ナレッジマネジメントなどビジネスにおいて、「創発」は想定していなかった意図や計画を超えるイノベーションを生み出すことを指します。
より良いサービスやこれまでにないアイデアを生み出すため、意図的にイノベーションを起こすことを「創発的戦略」といいます。
今回は、経営者が自社企業で創発的戦略を活用するために、創発や創発的戦略の意味や手法、日本企業の実例について紹介しましょう。
創発とは
創発とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない特性が、全体として現れることと定義されています。
もともとは、物理学や生物学、情報科学、社会学などで使用されている「emergence」という単語が語源となっています。
要素間の局所的な相互作用が全体に影響を与え、その全体が個々の要素に影響を与えることによって、新たな秩序が形成される現象ことを言います。
ナレッジマネジメントの分野では、事実に基づいた計画や意図を超えるイノベーションが生み出されることを「創発」といい、組織のメンバー間の発想や能力をかけあわあせて予想もつかない新た成果に結びつくことを指します。
個人個人の持っているスキルを共有し、かけ合わせることでシナジー効果を生み出すことができるのです。そうすることによって、今までにない新しいサービスや商品を生み出すことが期待されます。
意図的な創発でイノベーションを起こす
ビジネスにおける創発は、競合熾烈な市場で他社との差別化を図る、新たなイノベーションを生み出すための取り組みとされています。
実際に、世界でもしのぎを削る巨大ハイテク企業の集結するシリコンバレーや国内の中小企業でも、創発によって様々な新しいビジネスが生み出されています。
個々の持つ相互作用によって革命的なイノベーションを起こす創発現象を、最近では意図的に引き起こす企業も増えています。それは、多様化するニーズや飽和するサービスの中で生き残っていくためです。
メンバーひとりひとりがもつ考えやアイデアを共有し、かけ合わすことで今までにない新しいアイデアやクリエイティブな成果へと結びつけます。
具体的には、ナレッジマネジメントシステムの導入、社内ベンチャー制度の設置などが挙げられます。また、役職や部署をまたいでフラットな意見が出やすい環境を整えることで、創発現象が起きやすいといえます。
創発を起こすためには、まずは社内のしくみ作りから始めましょう。
創発的戦略とは
ビジネスシーンにおいて、「創発的戦略」という言葉が度々使用されます。
創発的戦略とは、もともとの経営計画には組み込まれておらず偶発的に起こった事象に対応することで、後発的に生み出される経営戦略のことです。カナダの経営学者ミンツバーグ氏によって提唱されました。
方法としては、当初計画していた計画に修正する余地がある際に、適宜修正をかけながら計画をブラッシュアップしていきます。
例えば、当初はテレアポや飛び込み訪問で営業をしていく計画があるとします。
しかし、テレアポや飛び込みよりもDMやメール営業の方が効率的であることが判明し、営業方法を変えることになった場合、これを創発的戦略と呼びます。
創発的戦略は「PDCAを回す」ことに通ずる部分があります。どちらも策定した戦略を実行しながらも、適宜振り返り修正しながらブラッシュアップさせていくことで、最終的により良い成果を出すことができます。
創発的戦略の実施方法
創発的戦略によって新しいイノベーションを生み出すためには、まずは大まかな戦略が必要です。
経営者層の中に戦略がない状態で、戦略の策定を現場任せにしていると、本来の目的から大きく外れてしまう恐れがあります。
まずは、経営者層が仮説としての戦略を打ち出しましょう。策定された戦略を現場レベルで実践し、仮説の検証を行っていきます。
創発的戦略における経営層やトップの役割は、戦略的な計画を練ることではありません。あくまでも打ち出した戦略を仮説として位置づけながら、より良い方法を探すために現場をマネジメントすることが求められます。
想定していた成果が求められない場合や、より良い成果が出る方法を発見した場合には、仮説を軌道修正していきましょう。その際、現場から経営層への密なコミュニケーションが求められます。
