ミッション、ビジョン、バリューの作り方とは?企業の事例とともに解説

ビジネス用語として広まりつつある「ミッション・ビジョン・バリュー」は、経営者や人事部担当者といった管理者からの注目も高まっています。

この記事では、企業に必要な要素とされる「ミッション・ビジョン・バリュー」の定義や作り方を解説。実際に導入している企業の事例もご紹介します。ぜひ、企業のさらなる発展にお役立てください。

ミッション、ビジョン、バリューとは?

「ミッション・ビジョン・バリュー」とは、多様化するビジネス社会における企業の経営方針の一つです。「現代経営学」や「マネジメント」の発明者として知られる経営学者、ピーター・F・ドラッカーが2003年に提唱を始めました。

グローバル企業にとっての将来的な課題は、企業の存在意義や社会的正当性を示すことであり、そのために必要となるのが「ミッション・ビジョン・バリュー」だと言われています。

ドラッカーは、著書「Managing in the Next Society(ネクスト・ソサエティ)」で以下のように解説しています。

ミッション

ミッションとは、「使命」「目的」のことを指します。ドラッカーは、組織が始めに行うべき仕事は「リーダーが組織のミッションを考え、定義すること」だと唱えました。

組織のメンバーがミッションを理解することで、明確な目標を立てられるようになり、各々が自分の仕事に取り組めるようになります。

ビジョン

ビジョンとは、「ミッションを実現させた将来像」を指します。組織において、リーダーがミッション実現後の理想的な姿を唱え、メンバーとイメージを共有することはとても大切です。リーダーの求心力が問われるところでもあります。

バリュー

バリューとは、「価値」「価値基準」のことを指します。組織のメンバーがビジョンを共有し、ミッションを実現していくには、「自社の価値基準」が明確であることが求められます。

企業が顧客に与える価値、サービスとはなんなのかを考え、行動の基準とする考え方です。

ミッション、ビジョン、バリューはなぜ重要なのか

ミッション、ビジョン、バリューを提唱することで、企業は顧客などの第三者に自らの存在意義を理解してもらえます

「商品・サービスの目的はなんなのか」「どのように社会に貢献しているのか」が明確な企業には、求心力も生まれるでしょう。

また、企業の経営判断で迷った際の行動指標にもなります。

採用活動においても、「ミッション・ビジョン・バリュー」による企業の意思表示は効果的です。求人情報に掲げることで、同じ思いを持つ人材が集まりやすくなるでしょう。

ミッション、ビジョン、バリューの作り方

ミッション、ビジョン、バリューの作り方を具体的に解説していきます。それぞれの作成手順にも注意するようにしましょう。

作成に関わるメンバーとタイミング

ミッション・ビジョン・バリューを作成してからの失敗例として、「経営理念と矛盾してしまった」「抽象的になってしまった」といったものがあります。

従業員に納得してもらい、社内で正しく共有するためにも、気を付けるべきポイントを把握しておきましょう。

・作成するメンバー
経営者をはじめ、人事担当者など経営に関わるメンバーが揃うことが重要です。作成後に反対意見が出たり、意図が伝わらず事業の連携に支障をきたしたりする失敗を防げます。

・作成するタイミング
ビジョンとそれに基づくミッションは、起業時に掲げられていることが多いでしょう。バリューは、事業の方向性が明らかになった段階で、社会的情勢などに合わせて検討するのがおすすめです。

作成していく順番

経営方針を作成する順番は、ミッション、ビジョン、バリューが一般的です。経営者の希望や企業が置かれている状況によっては、ミッションの見直しが優先されることもあるでしょう。

各項目は、「会社」「社会」「社員」と結びつけることで明確になります。

  1. ミッション=「会社」がやるべきこと、抱いている使命感
  2. ビジョン=「社会」の将来的ビジョン、組織としての在り方
  3. バリュー=「社員」が目標実現に向けて持つべき価値観、行動基準

これらの方針は強制的に浸透させるのではなく、社内で共有していくことが大切です。経営陣はビジョンの策定が先行しがちですが、「達成するべきミッション(目的)があってこそのビジョン」だと認識しましょう。

ミッションを定めるポイント

発案者であるピーター・F・ドラッカーは、「組織のミッションを考えることがリーダーの最初の仕事」だと提唱しています。ミッションの策定によって、組織全体の活動方針が決まるとも言えるでしょう。

ミッションは従業員のモチベーションにも関わる要素です。仕事に対するモチベーションは、報酬や待遇の良し悪しだけでなく、「自分の仕事はどれだけ社会に貢献できているのか」という実感にも左右されます。

