休業手当は派遣社員も対象になる?計算方法、ケース別の支払義務を解説

休業を実施する事業者で、派遣社員やアルバイト・パートタイム労働者を抱えている場合、休業手当の扱いについてはしっかり理解しておきたいところです。

休業手当は正規・非正規を問わず支給対象になりますが、支給金額の計算方法や、派遣先と派遣元のどちらが費用を負担すべきかなど、知らなければならないことは少なくありません。

本記事では、派遣社員の休業手当について、計算方法やケースごとの判断方法を紹介します。

休業手当は派遣社員も対象に

休業手当は派遣社員も対象になります。そもそも休業手当とは使用者(会社側・事業主側)の都合で労働者を休業させた場合に、該当の労働者に対する補償として支給する手当です。

正社員や非正規社員といった雇用形態にかかわらず、労働基準法上の労働者であり休業手当の条件を満たせば事業主は該当の労働者に休業手当を支給する義務があります。

休業手当は、使用者の都合で休業させる場合が対象です。労働者は、休業となった日について勤務することが定められており、なおかつ有給休暇やストライキなどの予定もなく勤務する意思があって、さらに体調不良などがなく勤務が可能である場合には支給の条件を満たします。

これは、労働者派遣法第29条の2の「労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては」(条文まま)という文言によって規定されている決まりです。

なお、派遣先の休業に伴って派遣社員が休業する場合、休業手当は派遣会社(派遣元)が支払うものですが、派遣先が費用を負担しなければならないケースもあります。

引用:電子政府の総合窓口

アルバイト・パートタイムの休業手当は

アルバイトやパートタイム労働者も休業手当の対象です。先述の通り、労働基準法上の労働者であれば雇用形態を問わず休業手当を支払う対象になります。

派遣社員や正社員などの場合と共通で、休業手当を支払う条件は使用者側の都合によって休業させる時です。

例えば、経営不振やオフィスのメンテナンスなど、労働者には責任がなく、事業主側の都合で休業をさせるケースなどが対象になります。

一方、自然災害などによって通勤や業務がままならないといった外部による不可抗力が生じて休業させる場合には、事業主に責任があるとはいえないため、休業手当を支給する義務はないと考えられます。

ただし、実際はケースによって判断されるのが一般的です。

派遣社員の休業手当 計算方法

派遣社員の休業手当の金額を計算する際は、まず休業手当の基礎の数字となる「平均賃金」を算出してから休業手当金額を計算します。

ここでは、具体的な数字を示しながら計算していきましょう。例えば、時給が1500円で毎月20日出勤しており、1日あたり勤務時間が5時間の派遣社員を、ある月に10日間休業させるケースを考えます。なお、該当期間の総歴日数は90日とします。

まずは平均賃金の算出です。月給制の場合、平均賃金は直近3カ月の賃金総額からその期間の総暦日数を割ることで計算します。

しかし、月給制ではない派遣社員や、アルバイト・パートタイムの労働者は「直近3カ月の賃金総額をその期間の総暦日数で割った数字」と「直近3カ月の賃金総額をその期間の労働日数で割り60%を乗じた数字」の2つを比べて高い方を平均賃金とします。

先述の派遣社員のケースで平均賃金を計算しましょう。まず、賃金総額を総暦日数で割る方法です。時給1500円で1日あたり5時間働き1カ月に20日出勤するため、1カ月あたりの賃金は1500円×5時間×20日と計算でき、15万円となります。

直近3カ月の賃金総額はこれを3倍した45万円です。これを総歴日数90日で割ると、1つ目の平均賃金は5000円と計算できました。

次に、もう1つの方法です。直近3カ月の賃金総額は45万円と分かっているのでそのまま使います。

該当期間の労働日数は、1カ月あたりの20日を3倍すると60日です。あとはこの数字に60%を乗じれば問題ありません。

つまり、賃金総額45万円÷労働日数60日×60%となり、2つ目の平均賃金は4500円と計算できました。

以上の2つの方法から、平均賃金が高いのは前者の5000円であるため、平均賃金は5000円です。

時給労働者の休業手当は、平均賃金に休業日数を乗じて計算しますが、休業日数は10日としているため、平均賃金5000円×10日ということで休業手当の支給額は5万円になります。

