従業員のパフォーマンスを最大限に引き出し、組織の成長と成功を実現させることは多くの日本企業にとっての課題です。
本記事では、パフォーマンスマネジメントの重要性と、成功に向けた方法を詳しく解説します。
最後まで読めば効果的なパフォーマンス評価と人事評価の連携方法や、従業員のモチベーション向上につながる具体的な戦略を学べます。
持続的な成長を目指す経営者や人事責任者の方は、ぜひ最後までチェックしてください。
パフォーマンスマネジメントとは
パフォーマンスマネジメント(Performance Management / PM)とは、組織が目標やパフォーマンス水準を設定し、フィードバックを通じて人材育成を促進することで、組織の目標達成をサポートするための継続的なプロセスを指します。
この概念は、アメリカにおける人的資源管理制度の中で注目を集めてきました。パフォーマンスマネジメントは、従来の人事考課制度(Performance Appraisal / PA)とは異なる点がいくつかあります。
従来の人事考課制度は、社員のパフォーマンスを評価し、処遇を決定する手段に留まります。一方、パフォーマンスマネジメントは未来志向のアプローチです。
このアプローチは、個人の成長や組織の目標達成を重視します。職務行動や成果の評価だけでなく、将来の発展に焦点を当てるのが特徴です。
また、このプロセスは一方的な評価ではなく、従業員と上司との対話を基盤としています。
PMの概念は明確に確立されていません。人事評価だけでなく、人材育成や戦略的人的資源管理との関連性も議論の対象です。
戦略的人的資源管理とは、組織の戦略と従業員の業績や能力を結びつけるアプローチを指します。パフォーマンスマネジメントは、このアプローチを具体的に実行するための手法に位置づけられています。
パフォーマンスマネジメントが注目される背景
近年、組織の成果を最大化するための手法として「パフォーマンスマネジメント」がますます注目を浴びています。
その背景には、単なる成果主義にとどまらず、従業員の育成と成長にも焦点を当てるポスト成果主義の重要性が浮き彫りにされています。
従来の成果主義では、主に成果に基づく報酬が求められ、一方で従業員のスキルや能力の向上は二の次とされることがありました。
しかし、「人材育成」を尊重するポスト成果主義は、従業員が成果を上げるための環境整備や能力向上の機会の提供を重要視しています。
成果主義賃金の導入と並行して、従業員の能力開発や学習への投資を促進させることは、個々の成果だけでなく、長期的な組織の成長に寄与する人材の育成が期待できるのです。
このポスト成果主義のアプローチは、従業員のモチベーションを向上させるだけでなく、組織の競争力を高める要因ともなり得ます。単なる数字に囚われず、従業員一人ひとりのスキルや能力を伸ばすことを大切にする姿勢が、組織内の協力関係やイノベーションを活性化させることでしょう。パフォーマンスマネジメントは、より総合的な成功をもたらすポスト成果主義の重要な一翼を担っています。
パフォーマンスマネジメント6つの特徴
ここでは、パフォーマンスマネジメントの特徴を6つ紹介します。
- 組織全体の向上を目的としたアプローチ
- 具体的な目標設定
- 上司による定期的な評価
- 人材育成との統合
- 柔軟な目標設定と改善
- 組織文化との統合
これらの特徴を理解し、自社に合わせた導入により、効果的なパフォーマンス向上が期待できます。
1. 組織全体の向上を目的としたアプローチ
パフォーマンスマネジメントは組織の成功を達成するために、従業員のパフォーマンス向上を推進するアプローチです。従業員の個々の能力やスキルが組織全体の業績に影響を及ぼすことを理解し、その最適化を図ることを目指します。
従業員の成果が向上すれば、組織は競争力を維持し、長期的な成功を実現しやすくなります。
2. 具体的な目標設定
パフォーマンスマネジメントは抽象的な目標設定だけでなく、従業員が具体的かつ測定可能な目標を持つことを重視します。これにより、従業員は自身の役割や責任を明確に理解し、達成すべき目標を追求する意欲が高まるため、個別の目標は、組織の大局的な目標と一致するように設定されます。
