社員の生産性や能力を高め、組織の業績を向上させるというコンピテンシー評価。採用難から新しい人材の確保が難しくなっている昨今、評価にコンピテンシーを取り入れる企業が増えています。
この記事ではコンピテンシーの概要や、メリット・デメリット、コンピテンシー分析のレベルや活用シーンなどについて解説します。
コンピテンシーとは?
人事評価以外にも、面接や人材育成の場でも活用されているコンピテンシー。
人材の管理・育成で注目されているコンピテンシーについて、概要を解説していきます。
コンピテンシーの意味
コンピテンシーとは、高い成果を生み出している優秀な社員に共通して見られる行動特性のことです。
特定の職種や分野について常に高い成果を生み出している社員の行動や思考、技術、基礎能力などを細やかに観察・分析して、社員のどういった特性が高い成果に結びついているか解明します。
そのコンピテンシーを人事評価の指標としたり、他の社員の行動指標に活用したりすることで、組織全体の業績を高めていくことにつながります。
コンピテンシーの歴史
コンピテンシーは、ハーバード大学の心理学者、D.C.マクレランド教授を中心としたグループが、米国務省からの依頼によって研究し始めたものです。
研究の結果、高業績者には「環境適応力が高い」「どんな相手でも人間性を尊重する」「人的ネットワークの構築がうまい」といった共通の行動特性があることがわかったそうです。
その後、一部のコンサル会社などがそれぞれの考えをまとめ、人事システムのためのツールとして発展していきました。
コンピテンシー評価のメリット
コンピテンシーを評価に取り入れることで、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットを紹介していきます。
公平な人事評価の実現
従来の上司に依存した人事制度には、評価が属人化しやすいといったデメリットがありました。
直接の上司は部下である社員の働きを最も近くで見ているとはいえ、評価には思い込みや感情といった主観がどうしても含まれてしまいます。
コンピテンシー評価では、コンピテンシーという明確な評価基準があるため、評価が属人化することを防ぎ、公平な結果を生み出すことができます。
社員も、評価に対して「何が評価されたのか」「より高い評価を得るにはどんな能力が足りないのか」といった点を把握できるため、納得して結果を受け入れることができます。
経営ビジョンの共有
コンピテンシーを明確にして社員に周知することで、企業がどんな人材を求めているのか、社員にどんなことを期待しているのか、社員の理解を深めることができます。
人事評価を行うには、まず各社員が上司と面談を行いながらコンピテンシーを基とした目標を立てます。
コンピテンシーを通して、企業が社員にどんなことを達成してほしいのか伝えることができ、全社員が経営ビジョンに紐づいた目標に従って行動できるようになります。
求める人材の育成
コンピテンシーによる評価を行うと、各社員の能力や経験を正確に把握しやすくなります。
コンピテンシーとの比較によって、社内の人材にはどういった能力が足りていないのか、現在の人材配置は適正なのかが明確になるためです。
社員の能力値が明確になると、より効果的な人事戦略の立案にもつながります。
また、社員は成果をあげるためにどのような取り組みが必要なのか明らかになるため、コンピテンシーに従って能力向上に励めるようになります。
コンピテンシー評価のデメリット
メリットの一方で、コンピテンシー評価にはデメリットも存在します。人事担当者が把握しておくべきデメリットを解説します。
コンピテンシーの抽出が困難
コンピテンシーを取り入れるには、前述の通り高い成果を出している人の行動や思考を分析する必要がありますが、それがどういった特徴を示すかは、企業や職種によって多種多様です。
そのため、テンプレートというものが存在せず、ノウハウのない会社が一からコンピテンシーを確立することは至難の技です。
また、特定の分野や職業で成果を出している人の中には、アウトプットが苦手な人も多くいます。
行動の理由や思考パターンをうまく言語化できず、サンプルを取得することが困難な場合も少なくありません。
変化に適応力が低い
