人事部に配属されると「プロパー社員」という言葉を耳にすることがあります。「正社員のこと?」「直接雇用のこと?」など疑問に思う方もいるのではないでしょうか。使い方によっては差別的なニュアンスが生じる恐れもあるため、人事担当者としては基礎知識を持っておきたいところです。
本記事では、企業によって異なるプロパー社員の意味や、特徴、プロパー社員とその他の社員の間で起きやすい問題、問題を減らすために企業ができることなどを解説します。
プロパーとは?
プロパー(proper)とは「正当な」「本来の」などの意味を持つ英単語です。人事の領域では、新卒入社の社員や正社員、直接雇用の社員などを意味する「プロパー社員」という言葉が使われています。いずれも他の雇用形態の従業員と区別して「正式な社員」といったニュアンスを込めて使われるのが特徴です。
その他にもプロパーを使った言葉は多くあります。一例を挙げると以下のとおりです。
- プロパー価格:正規価格、メーカー希望価格のこと。アパレル業界でよく使われる
- プロパー商品:プロパー価格で販売する商品
- プロパーカード:JCB、アメリカン・エキスプレス、ダイナースクラブなどの国際ブランドが発行しているクレジットカード
- プロパーローン:金融機関独自のローン。保証会社を利用していないことが特徴
なお、日本で使われる「プロパー○○」「○○プロパー」の多くは和製英語であり、英語圏では通用しないことに注意が必要です。例えば正社員という意味のプロパー社員は英語では「full-time employee/worker」ですから、「proper employee」などと言っても通じません。
企業によりプロパーの意味は異なる
「プロパー社員」の意味は「新卒入社社員」「正社員」「正規雇用の社員」と企業によって変わります。それぞれの意味や使い方を紹介します。いずれの場合も、プロパー社員という言葉を安易に使えば、序列感が出たり差別感が出たりする恐れがあるため、慎重に扱いましょう。
なお本記事では、この章を除く記事全体で、主に新卒入社社員を想定して記載しています。
新卒入社社員を指す場合
中途採用の社員と区別して、新卒入社の社員をプロパー社員と呼ぶ企業があります。ニュアンスとしては「生え抜きの社員」という意味が込められるのが一般的です。例えば吸収、合併があった企業や人材の入れ替わりが激しい企業において、生え抜き社員を区別する目的でプロパー社員が使われます。
正社員を指す場合
非正規雇用社員(派遣社員、契約社員、アルバイトなど)と区別して、正社員をプロパー社員と呼ぶ企業があります。この場合は正社員であるなら新卒採用でも中途採用でもプロパー社員です。主に人事部が給与制度や福利厚生などを適用する際や、職場で業務内容を決める際などの区分として使われます。
自社で雇用している社員を指す場合
派遣社員や関連会社の出向社員などと区別して、自社で直接雇用した社員をプロパー社員とするケースもあります。この場合は、直接的な雇用関係があれば正社員、契約社員、パート・アルバイトなどを問わずプロパー社員と呼ぶのが一般的です。
具体的には、自社社員が派遣社員や関連会社の社員を監督してプロジェクトを進める際に、組織運用上の便宜のために「プロパー社員」を使うことがあります。
プロパー社員の特徴
ここではプロパー社員の特徴を5つ紹介します。良い面と悪い面が表裏一体になっている特徴もあるため、本質を理解することが重要です。
帰属意識が高い傾向にある
プロパー社員は一般的に帰属意識が高い傾向にあります。正式に企業に所属していれば、誰しも組織の一員という意識を持ちやすいからです。特に新卒入社で社会人として一から教育を受けていれば、なおさら帰属意識が高まるでしょう。
したがって経営層、マネジメント層からみれば、プロパー社員は重要なプロジェクトや、何かトラブルが起きたときに頼りになるロイヤリティ(忠誠心)が高い人材です。また人事担当者からみれば、離職率が低いことから、長期的な人材戦略を検討しやすい面があります。
待遇が良くなる可能性がある
プロパー社員は基本給や賞与が高く、昇進もしやすい傾向があります。組織の幹部候補として育成していきたいという考えから、待遇を良くする企業が多いからです。年功序列が慣例化しており、能力に関係なく厚遇される企業も少なくありません。
自社について詳しい・社内の人脈が広い
プロパー社員は自社の研修を受ける時間が長いため、企業理念や事業内容、商品展開、競合他社の状況などについて詳しくなる傾向があります。また、社風や企業が求める人物像、ブランディングの方向性など、言葉で伝えにくい内容の理解も進んでいるのが特徴です。
特に新卒入社のプロパー社員の場合、同期と一緒に新人研修を受けるため、さまざまな部署に配置される社員と人脈を築けます。このため部署同士の関係や、組織上の課題、問題などにも詳しくなりやすく、幹部候補としての成長を期待できます。
会社のやり方に疑問を持ちにくい傾向がある
同じ企業に長く所属し人材育成を受けると、会社のやり方に疑問を持ちにくい傾向があります。特に新卒入社の場合は、他の企業を知らないために視野が狭くなりがちです。
この傾向は事業が順調であるときは問題になりにくく、むしろ組織力を高める効果があります。しかし何か問題がある場合は、柔軟性に欠けるプロパー社員によって、さらに状況が悪化する可能性もあります。特に上下関係が厳しいトップダウン方式をとっている企業は、多様な意見が出にくいため、気を付けるべき弊害といえるでしょう。
保守的で新たな企画が生まれにくい傾向がある
プロパー社員は企業の伝統や過去のやり方を重んじる保守的な傾向があります。これは先に解説した帰属意識の高さや、会社の方針に従順である特徴などが関係しています。このためプロパー社員は従来と方向性が違う商品開発やプロモーション、異業種への進出などに向かない場合もあるでしょう。
