成果主義は日本に合わない?企業の失敗事例から学ぶ成果主義のすすめ

成果主義とは、社員の成果を重視して人事評価を行い、報酬や人事にも反映する方法です。日本にも導入事例はありますが、失敗したケースもあり、導入する際には注意する必要があります。

本記事では、成果主義の基本的な仕組みや能力主義との違い、メリットを紹介。その上で、成果主義の課題や失敗事例、そして成功のポイントを解説します。

成果主義とは?

成果主義とは、社員の成果を基準として人事評価を行い、報酬や人事に反映する方法です。

キャリアや経験などによって評価が固定されるのではなく、目標やその達成度を重視して人事評価を行います。

そのため、若手であっても成果を出せばよい処遇を受けることがある一方、経験が長くそれまで実績がある社員でも成果を出せなければ評価が落ちることもあるのが特徴です。

成果主義と能力主義の違い

成果主義と比較される考え方に、能力主義があります。能力主義とは、社員の能力に応じて人事評価を行い、賃金やポストに反映する方法です。

能力とは、等級や役職といった形で区切られることが多く、それらに応じて報酬やポストが決定されます。

一方、成果主義はそういった等級や役職よりも、むしろ当該期間の個人業績を重視する考え方です。そのため、等級や役職が低い若手社員であっても、大きな成果によって大幅な報酬アップや昇格につながるケースもあります。

成果主義のメリット

成果主義の効果を発揮するためには、導入のメリットを知っておくことが有効です。ここでは成果主義のメリットを4つ紹介します。

モチベーションの向上

1つ目は、社員を動機付ける効果です。

能力主義の企業の場合は、社員が大きな成果を挙げたとしても、等級や役職が高くなければ大きく賃金が上げり昇格させたりすることは多くはありません。

一方、成果主義の組織は、本人の成果を正当に評価し、それを報酬や人事にも反映します。等級や役職といった現状のポジションや過去の成果にかかわらず、今後の成果を重視するため、成果に対するモチベーションを維持させやすいのです。

人材の能力向上

2つ目は、人材の能力向上です。

成果主義の組織の中で、社員が高い賃金や役職を獲得するためには、社員自身が能力を高め、成果を出すことのできる人材にならなければなりません。

能力主義の組織で見られるようなこれまでの等級を維持するような努力ではなく、実際に成果を出し続ける姿勢とそのための能力が求められます。成果主義はこのような仕組みであるため、社員の主体的な自己研鑽を促し、成長を導きやすいのです。

組織の活性化

3つ目は、組織の活性化です。

成果主義の場合、成果が人事異動にも反映されるため、若手社員であっても責任者に抜擢されたり、あるいはベテラン社員が成績不振で降格したりといったケースもありえます。

能力主義の組織では、年次やキャリア、役職などによって人事が固定化してしまういわゆる「マンネリ状態」になるケースもありますが、成果主義は組織に新陳代謝を引き起こすのです。

賃金配分の適正化

4つ目は、賃金の適正化です。

成果主義は、社員の個別の成果に応じて賃金が決定されます。ベテラン社員だから賃金が常に高かったり、若手社員だから賃金がいつも低かったりするわけではありません。

もちろん等級や役職が賃金に加算されることはありますが、あくまでも成果が重要な判断基準になるので、成果の出す社員は待遇が良く、成果が出せなければ待遇は下がります。

結果として、成果の少ない社員に多くの賃金を支払ったり、活躍している社員に過小な報酬を支払ったりすることを防ぎ、組織への貢献度に応じて適正に賃金を配分できるのです。

成果主義の課題

成果主義にはデメリットもあり、経営者や人事担当者は対策が必要です。ここでは成果主義の課題を3つ紹介します。

長期的な人材開発

人材の育成は大きな課題です。

成果主義では、能力や役職よりも成果を重視して評価を決定します。成果を出さなければ報酬や処遇は上がりにくいため、管理者も社員本人も長期的な成長ではなく成果ばかりに意識が行く可能性は否定できません。

もちろん、成果そのものは重要ですが、短期的な成果に気を取られて基礎スキルや知識、経験などの蓄積が疎かになってしまうと、長期的に成果を発揮し続けられない可能性があります。成果主義と人材開発をどのように両立するかは大切な課題なのです。

