メルクマールとはビジネス業界の現場において、指標や基準を指す用語です。
最終目標の達成に向けた中間地点の指標として用いられるケースもありますが、業界によっては判断基準として用いられることもあり幅広く活用されています。
本記事ではメルクマールの意味や、関連用語との違いを解説。ビジネスにおいて導入するための5つの手順や、失敗しやすいポイント、そして成功のコツを紹介します。
メルクマールの意味とは?
メルクマールとは、ドイツ語で「思い出す」という意味を持つ「merken」を語源とする用語で、日本語では「基準」「めじるし」「指標」を指します。
英語だと思われがちですが、実はドイツ語が語源となる言葉。
具体的には、目標地点までの進捗状況を把握するための「目印」を指す言葉です。
また、ビジネスにおいて、メルクマールは事業や業務活動の目標を達成するために設けられる、管理指標や達成基準として使われます。
一方、業種によってはやや異なるニュアンスで使用されるようです。
例えば、医療現場では治療効果などの評価指標として使われることがある一方、金融や法律業界では判断基準として使われることもあります。
メルクマールと混同されやすい言葉との違い
ここでは、メルクマールと混同されやすい言葉として挙げられるマイルストーンやKPIと比較しながらそれぞれの意味を解説します。
1.メルクマールとマイルストーンの違い
マイルストーンとは、最終ゴールに向かうまでの節目や通過点を指します。もともと道路標識を指す用語であり、「あとどのくらい進めばゴールに到達するのか」を表すのが主な役割です。
一方、メルクマールとは基準やめじるしといった意味を持ちます。単なる通過点を示すマイルストーンとは違い、メルクマールは「中間目標を達成しているかどうか」「その達成度合いはどの程度か」といった評価基準として機能するのが大きな違いです。
2.メルクマールとKPIの違い
KPIとは、最終目標(KGI)の達成に向けて、進捗度合いを計測するための中間管理指標を指します。
そのため、達成基準や評価指標といった役割が強く、KPIとメルクマールはほとんど同義語と認識できるでしょう。
あえて違いを挙げれば、KPIは目標達成を管理する意味合いが強いのに対して、メルクマールとは対象が目標だけに限らない点です。
先述の通り、メルクマールは医療や金融といった幅広い現場で評価・判断の基準としても活用されます。
メルクマールの重要性とは
企業でメルクマールを用いれば、統一的な計測、従業員の仕事への動機付け、業務改善といった効果が期待できます。
まず、メルクマールを策定すると、それが目標達成の統一的な基準になるため、事業活動や業務の成果を定量的・定性的にぶれなく評価できるでしょう。
次に、最終目標に向けた道筋がわかりやすくなり、成果の達成基準も明らかなため、業務にあたる従業員の動機付けにもなります。
さらに、達成結果を数値管理できるため、弱点を洗い出して改善する際にも便利なのです。
このように、メルクマールは円滑な企業活動を行う上で、達成したい目標に近付くための効率化を促してくれる非常に重要な役割を担っているのです。
企業は、メルクマールを上手に活用することで、最短での目標達成を図ることができます。
メルクマールの導入企業事例を3つ紹介
メルマークやKPIは達成基準や評価指標であるため、様々な部門やプロジェクトの管理のために活用されます。
ここでは、企業が実際にメルクマールやKPIを活用している事例を3つ紹介します。
ソフトバンクの事例
ソフトバンクは持続的に成長していくために、10年後を見据えた6つの重要課題を掲げており、それぞれにいくつかのKPIを設定しています。
6つの重要課題における、代表的なKPIの例は下記の通りです。
1. DX(デジタル・トランスフォーメーション)による社会・産業の構築
→KPI: ソリューション等事業売上:CAGR(年平均成長率)10%
お客さまとの共創によるプロジェクト遂行:17プロジェクトの推進 など
2. 人・情報をつなぎ新しい感動を創出
→KPI: スマホ累計契約数:3,000万件(2023年度)
Yahoo!ニュースDAU※数 4,500万件
Eコマース取扱高(物販):4兆円 など
3. オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出
→KPI: HAPSサービス提供開始(2023年度)
日本国内の事業展開の促進 など
4. テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献
