サバティカル休暇とは?効果や導入の注意点、企業事例の紹介

サバティカル休暇(sabbatical leave)とは、欧米の企業が積極的に採用している長期休暇制度のことです。

長期にわたり勤務をした労働者に対し、1ヶ月~1年程度の長期休暇が与えられます。日本ではまだあまり浸透していませんが、企業にとってのメリットも多い制度です。

この記事では、サバティカル休暇に関する知識を深めたい人事担当の方に向けて、様々な情報を提供しています。制度導入時の効果や注意点も解説しているので、ぜひ今後の参考にしてみてください。 

サバティカル休暇(sabbatical leave)とは 

サバティカル休暇の「sabbatical」は、日本語で「安息」「休息」という意味があります。

ビジネス用語としては「使用目的が制限されないプライベートな長期休暇」を指します。

一定期間の勤務を条件に与えられる長期休暇ですが、有休休暇とは異なるため、使用制限がないことが特徴です。

1ヵ月以上から、長くて1年以上もの休暇が認められることもあります。ヨーロッパの企業で特に多く採用されています。 

日本では、2013年にYahoo! JAPANが「最長1年の休暇制度」を導入しましたが、世界的に見ると導入が進んでいません。まずは、海外におけるサバティカル休暇の事例を見てみましょう。 

海外におけるサバティカル休暇 

サバティカル休暇をはじめ、休暇先進国と称されるフランス企業の事例を見てみましょう。フランスでは、1930年代にはすでに長期休暇を楽しむ「バカンス法」が定められていました。

「バカンス法」とは、全労働者が2週間にわたる有給休暇を毎年取得できる文化です。サバティカル休暇の場合、6~11ヵ月もの長期休暇を取得できます。

サバティカル休暇は、「勤続年数が3年以上」「勤務年数の通算が6年以上」「当該企業で、過去6年間で長期休暇を取得していない」といった条件を満たすことで取得できます。 

サバティカル休暇を取得している期間は無給となります。ただし、サバティカル休暇を終えたら取得前と同じように働くことが可能です。給与などの待遇も変わらず、企業によってはむしろ昇給するケースもあります。 

サバティカル休暇が注目される理由と時代的背景 

サバティカル休暇が日本のビジネス界隈でも注目され始めた理由は何でしょうか?

働き方改革の推進やワークライフバランスの尊重、人生100年時代の到来など、時代的な背景をもとに考察していきます。 

1.働き方改革の推進 

日本政府により働き方改革関連法案が施行されたことで、大手・中小を問わず多くの企業が「働き方改革」を意識するようになりました。

長時間労働の是正による生産性の向上も確認されており、経済産業省も福利厚生としてサバティカル休暇の導入を推奨しています。

「労働者は企業にとことん奉仕するべき」という古い考えが根付いてしまっていますが、今こそ日本全体で働き方を見直すタイミングだと言えます。 

2.ワークライフバランス 

サバティカル休暇が日本でも注目されている理由として、ワークライフバランスの重要性が挙げられます。

まとまった休暇を利用してリフレッシュ旅行をしたり、新たな趣味や勉強にチャレンジしたり、家族と過ごす時間を増やしたりすることで、従業員の心身は充実します。

プライベートを疎かにすることによる仕事への悪影響も懸念されるため、ワークライフバランスをとることが推奨されているのです。 

3.人生100年時代の到来 

経済産業省は、「人生100年時代」の到来により、個人の働き方・社会参加の在り方は変化・多様化してくると提唱しています。

60歳を定年としてきた今までとは異なり、長期にわたり働くことが当たり前になりました。個人は将来を企業に委ねず、自律的にキャリアを開発できるよう「学ぶ時間」を必要としています。

企業に対しても同様に、人材が活躍し続けられる環境の整備が求められています。 

サバティカル休暇の効果とメリット (従業員)

企業がサバティカル休暇を導入することで得られる効果やメリットには、どんなものがあるのでしょうか。

まずは、「専門知識やスキルの向上」「リフレッシュ効果」といった従業員側の視点で解説したいと思います。 

1.専門知識やスキルの向上 

サバティカル休暇を活用して、専門知識のブラッシュアップやスキルアップに励むことができます。休暇の使い方は自由であるため、従業員側の意識やキャリアップに対する準備はあくまでも人それぞれです。

