人手不足にあえぐ日本企業が競争力を高めていくための、これからの人材マネジメントの方針、および労働者の職業観の変化について述べていきます。
日本企業の主流は「内部労働市場型の人材マネジメント」
現在の日本国内で主流となっている人材マネジメントの方針、およびこれからの時代に重要とされている方針とはどのようなものでしょうか。
「内部労働市場型の人材マネジメント」とは
日本企業の主流である「内部労働市場型の人材マネジメント」とは、新規学卒者をゼネラリスト(広範囲の知識や能力を持つ人)として採用し、転勤や配置転換などにより内部育成・昇進させていくことを意味しています。
内部人材の育成重視から外部人材の採用重視へ
一方、日本は少子高齢化による労働供給の制約という問題を抱えています。その中で企業の競争力を高めていくために、グローバルな経済活動やイノベーション活動のスペシャリスト(専門家)を企業の人材として生かすことが重要視されています。
内部労働市場と外部労働市場の違い
社内で人材育成を行う内部労働市場に対して、企業から企業へと人材が活発に移動する市場を外部労働市場と呼びます。外部労働市場では、管理職やマネージャーなど、シニアのポジションの人材を中途採用やヘッドハンティングなどで確保します。
年功序列や終身雇用を基盤とし、ゼネラリストを育成する内部労働市場とは反対に、外部労働市場では雇用期間が短く、働き方やポジションの職務に見合った賃金が支払われるのが特徴です。
中途採用市場は活発化している
労働供給の制約を背景に、スペシャリスト(専門家)の活用が重要視される状況において、高度な能力や豊富な経験を備えた人材を中途採用しようという機運が高まってきています。
専門分野における高度な知識やスキルへのニーズ
長期的には内部でスペシャリストを育成していくことも1つの手段ですが、短期的・中期的には中途採用による人材確保が有効といえます。スペシャリストに対するニーズは、大企業・中小企業ともに高まっています。
大企業と中小企業のニーズの差異
企業規模別にみると、従業員1,000人以上の大企業では、「高度なマネジメント能力などを有する人材」へのニーズが高く、従業員300人未満の中小企業では、「高度でなくとも仕事経験が豊富な人材」へのニーズが高くなっています。
人材マネジメントに関する考え方による方針の差異
ゼネラリストを育てるか、スペシャリストを雇用するかは、各企業の考え方によって異なります。それによって各企業の方針にも差異がみられることがわかってきています。
ゼネラリスト・内部人材の育成を重視する企業の場合
日本国内で主流である「内部労働市場型の人材マネジメント」を重視する企業の方針について挙げていきます。
「転勤・配置転換の経験」は「積極的に評価」し、「将来の幹部候補」については、特に従業員300人以下の企業において「早期選抜」の傾向にあります。また、「内部人材の多様性」を重視し、「教育訓練の受講」については「積極的に支援を実施」する方針が主流です。
スペシャリスト・外部人材の採用を重視する企業の場合
一方、スペシャリストの採用を重視する企業は、対照的な方針を掲げる傾向がみられます。
「転勤・配置転換の経験」は、特に従業員300人以下の企業において「勘案しない」傾向があり、「将来の幹部候補」については、「ある程度のポストまで、入社同期を一律に育成」する企業が多くなっています。また、「内部人材の同質性」を重視し、「教育訓練の受講」については「個人の判断に委ねる」傾向が強くなっています。
労働者の能力に対する考え方と今後の展望
ゼネラリストやスペシャリストといった観点から、労働者が自らの能力についてどのように考え、将来的にどのような仕事を希望するかについて述べていきます。
役職別にみた考え方の差異
現在ゼネラリストとして就労している労働者は、全体的に5年先もゼネラリストとしての就労を希望しています。一方、現在スペシャリストとして就労している労働者は、全体的に5年先のスペシャリストとしての就労を希望しない傾向がみられます。
ただし、課長・部長相当職者、特に従業員1,000人以上の大企業に勤務している労働者に関しては、5年先もスペシャリストとしての就労を希望する傾向があるようです。
入職方法別にみた考え方の差異
中途採用者はスペシャリスト志向が強い傾向があります。特に大企業では、今後より一層その志向が高まる見込みがあり、新卒採用者においても、スペシャリスト志向が高まっていくとみられます。
厚生労働省は、平成30年版の白書(労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-)において「企業と労働者の今後の展望に大きな乖離が生じている状況にはない」と評価しています。これからも会社と社員が協力して発展していくために、人材マネジメントの考え方や、雇用管理・能力開発などの在り方を検討してみてはいかがでしょうか。
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