新型コロナウイルス感染症対策の一環として、テレワークが大きく注目されています。
従業員が自宅等でフレックスタイムに近い感覚で勤務できる反面、企業にとっては従業員の勤怠や安全衛生などの労務管理が難しくなることが課題の一つです。
クラウド型の勤怠管理ツールを導入して、休憩時間の延長や中抜けといった勤務時間の柔軟化に対応する企業もみられます。
多様な働き方や通勤時間の削減を実現できるテレワークのメリットを活かせるよう、勤怠管理の方法や勤怠管理ツールを活用する場合の選定ポイントについて、詳しく確認しておきましょう。
勤怠管理がテレワーク成功の鍵!
労働基準法には労働時間の上限や休日・深夜労働に関する規定があるため、使用者(管理職)には労働時間を適正に把握する責任があります。
従業員の健康管理面はもちろん、企業の生産性向上を目指すためにも、適切な勤怠管理が大切です。労働時間管理の考え方や、テレワークにおける勤怠管理の実態について説明します。
最も難しいのが勤怠管理
上司の目が届きにくい状態でも労働時間を的確に把握する方法が、テレワークを推進する中で最も大きな課題です。従業員の自己申告に委ねる部分も大きいことから、不公平感が出にくい統一したルールの浸透も求められます。
「中小企業の「テレワーク」実態調査(エン・ジャパン株式会社、2019年8月1日発表)」によると、労働時間の管理が難しいとテレワークを導入する企業のうち68%の企業が回答しています。始業・終業の連絡などの業務ルール設定についても、59%の企業で難しさを感じている現状です。
(引用元)https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/18689.html
オフィス勤務時と同レベルの勤怠管理を実現するためには、上司が率先してコミュニケーションを取り、労働時間の実態を確認する必要があります。同時に仕事のプロセスも確認すると、人事評価の納得度を高めるにも効果的でしょう。
労働時間のガイドライン
厚生労働省では「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」により、労働時間管理の考え方を示しています。労働者ごとに労働日や始業時刻・終業時刻を記録する必要があり、作業場所を問わず使用者自身がその場で確認(現認)することが原則です。使用者が全件現認するには限界があるため、パソコンの使用時間の記録(ログ)等の客観的記録をベースに労働時間を把握しても差し支えありません。
労働時間を自己申告させる場合には事実に基づく申請が前提であることから、時間外労働の制限などの適正な申告を妨げるルールを設定しないことと、必要に応じて実態調査を行うことも定められています。タイムカードなど労働者の操作で労働時間を記録する場合も、記録作業に任意性が伴うことから、自己申告時と同様の対応が必要です。使用者の黙認(黙示の指示)による作業も労働時間として取り扱われるため、テレワークの場でも業務状況を見える化することが企業にとっては重要です。
参照先:厚労省ガイドライン
勤怠・労務管理の手段
労働時間の管理方法はさまざまですが、近年ではクラウド型の勤怠管理システムが普及しつつあります。ビジネスチャット等のコミュニケーションツールや人事評価システムと組み合わせて運用すると、仕事の成果をチェックするのに効果的です。勤怠管理・労務管理の方法について、メリット・デメリットと共に紹介します。
1.メール報告
パソコンや携帯電話のメールで、始業・終業報告を行う方法です。業務内容の報告を同時に実施でき、複数の人とも情報を共有しやすい特徴があります。携帯電話のメールであれば、災害時でも音声通話と比べてつながりやすい傾向にあり、BCP対策に組み入れても効果的です。メール本文から労働時間を抽出する手間が掛かることと、労働者側からの到達確認が難しい点に留意が必要です。
2.電話報告
上司等に電話をかけて、始業・終業報告を行う方法です。声の調子で健康状態を推測でき、離れた場所でもオフィスと同等のコミュニケーションをとれる特徴があります。必要に応じて業務の進捗状況などを質問できるため、タスク管理にも効果的です。勤怠報告が集中した際に正確な時間把握が難しくなることと、通話時間も労働時間と解釈される余地がある点に留意が必要です。
3.チャットツール
Slackなどのチャットツールで始業・終業報告を行う方法で、LINEなどのSNSを利用する場合もあります。報告者のアカウントが明確化されるため、報告の信憑性が比較的高いのがメリットです。ビデオ通話機能があるツールを利用して、勤務場所やデータ化できない成果物を目視で確認できる点も見逃せません。勤怠報告と日常業務のログが混在しないよう、勤怠管理専用のアカウントを設けると便利です。
4.勤怠管理ツール・プレゼンスツール
