企業の生き残り戦略の一環として、社外の知見や技術を積極的に取り入れてビジネスモデルの革新を目指す、オープンイノベーションの考え方を取り入れる企業が増えています。
世界から注目される数々のイノベーションを生み出してきた日本でも、現在では新しいサービス・商品の創出に苦戦しているのが実情です。
その状況を打破すべく、近年では企業や自治体が大学・研究機関と包括連携協定を結ぶなど、新たな価値を創造する事例も多数登場しています。
今回は、オープンイノベーションが注目される理由や導入のメリットを、事例と共に解説します。
オープンイノベーションとは?
オープンイノベーションとは、社外の知見や技術を積極的に取り入れて、技術革新をはじめとする変化を遂げながら新たな価値を生み出す取り組みです。
社内の経営資源に依存せずに顧客ニーズの多様化に対応する手法としても注目されています。
ハーバード大学経営大学院のヘンリー・W.チェスブロウ教授は、オープンイノベーションを次のように定義しています。
オープンイノベーションとは、組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである。
引用:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「オープンイノベーション白書 第二版」
外部のアイデアを取り入れるために、さまざまな取り組みが行われています。
企業や自治体が大学・研究機関と連携して新事業の創出を目指す「産学連携」や、地方自治体や官庁が保有するデータを民間のビジネスに活用する「オープンデータ」の取り組みが一例です。
その取り組みの中で、オープンイノベーションを経営戦略として位置づける企業も増えています。
クローズドイノベーションとの違い
外部のアイデアを積極的に取り入れるオープンイノベーションに対し、クローズドイノベーションは自社の研究や技術・ノウハウだけで商品・サービスの改革を実現する手法です。
競争優位性が高い技術や知的財産を独占して、高収益を上げられることがメリットとされてきました。
しかし、インターネットの普及をはじめとするIT技術の飛躍的発展に伴い、多様化する市場ニーズに追随して短期間での製品・技術の開発に困難が生じ始めました。
人材の流動化と相まって優秀な人材やノウハウの外部流出も起こり、技術・ノウハウにおける内製化の限界を迎えたのです。
外部の資源を有効活用してスピード感のある技術革新を実現するオープンイノベーションとの違いが、浮き彫りとなっています。
オープンイノベーションが注目される理由
オープンイノベーションは、他の企業・団体と協働で新たな価値を創造する成長戦略として注目を集めています。
21世紀に入ってインターネットのブロードバンド化が進み、画像や動画を含めた多種多様な情報を瞬時に入手できる時代を迎えました。
それに伴い市場のグローバル化が進展し、先進国だけでなく新興国を含めたグローバル競争が激化しています。
そのため、自社の力だけでは世界市場で競争力を維持するのが困難なのが現状です。
急速な技術革新と消費者ニーズの多様化によって次々と新しい商品・サービスが生まれる一方で、プロダクトライフサイクルは短期化しています。
特にICT業界ではアジャイル型開発技法によって、システム開発中でも情勢の変化に合わせて柔軟に仕様変更を加える流れが定着しつつあるようです。
自社単独では時代の変化への対応が難しくても、他企業との総合力で潜在的な顧客ニーズを発掘する戦略としても、オープンイノベーションが注目されています。
大企業の体制に新風を吹き込もうと、ベンチャー企業と連携する事例も増えています。
オープンイノベーション導入の効果、メリット
オープンイノベーションを導入することで、外部から多様な技術・知識を取り入れて企業の成長につなげられるメリットがもたらされます。具体的なメリットの内容を確認してみましょう。
新たな知識や技術の習得
自社の力だけでは得られない、新たな知識や技術を習得できることがオープンイノベーション導入のメリットです。
新商品・新サービスの開発期間を短縮できるだけでなく、異業種からの技術やノウハウを取り入れて従来にはない価値を生み出せます。
