社内公募制度は、ポストの人材を社内から広く募集して選考を行う人事異動の方法の1つです。
通常の人事異動と異なり、従業員の自主性に任せるためモチベーションを高めたり組織活性化につながったりするメリットがあります。
一方、人事を巡って混乱が起こるリスクもあり、運用には注意が必要です。この記事では、社内公募制度の概要やメリット・デメリット、事例や例文、書き方のポイントなどを解説します。
社内公募制度とは?
社内公募制度とは、人事異動の制度の1つで、部署や役職の担い手を社内で募集して選考を実施し、応募者と該当の部署の双方で条件が合致すれば異動が実現する制度です。
通常の人事異動では、上司や人事部門がポストの空き状況や従業員のスキル・実績を考慮して半ば一方的に異動を命じるケースが少なくありません。しかし、社内公募はそういった方法と対照的で、従業員の自主性を尊重できる仕組みになっています。
社内公募のメリット
社内公募制度を導入する前に知っておきたいのが導入のメリットです。ここでは社内公募制度のメリットを紹介します。
意欲の高い人材の登用
仕事への意欲が高い人材を登用できる可能性があります。
通常の人事異動では、管理者や人事部門が従業員に異動を打診したり、半強制的に異動を命じたりするのが一般的です。これは従業員のスキルや経験、将来性を客観的に判断した上で公平な人材配置ができる一方、従業員の意思や希望はあまり考慮されません。
社内公募制度の場合、応募をするかどうかが従業員の意思に委ねられており、応募する人材は基本的に意欲が高いと考えることができます。そのため、通常の人事異動よりもやる気がある人材を配置しやすいのです。
従業員のモチベーション向上
また、従業員のモチベーションを向上させられる点もメリットです。
通常の人事異動では、従業員が決定権を持つわけではないため、その決定に対して従業員は多かれ少なかれ受け身の姿勢になります。これは、配属後の仕事への意欲を削ぐ可能性があるでしょう。
社内公募制度の場合、採用された従業員は自らそのポストを選んだという納得感があり、仕事についても責任感を持ちやすくなります。その結果、従業員のモチベーション向上にもつながるのです。
人材交流の活発化
人材交流の効果も挙げられます。
会社組織によっては、社内の慣習や人事担当者の固定概念に縛られすぎており、人事異動の方法が固定化しているケースも珍しくありません。その結果、特定の部署に同じような人材が集中して組織が硬直的になるという課題もあるものです。
社内公募制度では、そういった人事異動の慣習を打破し、意外性のある人材を登用できる可能性があります。異なるキャリアの人材の交流が促進されることで、視点やアイデアが多様化する効果もあるでしょう。
組織全体のパフォーマンス向上
組織全体の生産性が高まる効果も期待できます。
先述の通り、社内公募制度では、意欲の高い人材を登用でき、モチベーションもアップ、そして人材の多様化にもつながる点が特徴です。
つまり、従業員個々人が能力を発揮しやすいと同時に、組織としても有望な人材を発掘して部署に新しい風を吹き込むという効果が生まれます。これらの相乗効果によって、組織全体が活性化してこれまでと異なる成果が生まれる可能性も考えられるのです。
社内公募のデメリット
社内公募にはデメリットもあり、人事担当者や管理者はあらかじめ理解しておくことが大切です。ここでは社内公募制度のデメリットを紹介します。
運用のコスト
社内公募制度では、運用のコストが増える可能性があります。
通常の人事異動の場合、人事担当者や管理者が、従業員のスキルやこれまでの実績などを評価し、その上で相談しながら異動案を練り上げるのが一般的です。基本的には内輪で完結するため、意思決定はそれほど複雑ではありません。
社内公募制度の場合、人材の募集や選考を行うため、いわば外部人材を採用する際のような労力が発生します。募集時は条件などを決定したり社内に告知したりしなければなりませんし、選考も応募者が多ければ作業量は膨大です。
人材のミスマッチ
登用した人材がミスマッチになるリスクもあります。
通常の人事異動は、人事評価やキャリア設計のノウハウに長けた管理者や人事担当者が関わるため、人事配置で大きな失敗を防ぎやすいというメリットがあるのです。また、長期的な人材開発という点から、従業員個人や組織全体といった両者の利益のバランスを取った提案も可能でしょう。
社内公募制度では従業員の自発性に任せるため、明らかに不適合な人材が応募する可能性もありますし、それを選考する側が排除できない可能性もあります。