タイムレコーダー等の勤怠管理ツールで始業・終業時刻を管理する方法です。紙のタイムカードを用いる方法もありますが、クラウド型のツールを用いると複数拠点やテレワーク場所でも簡単に勤怠状況を記録できます。複数回の休憩時間やGPS情報による打刻場所を記録する機能もあり、勤怠管理の幅が広がるでしょう。
在席状況を共有するプレゼンス管理(在席管理)ツールでも、勤怠状況を把握できます。在席中のデスクトップ画像やカメラ画像をランダムに送信する機能を持つツールがありますが、運用にあたってはプライバシーへの配慮が必要です。ツールの導入によって初期費用や月額料金が発生しますが、オフィス勤務者と管理体制を統一化できるメリットが生まれるなど、最終的な勤怠管理コストの削減につながる可能性を秘めています。
5.人事管理システム(クラウド型)
人事管理システムの機能を用いて、始業・終業時刻を管理する方法です。人事管理システムとは、給与管理をはじめ人員配置や人事評価など、人事に関する業務を効率化するためのシステムです。マイナンバー管理や年末調整の電子化に対応できることから、中小企業でも普及し始めています。勤怠管理にとどまらず、人事に関する各種統計を簡単に作成でき、テレワークの方針策定を含めた人事戦略を立てやすいのがメリットです。
勤怠管理ツールの選定ポイント
適切な勤怠管理を通じて従業員と企業との信頼関係を保つためには、使いやすい勤怠管理ツールを導入することが重要です。デモシステムや導入前の無料期間を活用して、自社の文化に合ったツール選びをおすすめします。勤怠管理ツールを選ぶ上で大切な、6つのポイントを紹介します。
1.勤怠時間の入力・管理ができるか
始業・終業時刻の記録だけでなく、休憩時間や中抜け時間を管理できるツールを選ぶと、労働時間や休日数の集計がスムーズです。中抜け時間を管理できないツールでも、休憩時間を拡大する運用でカバーできます。残業時間や休日出勤日数の上限を通知する機能があれば、法令遵守面でも安心です。テレワークの拡大や働き方の多様化を見越して、フレックスタイム制度や時間短縮勤務など勤務時間を柔軟に管理できるツールをおすすめします。
2.クラウド型のツールであること
クラウド型の勤怠管理ツールを活用することで、テレワークなどで離れた場所で働く人の勤怠状況もリアルタイムに管理できます。勤怠状況を一括集計でき、長時間労働や有給休暇の取得状況も把握しやすいです。ツール提供元がサーバーを管理しているため、システム運用の手間を省けます。給与計算システムとの連携により、適正に残業代を計算できるなどのメリットも生まれるでしょう。
3.利便性と操作性
勤怠管理を効果的に行い続けるためには、勤怠登録画面・管理画面ともに見やすい画面構成の勤怠管理ツールを選ぶことが大切なポイントとなります。一度選んだツールを変更するには、データの移行や新ツールへの順応など多大な労力が伴うからです。残業や休暇の申請をオンライン(ペーパーレス)で行えるものを選ぶと、承認作業の省力化にもつながります。モバイル端末やチャットツールを使った勤怠記録(打刻)に対応しているものもあり、職場環境や従業員のスタイルに合わせた管理を行える点も要チェックです。
4.導入ハードルの低さ
早期に勤怠管理ツールを導入したい企業には、クラウド型のツールが有力な選択肢となります。自社でツールを開発するオンプレミス型ツールは、自社の制度に100%対応できるメリットがありますが、ツール構築に長い期間がかかる上、システム開発費用も高額になりがちです。一方、クラウド型ツールであれば最短即日で運用を開始でき、月額費用だけで運用を継続できるので総合的なコストを抑えられます。導入テストを兼ねて短期間の利用にも対応していることからも、クラウド型のツールがおすすめです。
5.強固なセキュリティ
勤怠管理ツールでは従業員の個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策が万全なツールを選びましょう。万一、情報漏えいが発生した場合に企業の信用が低下し、事業継続に影響が及ぶからです。機能ごとにアクセス権限を設定することで残業の不正承認などを防ぎ、信頼性の高い勤怠管理を実現できます。オンプレミス型のツールでは費用が高額となりがちなセキュリティ対策も、クラウド型ツールでは追加費用なしで実現できる点も安心材料です。
6.充実したサポート体制
勤怠管理ツールを円滑に運用し続けるためには、サポート体制が整ったツールを選ぶことが大切です。初期設定から運用当初にかけて多数の設定作業や不明点が発生するため、電話やメールでサポートを受けられるかを確認してから申込みを検討しましょう。また、有料の設定代行サービスを利用するのも一つの方法です。サポートを受ける方法(電話・メール・リモート)についても確認しておくとよいでしょう。
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