新型コロナウイルスが広がり、自粛要請や非常事態宣言が繰り返し発布されてきました。多くの感染者が出ていることから、自社の社員が新型コロナウイルスにかかる可能性も大いにあります。
この記事では、社員に新型コロナウイルスの疑いがある場合に、企業がとるべき対応について解説します。
企業の経営者や人事担当者、管理職の人は、いざというときに適切に対応できるよう、初期対応から感染者が出たあとの感染拡大対策まで確認しておきましょう。
初期対応(社員から発熱があると連絡を受けた場合)
企業には、感染予防・感染拡大の防止のための対策を講じる責任があります。社員が新型コロナウイルスに感染が疑われる場合、初期対応がとくに重要となります。ここでは、社員から「熱がある」と連絡を受けたときの対応について解説します。
発熱した社員への対応
社員から発熱の連絡を受けた場合、発熱があることから新型コロナウイルスの疑いがあります。この場合、感染拡大を防止する観点から、自宅で自宅待機させるのが基本とされています。
微熱程度であれば、出勤してくる社員も多いもの。対象の従業員がすでに出勤している場合は、帰宅させましょう。
発熱症状があっても、通常の風邪なのかインフルエンザなのか新型コロナウイルスなのか、しっかりと検査をするまでわかりません。
新型コロナウイルスを含む肺炎やインフルエンザの場合、症状が一気に悪化する可能性もあるため、体調不良がある場合は無理をさせないことを第一に考えてください。
発熱した社員・周囲の従業員の賃金
発熱した社員・新型コロナウイルス感染が疑われる社員がいる場合、『休業手当』の支払いが必要になることがあります。
これは、労働基準法第26条によって、”使用者の責に帰すべき事由により休業した場合には、休業手当として平均賃金の60%分以上を支払わなければならない”と休業手当の定めがあるためです。
・社員から「発熱による病欠」の連絡があった場合
社員から「発熱のため休む」と連絡を受けた場合は、社員が自ら休んだことになるため、通常の病欠と同様に扱います。企業は休んだ分の賃金を支払う必要はありません。
なお、有給休暇は「企業側が一方的に取得させることはできない」「従業員に労働の義務がある日に取得できるもの」であるため、勝手に有休取得扱いにしないよう注意してください。
・発熱がある社員や周囲の社員を休ませる場合
発熱がある社員には自宅待機や帰宅を指示する・同階層や同支局の従業員を一律で休ませると、「使用者の責に帰すべき事由により休業した場合」に当てはまると判断されます。そのため、企業は休業手当を支払う義務があります。
・実際は法律上の義務以上の休業手当が求められている
政府は新型コロナウイルス感染が疑われる場合の賃金の取り扱いについては、労使でしっかり話し合うよう呼びかけています。
さらに、厚生労働省は、「法律上休業手当の支払い義務がない場合でも支給する」「法律にある”平均賃金の60%分以上”を超えて賃金を支払う」など、法律上の義務を超える手当の支給が望ましいとしています。
法律上の休業手当の要不要は、「職務の継続が可能であるか」で変わります。しかし、従業員が安心して休める体制を整えるという企業の責任をふまえ、「倫理上どう対応すべきか」について配慮することが求められています。
受診が必要な場合の対応
発熱症状が出て自宅待機を指示したあと、症状が緩和するか、緩和しなかいかで対応が異なります。
症状が緩和した場合は出勤ができる
症状が緩和・解熱した場合は、周囲に感染させる可能性が低いため通常どおり出勤してもらうことができます。症状が緩和したという目安は、下記2点を満たす必要があります。
- 発症後少なくとも8日たっている
- 薬を服用していない状態で発熱・咳・下痢・全身の倦怠感がなくなって少なくとも3日以上たっている
このとき、企業側は社員に陰性証明書や復職診断書などを医療機関に求めないこと、求める場合は慎重に進める必要があります。新型コロナウイルス感染が疑われ、PCR検査をしても偽陽性・偽陰性はよくあるもので、検査時点での結果しかわかりません。
2021年3月現在では、発熱や咳などの症状が出ても、すぐには新型コロナウイルス外来のある医療機関にかかれない、または検査をしてもらえません。
また、民間の検査を利用する場合、数万円の費用がかかるため、証明書を求める場合には企業が費用を負担するなどの対応が必要です。
症状が緩和しない場合はさらに自宅待機または受診させる
症状が緩和しない場合は、症状がなくなるまで出勤させることはできません。社員にはかかりつけ医・地域の医療機関・発熱相談センターなどに”電話”で相談するよう指示しましょう。
電話相談の結果、受診が必要だと判断されれば、新型コロナウイルス外来・PCR検査センターなどが紹介されます。
一方で、次のような社員の場合は、できるだけ早く受診を勧める必要があります。
- 「息苦しさ」「強い倦怠感」「高熱」といった強い症状がある人
- 高齢者
- 基礎疾患がある人
現在、発熱外来を休止している・完全予約制にしているという医療機関も多く、すぐに受診できない可能性があります。受診を希望する場合でも、電話で相談して受診できる医療機関を確認するのがおすすめです。
