従業員の満足度が得られ、会社業績と連動した評価ができる人事評価の方法として「コンピテンシー評価」が注目されています。
ITの革新やコロナ禍によるリモートワーク制度の定着など我々のビジネス環境は急速な変化を迎えています。このような社会状況で、人材が十分に力を発揮できる評価方法として期待されているのがコンピテンシー評価です。
今回はコンピテンシー評価の概要、基準と項目設定、具体的な評価項目について解説します。
コンピテンシー評価とは
コンピテンシー評価とは、高いレベルの業務成果を生み出す、「仕事のできる人の行動特性(コンピテンシー)」を基に評価項目や評価基準を設定して、人事評価を行うものです。
会社が社員に求める「仕事ができる人」を評価項目として明示することで、自社の方向性や理念を社員と共有し、明確な目標に向けて社員の意識が高まることが期待できます。
また、成果主義や曖昧な基準での業務プロセスに対しての評価が見直され、多面的な評価が可能となるでしょう。これまで成果でしか明確な指標が示せなかった会社にとっては、成果ではない部分の基準が作りやすくなります。
業務プロセスと成果両方を評価でき、従業員の納得も得られやすい評価システムと言えるでしょう。
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コンピテンシー評価の基準と項目設定
コンピテンシー評価を導入する際に重要になるのが、基準と評価項目の設定です。
一般的には、コンピテンシー評価の基準は大きく分けて、「全社に共通するもの」と「職種や役職に合わせた個別のもの」の2つあります。
全社共通の評価項目は、企業のミッションや状況、経営方針や理念などによって設定されます。
個別の評価項目は、営業職・管理職・クリエイティブ職などの職種や役職などから評価項目は設定されます。
次に、全社共通の項目、役職、職種などで大分類した項目を基に、実際にコンピテンシー評価で使う細かい評価項目を設定していきます。それぞれの項目は、内容が重ならず、全ての行動を網羅していることが理想とされています。
コンピテンシーモデルの3 つのタイプ
コンピテンシー評価をするためには、上記評価基準と項目設定の基礎となるモデルの設計が必要です。コンピテンシーモデルには、主に以下の3つのタイプがあります。
理想モデル型
企業にとって理想的な人物像に基づいて設計します。
モデルとなる生産性の高い人材が存在しない場合に有効です。
実在型モデル
企業内に実在する生産性の高い人材を参考に設計します。
多くの企業では実在型モデルを使用しています。但し、その行動特性は他の従業員にとって再現性がなければなりません。そうでない場合、モデルとして参考にするか否かを検討する必要があります。
ハイブリッド型モデル
実在する生産性の高い人材をベースに、企業の理想像で補完した人物像に基づいて設計します。
具体的なコンピテンシー評価項目|8群と75項目
株式会社あしたのチームではコンピテンシー評価項目を大きく8分類に分け、
そこからさらに75個の評価項目を設定しています。
大分類8群
A群:自己成熟性
B群:変化行動・意思決定
C群:対人(顧客)・営業活動
D群:組織・チームワーク
G群:情報
E群:業務遂行
F群:戦略・思考
H群:リーダー
「あしたのチーム コンピテンシーマスター評価項目一覧」より
A群B群は全社共通のコンピテンシー項目で、営業関連職種にはC群、全ての職種に適したD群G群、管理部門職種にはE群、企画・クリエイティブ職種にはF群、役職者にはH群など、立場や職種に合わせた分類分けを行っています。
また、上記8群について、従業員の能力や特性を評価するための詳細な項目(全75項目)を、下記の通り設定しています。
【全社共通目標向き】
A群:自己成熟性
■冷静さ 感情に動かされることなく、落ち着いて物事に動じない
■誠実さ 仕事や他人に対して、まじめで真心がこもっている
■几帳面さ 物事をすみずみまで気をつけ、きちんとしている
■慎重さ メリット・デメリットを考え、注意深く行動する
■ストレス耐性 落ち込むことがあっても素早く立ち直る
■徹底性 一度決めたことは、途中で投げ出さず、何度でも繰り返して行う
■率直性 自分自身や自分の考えを包み隠さず表明する
■自己理解 自己を正確に認識し、対処する
■思いやり 相手の立場や気持ちを理解し対処する
■ビジネスマナー 一流のビジネスマンとして恥ずかしくない立ち居振る舞いをしているB群:変化行動・意思決定
■行動志向 ためになることであれば体を動かすことをいとわない
■自立志向 自らの立てた規範や意義・目的に従って行動する
■リスクテイク 失敗の可能性があっても、思切って可能性のあることに冒険を試みる
■柔軟思考 状況の変化に応じて、臨機応変に対処している
■素直さ 相手の意見や指摘をまずは受け入れる
■自己革新(啓発) 自己の足りない部分や知識・技能を、自ら積極的に取り入れている
■チャレンジ性 斬新なテーマや、高い目標に果敢に取り組んでいる
■反転志向 意図的に逆の行動をとり、真意や効果を引き出している
■タイムリーな決断 どんな状況、問題でも時機を逸することなく意思決定している
■目標達成への執着 最後の1分、1秒まで目標達成をあきらめずに、打てる手はすべて打つ【営業関連職向き】