保守的な傾向が進んで排他的な考え方を持つプロパー社員もいます。「前例がない取り組みは認めない」「外部の意見は聞かない」といったプロパー社員の意見によって、イノベーションを起こす環境がなくなる企業も珍しくありません。また自浄作用が働かず、一部のプロパー社員だけが居心地の良い職場になる場合もあります。
プロパー社員と他社員間で起こりやすい問題
プロパー社員とその他の社員の間に格差が出たり、心の溝ができたりすると、さまざまな問題を引き起こします。典型的なパターンについて知っておきましょう。
評価の不公平感
非プロパー社員が人事評価に不公平感を持つケースがあります。プロパー社員と同じかそれ以上の実力があるのに評価に差があり、給与や待遇に反映されれば、不満は高まっていくでしょう。結果として非プロパー社員の離職率が高まり、人手不足に陥るケースもあります。
特にプロパー社員同士の結びつきが強い企業では、たとえ客観的な人事評価をしていても、公平性を疑われる可能性があります。例えば「プロパー社員に温情的な評価をしているのではないか」「何か暗黙のルールがあるのではないか」などと不信感を持つ非プロパー社員もいます。
人間関係で疎外感を感じる
お互いの考え方が違うために、疎外感が生まれるケースもあります。プロパー社員であれば「なぜもっと企業に愛着を持ってくれないのか」などと非プロパー社員に不満を持つかもしれません。逆に非プロパー社員のなかには「仲間だと思ってもらえていない気がする」などと感じる場面もあるでしょう。
近年では多様な人材や考え方を認め合う「ダイバーシティ」が重視されるようになっています。もし自社がプロパー社員という言葉を使って従業員を必要以上に区別しているなら、組織内に分断を引き起こす雰囲気がないかチェックしたほうが良いでしょう。
課題感にズレが生じる
プロパー社員とその他の従業員で、課題の捉え方に差が出る場合があります。これには2つのパターンがあります。
第一はプロパー社員が「井の中の蛙」状態になっており、自社の問題に気付かない場合です。例えば過去の成功事例にとらわれて時代遅れの戦略を見直さないケースです。あるいは各種のハラスメントや有給休暇を取りにくい社風などの非常識に気付かないケースもあるでしょう。
第二は非プロパー社員が自社の戦略ビジョンを理解していないために起こります。例えば顧客ファーストというビジョンを掲げているのに、非プロパー社員が短期的な利益を追求してしまうなどのケースです。
問題を生まないために企業側がすべきこと
ここまで説明してきたように、プロパー社員と非プロパー社員の間には、さまざまな格差やあつれきが生まれる可能性があります。どのようにすれば問題を小さくしたり、未然に防いだりできるのでしょうか。
ここでは企業側がするべき具体的な対策を解説します。
評価を公平に行う土壌を作る
公平で透明性の高い人事評価制度の整備が重要です。仮にプロパー社員に対する温情的な人事評価が疑われるなら、マネジメント層に対して明確な評価基準を徹底する研修を実施するなど対策をとります。
また、上司だけでなく同僚、部下などの意見をヒアリングする「360°評価」など、客観性を高める仕組みを導入するのも効果的です。
給与制度の見直し
公平な給与制度を整えることも格差是正につながります。特に年功序列制の企業では、能力が高くても給与が低い問題や、昇給しづらい問題などが出やすいため注意が必要です。
具体的な対策としては、慣例的な給与テーブルを見直し、技能級、資格手当などに細分化する方法があります。また、業績への貢献度によって給与を決める「成果型賃金制度」に移行する企業も増えてきました。
業務内・外での交流を促す
社内コミュニケーションを活性化して、プロパー社員とその他の従業員の心理的な溝をなくしていく取り組みも重要です。例えば人事担当者にはプロパー社員と非プロパー社員のバランスの良い人材配置が求められます。また、社内レクリエーションや懇親会などの交流企画も効果的です。
コミュニケーション環境を整える方法もあります。例えば気軽な会話を促進するために、社内SNSやチャットツールを取り入れる企業が増えています。固定座席を決めないフリーアドレスで交流を促進するといった方法もあります。
中途社員や非正規社員の研修を充実させる
中途社員や非正規社員などの非プロパー社員のなかには、組織に適応できないという悩みを持つ人が少なくありません。この問題を解消する方法のひとつは、非プロパー社員向けの研修を充実させることです。
例えば、経営理念、ミッションを学ぶ研修やOJTの導入、社外研修を充実させる取り組みが挙げられます。また、新人研修とは別に、職場にいち早く慣れて即戦力として活躍してもらうことに特化した「オンボーディング」を導入する企業が増えています。
組織のシステムや風土に違和感を持てば、いくら能力が高い人材でも活躍できません。また、キャリア形成や能力開発ができないことに不公平感を持ち、離職してしまう人もいます。重要な戦力となる非プロパー社員に活躍してもらうために、研修制度の見直しを検討しましょう。
まとめ
人事の領域では、新卒社員や正社員、直接雇用の社員などをプロパー社員と呼んで区別する場合があります。プロパー社員には帰属意識が高く離職率が低いなどの良い面がある一方、視野が狭く、保守的になりすぎるなどの悪い面もあります。
そして企業がプロパー社員を過度に優遇すれば、非プロパー社員の不満が高まってしまうケースもあるため注意が必要です。人事評価制度や給与制度、人材育成制度などの見直しを検討するなど、適切な対策をとっていきましょう。
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