チームワークを象徴する言葉「One for all, All for one」は、フランスの小説「三銃士」やラグビー精神に見られる、チームの連帯を表す精神です。
ビジネスでは、多様な人材が組織的にミッションを遂行する上で、チームワークが重要視されています。しかし、その実践には課題もあります。
本記事では、職場でのチームワークの重要性、効果的な実践方法、潜在的な課題とその対策、さらにリーダーの役割について解説します。
本記事を読んで、チームの結束力を高め、組織の成功につなげるための具体的な方法を学びましょう。
チームワークとは?
チームワークは、メンバーが持つ能力を結集させて共通目標の達成を目指す協同作業です。ビジネスでは他のメンバーや部署と連携して、担当者レベルで達成困難な大きなミッションを成功に導く意義を持ちます。メンバー同士が弱点を補い、強みを高め合うことで組織力の強化を目指せるのが特徴です。
働き方改革にともなう時間外労働の総量規制や年次有給休暇の取得義務化も、チームワークの重要性を高めています。業務を円滑に遂行するためには、情報共有や個人レベルでのスキル向上が必要不可欠だからです。
マルチスキル化を推進するなど、他のメンバーと連携できる体制を確立することで、メンバー間の信頼関係と企業の組織力を同時に高めていけるでしょう。withコロナ時代に即したBCP対策にも有効です。
- 「グループ」とチームの違い
- 職場にチームワークが大切な理由
「グループ」とチームの違い
複数の人が集まって物事に取り組む点で「グループ」と「チーム」に共通点しますが、組織行動学では別のものとして定義されています。グループは、同じ属性を持つ集団の中でメンバーが発揮した能力を結集して、全体の成果とするのが特徴です。
一方、チームでは同じ目的を持つメンバーが協力して、各自の能力では解決できない課題を総合力で乗り越えていきます。「総務グループ人事チーム」のように、チームの集合体をグループ、すなわち成果の集合体として位置づけることも可能です。
職場にチームワークが大切な理由
メンバー同士が対等な立場で気軽に話せる環境を実現するためには、良好なチームワークの構築が大切です。互いの存在を認めた上で、率直な意見を交換することで信頼関係が深まり、相互に助け合える風土が定着します。
仮に仕事に失敗しても、他のメンバーからフォローの言葉があれば気持ちが落ちつき、メンタル不全の予防にもつながります。
どんなに優秀な人材であっても、仕事を進める中で一人の力では解決できない問題が必ず発生します。
例えば、ハラスメント問題の調査を人事部が実施する場面で、専門性が高い担当者Aによる面談に難色を示されるケースです。担当者Aによる対応を強行すると問題がこじれてしまうおそれがあるため、聞き上手な担当者Bに面談対応を委ねて事態の解決を図るプランが考えられます。
担当者Aが詳しい面談での確認事項や注意点を担当者A・Bが共有していけば、担当者Bの傾聴能力とともに、組織としての問題解決能力の向上も実現します。相互補完の関係、すなわち助け合える職場の風土を確立するためにも、チームワークは大切です。
チームワークで大切なこと3選
効果的なチームワークを実現するには、いくつかの重要な要素があります。ここでは、特に重要な3つのポイントを紹介します。
- チームが掲げる目標を共有する
- チームメンバーの役割を理解する
- チームビルディングに取り組む
各ポイントを理解し、日々の業務に取り入れていくことが、強力なチームワークの基盤となるでしょう。
1. チームが掲げる目標を共有する
チーム全体で明確な目標を共有することは、メンバーの方向性を一致させ、協力して取り組む原動力となります。
定期的なミーティングや効果的なコミュニケーションツールを活用し、目標の進捗状況を共有し、必要に応じて調整することが重要です。
2. チームメンバーの役割理解する
各メンバーの役割と責任を明確にし、互いの強みを活かし合える体制を構築することが大切です。
オープンな対話を通じて役割の理解を深め、状況に応じて柔軟に調整することで、チーム全体のパフォーマンスが向上します。
3. チームビルディングに取り組む
意識的なチームビルディング活動を通じて、メンバー間の信頼関係を築き、コミュニケーションを円滑にすることが重要です。
オフサイトミーティングやチーム内イベントなどを通じて、チームの結束力を高め、より強固なチームワークを実現します。
チームワークが大切とされる2つの理由
チームワークが大切とされる2つの理由を紹介します。