消費者ニーズの多様化にもスピード感を持って対応できるでしょう。
反対に、自社に眠っている独自の技術・ノウハウをライセンス提供することで経営資源を有効活用し、新たな収益源にすることも可能です。
技術・ノウハウの説明を通じて、提供先企業の文化や人材育成手法などを学び取り、社内の体質改善にもつなげられる相乗効果も期待できます。
自社の人材のモチベーションアップにもつながります。
事業・経営の多角化
オープンイノベーションを通じて他社と連携することで、既存の事業を維持しながら新たな市場でも商品・サービスを展開して事業の多角化につなげられるようになります。
自社単体で事業を多角化するには高い経営リスクが伴いますが、他社との連携によってリスクを軽減しながら新市場に参入するチャンスを得られるのが特徴です。
事業の選択と集中から脱却して、幅広い視野で顧客ニーズを捉えてチャンスにもつながるでしょう。
また、オープンイノベーションに取り組む企業であることをアピールして、企業全体の価値を高められるメリットも生まれます。
開発コストの抑制
クローズドイノベーションでは商品企画から研究開発までの全工程を自社内で行うため、多くの資金と人材を必要とします。
従来なら採算が取れる手段でしたが、競争の激化やプロダクトライフサイクルの短期化に伴い、新しい商品・サービスが誕生した頃には市場価値が下がり、採算割れが生じるリスクが認識されるようになりました。
一方、オープンイノベーションを導入すると必要な時に外部のリソースを活用して、人材コストと開発コストを抑制しながら新しい商品・サービスの開発を実現できます。
開発期間も短縮できるため、消費者のニーズにスピーディーに対応でき、高収益化も実現できるでしょう。
オープンイノベーション導入事例
オープンイノベーションの導入を通じて、新たな商品価値の創造や事業の多角化を実現する企業が増えています。
導入事例として、国内企業2社での取り組みを紹介します。
なお、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が発行する「オープンイノベーション白書」には、ここで紹介した他にも国内外でのオープンイノベーションの推進事例が多数紹介されています。
1.東京ガス株式会社
東京ガス株式会社では、電力や都市ガスの自由化に伴う経営環境の変化に対応するため、2016年4月に「暮らしサービスイノベーションプロジェクト部」を立ち上げて、オープンイノベーションを導入しました。
都市ガスの顧客基盤を活用しながら、住まい・リフォーム領域を皮切りに生活周りのさまざまな領域の企業と協働関係を構築しているのが特徴です。
取扱説明書を掲載するスマホアプリと東京ガスの顧客マイページとの連携が、その一例です。
自宅のガス機器と家電製品の情報を一元管理できるサービスを提供して、暮らしの利便性を高めています。
多くの決裁事項が執行役員である部長の承認で動くことができ、スピード感のある対応が評判を呼んでスタートアップ企業が集まるという相乗効果をもたらしています。
2017年にはアメリカ・シリコンバレーにコーポレートベンチャーキャピタル「アカリオ」を設立し、スタートアップ企業への投資や協働で得たソリューションを東京ガスの事業に取り入れる活動が展開されています。
2.積水化学工業株式会社
積水化学工業株式会社では、ユニット住宅やパイプなどの事業基盤を持っていますが、1980年以降の新事業創出の動きが低迷していることに危機感を覚え、2010年前半からオープンイノベーションへの取り組みが始まっています。
企画・開発・事業化の各フェーズを意識した「ビジネスモデルファースト」の取り組みで競争優位性を確立しつつ、必要な技術をインサイダー化しているのが特徴です。
フィルム型色素増感太陽電池(DSC)の開発では、産業技術総合研究所の緻密セラミック室温コーティング技術と積水化学のフィルム技術との組み合わせによって、プロセスコストの大幅な低減を実現しています。
低照度でも発電可能という特徴を活かして、屋内や地下街・社内などさまざまな場所での利用を訴求し、2025年には100億円規模への事業拡大を目指しています。
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