近年注目されているリモートワークという働き方。新型コロナウイルスの感染拡大により、企業は急ピッチで導入を進めています。
一方、オフィスワークとの違いに戸惑い、導入を先送りにしている企業も少なくありません。
この記事ではリモートワークの普及率、導入時の課題やリスクと、人事部が取り組むべき課題解決策を解説します。
コロナショックで急拡大。リモートワークが広がる理由
リモートワーク(remote work)とは、オフィス以外の場所を中心として仕事をする働き方です。
「遠い」「離れた」という意味の「remote」と、「働く」という意味の「work」が言葉の由来です。
リモートワークは、必ずしもオフィスや職場に通勤することを前提とせず、コミュニケーションツールや通信機器などを活用し、遠隔でいながら仕事をする点が特徴的です。
近年、リモートワークはICT(情報通信技術)の発達や働き方改革の風潮などを背景に広がってきました。
さらに、2020年は新型コロナウイルスが発生し、感染拡大を防ぐ手段としても注目されています。
リモートワークの普及率
企業の経営者や人事担当者がリモートワークを導入するかどうか検討する際に役立つのが、現状の普及率です。
ここでは国土交通省「平成29年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果の概要-」をもとに普及率を紹介します。なお、ここではリモートワークとテレワークを同義として解説します。
雇用型の普及率
雇用型とは、企業に雇用されている労働者を指します。雇用型のうちテレワークをしている人の割合は14.8%でした。
年齢が低いほどテレワークの普及率が高い傾向にあり、50〜59歳男性は18.7%なのに対して、15〜29歳男性は21.9%、30〜39歳男性は21.6%になっています。
男女でも差があり、男性の方が普及率は高い結果です。全年齢の合計では、男性の普及率は19.9%なのに対して、女性は8.7%でした。
自営型の普及率
自営型とは、「自営業・自由業、及び家庭での内職を本業としている」人です。
自営型のうち、テレワークをしている人の割合は22.2%で、雇用型(14.8%)よりも高い結果でした。ここでも若年層ほどテレワークの普及率が高く、50〜59歳男性は18.5%、同年代女性は16.9%なのに対して、15〜29歳男性は40.5%、30〜39歳女性は40.0%という高い結果です。
なお、雇用型とは異なり、全年齢の男性の普及率が22.4%、同女性が21.4%と、男女別の普及率に大きな差はありませんでした。
業種別の普及率
業種別の普及率では、雇用型の「情報通信業」(33.8%)や「学術研究、専門・技術サービス業」(27.0%)が最も高い割合でした。なお、自営型もそれぞれ40.0%、38.6%という高い数字です。
一方、テレワークが普及していない業界もあります。
雇用型では「医療、福祉」(8.4%)、「宿泊業・飲食業」(7.2%)が、自営型では「生活関連サービス業、娯楽業」(9.5%)や「農林水産・鉱業」(9.0%)が特に低い普及率でした。
職種別の普及率
職種別の普及率では、雇用型では管理職(33.2%)、営業(29.2%)、研究職(28.7%)が特に高い割合でした。
自営型では、「研究職」(50.0%)が最も高く、それに「専門・技術職(技術職)」(31.1%)や「専門・技術職(教員)」(28.3%)が続くという結果です。
なお、雇用型と自営型を問わず、「輸送・機械運転従事者」や「農林漁業」、「生産工程従事者」はいずれも普及率が10%未満でした。
リモートワークの課題・リスク
働き方改革や新型コロナウイルスの感染防止といった背景もあり、リモートワークはますます注目されています。
しかし、リモートワークには弱点があることも事実です。ここではリモートワークの課題やリスクを紹介します。
セキュリティ課題
リモートワークではセキュリティを確保する取り組みを進める必要があります。
オフィスで勤務させる場合、社内ネットワークの活用やファイアウォールなどによって、セキュリティを強化することが可能です。また、社内システムによって不正アクセス検知やメール誤送信防止などもしやすいでしょう。
一方、リモートワークでは端末の管理やネットワークの接続は社員個人に任せることになります。管理がずさんであれば、情報漏洩や端末の紛失・盗難といったリスクを防ぎ切れません。トラブルを防ぐためには、社員に任せっきりにするのではなく、会社としても管理する施策が必要です。
コミュニケーション課題
リモートワークではコミュニケーションの質や量が減ってしまいがちです。会社側としてはこのことへの対策も求められます。
オフィスや現場であれば社員同士が直接対面するため、細かい意思疎通や綿密なケアが可能です。廊下や休憩時間の雑談から予期しないアイデアが生まれる効果もあるでしょう。