- ダイバーシティ経営の浸透
- ビジネス環境の複雑化
チームワークがなぜ重要視されるのか本章で確かめましょう。
1.ダイバーシティ経営の浸透
ビジネスのグローバル化が進む中、人材の多様性を尊重しながら企業価値を高める「ダイバーシティ経営」を推進するためには、チームワークの確立が必要不可欠です。
外国人や高齢者の雇用促進や、育児や介護と両立できる柔軟な働き方が推進されており、それぞれの人材が持つ能力をシェアしていく流れが広まりつつあります。
国内でも、人材戦略の変革を目指し、2018年に「ダイバーシティ2.0」が公表されました。
ダイバーシティ2.0とは
参照元:(経済産業省「ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ(令和元年12月)」)
「多様な属性の違いを活かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指し、全社的かつ継続的に進めて行く経営上の取組」
人材や働き方の多様性を受容する雰囲気がチーム内に生まれることで、業績の向上や優秀な人材確保が実現するでしょう。
2.ビジネス環境の複雑化
マーケティングの高度化やビジネス環境の複雑化に対応していくためにも、チームワークが重要視されています。
withコロナ時代を迎えてWeb会議システムの積極的利用が進む中、ビジネス推進に関するスピーディーな決断が企業の命運を左右するといっても過言ではありません。
個人では対応が難しい課題でも、専門性や感性などチームが持つすべての力を結集することでスムーズな対応や解決が図れるでしょう。
近年では、「アグリゲーター」による強力なリーダーシップのもと、分野や企業の枠を超えたチームワークで特定の経営課題に関してハイスピードな解決を目指す手法も注目されています。
チームワークの効果と3つのメリット
チームワークの効果と3つのメリットを紹介します。
- 生産性の向上
- 職場の士気のが向上
- ロイヤリティ(Loyalty)の向上
チームワークがもたらす効果を知ることで、実践する意義を感じ取れるようになるでしょう。
1.生産性の向上
チームワークが健全に機能することで、組織目標の共有が円滑に進み、効率的な生産体制を確立できます。
メンバー間で能力を補完する関係性が構築されていることから、業務の負担が平準化される上、業務の停滞や遅延を最小限に留められるのも特徴です。迅速に業務が進むことで、時間外労働の削減などのワークライフバランスが実現する副次的効果も期待できます。
生産性の向上により節減できた時間を、新商品の開発やサービス力の向上などの価値創造に活かすことができれば、企業の競争力アップにもつながるでしょう。
2.職場の士気の向上
共通の目標を達成するために活発なコミュニケーションを重ねることで、メンバー間の信頼関係が深まり、チーム全体の士気(モラール)が向上します。
モラールとは、集団内の役割に対する満足度や団結精神を意味する言葉ですが、集団への帰属意識が高いほどチームワークも強いです。職場内で能力を発揮した結果が認められることで、メンバーの承認欲求が満たされ、個人のモチベーションも向上します。
チームの総人数が多い場合には、情報共有やメンバーのフォローを円滑に行うため、サブリーダーを設置すると効果的です。
3.ロイヤリティ(Loyalty)の向上
職場内のチームワークを良好に保つことで、チームに所属する誇りなどの従業員満足度が高まり、その効果として離職率を低く抑えられるメリットが生まれます。
蓄積した技術やノウハウの外部(転職先へ)流出を回避できるだけでなく、退職者の穴埋めにかかる採用・教育コストを軽減できる効果も大きいです。
人事評価などで個人やチームの頑張りを正当に評価することにより、会社からも信頼されているという「エンゲージメント」に発展し、困難な課題にチャレンジする意欲が高まるでしょう。
チームワークの3つのデメリット
チームワークには多くのメリットがありますが、適切に管理されない場合、デメリットが生じる可能性もあります。以下に主な3つのデメリットを挙げ、それぞれの対策について簡単に触れます。
- 生産性が低下する
- モチベーションが低下する
- 意思決定が遅くなる
上記の問題に適切に対応することで、チームワークの効果を最大限に引き出せるでしょう。
1. 生産性が低下する
チームでの作業は個人作業に比べて時間がかかることがあります。メンバー間の調整や「社会的手抜き」が原因です。