経営目線だけで考えるのではなく、現場目線を持つことで組織全体が学習し、戦略がブラッシュアップされていきます。このように計画→実証を繰り返し、PDCAを回していくことが創発的戦略そのものなのです。
創発的戦略の事例:ホンダ
続いては、創発的戦略を実際に行い、成果を上げた企業の事例を見ていきましょう。今回は、ホンダにおける創発的戦略を確認していきます。
ホンダは1958年に自社バイクのアメリカ進出を開始しました。売上目標は年間6,000台・アメリカ市場の約1%に値します。
アメリカでは当時250cc以上の大型バイクがバイク市場の主流でした。まずは、同社の強みである大型バイクの販売に踏み切ったホンダでしたが、購入者によるオイル漏れやクラッチの摩擦などという日本では頻繁に起こらない想定していなかったトラブルが発生しました。
というのも、 アメリカ人は大型バイクで高速・長距離運転を行うため、日本人向けに製造されたバイクでは故障を引き起こしてしまったのです。
一方で、現地スタッフが使用していた50cc小型バイクであるスーパーカブが現地で注目され始めたことから、スーパーカブの販売に踏み切りました。
大型バイクが主流のアメリカで50ccバイクがヒットするとは誰も想定していなかったものの、結果として燃費が良く故障しにくい小型バイクが爆発的に売れるようになったのです。
このスーパーカブのヒットを受けアメリカ市場でホンダの認知度や信頼度が高まったことから、大型バイクも売れるようになりました。
ホンダが行った創発的戦略
ホンダが認知度の低いアメリカで、製品をヒットさせ市場開拓に成功した要因は、「メンバーが学習しながら成長した」こと、つまり創発的戦略を実践したことにあります。
まず1点目の学習は、アメリカ人のバイクの使用方法です。日本人よりも高速かつ長距離運転を行うため、故障が勃発するという事象を受けて、日本向けで販売しているバイクよりも強固な整備が必要であることを学習しました。
続いては、スーパーカブのニーズの発掘です。実際に現場スタッフがアメリカ人に注目されているということを実感し、当時予定ではなかったスーパーカブの販売に踏み切りました。
このように、販売途中でも常にPDCAを回す、戦略内では把握しきれない生の声を取り入れることで、誰も予想できない創発的戦略を生み出すことができたのです。
創発的戦略のメリット・デメリット
創発的戦略を意図的に起こしたいと考えている経営者は、創発的戦略におけるメリットとデメリットをあらかじめ把握しておきましょう。
創発的戦略のメリット
創発的戦略のメリットは、目まぐるしく変わる市場の動きや環境変化にいち早く対応できる点です。ビジネスにおいて、当初の計画がうまく行かない、想定していなかった問題が勃発するということはよくあることです。
あらかじめ定めた戦略を絶対としてしまうと、前に進むことができなくなったり、本来の目的とずれたりする可能性もあります。
戦略はあくまでも仮説と捉えておくことで、柔軟に軌道修正しながら成長を続けることができます。
創発的戦略のデメリット
創発的戦略のデメリットは、計画が行き当たりばったりになる恐れがあることです。全く戦略を立てないまま進めてしまうと、当初の目的やビジョンからズレが生じてしまったり、業務が非効率になってしまったりする可能性があります。
創発的戦略とは、偶発的に生じた事態に応じて戦略を修正するものなので、はじめに戦略を綿密に練っておくことは大切です。
創発・創発的戦略によって発展的な事業・組織を目指そう
激化する市場での生き残りをかけ、企業は新たなイノベーションを生み出すことが急務となっています。
創発を実践することで、メンバーひとりひとりの持つ考えやアイデアをかけ合わせシナジーを起こすことができるかもしれません。
また、創発的戦略を行う際には、経営層はじめトップが仮説としての戦略を打ち出した上で現場メンバーとコミュニケーションをとりながらブラッシュアップする必要があります。
創発・創発的戦略を有効活用し、革新的なサービスを生み出す事業・組織へと成長させましょう。
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