組織風土の醸成

また、組織風土にも注意する必要があります。

成果主義では、成果につながることは積極的に取り組むものの、それ以外のことはやらないという合理的な考え方が広がりがちです。

こういった考え方が広がりすぎると、組織にとって本来必要なはずのコミュニケーションが時間の無駄だからと省略されてしまったり、あるいは成果を出そうとするあまり個人プレーに走ってしまったりする可能性もあります。成果主義の中でも、組織力を強化する取り組みは欠かせません。

人材の定着

人材が定着するような工夫も必要です。

成果主義では、それまでのキャリアが長く実績が多い社員であっても、成果を出せなければ報酬を減らしたり降格させたりといった措置をとることは珍しくありません。

その結果、社員のモチベーションが削がれて、退職まで考える人もいるでしょう。そこで、企業としては一度落ち込んだ社員に対して奮起を促し、本来優秀な人材については長く活躍してもらえるような仕組みを用意することが重要になります。

成果主義を導入した企業の失敗事例

成果主義を導入した企業は数多くありますが、その全てが成功したわけではありません。ここでは成果主義の失敗事例を紹介します。

富士通

富士通は1990年代に成果主義を導入しました。
これは他社に先駆けとなる時期だったのですが、結果としては失敗に終わっています。当時の成果主義の仕組みは、それぞれの社員に目標を設定させて、その達成度を上司が後から評価するというものでした。

この方法では達成度合いによって評価が決まるため、あらかじめ無難な目標ばかり設定する社員が続出し、チャレンジが生まれにくい状況になってしまったのです。その後、この評価制度は廃止されることになりました。

日本マクドナルド

日本マクドナルドは2006年に成果主義を導入し、その一環として定年制を廃止しました。

この狙いは、社員の競争意識を刺激して切磋琢磨を促し、実力ある人材を積極的に登用することです。しかし、ベテラン社員が自分の成果を優先するあまり若手人材の育成が疎かになってしまい、若手の人材開発に問題が生じてしまったのです。その結果、日本マクドナルドは成果主義を見直し、定年制を復活させました。

三井物産

三井物産は1999年に成果主義を導入し、個人の成果を賃金や処遇に反映する方法に移行しました。

三井物産と言えば、社員の人間性、スキルや組織のチームワークが強みの企業でしたが、成果主義を導入すると個人の成果を出すことを優先したがる社員が続出し、強みが生かされなくなってしまったのです。

その結果、2006年にはチームワークや人材育成などを重視する制度に回帰しました。

成果主義導入のポイント

成果主義はただ闇雲に導入しても機能するわけではありません。ここでは成果主義を導入する際の、成功のポイントを紹介します。

評価基準の明確化

まず、評価基準を明確に決めましょう。

成果には定量的に測定できるものと、そうでないものに分かれます。
営業や製造部門であれば、受注獲得件数や生産数などを成果の基準として選びやすいですが、事務職や総務・管理部門にはそういった数値化が難しい業務があることも確かです。

仮に成果の定義や評価基準が定まっていなければ、一般社員にとっても管理者、人事担当者にとっても混乱を招きかねません。

報酬体系の設計

報酬体系を丁寧に設計することも大切です。

成果主義と一口に言っても、さまざまな方法が考えられます。
例えば、月給は等級や役職手当などをベースに支給し、賞与(ボーナス)だけを成果によって決める方法が一例です。

また、月給の中にベース賃金部分と個人業績部分を盛り込み、ベース賃金は一律で個人業績部分は成果によって判断する方法もあります。

このように、成果主義によって報酬体系をどのように設計するかは多くのバリエーションがありますが、これは人件費や社員のモチベーションにも関わる重要な要素です。

人事制度の見直し

成果主義の導入に向けて、人事制度全体を見直すことも欠かせません。

成果主義は、人事評価、報酬、人事異動、人材開発、採用戦略など、人事制度の全般に影響する制度です。

現行制度を能力主義で運用している場合、人事制度を大きく構築し直さなければ、新しい仕組みとの間で矛盾点や問題点が生じかねません。成果主義を導入する場合は、人事評価だけでなく、人事制度全体を見渡して調整しましょう。

評価システム導入が成果主義成功のカギ

成果主義を導入する際は、評価の基準やプロセスなどを大きく変更することになります。新しい人事制度にスムーズに移行するためには、人事評価システムを導入することも有効です。

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