本当に評価すべきはどんな人?人事評価のための正しい基準

(写真=Adam Gregor/Shutterstock.com)

社内で「あの人は仕事がデキる」という評判を耳にしたり、上司が「あの部下は仕事がデキる」と思ったりした場合、つい人事評価で高い評価を与えてしまいがちです。しかし実は「仕事がデキる人」=「評価の高い人」という考え方は必ずしも正しいわけではありません。その理由と人事評価における正しい基準の持ち方について解説します。

「仕事がデキる人」=「評価の高い人」ではない理由

仕事がデキる人に高い評価を与えてしまうと、組織にとって本当に必要な人材を評価できず、むしろ組織にとってマイナスになる人材を評価してしまう可能性があります。

その典型例は、いわゆる「クラッシャー上司」です。部下を精神的に追い詰め、時には退職に追い込むこともある人物のことです。問題なのはクラッシャー上司の多くは成果を出す、仕事がデキる人材であるところです。さらに要領の良い人物が多いため、組織側が問題化しなかったり、問題そのものに気づけなかったりするのです。本来であればコンプライアンス(法令遵守)や、組織のパフォーマンスの観点からも、クラッシャー上司は評価するべきではありません。

しかし企業の大小を問わず、近年は軒並み人材不足に悩まされています。それにもかかわらずクラッシャー上司によって、企業の未来を担う人材が潰されてしまうのは、遅かれ早かれその企業は人材面で苦境に立たされるでしょう。

このように一見、仕事がデキる人に見えても、組織全体や組織の未来という大きな視野から見てみると、評価するべきではないというケースはしばしば起こり得ます。したがって安易に「仕事がデキる人」=「評価の高い人」と考えてしまってはいけないのです。

結果を公平に評価することが大事

本来の人事評価の役割とは、人材育成と能力開発です。そのために人事評価は結果を公平に評価するものでなければなりません。結果を評価するためには、以下のようなステップを踏む必要があります。

●結果を評価するための6ステップ
1.企業の経営理念や事業戦略を立てる
2.経営理念や事業戦略に基づいてどのような人材や能力が必要かを検討する
3.必要な人材や能力を育成・開発するにはどのような結果を評価するべきなのかを考える
4.企業が求める結果を数値化し、部門・個人の目標に落とし込む
5.目標の達成率という結果に応じて評価を下す
6.未達の原因の洗い出しや、より高い目標設定を行いながら、PDCAサイクルを回していく

一口に「結果」と言っても、売上や利益、人材育成など基準はさまざまです。これを企業のための人材育成と能力開発につなげるためには、経営理念や事業戦略といった「そもそも企業が何をしたいのか」と、「評価する結果」が紐付いている必要があります。

こうして企業が求める結果の提示と各社員の出した結果に対する評価を行うことで、各社員は「どう成長すれば評価されるのか」「評価されるためには何が足りなかったのか」を理解できます。その積み重ねの人事評価が人材育成と能力開発につながっていくのです。

正しい基準で人事評価することが部下の育成、能力開発につながる

正しい基準で公平に人事評価を下すのは簡単なことではありません。しかしそれを実現できなければ、人材育成と能力開発へとつながる人事評価にはなりません。

上で解説した6つのステップにある通り、結果を出すためには、それぞれのステップで検討内容や目標をしっかりと定めることが重要です。上司が明確な指針や数値目標を示して正しく評価することで、部下は迷いなく高いモチベーションで業務を行えます。そして、的確なPDCAサイクルを回し続ける仕組みを構築することで、人材育成や能力開発につながり、結果として人材が定着する組織になるでしょう。ここで取り上げた内容を参考に、今一度自社の人事評価の基準を見直してみましょう。

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