「やばい上司」との関わり方や対処法と企業がすべき対策

「やばい上司」と呼ばれるような、理不尽な言動を繰り返す上司がいます。このような人が自分の上司になってしまったら、日々ストレスがたまり、場合によっては体調や精神面にも影響が出てしまうかもしれません。

「やばい上司」の被害を最小限に抑えるには、自分なりに上司の取扱説明書を作ることが大切です。そこで本記事では「やばい上司」の特徴、言動例、関わり方・対処法、企業がすべき対策などについて解説します。

従業員に「やばい上司」と思われる人の特徴

従業員に「やばい」と言われている上司の多くは、おおまかに分けると「激情型」「機械型」「ワーカホリック(仕事中毒)型」「自己愛型」のどれかに分類できます。どのタイプに近いか考えてみると、対応も取りやすくなるでしょう。

感情的に怒ることが多い

職場で「やばい」と言われるような上司のなかには、感情的に怒ることが多い人がいます。激情型と呼ばれるこのタイプは、場をわきまえずに怒鳴りちらしたり、机や椅子などをたたいて威嚇したりします。

そのため、職場全体が上司を恐れてピリピリしている場合があります。また、部下に対する好き嫌いが激しいのも特徴で、一度にらまれてしまうと、標的になってしまうケースもしばしばです。

自分の意見が正しいと思っている

自分の意見やルールを決して曲げない上司もいます。このタイプは機械型などと呼ばれ、自分のやり方を細かな点まで部下に強要します。また、部下の意見を聞き入れたり、結果に応じてやり方を変えたりするなどの融通が利かないのが特徴です。

機械型の上司は、興味のあることは深く追求でき集中力も高いため、実務能力は優れています。しかし、他人への興味が薄く、コミュニケーションが苦手のため、マネジメント能力が低い傾向にあります。

残業を無理強いする

部下に残業を強要したり、プライベートよりも仕事を優先するように命令したりするワーカホリック(仕事中毒)型の上司もいます。日本では、仕事第一を美徳としている人が一定数います。また、利益追求主義の企業では、こうしたワーカホリック型の上司が育成されてしまうケースが珍しくありません。

上司の指示が、仕事面に限られるなら、まだ我慢できるでしょう。しかし、「やばい」と言われるほどの上司となると、プライベートの領域まで干渉してきます。

人によって態度を変える

人によって態度がコロコロ変わる上司もいます。こうした上司は、「自己愛型」と呼ばれるタイプが多いのが特徴です。

自己愛型の上司は、人から評価されたい、注目されたいという欲求が強いため、その場その場で都合のよい言動を取ってしまいがちです。例えば、客先で「すぐにやります」などと安請け合いしてしまい、現場の負担が大きくなってしまうなどのケースがあります。

「やばい上司」と認定されてしまう言動例

ここでは、「やばい上司」のよくある言動を、さらに具体的にみていきましょう。複数の項目があてはまるなら、もしかすると「やばい上司」かもしれません。

なんでもかんでも部下に任せる

部下の業務を管理するのが上司の役目ですが、それをほとんどしない上司もいます。

自分が責任を取るのが怖いため、「これぐらい自分で判断しろ」「君に任せた」などと言って、なんでもかんでも仕事を部下に任せてしまう傾向にあります。

自分の利益のことばかりを考える

自分の利益だけを考え、人の成果を横取りする人もいます。例えば、部下が契約にこぎつけたのに、契約の場にだけに現れて自分の成果だと主張するような上司です。

こうした上司は、部下の人事評価で当然考慮すべき成果も、自分のものとして取り扱う傾向があります。

コミュニケーションをとってくれない

上司には、仕事上の悩みを聞いたり、職場のコミュニケーションを活性化させたりするなどの役割が求められます。しかし、上司のなかには、必要最低限のコミュニケーションしかしない人や、部下の自由な発言を許さない上司もいます。

こうした上司は、「前にも言ったよね」「自分で考えろ」「もういい、私がやる」「これだから若い世代は…」などと、コミュニケーションを遮断するような発言が多いのが特徴です。

部下を指導しない

部下に嫌われたくない、パワハラの疑いをかけられたくない、などの理由で部下の指導を避ける上司がいます。一見すると優しく、穏やかな上司にみえますが、必要なときも指導しないとなれば問題です。

こうした上司がいる職場は規律が乱れがちです。遅刻や無断欠勤する人や、仕事中にスマホで遊んでいる人や、ハラスメントする人などが許容され、職場環境が悪化していくケースがあります。

人の意見を聞き入れない

「私が言ったとおりにしてください」「つべこべ理屈を言うな」などと言い、人の意見を聞き入れない上司もいます。明らかに上司のほうが間違っているのに、提案を聞き入れないとすれば、大きな問題に発展してしまいかねないでしょう。

「やばい上司」との関わり方・対処法

「やばい上司」と上手に関わっていくには、どうしたらよいのでしょうか。ここでは4つの関わり方・対処法のポイントを解説します。

適切な距離をとり丁寧に対応する

仕事と割り切って、上司と適切な距離を取る方法があります。無理して仲良くなろうとしたり、上司の態度を改めさせたりするよりは、ビジネスライクに徹したほうがストレスを減らせるかもしれません。