C群:対人(顧客)・営業活動
■親密性/ユーモア 心からの感じの良さ/その場をなごますユーモアがある
■第一印象度 最初に会って1分以内の、他人に対して好印象を与える本人の言動
■プレゼンテーション力 伝えようとしている内容を、的確かつ説得力をもって表現している
■傾聴力 相手の立場に立って話を聴く
■条件交渉力 組織を代表して社外の人と接し、協力・理解を取りつける
■新規開拓力 新しい顧客を増やす力
■顧客維持力 現在の顧客との緊密さを維持できる力
■顧客拡大力 現在の顧客に、新商品やサービスを新たに提案し、顧客の売上・利益を拡充できる力
■人物評価 相手の能力・強み弱みを正確に把握し、対応する
■人脈 当社の取引に革新を起しそうな人達と懇意である【どの職種にも適している】
D群:組織・チームワーク
■上司・先輩との関係 上司・先輩とのコミュニケーション、補佐代行を怠らない
■チーム精神の発揮 効果的に仕事を遂行するために、自ら苦労を買って出る
■ムードメーカー性 本人の存在や言動が、チームを目標達成意欲にみなぎらせる
■マンパワーの結集 (リーダーではないが)多くの人の知恵や力を集め、まとめ上げる
■政治力 自ら働きかけ、組織を動かすためのツボや手段を持ち合わせているG群:情報
■情報の収集 さまざまな情報源から定期的に豊富な情報を仕入れている
■情報の整理 集めた情報をすぐに使えるように定期的に整理・加工している
■情報の伝達 相手の欲している情報をタイミング良く伝える
■情報の活用と共有化 知り得た情報を公開し、共通のノウハウとしている
■情報の発信 情報を自分なりに追加、修正、加工し、周囲に発信している【管理関連職向き】
E群:業務遂行
■専門知識/革新技術の習得 業界で一流といわれる知識と技能を習得している
■文章力 目的が相手に明瞭に伝わる文章を書いている
■計数処理力 計算が速く、数値の意味することを即座に理解している
■安定運用 業務の流れを把握し、担当業務を正確に運用している
■処理速度 業務遂行スピードが速い
■コスト意識 費用対効果を常に考え、最低限のコストで業務遂行をしている
■トラブル処理 万一、クレームやトラブルが生じた場合でも的確に処理している
■計画性 スケジュールにもとづき、段階を追って物事を進めている
■業務改善/品質の向上 担当業務のやり方・手段、あるいは仕事そのものを、自ら提案してより良くしている
■業務企画力 業務の流れや段取り、ツール等を独力で作れる力【企画・クリエイティブ職種向き】
F群:戦略・思考
■視点の広さと深さ 先見性、革新性を持って課題をとらえる
■アイデア思考 新たな発想で事実や情報の活用を考える
■論理思考 物事を客観的にとらえ、筋道を立てて自分の考えを展開する
■状況分析 物事の原因と結果を正確にとらえる
■解決策の立案 (小さな改善提案ではなく)担当業務における構造的・潜在的な問題、将来的な課題に対するプランニング
■リスク管理 あらかじめ予測されるトラブルを想定し、予防策や代替案を用意する
■コンセプトの設定 今後取り組むべき課題やキャッチフレーズを自ら提示する
■経営資源の活用 目標達成のために、ヒト・モノ・カネ等、経営資源の活きた使い方をする
■アイデアを活かす力 他人のアイデアを加工し活用する
■思考持久力 一つのテーマに対して、あらゆる角度から長期にわたり徹底的に考える【役職向き】
H群:リーダー
■理念・方針の共有 経営理念・方針、新しいやり方をわかりやすく部下・後輩に理解させ、実行させる
■経営への参画 部下・後輩を上手に計画・企画立案や改善活動に参加させる
■部下・後輩の指導/育成 育成 部下・後輩に気づきを与え、仕事を通じて計画的に部下の人間性を高め、成長させる
■権限の委譲 やる気と意欲のある部下・後輩に、思い切って仕事を任せ、伸び伸びと仕事をさせる
■部下・後輩への配慮 部下・後輩への気配り、心配り
■コミュニケーションの充実 ひとり一人の部下・後輩とより良い信頼関係を築き、効果的に仕事に活用する
■指揮・命令・徹底 目標や新しいやり方、規則やルールを部下・後輩に徹底して守らせる
■経営幹部との関係 い意味での緊張感を保ち、適切な報告・連絡・相談をする
■部下・後輩に対する公平さ 部下・後輩を分けへだてなく扱う
■採用と抜擢 「素材」を見出し、場を与える
■目標の管理および評価 具体的な目標を設定し、定期的に途中面談し、結果を評価する
■部下・後輩との対立 部下・後輩に嫌われることを恐れず、言うべきこと厳しいことを堂々と言う
■システム管理力 既存の管理システムを利用し、経営の実効性を上げている
■業務管理力 業務効率アップのために、仕事の流れや分担をしっかりとチェックする
■後継者の育成 自分の腹心(分身)決め、計画的に特別教育している「あしたのチーム コンピテンシーマスター評価項目一覧」より
コンピテンシー評価を活用して公平公正な評価を行う
コンピテンシー評価は、従来使われていた評価方法に見られた課題を解決する有効策として、多くの企業で採用されはじめている評価方法です。
コンピテンシー評価は従業員を公平公正に評価でき、成果につながりやすい方法として注目されています。
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