しかし、人間が成長するためには、どうしてもまとまった時間が必要となります。休暇中の様々な経験が、今後の業務に生きてくるのではないでしょうか。 

2.リフレッシュ効果 

リフレッシュにサバティカル休暇を利用するのも、もちろん効果的です。リフレッシュといっても、気分転換や静養など多様なスタイルがあります。

国内外へ旅行に行ったり、フィジカルの回復期間にあてることで、心身の健康を回復し、今後の維持が可能となります。家族の介護など、まとまった休暇が必要な人の助けにもなります。 

サバティカル休暇の効果とメリット(人事・経営層)

サバティカル休暇を導入することで、「長時間労働の是正」や「業務生産性の向上」など企業にとっても多数のメリットがあります。人事担当者や経営層などが知っておきたい効果やメリットを解説したいと思います。 

1.長時間労働の是正が可能 

長時間労働の是正については、従業員の心身を健康に保つことが重要視されています。

個々のペースや事情に合わせて、柔軟な働き方を提案することで、従業員のワークライフバランスを改善できると考えられています。 

2.業務生産性が向上する 

世界各国の企業データによると、「労働時間が短い方が、一人当たりの業務生産性が高い」といった結果が出ています。

たとえば、一人当たりの総労働時間が1,300時間であるドイツは、日本の総労働時間の約8割に相当します。しかし、ドイツにおける一人当たりの業務生産性は、日本の水準を50%ほど上回っています。

労働時間を10%減らすだけで、一時間当たりの生産性が25%も高まるのだから驚きです。 

3.介護・育児による離職を防止できる 

半年から1年程度の長期休暇を取ることで、介護や育児に専念することができます。長期休暇が叶わず、介護や育児を理由に離職する人は少なくありません。

本人が病気や怪我をして長期療養をとる場合も、サバティカル休暇を活用できれば、復職がしやすくなります。 

4.企業のイメージアップを図れる 

サバティカル休暇が知られつつある日本において、サバティカル休暇を導入している企業は人材にとって魅力的に見えます。

ゆくゆくは就職や転職活動の際にも、サバティカル休暇が企業選びの基準となるかもしれません。 

サバティカル休暇導入の注意点 

サバティカル休暇を導入するにあたり、人事担当者や経営層が注意するべきポイントを解説していきます。 

1.長期休暇を取得しやすい環境を整える 

「日本人は勤勉で真面目」というイメージがあるように、実際に長期休暇を取ることに罪悪感を抱く人は少なくありません。

従業員の心理も考慮して、日頃から休暇を取得しやすい空気を作っておくのも企業の努めです。社内広報で休暇制度のアナウンスをしたり、休暇の取得事例などを公表したりするのが効果的でしょう。

社外へのPRや企業のイメージアップにも繋がります。上司に遠慮することがないように、役員クラスの人材が率先して休暇を取ることも大切です。 

2.復帰後の業務とポジション 

サバティカル休暇後、本当にスムーズに職場に復帰できるのか?という懸念もネックとなります。

「以前と同じ部署やポジションで働けるのか」「自分の居場所は残されているのか」「自身のスキルや仕事感覚は鈍らないか」といった従業員の不安を払拭できるようにしましょう。

復帰後のポジションを保証し、業務量は段階的に離職前と同等にしていくなど、サポート体制の提案が求められます。 

3.休暇中の給与 

サバティカル休暇中は無給とする企業が多いですが、Yahoo! JAPANのように「休暇支援金」として1ヵ月分の基本給与を支給するなど、企業ごとに工夫があっても良いでしょう。

サバティカル休暇と有給休暇を組み合わせれば、より長い休暇を満喫してもらうこともできます。 

サバティカル休暇の事例

サバティカル休暇を導入している企業を参考にするのも一つの手です。いくつかの事例をご紹介します。 

1.Yahoo! JAPAN「サバティカル制度」 

Yahoo! JAPANは、週休3日制度や課題解決休暇など、休暇制度が充実しています。サバティカル休暇制度は勤続10年以上の正社員が対象。2~3ヵ月間の長期休暇を取得でき、「休暇支援金」が設定されているのも特徴です。休暇中も一定の収入を確保できるため、従業員も気軽に取得できるようになっています。 

2.ソニー株式会社「フレキシブルキャリア休暇」 

大手電機メーカーのソニーは、「フレキシブルキャリア休職制度」を導入しています。サバティカル休暇制度と似た制度であり、キャリアの継続を図るための休職は最長5年、自身の専門性を深めるための私費就学時などは最長2年の休暇を取得できます。 

3.株式会社ぐるなび「プチ・サバティカル休暇」 

勤続年数5年以上で3日間の休暇を取得できます。休暇中の勉強やキャリアの振り返りを目的としており、活動支援金として2万円を支給しています。 

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