上司と対立して人事評価に影響すれば、自分のキャリアアップに支障が出てしまうリスクがあります。なるべく波風を立てないのも処世術の一つといえるでしょう。

報・連・相をこまめに行う

やばい上司ほど、コミュニケーションがうまくいかない傾向があります。やばい上司は自己中心的な考え方や感情的な言動が多いため、意思の疎通ができない場合がしばしばです。また、こうした上司に近づきたくないために、会話の機会が減るケースも多いでしょう。

だからこそ、報告・連絡・相談を意識するべきです。報告・連絡をしっかりしていれば、「部下が報告してくれなかった」などと責任転嫁される可能性が減ります。

上司に判断を仰ぐときは選択肢を提示する

「自分で考えられないのか」「指示がないと何もできないのか」などと上司から怒られることが多い人は、選択肢を示せていない可能性があります。

やばい上司に限った話ではありませんが、「○○の件ですが、どうしましょうか」などと丸投げしてしまうと、上司はいらだってしいます。そのため、上司に判断を仰ぐときは、「A案とB案のどちらかで対処しようと思いますが、どちらで進めたらよろしいでしょうか」のように選択肢を示しましょう。

他の上司に相談する

上司の言動があまりに理不尽で、対処しようがない場合は、他の上司への相談も検討したほうがよいでしょう。例えば、やばい上司が課長なら部長に相談するなど、上司の上司に相談します。

また、人事部や後ほど紹介するハラスメントの相談窓口担当者に伝えるのもよい方法です。やばい上司は自分の言動を正しいことだと思っているケースが多いため、第三者を入れたほうが、よい方向に進む場合があります。

体調や精神面に限界が来るなら異動や転職も一つの選択肢

上司との関係を改善しようと頑張っても、体調や精神面が崩れるほどであれば、異動や転職も選択肢になります。先に紹介したような対処法を試して改善できればよいですが、現実的には解決できないケースも少なくありません。

自身を守るためにも、異動や転職という逃げ道があることを認識しておきましょう。

「やばい上司」相手にしてはいけないこと

「やばい上司」は、いわば地雷のような存在です。ここでは、状況をさらに悪化させかねない典型的な行動を3つ紹介します。

嫌な感情を態度に出さない

上司に対して嫌な感情を出してしまうと、さらなる攻撃や正当化の材料を与えてしまいます。「理不尽な扱いを受けているのに、なぜ自分が我慢しなければならないのか」と思うでしょうが、ビジネスパーソンとして大人の対応に徹しましょう。

職場で悪口を言わない

職場での悪口は避けるべきです。職場は閉ざされた空間ですので、やがて上司に伝わってしまう可能性が高いでしょう。また、不満やグチばかりこぼしていると、職場の人に自分の人間性を疑われてしまいます。悪口を言いたくなったときは、プライベートの友だち、知人、家族などに限ったほうが無難です。

仕事の質を下げる

やばい上司の言動に接しているとモチベーションが下がってしまうものですが、意識的に仕事の手を抜くのはやめましょう。

仕事は上司でなく、チームや顧客のためにしているという意識で取り組んで、余計なところで自分の評価を下げないようにしましょう。もし成果主義や、上司以外に同僚・部下の評価も加える多面評価を導入している企業なら、仕事の質を保ってさえいれば、正当に評価してもらえます。

企業がすべき「やばい上司」対策

「やばい上司」と呼ばれるような人は、ハラスメントに該当しているケースが多いため、企業として対策を講じるべきです。では、企業はどのような対策をするべきなのでしょうか。

ハラスメント防止への方針を周知する

個人の人格、尊厳を傷つけるハラスメント行為は、決して許されるものではありません。企業は、就業規則や懲戒規定などの公式な書面のなかで、明確にハラスメントを定義して処罰や防止措置を示し、従業員全員に周知することが必要です。

社内に相談窓口を設置する

2022年4月から施行されたパワーハラスメント防止措置によって、大企業だけでなく中小企業においてもハラスメントの相談窓口を設置することが義務となりました。相談窓口は形式的なものではなく、実質的な対応ができる窓口にする必要があります。具体的には次のとおりです。

  • 相談担当者を常任させる
  • 運営制度を整える(必要に応じて人事や相談者の上司に連絡を取る、電話やメールなど複数の連絡手段がある、プライバシーに配慮するなど)
  • 自社に窓口を置けない場合は、外部機関に窓口業務を委託する

なお、相談窓口があることを従業員に周知する義務もあります。

ハラスメントに関する研修を実施する

ハラスメントに関する研修を、継続的に実施することも重要です。全員研修のほかマネジメント層・一般従業員・相談窓口担当者に分けて研修を行うのが一般的です。

研修方法としては、厚生労働省が提供しているテキスト、動画を活用して、自社で実施する方法があります。また、知見を持つ外部機関に依頼する方法も効果的です。

まとめ

問題のある上司の部下になってしまうと、日々ストレスがたまるものです。前向きに仕事に取り組むためにも、上司の特徴を見定め、被害を最小限に抑える行動をとっていきましょう。

企業は、ハラスメント対策の強化や適切な人材配置、問題ある上司によって不公平な評価を受ける人が出ないよう、適正な人事評価システムを構築することも大切です。

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