休職とは、社員が仕事を休むという点では休業や休暇などと同じですが、要件や扱い方が異なります。また、休職の種類もさまざまです。
総務・人事の担当者は、休職について正しく理解しておくことが欠かせません。
本記事では休職の意味や主な種類、給料・手当や社会保険の扱い方、手続きについて解説します。
休職の意味や種類とは?
休職とは広義の休みに含まれますが、休業や欠勤などとは意味が異なります。ここでは休職の意味をおさらいし、休業や欠勤との違いを確認しましょう。
休職とは
休職とは、社員が自分の都合で長期的に会社を休むことを指します。
期間は就業規則によって異なるため一概には言えませんが、1ヶ月から1年程度の範囲で休職を認めるケースが多いようです。
休職の主な理由には病気やケガなどが挙げられますが、後述するようにさまざまな理由があります。
休職と休業・欠勤の違い
休業とは、労働者側に働く意思があるものの働けない状態で、雇用契約は維持したまま業務を休むことです。
業績不振などの会社都合で休業を求める場合の他、制度で裏付けられている育児休業や介護休業といったものもあります。
基本的に、休職は労働者の都合による休みで、休業は会社都合または制度による休みだと区別できるでしょう。
欠勤とは、本来は働かなければならない労働者が、それに反して休むことを指します。
例えば有給休暇を事前に申請して休む場合は就業規則に乗っ取った休みですが、もともと出勤予定の日に無断で休むことは欠勤です。
休職は事前に労働者と会社が期間を決めて行うもので、欠勤とは異なります。
休職の種類
休職にはさまざまな種類があります。ここでは7つのパターンを紹介しましょう。
病気・傷病休職
病気・傷病休職とは、社員が在職中に業務や通勤以外の事情で病気になったりケガをしたりして、一定期間休み続けることです。
業務時間中や通勤中に発生する労災とは異なり、社員の個人的な事情による病気・ケガによる休みのため、私傷病休職とも呼ばれます。
就業規則で病気・傷病休職を規定する際は、「業務以外の事情の病気・傷病によって欠勤が連続して一定の日数に達した場合は休職にする」といった扱いにするのが一例です。
自己都合休職
自己都合休職とは、社員の個人的な理由による休職です。
例えば、家事やボランティアといった活動の他、自己啓発や留学、研修といった自己研鑽を目的として社員が休職を希望する場合に、認めることが挙げられます。
自己都合は幅広く、どのような理由であれば休職を認めるかは会社の方針次第です。
地域社会への貢献を意識してボランティアによる休職を許可したり、社員の長期的な成長のために留学による休職を許可したりなど、会社の考え方で対応は分かれます。
組合専従休職
組合専従休職とは、労働組合員である社員が、雇用関係を維持したまま組合業務に専従する際の休職です。
組合専従者に対して使用者である会社が給与を支払うことは不当労働行為として禁じられているため、給与のない休職扱いになります。
出向休職
出向休職とは、社員が元会社との雇用関係を維持したままグループ会社や関連会社に一時的に出向する際、元会社は休職と扱うことです。
休職には、元会社に籍を残す在籍出向と、籍ごと移す転籍出向がありますが、前者の場合に出向休職を適用します。
公職就任休職
公職就任休職とは、社員が公職について業務ができない場合のための休職です。
公職とは、主に国会議員、地方議員、都道府県知事、首長を指します。
こういった公職に就くと多忙で通常業務が難しくなり、休職とすることがあるのです。
事故休職
事故休職とは、勤務外の事故によって長期的に欠勤することです。事故欠勤休職とも呼ばれます。
起訴休職
起訴休職とは、社員が起訴された場合に休職させることを指します。
起訴休職させるには、社員が起訴されることで会社の社会的信用が損なわれたり、職場秩序に支障が生じたりといった損害が発生するおそれがあることが要件です。
単に起訴だけを理由とすることはできず、休職に合理的な必要性がないと判断されれば無効になる可能性もあります。
休職時の給料・手当や社会保険の扱い方
社員が休職を行う場合、会社側は給料や手当を支給する必要はあるのでしょうか。
また、会社と社員が分担して支払っている社会保険についても知っておく必要があります。
ここでは休職時の給料・手当や社会保険の扱い方を解説します。
給料・賞与
休職中の社員に給料や賞与(ボーナス)を支払うかどうかは、会社が定めている就業規則によって異なります。