→KPI: 再生可能エネルギー比率(基地局)
30%以上(2020年度)、50%以上(2021年度)、70%以上(2022年度)
リユース/リサイクル端末数:1,000万台(2020~2025年度) など
5. 質の高い社会ネットワークの構築
→KPI: 5G展開計画基地局数:1万局超(2020年度末)、5万局超(2021年度末)、人口カバー率:90%超(2021年度末)
情報セキュリティ重大事故件数:0件(毎年) など
6. レジリエントな経営基盤の発展
→KPI: コンプライアンス違反件数:実績把握(毎年)
女性管理職人数:300人(2022年度)
有給休暇取得率:70%以上維持(毎年)
テレワーク実施率:70%以上(毎年) など
引用文献:ソフトバンク「マテリアリティ(重要課題)」
楽天の事例
楽天は事業運営の根幹にKPIを置いていますが、2015年よりKPIへNPSも導入。NPSとは特定の商品を親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思うかを数値化したもので、企業やブランドに対する顧客ロイヤリティの指標のひとつです。
いくつかの調査・分析を通じて、楽天と顧客の関係性はさらなる改善の余地があることがわかっていました。NPSの数値もKPIへ取り入れることで、顧客サービス品質を向上させ、楽天市場の売上の長期的成長につなげることを目指すことに。
2019年現在、NPSの導入・浸透活動は、3年目に突入。活動の開始とともに計測を始めたNPSの数値は多くのサービスで継続的に向上しているようです。
引用文献:楽天「企業情報_顧客満足を推進する全社KPI設計」
メルカリの事例
メルカリではKPIを決める際に「納得感」に着目。KPIを報告する際に「納得感がない」と言われてしまうことがあるため、納得感のあるKPIを決めるために工夫しました。
LTV(Life Time Value)を上げるために設定するKPIを考える際に、実施した事例です。
KPIはKGIを分解することで生まれますが、それは何通りにもなります。KGIを達成すると同時に、サービスの理想像を実現しなければなりませんが、KPIがサービスの理想像とそぐわないケースが往々にしてあるため、「納得感」がなくなってしまうのではとメルカリは考えました。
サービスの理想像を具現化したものは人それぞれに違います。そこで、結局は納得感のあるKPIを立てるためには、ステークホルダーが話し合うしかないと考え1泊2日の合宿を実施。
合宿期間中とにかく議論を重視することで、ステークホルダーが納得するKPIを立てました。
引用文献:メルカン「メルカリ流!納得感のあるKPIの決め方」
メルクマールを導入する手順
ここでは、メルクマールを事業や業務活動に導入するための5つの手順を解説します。
最終目標を立てる
まずは、最終的に何を達成したいのか定義します。
メルクマールは、あくまでも目標達成に向けた中間的な管理指標です。
最終ゴールが不明確であったり、あるいは存在しなかったりすると中間指標も無意味になってしまうため、具体的な最終目標を設定しましょう。
最終目標を設定する際のポイントは、定量的かつ実現可能性を考慮することです。
こうすると組織の共通認識として誤解なく機能しやすいほか、達成に向けた意欲も保てます。
必要なアクションの整理
次に、最終目標を達成するためには、どのようなアクションが必要なのかを洗い出します。
最終目標を定義するのは比較的簡単で、「売上高20%増加」「顧客満足度90%以上」といった宣言をすれば済むものです。
しかし、その達成方法はさまざまなパターンがありますし、達成可能なシナリオまで落とし込まなければなりません。
そこで、現状と理想状態とのギャップを分析し、必要な行動をブラッシュアップしながら絞り込む作業が必要です。
アクションを実施するプロセスを設定
行うべきアクションを整理したら、それを実施するプロセスを設定します。
事業や業務上の目標を達成する際、アクションを選定したからといってすぐに実行段階に移れるわけではありません。
アクションが1〜2つのみであれば簡単ですが、多くのケースでは実行アクションが多岐にわたります。
そこで、アクションごとに、「いつからいつまでに」「どのように」実行するのか設定し、さらに具体的な成果基準も設定する必要があるのです。
メルクマールを設定する
メルクマールの設定は、必要なアクション選定や実施するプロセス作りが完了すれば、必然的に定まってきます。
メルクマール設定の際は、中間的判断指標であることを意識しましょう。