3. 上司による定期的な評価
パフォーマンスマネジメントは定期的な評価プロセスを通じて、従業員のパフォーマンスを振り返ります。これにより、従業員は自身の成果や改善内容について把握し、次なる成長目標を適宜設定可能です。評価は単なる数字だけでなく、具体的なフィードバックや強化すべきスキルの指摘も含みます。
このコミュニケーションプロセスは、従業員と上司の対話を通じて行われ、信頼関係を築く役割も果たします。
4.人材育成との統合
パフォーマンスマネジメントでは従業員の成長とスキル開発を重視しており、従業員の強みと弱みを特定し、個別の成長計画を策定します。
また、組織全体のニーズに応えるため、従業員が持つ知識やスキルをマッピングし、組織の能力を最適化します。こうした人材育成の取り組みが、パフォーマンスマネジメントの大切な要素のひとつです。
5. 柔軟な目標設定と改善
PMは環境変化に対応し、柔軟な目標設定を採用します。従業員の成果が目標と一致しない場合には、適宜調整を行いながら目標を修正します。
また、一方的な結果だけでなく、従業員の行動やプロセスにも着目し、それらが成果にどのような影響を及ぼすかを評価するため、持続的な改善と適応力が育まれます。
6. 組織文化との統合
PMは単発のイベントではなく、継続的なプロセスとして組織内に統合されます。このプロセスは組織の文化や価値観と一致するようにデザインされ、組織全体の期待値と一致させます。従業員はパフォーマンスの向上を日常的な振る舞いとして受け入れ、持続的な成果を出すことを目指すことが特徴のひとつです。
従業員はパフォーマンスの向上を日常的な振る舞いとして受け入れ、持続的な成果を出すことを目指すことが特徴のひとつです。
パフォーマンスマネジメント4つのメリット
ここでは、パフォーマンスマネジメントの主なメリットを4つ紹介します。
- 目標達成の促進
- 従業員のスキル向上と成長
- コミュニケーションとフィードバックの促進
- 組織全体の効率性と競争力の向上
メリットを知り、自社へ導入するかの判断材料にしてください。
1.目標達成の促進
パフォーマンスマネジメントは従業員に具体的かつ測定可能な目標を設定し、これらの目標達成を推進します。従業員が自身の仕事に明確な方向性をもつことで、仕事に取り組むモチベーションが向上するでしょう。
個人の目標達成によって組織全体の目標も達成され、組織の成果向上につながります。目標達成の明確な評価は、従業員の自己評価や成長にも寄与し、主体的なキャリア開発を促進します。
2.従業員のスキル向上と成長
パフォーマンスマネジメントは従業員のスキル向上と成長を支援するプロセスを提供します。従業員の強みと弱みを評価し、適切なトレーニングや研修計画を立てることで、スキルの向上が図られます。
成長の機会を提供すれば、従業員はより高いレベルの仕事に挑戦し、新たなスキルや知識の獲得につながり、組織は、より多様なタスクに対応できる人材を育成できるでしょう。
3.コミュニケーションとフィードバックの促進
パフォーマンスマネジメントは部下と上司のコミュニケーションの強化を果たします。定期的なパフォーマンス評価やフィードバックセッションを通じて、部下と上司が互いに期待や課題を共有できる環境が提供されます。
これにより、従業員は自身の強みや改善点を把握し、成果向上のための戦略を共同で考えられるようになるのです。フィードバックの透明性は信頼関係を築き、コミュニケーションの質が向上します。
4. 組織全体の効率性と競争力の向上
パフォーマンスマネジメントは組織全体の効率性と競争力を向上させる効果があります。従業員のスキル向上と目標達成により、業務の質と生産性が向上します。
従業員がパフォーマンスを意識して取り組めば、組織は変革や革新を推進しやすくなるでしょう。
さらに、従業員のモチベーション向上や成長のサポートによって、人材の定着率が向上し、優れた人材の確保につながります。これにより組織は競争力を維持・向上できます。
パフォーマンスマネジメント4つのデメリット