派遣社員の休業手当 ケース別解説

休業手当は、事業主側の都合で労働者を休業させた場合に支払う義務がありますが、やむをえない事情やさまざまな理由が重なった場合など判断に迷うケースもあります。

そのような場合、企業の担当者は個別に判断することになりますが、定番のシチュエーションについてどのような考え方をすれば良いのかあらかじめ知っておくと便利です。ここでは4つのケースについて解説します。

1.新型コロナウイルスの影響で派遣契約を解除したい場合

派遣社員を受け入れている派遣先の事業主が、新型コロナの影響で事業が立ち行かなくなり事業活動を縮小せざるをえないので、派遣契約を解除したい場合について考えましょう。

まず派遣先については、休業手当の費用を負担する必要があると考えられます。

労働者派遣法第29条の2によると、派遣先は自らの都合で労働者派遣契約を解除する場合は、休業手当等の支払いに要する費用を負担したり、新たな就業機会を確保したりといった措置が必要です。

新型コロナの影響という事情があったとしても、派遣先から契約解除を申し出る場合は、原則としてこういった措置が義務とされています。

また派遣元についても同様で、上記のように新型コロナで派遣契約の解除を言い渡された場合でも、簡単に解雇せずに休業などの措置を講じて休業手当を支払わなければなりません。

2.緊急事態宣言を受けて事業を休止した場合

緊急事態宣言下で都道府県知事からの要請や指示を受けて派遣先が事業を休止した場合についても、休業手当の支払い義務が生じる可能性があります。

まず派遣先については、仮に緊急事態宣言による休業であっても、自らの都合で労働者派遣契約を解除する場合には休業手当の費用負担が必要です。

労働者派遣法第29条の2に基づいて休業手当の費用負担などの義務が一律に消えるわけではなく、個別のケースごとに休業に至った背景を判断しなければなりません。

派遣元も、派遣先から緊急事態宣言による休業を申し受けた場合であっても、休業手当を支払う義務があります。

3.発熱などの症状で派遣社員が自主的に休む場合

新型コロナかどうか判明していない段階で発熱などの症状があり派遣社員が自主的に休む場合は、派遣先と派遣元の両者ともに休業手当の支払い義務は発生しません。この場合、通常の病欠などと同様に取り扱う方法が考えられます。

ただし、例えば一部の派遣社員に発熱などの症状があり、そのことだけを理由として一律に労働者を休業させる場合は、事業主の自主的な判断による休業と見なされるため休業手当を支払う義務があると考えられます。

4.震災などの天災により事業を休業した場合

震災といった自然災害による休業の場合、休業手当を支払う義務があるかどうかはケースによって分かれます。

労働基準法第26条によると、休業手当を支払わなければならないのは「使用者の責に帰すべき事由」がある時です。

派遣先の事業場が震災や台風などの不可抗力によって休業せざるをえない場合は、派遣先の都合とはいえないため、派遣先が休業手当の費用負担をする必要はないと考えられます。

一方、派遣元は他のポイントにも注意が必要です。そもそも休業手当を支払うべきかどうかの判断は、派遣元の状況によって決まります。

仮に派遣先がやむをえない事情で休業している場合であっても、派遣元は該当の労働者に対して別の派遣先を確保するといった措置を講じなければなりません。そういった可能性を検討したかどうかも含めて、支払い義務が判断されます。

派遣にも適用される「雇用調整助成金」とは

雇用調整助成金とは、事業主が労働者の雇用の維持を図るために休業を実施するのに伴って休業手当を支給する場合、手当の一部または全部について助成が受けられる仕組みです。

雇用保険の適用事業所であるといった要件を満たせば申請が可能で、派遣社員についても助成の対象に含まれます。

もともと雇用調整助成金は景気の後退といった経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされたケースが対象でしたが、特例措置として新型コロナの影響による休業についても対象です。

新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)

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