企業において、長く働いてもらえる人材を確保することは重要な課題です。しかし、求職者の目線から見たときに、応募する企業の「離職率」には意識が向くものでもあります。
人事担当者として幅広く人材を募るときには、離職率について知識を深めておくことが大切です。今回は離職率の定義や計算式、各種データなどを取り上げて、人事面で改善すべき施策について詳しく紹介していきます。
離職率とは
離職率という言葉の定義は、企業において特定の期間で退職した人の割合を示すものであり、在籍している人数と比較されるものです。
基本的には1年間のデータが対象となりますが、入社3年目や入社5年目といったように離職率をどう捉えるかによって抽出すべき期間も変わってきます。
離職率は低ければ低いほうがよく、社員が企業に対してどの程度の満足度を得ているかが分かります。
厚生労働省の定義
離職率は厚生労働省の定義によれば、「常用労働者数に対する離職者の割合」となっています。
つまり、特定の時点で在籍している労働者に対して、離職者がどのくらいの割合いるのかを示す数値ということです。
常用労働者数は1月1日現在のもので算出しますが、年齢階級別においては6月末日の数字で計算をします。常用労働者というのは雇用期間の定めがないか、1カ月を超える期間で雇われている者を指します。
また、日々または1カ月以内の期間を定めて雇われている者のうち、調査期間の2カ月前にそれぞれ18日以上雇われている者と定義されているのです。
離職率の計算式・算出例
離職率の具体的な計算は、
「入(離)職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100%=入(離)職率」
という計算式にあてはめて行います。
例として、1月1日現在の常用労働者数が100名で、離職者が5名だった場合には「5÷100×100%=5%」となります。
離職率は低いほうがよいため、高い数値が出ているときには改善策を講じる必要があるでしょう。
退職に至る理由は個別の事由があるとしても、業界や職種の平均と比べて高い場合には原因を探っていく必要があります。
一般的に離職率が高くなる理由としては、「平均年収と比較して給与が低い」「人事評価制度が整っておらず、評価に不満がある」「休日が少なくて労働時間が長い」「人間関係にストレスを感じている」「自社の業績が悪いため将来に希望が持てない」などがあげられます。
離職率を下げるためには、働きやすい職場環境を提供すると共に、人事評価制度も含めた待遇面での改善を図ることが大切です。
直属の上司や人事担当者だけではなく、経営陣も含めて全社的な取り組みとして、離職率を下げていく取り組みを行っていくことが重要だと言えます。
離職率が高いままの状態が続いてしまっては、採用コストや教育コストばかりがかさんでしまい、企業全体としては生産性の低下にもつながってしまうでしょう。
また、企業そのもののイメージが悪化してしまい、新しい人材を確保することにも影響が出てしまう可能性もあるのです。
定着率との違いは?
離職率の対義語としては、「定着率」があげられます。
厚生労働省によって定義されている言葉ではありませんが、一般的にはどれくらいの人材が企業に定着しているかを見る指標として活用されています。
具体的な計算式としては、
「100-離職率=定着率(%)」
によって算出します。特定の期間の離職率が3%であったとすれば、定着率は97%といった計算になるのです。
日本企業の離職率の現状
自社の離職率について考える際には、日本の企業が置かれている離職率の現状を理解しておく必要があります。
産業別・男女別・年齢階級別で見比べてみることで、自社を取り巻く状況を把握してみましょう。それぞれの離職率のデータについて解説していきます。
1.離職率の現状
厚生労働省が公表している「雇用動向調査結果の概況(2018年)」によれば、入職者766万7,200人に対して、離職者は724万2,800人となっており、入職者のほうが多い傾向が見られます。
常用労働者数に対する入職率は15.4%、離職率は14.6%となっています。2017年と比べると入職率は0.6ポイント、離職率は0.3ポイント低下しており、入職超過率の幅は狭まっていると言えるでしょう。
2.産業別
産業別の離職状況は卸売業・小売業が121万3,700人と最も多く、宿泊業・飲食サービス業117万人、医療・福祉113万5,700人と続いています。