対策として、明確な役割分担と個人の貢献を可視化する仕組みを設けることが重要になります。効率的な会議運営やタスク管理ツールの活用も効果的です。
2. モチベーションが低下する
チーム内での意見対立や不公平感がモチベーション低下を招くことがあります。
これを防ぐには、オープンなコミュニケーション環境を整え、各メンバーの貢献を公平に評価する仕組みが大切です。
また、個人の目標とチームの目標を連携させることも効果的です。
3. 意思決定が遅くなる
多様な意見を考慮するため、チームでの意思決定は時間がかかる傾向があります。対処法として、明確な意思決定プロセスの確立と時間枠の設定が有効です。
状況に応じて決定権を委譲する仕組みを整えることで、迅速な意思決定と慎重な検討のバランスが取れるでしょう。
チームワークを高める5つのポイント
チームワークを高める5つのポイントは、以下のとおりです。
- チーム目標の共有
- 役割の明確化
- リーダーの配置
- 情報共有
- 多様性の尊重
さまざまな観点から、チームワーク向上を図ることが重要です。
1.チーム目標の共有
現状の課題を明確にした上で、達成すべき行動目標・数値目標をすべてのメンバーに共有することが、チームワーク形成の第一歩です。
中間目標を定めておくと、業務姿勢に対するフィードバックや目標達成に向けたコーチングやサポート体制の構築がスムーズとなります。対面やWeb会議など相手の姿が見える形で目標共有(キックオフ)ミーティングを行うことで、目標達成後の理想像を描きやすくなるほか、メンバー間のコミュニケーションも取りやすくなるでしょう。
2.役割の明確化
メンバーが当事者意識を持って担当業務に取り組めるよう、目標の共有と同時に役割分担を行います。メンバー個人の得意分野・不得意分野を把握し、自信を持って能力を発揮できる場を設定してチームの生産性を高めるためには、人事評価システムの活用が効果的です。
目標達成のプロセスが進む中で、メンバー間の仕事量に差が生じる場合があるため、相互に助け合うことも役割の一つとして明確にしておきましょう。
3.リーダーの配置
メンバーへ目標達成の道筋をつけ、経営層や他部署との意見調整を行う役割を持つ、チームリーダーを任命します。
業務状況を俯瞰的に把握し、客観的な視点で意見調整を行う能力が、リーダーとして最低限必要とされる素質です。
経験値などの評価をベースにトップダウンで任命する方法もありますが、メンバーが信頼できる人物をリーダーとして選んでもらう(ボトムアップ)と、リーダーへの信頼感が増しチームの結束力が高まるでしょう。
4.情報共有
報連相(報告・連絡・相談)を適時適切に行うことは、チームワークを維持するために欠かせない基本です。
業務の進捗状況が伝わらない場合、次の行動に移れなかったり誤った行動を選択したりするおそれがあり、その結果チームの統率が取れなくなる事態も考えられます。
メンバーの状況を気遣って報連相が遅れるケースもあるため、グループウェアやWeb会議システムを導入するなど、手軽に情報交換を行える環境を整えることが大切です。
5.多様性の尊重
勤務時間のきめ細かな設定やテレワークの導入など、柔軟な働き方の提供が多様性の尊重につながります。
障害者・高齢者の雇用促進や育児介護などライフイベントへの対応意識が高まる中、雇用形態や勤務時間帯によらずメンバーが持つ能力を発揮できる環境を整備することは、チームワークの確立にも有効です。
多種多様な感性や能力を受け入れる雰囲気がチーム内にあれば、新たな発想が生まれやすくなり、メンバーの人間力が高まるとともに企業の業績向上にもつながるでしょう。
チームワークを高めるためにチームリーダーが取るべき行動
チームワークを高めるうえで、チームリーダーの役割は極めて重要です。成果を生み出すリーダーは、以下の行動を意識的に実践することで、チームの結束力と生産性を向上させます。
まず、明確なビジョンと目標を設定し、チーム全体で共有します。
次に、オープンなコミュニケーションを促進し、メンバー間の信頼関係を築きます。
また、各メンバーの強みを理解し、適材適所の役割分担を行いましょう。定期的なフィードバックとコーチングを通じて、個々のスキルアップをサポートすることも重要です。
さらに、チームの成果を認め、適切に評価・褒賞することで、モチベーションを高めることができます。
上記の行動を通じて、リーダーはチームワークを高め、組織全体のパフォーマンス向上に貢献できるでしょう。
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