松本隆博の「ng!相談室」は、仕事が出来る人の行動特性である「コンピテンシー」を用いてお悩みを解決するコーナーです。ng!はno goodではなく「never give up!」。会社員、経営者を経てシンガーソングライターになった松本さんならではの視点からみなさんに金言を授けます!
残り数カ月の学生生活。社会人の先輩から、「社会人になったら自由な時間が無くなるから、学生のうちはとにかく遊んだほうがよい」とのアドバイスを受けます。一方、若くして起業をするような人たちは、学生のうちから社会に出て、人より経験を積んでいたとも聞きます。
今内定をもらっている会社は、実は第一志望ではありません。遊びたい気持ちがある一方、このまま就職してもよいのだろうか、ビジネス本を読んだり、インターンに行ったりした方がよいのだろうかと、漠然とした不安に駆られています。松本さんがもし大学生に戻るとしたら、どんなことをしますか?
それは、ぜひ遊んでください!全力で遊んでください!
身も蓋もない言い方かもしれませんが、どんな勉強をしようが、社会に出てすぐに役立つことなんて稀です。旅に出るのもよし、昼から飲んだくれてもよし。会社員になったら、平日を満喫できることは減りますから、今のうちに謳歌しておくのがよいでしょう。
時間を無駄にしろということではありません。このご時世、どこにインスピレーションが転がっているか分からないから、アンテナを立ててほしいのです。
僕が社会人になった頃、3~4年は全く休まずに全精力をかけて働いていました。ある日、高熱が出てしまい、やむを得ず休んだことがあったのです。自宅のアパートで横になっていると、保育士が子どもを引率する声、ゴミ収集車、おばさんの井戸端会議、色々な音が耳に入ってきます。そのとき、「平日にしか聞こえない音があるんだ」ということに気付きました。どこにビジネスインサイトが転がっているか分からない。しゃかりきに勉強するのも良いですが、今しか無い環境にどっぷり浸かってみるのもよいのでは?
昔から懇意にしてもらっている、吉本興業・元常務の木村政雄さんが、こんなことを言っていました。「社会人になるのは、ドッジボールの試合に途中参加するようなものだ」と。これ、すごくよく分かります。ルールも知らないところに突然放り込まれて、ボールはビュンビュン飛んでくる。でもしばらくすると、だんだんルールが分かってきて、逃げるだけではなく、ボールをキャッチして攻撃に転ずることもできるようになったり。初めて社会に出るときというのは、こういうものです。
そのとき大切にしたいのは「素直さ」です。社会に出て、会社と合わないところや綺麗事だけでは済まないことも出てくるかもしれません。若手のうちに伸びる人と伸びない人の差は、置かれた環境を素直に受け入れられるかどうかにかかっていると思います。
僕が大学生に戻ったら何をするか? ふてくされた自分を葬って、今置かれている環境を受け入れるところから始めたいです。「働くとは」をテーマに大学で講義をしていると、学生の覇気に差がみられることがあります。第一志望で入学した学生と、第一志望に落ちて滑り止めで入学した学生なのではないかと思います。前者は目が輝いているのに対して、後者は「自分の実力はこんなものではない」と、周りを少し小バカにしたような態度なんですね。何を隠そう、僕自身が後者のタイプでしたから、よく分かります。
まずは今いる環境を受け入れること。会社の面接で、「そうか、キミは実力以下の大学に入ったんだね。可哀想に。じゃあうちの会社では全力で頑張ってくれ。内定!」とは、絶対にならないですよね。
過去の自分にも、今ふてくされている若者にも、こう伝えたいです。
ちんけなプライドなんか、捨てちまえ!
悔しい気持ちは仕方ない。でも、その焦燥感から抜け出した人から伸びていきます。これは、就職活動でも一緒なんじゃないかなと思います。行きたい会社から内定が出ず、不本意な就職をする人も決して少なくないでしょう。「こんなはずじゃなかった」と拗ねるのではなく、なにくそ精神で、まずは置かれた場所で花を咲かせることを考えてみてほしいと思います。やっているうちに、きっとルールが分かってきますから。
相手の意見や指摘をまずは受け入れること。自分より経験の長い先輩からのアドバイスは、だいたいの場合正しいです。素直に話を聞くことができる人のもとには、人も情報も集まります。合う・合わないの判断は、やってみてから決めてもよいのでは。
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