業務内容が同じ、または同等のケースには同じ賃金を労働者に支払うべきだ、という考え方が「同一労働同一賃金」です。日本で問題視されているのは、正社員と非正規社員(派遣やパートタイムなど)の待遇差です。同じ仕事をしているのに、雇用形態の違いだけで給料や福利厚生などに不合理な格差が生じ、社会的に大きな問題となっています。
2016年12月に政府がガイドライン案を公表。大企業は2020年度より実施され、中小企業は1年延期し、2021年度より実施することを決めました。政府が推進する「働き方改革」の柱の一つ「同一労働同一賃金」のメリットとデメリットを、労働者と企業側に分けて考えます。
同一労働同一賃金のメリットとは
同一労働同一賃金には、労働者側と企業側から見たメリットがあります。それぞれについて考えてみましょう。まず、労働者から見た3つのメリットは下記のようなものが挙げられます。
●非正規社員の待遇改善
同じ仕事をしながらこれまで低賃金に甘んじてきた非正規社員は、待遇格差への深刻な不満を募らせています。給与は労働への対価なので、支給される賃金が正当と感じられる待遇改善が必要です。
●労働意欲アップ
待遇が改善されると、非正規社員のモチベーションは上がります。納得できる賃金を支給されることで、業務や組織への満足度もアップします。短時間や週に数日などライフスタイルに合わせた働き方を希望する非正規社員には朗報です。
●仕事の幅の拡大
政府が発表したガイドライン案には、福利厚生や教育訓練を受ける機会なども含まれています。今後、非正規社員は業務で必要な知識やスキルを身に付ける教育訓練を受け、キャリアアップして仕事や業務の幅が広がる可能性があります。
それでは次に、企業から見たメリットはどのようなものがあるのでしょうか。大きく分けて3つあるといわれています。
●非正規社員の能力向上
非正規社員の働く意欲がアップすることで、能力やスキルの向上が期待できます。非正規社員が意欲的に働くことで業務の効率化や生産性の向上が進めば、利益や企業業績のアップに繋がります。
●人材不足の解消
非正規社員でも納得できる賃金や待遇を得られるのであれば、求職者や未就業者の労働意欲も高まります。これは、少子高齢化で多くの企業が直面する深刻な人材不足の解消策にもなるでしょう。
●潜在的な能力開発
教育訓練ができることで、非正規社員の知識やスキル、能力を開発する機会が生まれ、潜在的な能力を引き出し、さらに今ある能力を維持向上できる可能性も広がります。
同一労働同一賃金のデメリットとは
それでは次に、同一労働同一賃金のデメリットをみてみましょう。これも、労働者と企業に分けて考えてみます。まずは、労働者のデメリットを考えてみます。大きく分けて3点があげられます。
●正社員の賃金が減るリスク
非正規社員の待遇を改善することに伴い、人件費の高騰が見込まれます。そこで、能力や評価が低い正社員は給与や賞与が減額するリスクがあります。
●リストラや新規雇用の減少
正社員の給与をこれまで通りに同じ水準で維持するために、企業は人件費をカットするためのリストラを行う可能性があります。また、新規雇用を手控える恐れが出てきます。
●不利な待遇
ボーナス(賞与)や各種の手当を支給は、業績によるため必須ではありません。よって企業は人件費を抑えるため、現在支給しているボーナスや手当を減額または廃止する懸念があります。
次に、企業からみたデメリットについても考えてみましょう。
●人件費の高騰
同一労働同一賃金の趣旨は、非正規社員の待遇改善としての賃金アップです。対象は賃金や各種手当はもちろん、福利厚生や教育訓練なども含まれるため、人件費負担が企業経営を圧迫する恐れがあります。
●新たな投資の抑制
賃金アップに伴う人件費負担が企業経営を圧迫すると、新たな投資や他への投資を抑制したり、見送る可能性が出てきます。そうなると、企業の成長は減速、低迷することにもなりかねません。
●賃金差への説明責任
同一労働同一賃金の導入後も賃金差がある場合は、企業に合理的な説明や立証する責任が生じます。説明や立証ができなかったり、不十分だと訴訟で賠償責任を問われることも考えられます。
同一労働同一賃金の導入は活性化への起爆剤となるか?
政府が掲げる「働き方改革」において、長時間労働の是正と並び、同一労働同一賃金の導入も社会的格差を解消する為に非常に重要な施策です。
近年、企業の人事評価では成果主義が主流となっており、非正規社員でも適切に査定し、待遇に結び付く客観的な人事評価は実現可能です。
閉塞感が漂う現在の社会や労働環境で、同一労働同一賃金を導入することは、多種多様な働き方を採り入れ、許容することになります。
総務省統計局の労働力調査(2018年2月分)によれば、正規社員は3,430万人、契約社員やパートタイムなどの非正規社員は2,120万人で、非正規社員は全体の38.2%を占めているのが現状です。非正規社員の待遇を改善することは、生産性向上や組織活性化への起爆剤となる可能性があります。
ガイドライン案には法的な拘束力はありませんが、今後の国会審議などを踏まえ、近い将来に法改正が見込まれます。多くの課題が積み残されており、実現に向けては紆余曲折も予想されますが、今後の動向が注目されます。
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