ここでは、パフォーマンスマネジメントの主なデメリットを4つ紹介します。
- 主観的なバイアスが影響する
- ストレスとプレッシャーが増加する
- 自己評価の低下につながるおそれがある
- 実態に則さない評価を受けるおそれがある
上記のようなデメリットを理解したうえで、適切に運用することが重要です。
1.主観的なバイアスの影響
パフォーマンスマネジメントでは、上司が従業員を評価するプロセスが中心となりますが、上司の主観的な評価やバイアスが影響するおそれがあり、公平性に欠ける場合があります。
また、評価基準やフィードバックが従業員間で一様ではないと、不満や不公平感が生じるおそれがあります。特に、評価基準が曖昧であると、従業員のモチベーション低下や対立を引き起こすリスクも考えなくてはいけません。
2.ストレスとプレッシャーの増加
社員に対する定期的な評価や目標達成のプレッシャーは、ストレスを引き起こす要因となることがあります。目標の達成に焦点を合わせる一方で、従業員の健康やワークライフバランスが犠牲になるおそれがあります。
特に、目標が厳しく設定されている場合や、成果主義的な文化が強調されている環境では、従業員が過度のストレスを感じるケースも少なくありません。
3.自己評価の低下につながる恐れがある
パフォーマンスマネジメントが適切に実施されない場合、フィードバックの頻度や質が低下するおそれがあります。従業員は定期的なフィードバックを受けることで自己成長や改善を図れますが、フィードバックが不十分な場合、成長の機会が制限されるでしょう。
また、フィードバックがネガティブな側面に偏ると、従業員のモチベーション低下や自己評価の低下につながります。
4.実態に則さない評価を受けるおそれがある
パフォーマンスマネジメントでは、目標設定や評価が過度に数値指向になることがあります。実際の業務やプロジェクトの複雑性や変動に柔軟な対応が難しい場合、目標が現実と合わない状況が生じるかもしれません。
これにより、従業員は達成不能な目標に苦しみ、モチベーションや仕事への取り組みが低下するおそれがあります。
パフォーマンスマネジメントの進め方4ステップ
ここでは、パフォーマンスマネジメントの詳しい手順を説明します。
- 戦略の決定と方針の明確化
- 目標設定
- 人事評価
- 人事育成の実施とPDCA
これらの手順を踏むことで、効果的なパフォーマンスマネジメントを実現できるでしょう。
1.戦略の決定と方針の明確化
まず、会社全体の戦略の中でのパフォーマンスマネジメントの立ち位置を決定します。これは中期経営計画など全体の方針や目標を含みます。各部署は戦略から導かれた部署で必要とされる役割・仕事を明確にし、部署方針を策定します。
2.目標設定
社員は部署方針を踏まえて、期待貢献度やコンピテンシーを基に個別の目標を設定します。上司は従業員の目標達成をサポートするため、助言やフィードバックを提供します。
3.人事評価
社員の目標達成度や成果を評価し、評価結果をもとに上司からフィードバックを行います。
定期的・継続的に、一貫性のあるフィードバックをすることが重要で、そのために過去の評価・フィードバックを参考にしながら実施します。履歴管理にはクラウドシステムの活用が有効です。
人事評価による従業員の貢献度や成果に基づいて、給与や賞与などの処遇を決定します。
4.人事育成の実施とPDCA
評価結果を基に、社員の昇進や異動などのキャリアパスについて決定します。成果を上げるために必要な能力開発や教育研修を提供し、従業員の成長を支援します。
この過程で改善を重ね、制度を自社に合った形にブラッシュアップするのが重要です。
パフォーマンスマネジメントの3つのモデル
ここでは、各論者によって提唱されたパフォーマンスマネジメントのモデルを3つ紹介します。
- 個人とチームの能力開発に重点を置くArmstrong(2000)
- 従業員の意識と組織パフォーマンスの関係性に着目するDen Hartog, Bosselie & Paauwe(2004)
- 継続的な改善プロセスを重視するAguinis(2009)
これらのモデルを参考に、自社の課題や状況に適したモデルを構築することが重要です。
