多くの企業で魅力的な福利厚生が取り入れられています。アニバーサリー休暇もその福利厚生のうちのひとつです。
この記事では経営者や人事部担当者の方に向けて、そのアニバーサリー休暇の意味や、導入時のメリット、具体的な企業事例などをお伝えします。
アニバーサリー休暇とは?
アニバーサリー休暇とは従業員の記念日に、休暇を付与する制度のことです。
主に従業員本人や子どもの誕生日、パートナーとの記念日などに休暇を与える企業が多くなっています。ただ「具体的にどの日を記念日として休暇を与えるのか」「有給として扱うか、無給として扱うか」などは各企業の就業規則によって異なります。
また、企業によってはアニバーサリー休暇を数日与えたり、どの日を休暇とするか従業員自身に決めさせたり、取得時に手当を支払ったりしているケースもあります。
アニバーサリー休暇の普及背景と必要性
今やさまざまな企業の福利厚生の1つとして取り入れられているアニバーサリー休暇ですが、普及の背景には年次有給取得率が関係しています。
厚生労働省はワークライフバランスの取れた働き方ができる社会の実現を目指しており、それに伴い2020年の年次有給取得率の目標を70%としています。
しかし、取得率はなかなか上がらず、厚生労働省による2018年の「年次有給休暇の取得率の状況」には、職種問わず取得率が60%にも達していないことが記されています。
厚生労働省が運営する「年次有給休暇取得促進特設サイト2019年度の働き方アンケートの結果」にもありますが、労働者の約3分の2が有給取得にためらいを感じているというのが現状となっているのです。
なお、その理由の上位3つが「みんなに迷惑がかかってしまう」「後で多忙になるから」「職場の雰囲気で取得しづらい」となっています。
こういった休暇取得へのためらいを払拭し、取得することへの理解を広げるきっかけの1つとして普及したのがアニバーサリー休暇です。
厚生労働省
アニバーサリー休暇を導入するメリット3つ
アニバーサリー休暇制度を適切に運用するには、就業規則に記載するなど、下準備が必要です。では、いざ準備を整えて導入した際には、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、アニバーサリー休暇のメリットを3つお伝えします。
休暇取得の理解が広がり年次有給取得率が上がる
導入した際の最大のメリットは、結果的に年次有給の取得率が上がることです。
取得率を上げるきっかけとして普及したのがアニバーサリー休暇ということもあり、正しく運用すれば年次有給取得率の向上に繋がります。導入後はまず、従業員の休暇取得へのためらいを取り除き、取得に対する理解を広げることを意識しましょう。
採用活動時にアピールできる
導入することで、採用活動の求人出稿時、企業説明会、面接時などに、福利厚生としてアピールすることができます。
従業員のための福利厚生が整っていることや、実際にその福利厚生を利用しやすい環境があることは、就活生や転職希望者にプラスの印象を与えます。従業員の働きやすさを重視している企業や、福利厚生で他社と差別化したい企業などでは、積極的に導入するのが好ましいといえます。
従業員のモチベーション向上
アニバーサリー休暇の導入は、従業員のモチベーション向上にも繋がります。
先述した通り、労働者の約3分の2が年次有給の取得にためらいを感じています。取得理由や、職場の雰囲気を気にしてしまう者が多いのです。特に誕生日、パートナーとの記念日などは、一層休みづらいと感じてしまいがちです。
そんな中、企業側が「アニバーサリー休暇として、記念日はそれぞれ休暇をとること」と周知することで、従業員もストレスなく休暇を取得することができます。取得時のストレスが減ることや、休暇を用いてリフレッシュできることは、従業員のモチベーション向上に繋がります。
また、モチベーション向上は、従業員の定着やパフォーマンス発揮にも良い影響を及ぼします。従業員を想った休暇制度は、企業にとっても大きなメリットがあるのです。
アニバーサリー休暇の導入例
企業によって、どのようにアニバーサリー休暇を導入しているかは異なってきます。ここでは具体的に「どんな企業」が「どのように導入しているのか」を紹介します。
株式会社タカラトミー
玩具で有名な株式会社タカラトミーもアニバーサリー休暇を導入している企業の1つです。
従業員自身の誕生日だけでなく、家族の誕生日、結婚記念日など、どのような記念日でも年に1日取得することができるようになっています。
また、同社ではアニバーサリー休暇の他にも、5日連続で取得できるリフレッシュ休暇も導入しています。
株式会社リクルート
キャリア転職者の支援や、リクナビの運営を行っている株式会社リクルートキャリアでも、アニバーサリー休暇を取り入れています。
「健康で生き生きと働くために、有給休暇の取得促進を目的とした休暇制度」であることがHPに明記されており、年1回、連続した4営業日以上の休暇取得が可能となっています。また、4営業日以上連続で取得した場合には、アニバーサリー手当が6万円支給されることになっています。
同社ではこの他にもリフレッシュ休暇として、3年毎に連続した5営業日の休暇を取得できる制度などがあります。このリフレッシュ休暇に関しても、取得時に手当が24万円支給されるなど、従業員のモチベーションに繋がる制度が多数導入されています。