就業規則で給料や賞与の一部または全部を支払うよう明記されている場合は当然ながら支払う義務がありますが、そうでない場合は支給する必要はありません。
法律上は、休職中の社員に給与を支払う義務はないとされています。
実際に、多くの会社では支払わないことを就業規則で定めているようです。
なお、制度で定められている休職の中には、育児休業給付金のように公的な手当が支給されるケースがあります。
傷病手当金
社員が病気やケガが原因で休職する場合、健康保険によって傷病手当金を受給できるケースがあります。
これは、病気やケガといったやむを得ない事情で休職し、なおかつ会社から給与が支払われない場合に、労働者の生活を保障するために手当を支給するという制度です。
傷病手当金を受給するためには以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 業務外の病気・ケガの療養のため仕事ができない
- 連続して4日以上休職している
- 休職中に給料が支払われていない
会社が加入している健康保険組合に労働者本人が申請するのが一般的ですが、総務・人事担当者は制度や手続きの方法について社員から問い合わせを受けることもあるため、把握しておくとスムーズです。
社会保険
休職中であっても社員の社会保険の被保険者資格は継続します。
そのため、保険料は継続して納め続けなければなりません。
具体的には、健康保険料・介護保険料や厚生年金保険料は、休職する前と同様、会社側と社員が分担して負担し続けることになります。
休職の手続きの方法
社員が休職に入る際は、具体的にどのような手続きを踏む必要があるのでしょうか。ここでは4つの手順を紹介します。
社員から必要書類を受け付ける
休職の手続きに入る際は、社員からの申し出を受け、医師の診断書を確認することから始めます。
休職の話が持ち上がるのは、私傷病によって「働くのが困難だが将来的には復帰したい」と本人から申し出を受けるケース、欠勤が2〜3週間など長期間継続するケース、医師の診断によって休職の必要があると指摘されるケースなどが一般的です。
それぞれの状況によって異なりますが、健康問題が原因の場合は、医師の診断書を受け付けて確認し、就業規則で定められた休職の申請書などを提出してもらうことになります。
休職時の条件を確認する
休職の申請を受ける際は、何らかの手当の支給条件に該当するかどうかもチェックします。
就業規則によって、休職時の給与や賞与がどのようになっているのか、何らかの手当が発生するのか確認しましょう。
特に、病気やケガが原因で休職する場合に確認しなければならないのは、労働者災害補償保険、つまり労災に該当するかどうかです。
労災についておさらいすると、労働者が仕事中または通勤途中に起きた出来事によって病気やケガになったり、あるいは障害・死亡につながったりした場合に保険給付を行う制度を指します。
病気やケガが原因で休職する場合、それが間違いなく個人的な原因であれば私傷病休職に該当するため労災には当たりませんが、もし該当する可能性があるなら労災に当たるかどうか確かめておくことが欠かせません。
定期的に社員と連絡を取る
休職に入る際は、その後の経過や復帰可否の判断を行うために、連絡方法を決めておく必要があります。
連絡先、住所、連絡時期などについて、双方で話し合っておきましょう。
定期連絡では、社員の状況をヒアリングした上で、休職期間を延長・短縮するのか、復職するのか、あるいは退職するのかについても話し合います。
復職の判断を行う
定期連絡を重ねながら、復職の判断を行います。
あらかじめ期間を決めた自己都合休職や出向休職などの場合はそれほど復職時期が問題になることはありませんが、病気やケガによる休職であれば、治癒の経過を確認し、医師の意見もヒアリングしながら復帰がいつ頃になりそうなのか慎重に判断する必要があります。
傷病休職の場合、社員が医師の診断を受けて問題なく業務ができると判断されれば復帰となるのが一般的です。
まとめ
休職とは、社員が仕事を休むという点では休業や休暇などと変わりありませんが、給与・手当の支払いがない点や、さまざまな種類がある点など、押さえておくべきポイントが数多くあります。
人事・総務担当者は、社員が安心して働ける環境作りはもちろん、やる気や能力を引き出すための人事評価制度を構築することも重要です。
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