一方、リモートワークでは、コミュニケーションが必要最低限のものにとどまってしまう可能性があります。
電話やビデオ会議で部下の声や姿を確認することはできますが、一箇所に集合する方法と比べると、意思疎通の効果が薄れることも課題でしょう。
マネジメント課題
管理者側では勤怠管理や人事評価といった面で課題があります。
勤怠管理については、正確な勤怠時間の把握が困難です。オフィスや現場であれば打刻端末があるので勤務時間を把握できますし、管理者の目が行き届くので働きすぎていないかなどをチェックできます。
しかし、リモートワークでは管理者の目が届かず、勤務時間や休憩の実施などをチェックすることは簡単ではありません。
正確な勤務時間が把握できないので、いわゆるサービス残業や過労などをどのように防ぐのかという課題が残ります。
人事評価についても、管理者が部下を直接見られないため、適正な評価が難しくなります。
オフィスや現場勤務であれば、管理者が部下の仕事ぶりや取り組みなどをチェックし、人事評価に反映することができます。
しかし、リモートワークが主流になると成果物や遠隔でのコミュニケーションなどを評価の材料にするしかないので、評価の幅が狭まりかねません。
遠隔で社員を適切に評価するためには、人事評価制度そのものや仕組みを見直す必要があります。
リモートワーク成功の鍵は環境構築。人事部が取り組むべき課題解決策
リモートワークの課題を克服するためには、環境を構築することが重要です。ここでは人事部が取り組むと良い解決策を紹介します。
セキュリティ対策
リモートワークでは、セキュリティを確保する対策が求められます。総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」(第4版)によると、ルール、人、技術の3つがバランス良く対策されていると安全性が高いということです。
企業としてはこれら3点について、リモートワークで行う仕事内容や業務の進め方に合わせて適切な方針を策定する必要があります。
例えば、ルールについては「公共ネットワークを使用しない」など、シンプルかつ安全性が保てるようなルールを定めるのは1つの手段です。
人については、教育や啓発によって、社員の安全性への意識を高める必要があります。技術については、認証、検知、制御、防御といった点について物理的な対策が必要です。
コミュニケーション促進策
リモートワークでは、コミュニケーションの促進も重要です。
リモートワークであっても、個々人が独立して仕事を進めるケースだけでなく、タイムリーに連携を取ったり、必要な情報をメンバー間で共有したりといったコミュニケーションが必要なケースも多くあります。
そこで、離れていながらもコミュニケーションを円滑化するためのツールの導入も検討しましょう。
例えば、「ZOOM」のようなオンラインミーティングを実施するためのビデオ会議システムや、「BOX」のようなファイル共有、スケジュール管理、プロジェクト管理を行うグループウエア系ツールは便利です。
マネジメント強化
リモートワークでもマネジメントを機能させるためには、勤怠管理や人事評価のツールを導入することも有効です。
勤怠管理については、PCやタブレットといった端末の起動時刻を記録できるシステムもあります。リモートワークであっても実態に近い勤務時間を把握できるので、働きすぎなどを防止できるでしょう。
人事評価についても専用のクラウドシステムがあります。例えば、リモートワークが主流になれば評価方法が変わる可能性もありますが、評価の目標設定や運用が可能なツールもあり、働き方を変える際に便利です。
また、クラウドシステムであればシステム上でデータを一元管理できるため、複数の人事担当者やマネージャーが評価を入力したり共有したりすることが容易になります。
テレワークの勤怠管理や人事評価はクラウドツールなどシステム導入がおすすめ
企業がリモートワークを導入する際、経営者や人事担当者としては、特に勤怠管理や人事評価の仕組みを整備することが欠かせません。
リモーワークでは直接部下と対面する機会が減るため、管理を行き届かせたり、適正な評価制度を構築したりすることは、適正な労務や人事の観点から重要なのです。
人事評価の運用については、クラウド型のツールが非常に有効です。
「あしたのクラウド™HR」は、クラウド上で目標設定・評価の入力、共有、分析などを一元的に実施できます。
リモートワークを実施する中で人事評価業務を効率化するためにも、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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