成してもKGIには結びつきません。
例えば「売上向上」をKGIとしているのに、「顧客対応の件数を増やす」とKPIを設定すると、対応件数が増えても売上には直接影響しないおそれがあります。
KGIを達成するために必要な要素を分析し、「新規顧客獲得数を◯件増やす」「平均単価を◯%向上させる」など、互いが連動するKPIを設定しましょう。
KGIとKPIの関係性を定期的に見直し、状況に応じて調整できれば、目標達成の可能性が上がります。
ビジネス環境に対応できていない
KPI管理を成功させるには、ビジネス環境の変化に柔軟に対応する必要があります。
一度設定したKPIを見直さずに運用を続けると、環境変化に適応できず、企業の成長を妨げる要因になりかねません。
例えば、市場のニーズが変化しているにも関わらず、従来の販売戦略に基づいたKPIを維持すると、実際の成果と目標が乖離するおそれがあります。
定期的にKPIを見直して、ビジネス環境の変化に適応できる仕組みを構築・柔軟な運用を心がけましょう。
従業員のネガティブな行動を引き起こしてしまう
KPIの設定によっては、従業員のモチベーションを低下させる要因になります。
例えば、達成が極端に難しいKPIを設定すると、従業員がプレッシャーを感じて業務への意欲が低下するおそれがあります。また、数値達成だけを重視したKPIを設けると短期的な成果を優先し、不適切な手法に頼るケースも発生しかねません。
このような状況を防ぐには、KPIを現実的で達成可能な目標として設定し、従業員が努力すれば成果を出せる範囲に調整しましょう。適切な目標管理を行うことで、従業員の成長を促し、組織全体の成果向上につながります。
KPI管理で目標達成を目指そう
KPI管理は、目標達成に向けた道筋を明確にし、適切な進捗確認や改善策の検討を可能にするプロセスです。適切なKPIの設定・定期的な測定・柔軟な改善施策の実施によって、効果的な業績管理を実現できます。
本記事で紹介した手順や、ポイントを意識してKPI管理を実践し、確実な目標達成を目指しましょう。
また、KPI管理を効果的に行うためには、適切なツールの活用をおすすめします。社員データベースから目標設定・評価・査定・給与確定まで、人事評価の運用を一元管理できる「あしたのクラウド® HR」は、多くの企業で導入されています。
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