IT技術の進歩やグローバル化で変化が目まぐるしい昨今のビジネスシーンにおいては、企業に求められる技能や知識も常に変化していきます。
前述の通り、抽出に非常に手間のかかるコンピテンシーは、改定するのも容易ではありません。
人事評価は経営戦略に合わせて常に改定を繰り返していく必要がありますが、コンピテンシーは早い改定サイクルの中では安定性を失ってしまうと指摘されています。
コンピテンシーの5段階のレベル
コンピテンシーを設定する際は、社員を5段階でレベル分けしていきます。行動のレベルごとに、「受動行動」「通常行動」「能動行動」「創造行動」「パラダイム転換行動」と分類されます。
それでは、各レベルについて解説していきます。
レベル1:受動行動
受動行動は、上司や先輩からの指示を待って行動するといったような、受け身の行動姿勢を指します。自身でアイディアを出したり情報収集をしたりといった行動はとらず、上司の言動を待ってから、言われたことをこなす社員がこちらに分類されます。
レベル2:通常行動
通常行動の社員は、自身に与えられた最低限の業務をこなすことができます。こちらに分類される社員も自主的にアイディアを創出したり改善行動を行ったりすることはありませんが、自身の仕事に対して「ミスなく確実にやり遂げる」という意識は持っており、そこがレベル1との違いになります。
レベル3:能動行動
自身で目的を設定して、それに向かって能動的に動ける社員です。例えば、「今度入る新人を任せるかもしれない」と言われれば、教育資料を用意したり、OJTのスケジュールを組んだりなど、必要なものを自分で考えて用意することができます。
レベル4:創造行動
想像行動は、自身で起こした行動によって、状況に変化をもたらすことです。新人の教育を任された場合なら、システムを導入して現在の教育状況をチームで共有できるアイディアを出し、今後部署内に新人が入ってきたときの教育の効率化をはかることができます。
レベル5:パラダイム転換行動
レベル5に分類される社員は、独自性の高い発想を出し、組織でリーダーシップを発揮しながらそのアイディアを実現させることができます。
新人教育の例でいえば、「システム上で教育マニュアルも閲覧できるようにし、人事と担当部門が状況を共有できるようにする」など、全社を巻き込んだ大規模な改革行動を起こせる社員がこちらに分類されます。
コンピテンシーの活用シーン
コンピテンシーは、企業の人材戦略において様々な場面で活用することができます。コンピテンシーの活用例を紹介します。
採用面接
企業が求める人材を的確に採用するために、キャリアコンピテンシーを活用したコンピテンシー面接を実施する企業が増えています。
採用面接は、「返事が元気で明るい」「偏差値の高い学校を卒業している」といった、面接官の主観要素が判断に入り込みがちです。コンピテンシーを基準として面接を行うことで、属人化を防ぎ、自社で確実に成果を出せる人材を採用することができます。
人材育成
コンピテンシーを行動指標として活用することで、人材育成にもつながります。社員の業務内容や勤続年数、役職ごとに「コンピテンシーモデル」を設定し、それにならった目標を設定します。
社員が自主的にスキルアップにのぞめるだけでなく、企業が求める人材を的確に育成できます。
人事評価
コンピテンシーをもとに設定された目標を、どの程度達成できたのか評価します。目標は、コンピテンシーの行動指標を社員に示した上で、面談を通して上司と社員で決定されます。
指標が明確であり、目標設定にも自身の意志が反映されているため、社員も評価結果を納得して受け入れることができます。
コンピテンシー導入の際は人事評価制度の整備もお忘れなく
コンピテンシーを取り入れることで、人事評価だけでなく、人材育成や面接にも活用でき、それによって経営ビジョンに即した高いパフォーマンスを発揮できる人材を採用・育成できるとされています。
ただし、コンピテンシーはノウハウのない企業が一から自力で抽出するのは非常に難しいものです。
導入するには、人事評価システムの専門業者などを活用することをおすすめします。併せて、コンピテンシーに基づいて高い成果を出している社員を適正に評価できる人事評価制度の整備も忘れないようにしてください。
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