先述のように必要なアクションは「どの時期に」「どのように」といった流れも設定しますが、メルクマールはその後のチェック指標としての役割があります。
つまり、最終目標達成に向けて、アクションが正しい方向に、着実に進んでいるのかを判断する尺度でもあるため、メルクマールは具体的に数値で設定し、期日も設けることが大切です。
PDCAサイクルを実施
目標やメルクマールを設定すればそれで終わりではなく、PDCAサイクルを実施することが効果的です。
メルクマールとは、計画、実行、チェック、行動という流れの中では、計画やチェックの部分に該当します。
せっかく策定したメルクマールの効果を最大限に引き出すなら、計画を立てチェックをして終わりにしないようにしましょう。
その後に、改善のためのアクションを行い、メルクマール自体も見直しPDCAのサイクルを回し続けることで、最短での目標達成を図れます。
メルクマールで失敗しやすい2つのポイント
メルクマールを導入して失敗しないためには、失敗を招きやすいパターンを把握し、対応することが大切です。ここでは、失敗しやすいポイントを解説します。
組織内の意識付け
従業員やチームメンバーの意識付けが不十分だと、メルクマールを導入してもしっかり機能しない可能性があります。
メルクマールに限らず、トップダウンで新しい評価指標や施策が導入されても、従業員がその重要性を理解していなければ行動には結びつきません。
日々の業務で忙しい従業員に行動させるには、メルクマールを設定する背景や意義を説明しながら、従業員が実行可能な方法を一緒に模索していく必要があるのです。
データ測定・分析の手間
メルクマールはデータを測定したり、分析したりすることによって目標に対する達成度合いを判断します。
そのためには、データを収集する必要がありますが、その方法はあらかじめ決めておかなければ失敗につがなるでしょう。
例えば、契約件数や売上高といった最終目標は管理可能ですが、その中間目標である訪問件数や電話件数は、測定漏れもありうるだけでなく、逐一記録するのは手間がかかります。
こういったシーンで、例えば「システムを導入するのか」といった対策は十分に練っておくのが大切です。
メルクマールを運用する3つのコツ
メルクマールを効果的に運用するには、いくつかのコツがあります。
ここでは、メルクマールを運用するための3つのコツについて、順番に解説しましょう。
組織への丁寧な意思疎通
まず、メルクマールの導入にあたっては、関係する各メンバーに対して丁寧に説明することが重要です。
どれだけ的確なメルクマールを設定したとしても、それが効果を発揮するには、実際に実行する従業員の積極的なコミットメントが欠かせません。
実行に関わる組織に対しては、メルクマールを導入しなければならない理由や、導入することのメリットをわかりやすく伝えることが求められます。
また、導入時だけでなく、その後も疑問やフィードバックを受ければ丁寧に回答するのが大切です。
具体的な指標の設定
メルクマールは、なるべく具体的かつ現実的な指標を設定しましょう。
メルクマールは、最終目標達成に向けて、組織のメンバーが取り組んでいくための目印になるものです。
プロジェクトで判断が必要な場面でも、メルクマールという共通認識があれば、議論の方向性も定まり、意思疎通もスムーズに行える効果が期待できます。
ただ、指標自体がぼんやりとしていたり、現実的ではなかったりすると、メンバーの士気を下げてしまうことにもなりかねず、逆効果になってしまう場合もあります。
メンバーが一丸となって取り組めるように、なるべく具体的かつ現実的なメルクマールを策定するのが効果的です。
実行体制の確立
メルクマールを導入して運用する体制を確立することも重要です。
目標達成を阻害する大きな要因として、「新しい施策は日々の業務の中で放置されてしまう」という点が挙げられます。
それを防いで定着させるには、責任者を定めてチームを編成し、継続的な運用を行うことが欠かせません。
メルクマールを目印に経営目標へ最短距離で走ろう
メルクマールは、最終目標を達成するための中間指標や、あるいは現場での判断基準として、幅広い活用方法があります。
ビジネスに導入すれば、評価や判断などの基準として事業運営をスムーズに実行する助けになるでしょう。
導入にはメリットもありますが、一方で注意しなければ、労力をかけたにも関わらず失敗してしまうこともありえます。
導入する場合は、今回紹介したような成功するためのポイントを意識しながら運用しましょう。
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