新型コロナウイルスに感染しているかは、受診し、医師が検査の必要性を判断したときのみ行われます。そのため、無理に陰性証明書や復職診断書などを求めないようにしましょう。
感染者が発生した場合の対応
検査が行われ、陰性であれば自宅待機が、陽性であれば入院または宿泊療養・自宅療養などが指示されます。検査結果が陽性である場合、企業は「関係先への報告」「事務所の清掃・消毒」を行う必要があります。
関係先への報告
関係先とは、保健所・医療機関・自治体・取引先・入居ビルの管理会社・そのた関係企業や施設などを指します。
まずは、事務所の所在地を管轄する保健所に報告して、指示を受けると適切に、かつスムーズに対応を進めやすくなります。保健所との連絡をより円滑にするために、窓口担当者を決めておくと良いでしょう。
後日、保健所の調査が入るため、対象の社員や発生状況について下記の情報をまとめておきます。
- 社員の業務内容
- 発症日
- 濃厚接触者
- 取引先や出入りのある業者の一覧
- 勤務場所のフロア図や座席表 …など
なお、新型コロナウイルスに感染していた場合、社員に休業手当を支払う法律上の義務はありませんが、労使と話し合いのうえ、支給の有無や金額を決めてください。
事務所内の清掃・消毒
発症した社員がいつからウイルスに感染していたかは、検査しても判断できません。そのため、発症者が出たら保健所の指示に従って、事務所内の清掃・消毒を行いましょう。費用については、企業負担となります。
通常通りに業務ができない場合や、感染拡大の防止・従業員の健康維持を考える場合は、事事務所の一時閉鎖を検討しましょう。休業した場合、休ませる感染者以外の従業員に関しては、休業手当を支払ったうえで、雇用調整助成金の対象として申請することができます。
感染した社員に関しては、陽性が判明する前日まで、雇用調整助成金の対象となります。
職場で行っておくべき感染症対策
労働契約法第5条によって、企業には従業員の生命・安全に配慮する義務を負うことが定められれています。安全配慮義務に違反した場合、企業は民事上の責任、つまり損害賠償責任が課されます。
感染対策を十分に行っていない場合、安全配慮義務違反に問われる可能性も。従業員が安心して働くことができなければ、業務効率や生産性の低下も懸念されるため、企業の責任として適切な感染対策を行っておきましょう。
リモートワークの導入
リモートワークの導入は、通勤はもちろん、従業員が1つの空間に集まることもなくなるため、感染予防としてとくに効果的です。
ただし、リモートワークを行うためには、各従業員の自宅に作業環境を整える必要があるため、入念な準備と費用がかかります。情報漏洩やウイルス感染といったトラブルが起きないよう、セキュリティ対策されたパソコンや安全なネットワーク回線の準備は欠かせないでしょう。
また、自宅で業務を行うためには、普段使っている業務システムやデータ管理システムをクラウド化する必要もあります。ビジネスチャットツールやWeb会議ツール、情報共有ツールなどの導入・見直しも重要です。
一方で、リモートワークを一度導入できると、先行きが不透明な感染状況に振り回されることがなくなります。なかには、長期的なリモートワークを見据え、オフィスの規模を縮小する企業も出てきています。
従業員同士の接触を最小限にする
リモートワークができない業種や導入しにくい商材を扱う企業は、事務所内で感染症対策を行う必要があります。人との接触を最小限に抑えることを念頭に、下記のような対策を導入しましょう。
- 勤務中の正しいマスクの着用を徹底する
- 咳やくしゃみのエチケットを守る
(手ではなく、上着の内側やティッシュ・ハンカチなどで覆う) - 定期的に手洗い・うがい・手指の消毒を行う
- 定期的に共有部の消毒を行う(スイッチ・ドアノブ・椅子・机など)
- 喚起をする
- 隣の席の人と2m以上距離をとる
- 時差出勤してもらう
- 会議はWeb上で行う …など
手指の消毒には、「濃度70%以上95%以下のエタノール」をすり込みましょう、物を消毒する場合は、「80度の熱水に10分間さらす」「濃度0.05%の次亜塩素酸ナトリウム+水拭き」「界面活性剤が入った洗剤の使用」が有効です。
感染症対策を徹底&感染者が出たときのための準備が重要
今回は、新型コロナウイルスに感染した疑いのある社員が出たときに、会社がとるべき対応をまとめました。企業は感染予防を行う義務があるため、当記事で紹介した内容を参考に対策を講じましょう。
ただし、完全に感染を予防することはできません。できるだけ、リモートワークまたは出勤人数の制限を取り入れるのが良いでしょう。
とくに、勤怠システム・人事評価システム・会計システムなどの基幹システムのクラウド化は、リモートワーク導入の有無にかかわらず業務効率のアップにつながります。将来的に新型コロナウイルス感染者が出る可能性もあるため、少しずつ準備を始めておくことをおすすめします。
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