メンバーが感じている「やりがい」をヒアリングすることは、組織の存在意義、つまりミッションを考える際に有効です。

企業としてのミッションは、経営者が抱く夢ではなく「顧客や社会が求めているもの」であることが理想です。自社の活動によって解決したい社会的な問題や、喜んでほしい存在について考えてみましょう。

ビジョンを定めるポイント

「企業として将来的にこうありたい」というビジョンは、明確化した上で社外に掲げることになります。社会に向けて発信するメッセージであるため、売り上げ目標など組織内の課題は含まれません

日々の暮らしや自然環境の改善など、「自社の働きによって何をどのように変化させたいのか」を具体的にアピールするようにしましょう。ビジョン策定には、業界のリサーチや、従業員・顧客・取引先へのリサーチが役立ちます。

ビジョンとミッションはいずれも企業が掲げる目標ですが、決定的な違いがあります。

それは、ミッションは「目の前の目標」であり、ビジョンは「将来的な目標」であることです。ミッション達成を繰り返すことによって、壮大なビジョンが実現するということを意識しましょう。

バリューを定めるポイント

ミッションを達成するためにも、組織のメンバーは仕事の価値やそれに向かう姿勢を理解しなければなりません。また、メンバーの意識を統一できていないと、足並みが揃うこともないでしょう。

目標を立てた上で、チームをまとめるための指針となるのが「バリュー」だと言えます。バリューの分かりやすさが、ミッションの成功度を上げると言っても過言ではありません。

バリューを定めるステップとしては、主に5つのポイントがあります。事業によって生まれる価値、企業としてブレない価値観を明確にしましょう。

  • 経営者の価値観を言語化する
  • 個人ではなく、企業スケールの価値観を定義する
  • 企業としての活動を振り返る
  • 話し合いを重ねて文書化する
  • 市場や流行に左右されないコアバリューを定める

ミッション、ビジョン、バリューの企業事例

日本においても、ミッション、ビジョン、バリューをアピールする企業が増えています。具体的な事例を見ていきましょう。

日立グループ

「日立グループ・アイデンティティー」として掲げられているのは以下の3つです。

ミッション:日立グループの技術や製品の開発を通して社会に貢献する
バリュー:和・誠・開拓者精神
ビジョン:グローバル市場での経験を生かし、社会的な課題にイノベーションで応える

バリューにおける「和」は、目的を共有することで団結すること、「誠」は社会的な信頼を得るための誠実さです。創業から100年以上の歴史を持つ日立グループの「開拓者精神」にも求心力があります。

ソフトバンクグループ

大手キャリアのソフトバンクグループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を掲げています。幸せの定義を「感動すること」とし、事業を通して多くのユーザーに喜びや感動を伝えています。

人々の幸せに貢献した上で、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を将来的なビジョンとしています。「努力って、楽しい。」というバリューには、成長し続ける企業としてのチャレンジ精神や諦めない精神性が現れていると言えるでしょう。

LINE

2011年の東日本大震災をきっかけに誕生した「LINE」は、自社のミッションを「世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること」としています。

「Life on LINE」というビジョンには、暮らしを支えるライフインフラのようなメッセンジャーアプリでありたいという意志を感じます。さらに、これらの目標実現のために、「LINE STYLE(価値基準)」、「LINE CODE(取るべき行動)」を明確化し、独自の活動を行っています。

楽天

楽天が掲げているミッションは、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というものです。

このミッションに基づき、「グローバル・イノベーション・カンパニー」というビジョン実現のため、常に革新的なアイデアを打ち出しているのが楽天グループです。

従業員が共有しているバリューは「楽天主義」と銘打たれ、「ブランドコンセプト」と「成功のコンセプト」に分けられています。各従業員が「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を意識しているのも特徴です。

KIRINグループ

KIRINグループは「社会における永続的、長期的なキリンの存在意義」をミッションに掲げ、「食と健康」による喜びを世界中に伝えています。ビジョンとしては、2027年までに飲食から医療にわたる分野で企業価値を創造し、「世界のCSV先進企業となる」ことを目標としています。

バリューには「熱意・誠意・多様性」を掲げ、顧客や社会にブランドとしての誇りをアピールしています。「議論については、建設的であれば社内外を問わない」という多様性も企業としての強みでしょう。

まとめ

ミッション・ビジョン・バリューは、企業にとっての指針となるだけでなく、社外アピールとしても有効的です。

経営方針を整理することで、同じビジョンを持った人材に出会う可能性も高まります。まずは人事評価サービスを活用して、従業員の声に耳を傾けてみましょう。

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