離職率の割合で見ると、宿泊業・飲食サービス業が26.9%と最も高く、生活関連サービス業・娯楽業23.9%、サービス業19.9%の順に高い傾向にあります。
3.男女別
男女別のデータで見ると2018年は、男性の入職率が12.9%で離職率が12.5%となっています。
女性では入職率が18.5%、離職率が17.1%であり、男性よりも女性のほうが入職率・離職率共に高い傾向にあるのです。
4.年齢階級別
年齢階級別に離職率を見ていくと、男女共に29歳以下と60歳以上が高い傾向にあります。
男性の離職率は20~24歳で26%、25~29歳で15.9%、60~64歳で15.3%となっています。女性の離職率は20~24歳で27.7%、25~29歳で22.5%、60~64歳で12%です。
新規学卒者の離職状況
新卒採用を考えるときには、新規学卒者の離職状況についても押さえておく必要があります。どのような傾向があるのかを見ていきましょう。
学歴別の離職率
離職率の違いは学歴別によっても見られます。大卒・短大卒・高卒で、それぞれどのような特徴があるのかを紹介します。
1.大学卒業者1~3年目
厚生労働省の「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」によれば、2016年3月に大学を卒業した人の1年目の離職率は11.4%、2年目で10.6%、3年目で10%となっており、全体の合計は32%となっています。
2.短大卒業者1~3年目
2016年3月に短大を卒業した人の1年目の離職率は17.5%、2年目で12.4%、3年目で12%となっています。全体の合計としては42%であり、大学卒業者と比べて10ポイント高いことが分かります。
3.高校卒業者1~3年目
2016年3月に高校を卒業した人の1年目の離職率は17.4%、2年目で11.7%、3年目で10.1%となっています。全体の合計としては39.2%という結果です。
離職率の改善に有効な人事施策
離職率の状況を把握した段階で、離職率を改善するための方法を探っていく必要があります。ここからは離職率を低下させるために有効となる人事施策について紹介します。
1.労働時間・条件の見直し
2018年間半期に転職をした人が前職を辞めた理由としてあげているものとして、「労働時間・休日などの労働条件」があります。
男性で8.7%、女性では13.2%の割合です。働く時間になかなか融通が利かなかったり、休みが取りづらかったりすると離職率が高まる傾向があると言えるでしょう。
業種や職種によっては社員が希望する労働条件を示しづらい面があったとしても、必要な人員を増やすなどして社員が働きやすい環境を整えていくことが大切です。
社員ごとに家族構成なども異なるため、定期的に面談を行ってきめ細かなコミュニケーションをとることも意識してみましょう。
2.給料制度の見直し
転職者が前職を辞めた理由として、「給与等の収入が少なかった」という点もあげられています。男性では全体の9.5%、女性では8.8%を占めています。
自社の給与や賞与の水準が、業界平均や競合他社よりも低い場合には引き上げを検討してみましょう。
一方で、業界平均や競合他社と比べても給与水準に問題がないときには、社員に対する人事評価が適切に行われているかを見直す必要もあります。
社員としては「充分な働きをしているにもかかわらず、会社が評価をしてくれない」といった不満を抱えているケースもあるからです。
直属の上司だけでなく、人事担当者としても社員に対してヒアリングを行うなどして、早期に不満を解消させることが重要になります。
3.職場の人間関係の改善
転職者が前職を辞めた理由としては、「職場の人間関係が好ましくなかった」という点もあげられます。
男性では6.6%、女性では10.4%となっており、男性よりも女性のほうに高い傾向が見られます。所属する部署において人材が適切に配置されているかをチェックし、必要に応じて他の部署に異動させるなどの対応も必要となるでしょう。
また、特定の性別のみに偏った人員構成である場合には、男女比のバランスを考えてみることも大切です。
そして、風通しの良い人間関係を築いてもらうために、社員同士の交流や働き方についても定期的に見直してみましょう。現場の社員や責任者の意見も交えながら、人間関係が円滑になる仕組みを整えていくことが重要です。
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