企業活動においてコンプライアンスの遵守は非常に重要になります。ただし、コンプライアンス体制を敷くにしても、なにをどのように手を付けていけば良いのかわからないものです。ここでは、コンプライアンス体制の整備のための考え方、および戦略を解説していきます。
コンプライアンス体制を構築する6つの要素
コンプライアンス体制を構築するためには6つの要素を念頭においておく必要があります。
- コンプライアンス体制
- 行動基準
- リスク評価と対策
- 教育
- 文書管理
- モニタリングおよび監査
これらの要素は、決定順序というものはありません。
1つずつ進めても良いですし、同時に取り組んでも構いません。
ただし、最終的に6つの要素が揃って機能することを忘れてはいけません。
では、1つずつ見ていきましょう。
コンプライアンス体制
組織としてコンプライアンスに取り組んでいくための社内体制のことです。
コンプライアンス委員会、コンプライアンス室などの部署を設けます。
行動基準
行動規範や倫理方針、内部規程など、社員が共通して認識するべき基準を定めます。
リスク評価と対策
リスクというのは事業や職場によって異なります。
そのため、それぞれについてリスク評価を行い、その対策方法を考慮します。
教育
役員および社員に対してコンプライアンスに関する共通認識を持ってもらい、それに従うことの重要性を教育します。そのためにはコンプライアンス関連文書を作成・配布、それを日常的に確認する仕組みづくりが必要になります。
文書管理
コンプライアンスに関する文書を誰もがすぐに利用できる状態にし、管理します。
モニタリングおよび監査
組織内部をモニタリングおよび監査する仕組みづくりを行います。
具体的には、内部通報窓口を設置などが挙げられます。
コンプライアンス担当の配置
コンプライアンス体制を整える際に気になるのは「専任の担当者は必要なのか」という点でしょう。
コンプライアンス体制を整備・維持するためにどの程度の人材・コストをかけるべきかという課題は経営判断として重要なポイントになります。
以下に目安を提示しておきます。
社員数 | 社内/社外 | 配置 |
~10名 | 社内 | 総務・経理担当が兼務 |
社外 | 顧問税理士に依頼 | |
~50名 | 社内 | コンプライアンス専任を1名 |
社外 | 専門コンサルタントに依頼 | |
~100名 | 社内 | コンプライアンスと内部監査の船員を1名 |
社外 | 専門コンサルタント、弁護士と顧問契約 | |
200名~ | 社内 | コンプライアンスと内部監査の船員を2名以上 |
社外 | 監査法人に委託 |
ここについては、あくまで目安となり、明確な答えはありません。
というのも、業界が受ける規制の強さによってコンプライアンス担当者の必要性は変わってくるためです。
たとえば、金融商品取引法では投資運用業者には社員数が数10名程度でもコンプライアンス専任担当者の設置を求められます。
社内で専任を置けないのであれば外部に委託するというのも選択肢の1つです。規模が小さければ顧問税理士や専門コンサルタントに依頼しても良いですが、ある程度の規模になれば顧問弁護士、監査法人に依頼したほうがより強固な体制を作れるでしょう。
コンプライアンス組織の配置
社内でコンプライアンス組織を構築するには、コンプライアンス専任部署の設置が最優先となります。専任部署は取締役会の直下に配置し、コンプライアンス体制を推進するため諸々の権限を与える必要があります。
社外のノウハウや視点を取り入れた部署を立ち上げたい場合は「コンプライアンス委員会」という名前で設置される場合もあります。
これは、社外の有識者(弁護士、社外取締役など)を招き入れて組織します。こちらで話し合われ、選定された方針を元に「コンプライアンス室」といった実務部門がプロジェクトを推し進めます。
また、企業にとってはマスコミへのリーク(内部告発)が最大のリスクです。
これを未然に検知するために「コンプライアンス・ホットライン(通報窓口)」を設置するのが有効です。
もちろん、内部通報者のプライバシーの保護、企業内での立場の保証は規程により明確にされている必要があり、さらにこれを全社員に通知、認識してもらうことが必要不可欠となります。
コンプライアンス体制の整備は必要なことですが、社員規模にかかわらず大切なことは、経営者がしっかりとしたコンプライアンスの重要性を啓蒙し続けることでしょう。
コンプライアンスを「建前」ではなく、企業の存在意義と合わせて周知することが、コンプライアンス違反による企業への損失を防ぐ最大のリスク管理となります。
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