1. 個人とチームの能力開発に重点を置くArmstrong(2000) のモデル
Armstrong(2000)によるパフォーマンスマネジメント(PM)モデルは、イギリス発の先駆的業績として注目されています。このモデルは現代のPM概念のプロトタイプとして位置づけられ、多くの文献で引用の対象となっているのが特徴です。
Armstrongによれば、PMは個人やチームのパフォーマンスを改善するプロセスであり、主な活動として以下が挙げられます。
- 「役割定義」
- 「パフォーマンスについての同意または契約」
- 「人材育成計画」
- 「一年を通じてのパフォーマンス管理」
- 「パフォーマンス・レビュー」
これらの活動は統合され、一つのプロセスを形成しています。このモデルは、従業員のパフォーマンスを向上させ、組織に持続的な成功をもたらす戦略的・統合的アプローチとして定義されています。
2. 従業員の意識と組織パフォーマンスの関係性に着目するDen Hartog, Bosselie & Paauwe(2004) のモデル
Den Hartog et al. (2004)によるPMモデルは、HRM論の視点から新しいPM概念を提案しています。このモデルは、従業員の知覚や態度に関するPMのHRM施策の統合された影響を示しており、フロントラインの管理者がこれらの施策の実行において重要な役割を果たすことを強調しているのです。
このモデルは、組織のパフォーマンスに影響を与える従業員の知覚や態度、そして行動を中心に構築されています。また、このモデルは、経営戦略やほかのHRM制度との連関を強調しており、従業員の知覚や態度が組織のパフォーマンスにどのように影響するかを詳細に説明しています。
3. 継続的な改善プロセスを重視するAguinis(2009) のモデル
Aguinis(2009)は、実践的なパフォーマンスマネジメント(PM)モデルを提唱しています。このモデルでは、PMは絶え間ないプロセスであり、組織文化の一部として多くの企業で定着しています。
このプロセスに含まれる要素は、以下の6つです。
前提条件: 組織ミッションと戦略目標に関する情報を含む知識が必要。また、職務分析を通じて職務に関連する知識も必要。
パフォーマンス計画: 結果や行動、人材育成計画を含む。目標、説明責任、パフォーマンス基準が議論される。
パフォーマンス実行: 部下と上司の双方がパフォーマンスに責任を持つ。フィードバックの提供やオープンなコミュニケーションが重要。
パフォーマンス・アセスメント: 従業員と上司の双方が従業員のパフォーマンスを評価する。従業員の参加はコミットメントを高め、有益な情報を提供する。
パフォーマンス・レビュー: 部下と上司が過去のパフォーマンスについて議論する。将来への焦点も持つ。
パフォーマンス刷新と再構成: レビュー期間中に収集された情報を活用して調整。新たな説明責任や目標が追加される場合もある。
これらの要素は連関しており、とくに前提条件とパフォーマンス計画、そしてパフォーマンス実行とアセスメントの関係性が重要です。
パフォーマンスマネジメントを行う3つのポイント
ここでは、パフォーマンスマネジメントを実施する際のポイントを3つ紹介します。
- 有効なツールを活用する
- 組織の状況やニーズに合わせた仕組みを構築する
- 対話を重視する
これらのポイントを押さえることで、従業員の成長と組織全体の成果向上につながるパフォーマンスマネジメントを実現できるでしょう。
1. 有効なツールを活用する
パフォーマンスマネジメントの成功には、適切なツールの使用が不可欠です。人事評価クラウドシステムなどのツールの活用が、業務プロセスの効率化や人事データの正確な集計を可能にします。
これにより、従業員の成果や貢献を客観的かつ詳細に評価し、適切な処遇や育成プランの策定が可能です。
また、ツールを通じてフィードバックの記録や目標の追跡も容易になり、部下と上司のコミュニケーション強化にもつながります。
→人事評価クラウドシステムを含め、人事評価制度の再構築に豊富な実績を持つあしたのチームまでぜひご相談ください!
