障害者と職場の架け橋となり支援を行う「ジョブコーチ」という専門職をご存知でしょうか。
ジョブコーチは障害者に対して社会進出に向けて支援をし、企業に対しては障害者の採用における支援を行います。
この記事では、ジョブコーチの支援を受ける企業に向けて、ジョブコーチの基本的な知識やジョブコーチ支援を受けることで企業が受け取れる助成金などについて解説します。
ジョブコーチとは厚生労働省が推進する職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業のこと
ジョブコーチとは厚生労働省が推進する支援事業のひとつで、基本的には無料でサポートを受けることができます。
「職場適応援助者」とも呼ばれている通り、障害者の職場適応に課題がある場合、その職場に出向いて障害特性を踏まえた専門的な支援を行い、障害者の職場適応を図ることを目的としています。
ジョブコーチ支援を受ける対象者
ジョブコーチによる支援を受けることができるのは、下記の障害をもつ求職者または在職者です。
- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 発達障害者
- 難治性疾患のある人
- 高次脳機能障害のある人
- 上記以外の障害を持ち、地域センターが作成する職業リハビリテーション計画において職場適応援助者による支援が必要であると認められる人
障害者手帳の有無は問われませんが、利用には障害者と事業主双方の同意が必要。ジョブコーチによる支援が終了する時点で対象障害者が週20時間以上勤務することを目標に設定することも条件に含まれます。
ジョブコーチの種類
ジョブコーチは、所属する機関や支援対象などによって3種類に分けられます。
配置型ジョブコーチ
「配置型ジョブコーチ」とは、障害者に専門的な職業リハビリテーションを提供する地域障害者職業センターに配置されているジョブコーチを指します。
主に、就職が難しいとされる重度の障害者を重点的にサポート。後述する「訪問型ジョブコーチ」や「企業在籍型ジョブコーチ」と連携して支援を行うケースもあり、効果的・効率的な支援が行われるために必要な助言や援助を行います。
訪問型ジョブコーチ
「訪問型ジョブコーチ」は、障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに雇用されているジョブコーチのことです。
「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が実施する訪問型職場適応援助者養成研修または厚生労働大臣が定める訪問型職場適応援助者養成研修を修了した人を指し、必要な相当程度の経験・能力を有しています。
企業在籍型ジョブコーチ
障害者を雇用する企業に雇用されているジョブコーチは「企業在籍型ジョブコーチ」に分類されます。
機構が実施する企業在籍型職場適応援助者養成研修または厚生労働大臣が定める企業在籍型職場適応援助者養成研修を修了した人を指します。
ジョブコーチの支援内容(サービス内容)
ジョブコーチは障害をもつ人に対して、以下のような支援を行います。
- 自分に合った仕事探しを手伝ってほしい
- 就職したものの仕事に慣れることができず、アドバイスしてほしい
- 職場に障害の特性に応じた支援をしてほしいが、どのように伝えれば良いかわからない
ジョブコーチ支援は、障害者が自分の仕事を遂行しつつ職場に適応するため、具体的な目標を定めた支援計画に基づいて実施されます。
その最終的な目標は、障害者の上司や同僚による支援(ナチュラルサポート)にスムーズに移行していくことです。具体的な支援対象者と内容を見てみましょう。
- 障害者に対する支援職務の遂行に関する支援
- 職場内のコミュニケーションに関する支援
- 体調や生活リズムの管理に関する支援
- 家族に対する支援
- 安定した職業生活を送るための家族の関わり方に関する支援
- 事業主(管理監督者や人事担当者)に対する支援
- 障害特性に配慮した雇用管理に関する支援
- 配置、職務内容の設定に関する支援
- 上司、同僚に対する支援
- 障害の理解に関する社内啓発
- 障害者との関わり方に関する助言
- 指導方法に関する助言
ジョブコーチによる支援の一例
障害者本人、その家族、事業主、上司・同僚を包括的にサポートするジョブコーチ。その支援の一例をご紹介します。
- 障害者が作業を覚えやすくなるよう手順書や作業マニュアルの作成を助言
- 職場訪問の際、障害者の不安や悩みについて相談に乗りアドバイス
- 障害者の特性に応じた指示の出し方や声かけについて一緒に働く従業員へアドバイス
- ストレスのサインなど、障害者の体調を把握するポイントを事業主と共有
ジョブコーチが事業主に行う支援とは