「健康で生き生きと働くために、有給休暇の取得促進を目的とした休暇制度」であることがHPに明記されており、年1回、連続した4営業日以上の休暇取得が可能となっています。
また、4営業日以上連続で取得した場合には、アニバーサリー手当が6万円支給されることになっています。
同社ではこの他にもリフレッシュ休暇として、3年毎に連続した5営業日の休暇を取得できる制度などがあります。
このリフレッシュ休暇に関しても、取得時に手当が24万円支給されるなど、従業員のモチベーションに繋がる制度が多数導入されています。
ソフトバンク株式会社
携帯電話キャリアとして有名なソフトバンク株式会社でもアニバーサリー休暇を導入しており、年1回1日、従業員自身や家族の誕生日、結婚記念日といった記念日に休暇を取得できるようになっています。
また、その他の特別有給休暇としては配偶者出産休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア活動休暇などがあります。
特別無給休暇では生理休暇、産前休暇、産後休暇、キッズ休暇、ハンディキャップ休暇といった休暇があり、無給ではありながらも幅広い休暇に名称をつけることで、従業員が取得しやすくなるよう工夫されています。
株式会社エス・エム・エスキャリア
医療関係の転職をサポートするサービスなどで知られている株式会社エス・エム・エスキャリアですが、同社にもアニバーサリー休暇があります。年1回1日、休暇を取得することができ、どの日をアニバーサリー休暇とするかは、従業員が自ら選んでいいことになっています。
また、同社ではゴールデンウィーク手当として、毎年4月の給与支給時に一律15万円の手当を支給しています。このように、休暇を与える制度以外にも、休日を活用して自己研鑽に励みたい従業員を支えるための工夫が取り入れられています。
アサヒビール株式会社
飲料関係の事業で知らない人はいないアサヒビール株式会社。同社では、アニバーサリー休暇と名称は異なりますが、メモリアル休暇というものを導入しています。この休暇制度は年に2日、従業員自身や家族の誕生日、子どもの卒業式といった記念日などに休暇を取れる制度です。
また、その他にも中学校就学前の子ども1人につき、年間10~20日間の休暇を取得できる「子育て休暇」や、資格取得時の通学やボランティア活動など、自らを研鑽する際に活用できる「スキルアップ休暇」というものもあります。
アニバーサリー休暇を導入する時の手順
アニバーサリー休暇を実際に導入するときには、どのようなことを意識すると良いのでしょうか?ここでは導入時の手順を4ステップに分けてお伝えします。
従業員のニーズを知る
最初に、従業員のニーズを知ることが必要です。
一概にアニバーサリー休暇といっても、企業によって在籍する従業員の年齢層や男女比率などは異なります。そして、既存の福利厚生の内容によっても、従業員が求めているものは変わってきます。そのため、自社の従業員がどういった休暇を必要としているのかを知った上で、導入を進めることが必要です。
従業員のニーズを知る際には、下記のような点を意識するといいでしょう。
- 従業員はどんな時に休暇をもらえると助かるのか
- その頻度や日数は現実的にどのぐらい必要なのか
- どのような名称であれば取得しやすいのか
有給・無給どちらとして扱うか決める
従業員のニーズを把握したら、有給・無給、どちらにするのかを決めましょう。
「アニバーサリー休暇は有給でなくてはならない」といった法はありません。そのため、企業が任意で決めることができます。
しかし、無給休暇とした場合、休暇取得時に給与が発生しないことから、積極的に取得する従業員が少なくなってしまいがちです。結果として従業員に浸透せず、あまり利用されない可能性があるので注意しましょう。
就業規則に記載する
導入するにあたり、就業規則にアニバーサリー休暇について明記する必要があります。
企業側と従業員との認識を合わせるためにも、下記のような点を踏まえて就業規則に記載する文言を考えることが好ましいでしょう。
- どのような従業員が対象か
- 有給なのか、無給なのか
- どのような記念日をアニバーサリー休暇とするのか
- いつ取得すればいいのか(誕生日当日、誕生月内など)
- 年に何回、何日取得可能なのか
- 取得を申請するタイミング
- その際の手続きについて
従業員に周知する
就業規則への明記が完了したら、従業員に周知しましょう。
朝礼やメールなどを活用し、従業員全員に制度の紹介と周知を行う必要があります。
なお、企業側には、アニバーサリー休暇を導入した目的があるはずです。導入後は定期的に、その目的が達成されているのか、従業員の反応や休暇取得率などを確認することが望ましいでしょう。
従業員が喜ぶのは特別な休暇と日々の正しい人事評価
従業員にとって休日はもちろんですが、企業から与えられる特別休暇は嬉しいものです。
その休暇を自分自身や家族のために活用できることで、リフレッシュになったり、モチベーションの向上に繋がったりします。
休暇だけではなく、日々の業務についての評価も、従業員のモチベーションに関係してきます。
優秀な人材の定着を目指すのであれば、適切な評価をすることが重要です。人事評価システムを導入すれば、複雑な評価業務にも柔軟に対応することが可能となります。
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