2. パフォーマンスマネジメントをそのまま導入しない
パフォーマンスマネジメントの概念はアメリカ発祥ですが、そのアプローチ方法は人事考課制度との関係性の中で理解されるべきです。パフォーマンスマネジメントは人事考課制度とは別のアプローチとして位置づけられ、組織全体の戦略的なパフォーマンス向上に焦点を当てることもありますが効果的ではないと考えられます。
また、すべての組織は異なる特性や文化を持っており、そのままの形でパフォーマンスマネジメントの導入が適切でない場合もあります。
組織のニーズに合わせてプロセスや手法を調整して、絶えず改善し続ける姿勢が求められるでしょう。
3. 対話を重視する
パフォーマンスマネジメントの成功には、社員全員が周知している公平な仕組みの基で、上司と部下との対話が欠かせません。
社員と管理者の対話を通じて目標や成果の共有を行い、フィードバックを逐次提供することで、従業員は自身の進捗状況や成長の方向性を理解しやすくなります。
透明性を持ったプロセスで従業員の信頼感を築き、対話によってパフォーマンスを正確に把握することが必要です。
パフォーマンスマネジメントの観点による人事評価制度導入前後の変化の調査・分析事例
ここでは、日本企業における人事評価制度導入前後の変化をパフォーマンスマネジメントの観点で調査・分析した事例を2022年発行の日本労務学会誌より紹介します。
- 包装材メーカーA社・営業部の人事評価制度導入の背景と運用後の変化について
- 調査内容と方法
- 「パフォーマンスマネジメント」の観点でみる人事評価制度導入前後の変化の比較
この事例から、パフォーマンスマネジメント導入の効果と課題が具体的に見えてきます。
包装材メーカーA社・営業部の人事評価制度導入の背景と運用後の変化について
A社の営業部における成果主義的人事評価制度の導入と運用の変化に関する調査・分析結果を概説します。
A社は包装材メーカーで、当時営業部は少人数で個別管理可能であったこともあり給与・賞与決定には社長の意向が大きく影響していました。
営業部長が従業員と面談をしていたものの処遇には反映されていませんでした。事業拡大のため人員拡大を目指すなかで、給与水準の低さや賞与の不透明さを理由に退職者が出たり、人材採用も思うように進まなかったりしたことから、成果主義的な人事評価制度の導入が必要とされる状況にありました。
人事評価制度導入後は,目標管理が行われ、目標の達成度を期末の人事考課(主に業績評価) で評価し、そのための面接も実施。普段の仕事ぶりについてコンピテンシー評価や 評価者研修も実施され、結果を限定的ですが「処遇」(特に賞与)に反映するように変更されました。
調査内容と方法
調査は導入前後の2時点で全非管理職・正規従業員に対して匿名式の質問票への記述方式で行われました。サンプルの部署別分析に「PM(パフォーマンスマネジメント)サイクル」に基づき、導入前後の要素に関する平均値の変化や相関分析が行われました。
「PMサイクル」は成果主義的な評価・処遇を含んだ評価・処遇・育成の3機能を統一的に考えるシステムであり、人事部が構築し、各職場の管理職により運用されるものです。
「パフォーマンスマネジメント」の観点でみる人事評価制度導入前後の変化の比較
調査・分析の結果、成果主義の人事評価制度の運用後は「(期初)目標設定」「(期末)貢献の評価」について、「納得度」の値が上昇しました。
また以前から営業部長が行っていた面談による影響の可能性も示唆されており、パフォーマンスマネジメントにおける「対話」の重要性や、パフォーマンスマネジメントと人事評価制度を連携させることによる従業員の評価や処遇への納得度に与える影響がわかる事例です。
リンク先では調査の詳細が確認できます。
引用・参考:日本労務学会誌 日詰 慎一郎著「成果主義導入による施策間関連性の認知の変化―包装材メーカー A 社における「PM 運用認知モデル」に基づく検証―」
パフォーマンスマネジメントの成功事例
パフォーマンスマネジメントの成功事例を紹介します。
紹介する企業は以下のとおりです。
- アドビシステムズ
- スターバックスコーヒー
- ゼネラルエレクトリック
成功事例から、効果的なパフォーマンスマネジメントの導入方法やポイントを学びましょう。
アドビシステムズ
アドビ(Adobe)は、従来の年次評価制度を廃止し、「チェックイン(Check-In)」と呼ばれる新しいパフォーマンスマネジメントシステムを導入しました。
従業員とマネージャーが四半期ごとに面談を行い、目標の進捗やパフォーマンスについて話し合います。
チェックインの特徴は、以下のとおりです。
- 継続的な対話:従業員とマネージャーが定期的に目標設定やフィードバックする
- 即時フィードバック:年に一度ではなく、その場でアドバイスを提供する
- キャリア開発重視:評価だけでなく、将来の成長のことも話し合う