ジョブコーチは事業主に対して、障害特性に配慮した雇用管理などに関するサポートを行います。ジョブコーチを利用できるかどうかは、下記の通り事業主側の要件も加味されます。
- 労働者災害補償保険、雇用保険、厚生年金保険等に加入していること
- 労働基準法及び労働安全衛生法に規定されている安全衛生その他の作業条件が整備されていること
企業がジョブコーチの利用を希望する場合、管轄のハローワークまたは地域障害者職業センターに直接連絡してみましょう。
ジョブコーチを受ける頻度
ジョブコーチは「雇用前から」「雇用と同時に」「雇用後に」など、必要なタイミングで支援を受け始めることができます。
その支援期間は1〜8か月(標準2〜4か月)に設定されており、段階ごとに訪問回数や内容が異なります。
- 集中支援(週3〜4日訪問):職場適応上の課題を分析し、集中的に改善を図る
- 移行支援(週1〜2日訪問):支援ノウハウの伝授やキーパーソンの育成により、支援の主体を徐々に職場へと移行
- フォローアップ:数週間〜数か月に一度職場に訪問
ジョブコーチによる支援を受ける際に給付される助成金について
厚生労働省は、自社で雇用する障害者の職場適応のために企業在籍型ジョブコーチによる支援を行う事業主に「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」を支給しています。
助成金を受けることができる事業主
「障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)」を受給するには、下記の要件をどちらも満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業主
- 地域障害者職業センターが作成または承認する支援計画書に基づき、企業在籍型ジョブコーチに支援対象労働者の支援を行わせる事業主
支給額
助成金は下記①と②の合計が支給されます。
①対象労働者1人あたりの月額(下記)に、支援計画に基づく支援を行った月数を掛けた額(最大6か月)
精神障害者の場合
- 短時間労働者かつ中小企業…6万円
- 短時間労働者かつ中小企業以外…5万円
- 短時間労働者以外かつ中小企業…12万円
- 短時間労働者以外かつ中小企業以外…9万円
精神障害者以外の場合
- 短時間労働者かつ中小企業…4万円
- 短時間労働者かつ 中小企業以外・3万円
- 短時間労働者以外かつ中小企業…8万円
- 短時間労働者以外かつ中小企業以外…6万円
②企業在籍型職場適応援助者養成研修の受講料を事業主がすべて負担し、かつ養成研修の修了後 6か月以内に初めての支援を実施した場合、その受講料の1/2の額
ジョブコーチになるには?ジョブコーチ研修を受けることが必要
ジョブコーチ(職場適応援助者)は「高齢・障害者・求職者雇用支援機構」のほか、厚生労働大臣が認めるNPOなどの団体で行われる職場適応援助者養成研修を修了することで、支援を行う権利が得られます。
研修は、職業リハビリテーションの理論、職場適応援助者の役割についての講義、作業指導の演習などを学ぶ「集合研修」と企業での実習やケーススタディなど、地域の実情に即した「実技研修」の2部構成。
下記の対象者に該当し、すべての日程・カリキュラムを受講できる見込みのある人なら誰でも無料で受講することができます。
対象者
- 障害者を雇用している又は雇用しようとしている事業主に雇用されている人
- 障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)を活用した企業在籍型職場適応援助を予定しており、そのために研修受講が必要な人
- 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主に雇用されている人、または同事業主(法人の代表者・役員)
- 障害者の雇用管理等に関する業務を担当している、または担当する予定の人
- 障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)を活用した企業在籍型職場適応援助は予定していないが、障害者の雇用管理等をより効果的に行うために研修受講が必要な人
ジョブコーチには、障害者と職場双方のニーズを把握した上で柔軟に対応するスキルや資質が求められています。
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障害をもつ人が職場に適応し、その能力を発揮するための支援を行うジョブコーチについてご紹介しました。障害をもつ人を含めたすべての社員がやりがいを感じながら働ける職場づくりには、的確な人事評価制度も欠かせません。
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