落選者の意欲低下
社内公募に落選した人材の意欲が削がれる可能性もあります。
通常の人事異動にもさまざまな課題があるのは事実ですが、人事の専門家や経験の長い管理者が異動案を決定している以上、従業員にとってはある程度の客観性や公平性は担保されているという納得感があるものです。
社内公募制度では、自主的に手を挙げたとしても選考活動を経て落選することがあるため、従業員が自信を喪失したり別の部署で頑張る意欲が失われたりというデメリットもあります。
人事制度運用の混乱
人事制度全般が混乱するリスクもあります。
ポストによっては伝統的に特定のキャリアを積んできた人材だけを優先的に登用することで能力を担保しているというケースもあるでしょう。また、官僚組織や大企業のように人事異動をあえて既定路線化して安定性を維持する方が好ましい組織もあるはずです。
社内公募制度を導入する際は、こういった従来型の方法とは異なる点も多く、人事部門や従業員が混乱する危険もあります。例えば、念願のポスト直前だった従業員が、社内公募で別の人材が横滑りしてきた時に意欲を保てるのかといった課題が挙げられるでしょう。
ソニーやP&Gも導入。社内公募の事例
社内人事制度を理解するために役立つのは企業事例を知ることです。ここでは2社について紹介します。
ソニー
ソニーは50年以上前から「社内募集制度」を設けており、これまで累計7000名以上が異動を実現してきました。この制度は、所属部署に2年以上在籍している従業員であれば、上司から許可を受けずに自由に利用できます。
アプリケーション開発からユーザーインタフェース・インタラクションの研究開発職に異動したり、マーケティングから新規事業の立ち上げに異動したりなど、柔軟なキャリアの実現に役立っているようです。
P&G
P&Gは「オープンジョブポスティング」(社内公募制度)を設けており、これまで大勢の従業員がセールス部門から人事部門に異動してきたといいます。
P&Gでは職種別採用が行われているので、その道のエキスパートを目指すことが人事の基本的な考え方です。しかし、従業員の主体性を重視する観点から、別の職種にも興味が出た場合の選択肢を狭めないように、あえてこういった制度が残されています。
社内公募の例文・書き方のポイント
社内公募を実施する際は、いくつか書き方のパターンがあります。ここでは順番に解説しましょう。
募集概要の説明
まずは、どの部署がどのようなポストを募集しているのかを説明します。募集の背景や募集する目的、仕事の内容などについて端的に記述して興味関心を獲得しましょう。
例文は以下の通りです。
〇〇事業の推進に伴い、〇〇スタッフを増員することになりました。
増員にあたり、社内公募によって募集を行ないます。
募集要項は下記の通りです。
皆さんからの応募をお待ちしております。
募集職種
次に、具体的な応募職種や人数を説明します。従業員が応募を検討する材料になるように、仕事内容を詳しく説明すると効果的です。
例文は以下の通りです。
WEBマーケティングのアカウントプランナー2名(WEBマーケティング部門の広告代理店業務の拡大に伴い、営業及び運用スタッフを募集)
セールスマネージャー1名(自社サービスの拡大に伴い、営業チームの統括や教育を実施するスタッフを募集)
応募資格
応募資格では、経験やスキル、保有資格などを指定します。未経験や保有資格がない場合であっても、募集職種への興味関心の強さなどを判断の材料にすることも一般的です。
例文は以下の通りです。
インターネット広告業務で1年以上の経験があり、法人営業に興味があること
プロジェクトのリーダー、マネージャー経験3年以上(プロジェクト内容は不問)
選考方法
選考方法として、必要書類や面談の方法、提出期限などを記載しましょう。
例文は以下の通りです。
書類選考後、事業部のメンバーと1〜2回の面談を実施します。
202〇年〇月〇日の期限までに以下の必要書類を提出してください。
・職務履歴書
・応募理由
・該当業務の経験
社内制度を見直す際は人事評価制度の整備もお忘れなく
社内公募制度は、本記事で紹介したようにさまざまなメリットが期待できる一方、既存の人事異動の方法とは大きく異なるため、いくつか注意点があるのも事実です。
特に、このような大きな制度変更を実施する際は、合わせて人事評価制度を見直すことも欠かせません。
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