- 柔軟性:厳格な数値評価やランク付けを避け、柔軟に評価する
上記の結果として、従業員のエンゲージメントと生産性が向上しています。
スターバックスコーヒー
「Mission & Values」を基盤にすべてのビジネスを展開するスターバックスコーヒーは、従業員全員を「パートナー」と呼び、個人と会社の価値観の共通点を重視します。
採用では「自分を変えたい」「何かを成し遂げたい」と語る人材を積極的に採用し、「価値観ワーク」で多様な価値観を認め合う文化も醸成しています。
人材育成の特徴は、以下表のとおりです。
3段階の成長ステージ | 自己存在の証明・自分への期待感・他者への影響の3段階を経て「自己認識から他者貢献へ」思考を変化させていく |
4段階のOJTプロセス | ミッションへの共鳴・ビジョニング・コーチング・内発的動機の醸成を経て「内発的動機づけ」までをうながす |
グリーン・エプロン・カード | パートナー同士で、企業理念に沿った行動を称え合う手法として機能する |
上記の取り組みにより、自発的な成長と相互理解の文化が醸成されています。
スターバックスの成功は、人を軸にしたビジネス展開と継続的な対話重視の姿勢にあります。
ゼネラルエレクトリック
ゼネラルエレクトリックは「続く対話(Continuous Dialogue)」と呼ばれるパフォーマンス管理システムを導入しました。
マネージャーと従業員が定期的に対話を行い、リアルタイムでフィードバックとサポートを提供します。
この取り組みにより、従業員は常に自分の業績を振り返り、改善点を把握できています。
上記のアプローチ実施後は、従業員の満足度を高めるとともに、全体の業績向上にも寄与しています。
パフォーマンスマネジメントに関するよくある質問
パフォーマンスマネジメントに関するよくある質問を見てみましょう。
- パフォーマンスマネジメントの注意点は?
- 目標管理制度(MBO)との違いは?
- パフォーマンスマネジメントの課題は?
それぞれ詳しく解説します。
パフォーマンスマネジメントの注意点は?
管理者が従来の評価方法から脱却し、継続的なフィードバックやコミュニケーションを重視する必要があります。
それに合わせ、上司・部下間で頻繁な対話が重要です。目標の進捗を確認し、必要に応じて目標を調整するのが望ましいでしょう。
目標管理制度(MBO)との違いは?
パフォーマンスマネジメントと目標管理制度(MBO)の違いを以下の表にまとめました。
特徴 | パフォーマンスマネジメント | 目標管理制度(MBO) |
フィードバックの頻度 | 定期的 | 年次評価が中心 |
目標設定のアプローチ | 上司と従業員の共同設定 | 従業員が自ら設定 |
主な目的 | 従業員の成長と能力向上 | 業績評価 |
進捗確認 | 上司と従業員がともに行う | 達成度で評価 |
改善のタイミング | リアルタイムでの改善が可能 | 年次評価後の改善が中心 |
上記表からわかるように、フィードバックの頻度や、目標設定のアプローチなどの点で違いがあります。
パフォーマンスマネジメントの課題は?
パフォーマンスマネジメントの課題として、以下の3点が代表的です。
- 評価基準の設定が困難である
- 上司と部下のコミュニケーションの質が低くなってしまうケースがある
- 従来の評価制度からの移行が困難である
上記の課題を解決するには、以下の具体的な行動を取りましょう。
- 評価基準を明確化するため、部署ごとに具体的な成果指標を設定する
- 定期的な1on1ミーティングを実施し、上司と部下の対話の機会を増やす
- 新制度への移行は段階的に行い、各段階で従業員からフィードバックを収集する
これらの施策を通じて、従業員一人ひとりの意識を高め、パフォーマンスマネジメントの効果を最大化できます。
パフォーマンスマネジメントを参考に自社の人事評価制度を再構築しよう
今回は、パフォーマンスマネジメントの意味や特徴、メリット・デメリットなどを紹介しました。
導入して成果を出すためには、有効なクラウドシステムの使用や、組織のニーズに合わせて柔軟な調整が大切です。
また、対話を重視し、継続的な改善と評価の徹底も欠かせません。これらを通じて、従業員の意欲向上と組織の成功を実現します。
アドビシステムズやスターバックスコーヒーの事例からもわかるように、パフォーマンスマネジメントは従業員の生産性向上に貢献します。自社に最適なシステムの構築を目指し、パフォーマンスマネジメントの導入で組織全体の生産性改善を目指しましょう。
参考資料:北九州市立大学『商経論集』第47巻第3・4号(2012年3月)福 井直人著「パフォーマンス・マネジメント概念に関する理論的考察」
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