静かな退職(Quiet Quitting)とは?原因や企業への影響、改善方法を解説 

近年、人々の働き方が多様化してきており、仕事よりもプライベートを充実させたいと考える人も増えているようです。そんななか、アメリカを中心に注目を集めているのが「静かな退職(Quiet Quitting)」という働き方。静かな退職とは、やりがいや成果を追い求めず、最低限求められた業務だけをこなす働き方のことです。 

本記事では、静かな退職が増加する背景や静かな退職による企業への影響、対処法などについて解説します。 

静かな退職(Quiet Quitting)とは

「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、企業に属しながら必要最低限の仕事をこなし、退職したかのような精神的余裕を持って働くことを指します。アメリカを中心に注目を集めており、仕事とプライベートを明確に線引きし、あえてやりがいや自己実現は求めず、「仕事は仕事」と割り切って働く働き方といえます。静かな退職は「がんばりすぎない働き方」などとも表現されます。 

「静かな退職」という文字だけを見ると、企業に対して反感を持つ従業員の姿を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、どちらかというと特出した不満も熱意もない、冷めた層を指す言葉です。昨今は家庭や自身の趣味の時間などのプライベートをより重要視する人が増えており、そのような人たちを中心に共感を得ている考え方です。 

静かな退職が増加する背景

ここからは、静かな退職が増えている背景について解説します。 

働き方に対する価値観の変化

静かな退職が増加する背景の一つとして、ワークライフバランスの充実や終身雇用制度の崩壊など、働き方に対する価値観や考えが変化しつつあることが挙げられます。プライベートや結婚、出産、育児といったライフステージをより充実させたいという人が増えているのでしょう。 

会社の規模よりも、ワークライフバランスがしっかりととれる会社かどうかを基準に就職先を選ぶ人もおり、仕事中心の働き方を選ばない人も多く見られます。 

働き方の多様化

コロナ禍の影響も受け、昨今はテレワークを実施する会社が増えるなど、働き方が多様化してきています。自宅で仕事をすることにより私生活の見直しがされ、より私生活を重視した働き方をしたいと考える人も増えてきたようです。 

また、かつての終身雇用制度が終焉を迎えるにあたり、大企業であっても安定が保証されない世の中になりました。長期的なキャリアプランを描きにくいといったことも、静かな退職が増える要因の一つと考えられます。 

従業員のエンゲージメント低下

静かな退職は、従業員のエンゲージメントが低下することによっても増加する傾向にあります。会社に貢献したいという思いがなくなると目の前の業務をこなすだけになり、静かな退職の状態になりやすいでしょう。 

「正当に評価されない」「努力しても給料が上がらない」といった不満は、従業員エンゲージメントの低下につながりやすいので注意が必要です。これらの不満がつのると「必要最低限の仕事をこなしておけばいい」という考えが蔓延する可能性があります。 

世界では50%以上の労働者が静かな退職をしている?

アメリカの世論調査会社ギャラップ社が160カ国12万人以上の労働者を対象に、2022年から2023年にかけて行った調査によると、世界の労働者の実に59%が静かな退職を行なっていることがわかりました。 

調査では12の質問への回答をもとに、仕事への関与を「打ち込んでいる」「打ち込んでいない」「積極的に関与していない」の3つに分類しました。そのうち、「打ち込んでいない」に分類された人が静かな退職をしていることになります。 

また、この調査では、静かな退職を行なっている企業への貢献度が低い労働者のコストは世界中で8兆8000万ドル(約1,250兆円)にものぼると見積もられています。これは、世界のGDPの9%を占める額です。興味深いのが、仕事への打ち込み度合いの低さと反比例するように、職場におけるストレスレベルが高まっていることです。同調査における職場でのストレスレベルに関しての質問では、44%もの人が「前日の仕事の影響でストレスを感じている」と回答したといいます。 

静かな退職が起こる日本企業の特徴

ここでは、静かな退職が起こる日本企業の特徴について見ていきましょう。 

業務範囲が不明確

日本企業は海外の企業と比べ、業務範囲の線引きの曖昧さが目立ちます。海外の企業では「ここまでは私の仕事」と業務範囲や責任の所在をきっちり分ける傾向にありますが、日本企業では「みんなでがんばろう」といった暗黙の空気が流れていることも。仕事ができる人は多くの業務を振られ、損をしてしまうといったことも少なくありません。 

そのような状況ではあえて仕事をがんばらずに、こなしておこうと考える人が増えるのも頷けます。 

成果を上げても評価に反映されない

どれだけ成果を上げても評価に反映されないのであれば、従業員のやる気を引き出すことは難しいでしょう。日本にはいまだ年功序列制度を採用しており、どれだけがんばっても勤続年数が少ない従業員の評価が低くなるといった企業も存在します。 

なかには、従業員が斬新なアイデアを出して成果を上げた際に、適切な評価を受けられないだけでなく、周囲の嫉妬を受けるようなケースも。そのような環境では、静かな退職といった働き方を選ぶ人が増えるのも仕方ないといえます。 

成果に見合ったインセンティブがない

インセンティブとはいわば、成果を認められた際に得られるご褒美です。結果を出せばインセンティブが待っていると思えば、従業員のモチベーションもアップします。 

また、インセンティブは公正な評価の指標としても活用できます。評価基準が不明瞭だと「上司の主観によるものではないか」など、従業員の不信感を生みやすくなるでしょう。 

「この程度の成果にはこれくらいのインセンティブ」といった明確な基準を設けることで、従業員も目標設定をしやすくなります。 

静かな退職による企業への影響  

ここでは、静かな退職をする人が多い企業にどのような影響が出てくるのかを見ていきましょう。 

生産性の低下

静かな退職により従業員一人ひとりの生産性が下がれば、組織全体の生産性も低下します。 

与えられた必要最低限の仕事はこなすものの、日常的な会議やブレーンストーミング、オフィス文化の醸成といったものには労力をかけたくないという人も増えるでしょう。職場は活気を失い、新しいことに挑戦しようという意欲が失われると、企業の業績を上げることも難しくなります。 

職場環境・人間関係の悪化

静かな退職を選んでそこそこの仕事しかしない人がいると、その分を周りの従業員が負担しなければなりません。特にイレギュラーなトラブルが発生したときなどは業務の負担も大きくなり、チームの士気が下がって職場環境が悪化する可能性も。負担を受ける人のストレスは大きくなり、全体のモチベーションが下がる恐れもあります。 

人材の流出につながる

企業の成長にとって優秀な人材の存在は欠かせません。しかし、モチベーションの低い静かな退職状態の人が多いと優秀な人材も組織に対する不満がつのり、会社を辞めてしまう可能性があります。 

また、会社に対する不満がきっかけとなって静かな退職を選んだ人のなかには、不満が解決されないままだと本当に退職してしまう人も出てくるでしょう。 

静かな退職状態の人を見極める方法

社内に静かな退職状態の人がいないかを見極めるためには、従業員に以下の兆候がないかを確認してみましょう。 

  • 求められている以上の仕事はしない 
  • 会議中にほとんど発言しない 
  • 企業へのロイヤルティや従業員エンゲージメントが低下している 
  • 業務に意欲が感じられない 
  • 最低限の会話しかしない
  • 周囲の従業員の業務量が目に見えて増えている

社内でこのような状態の人が多く見られた場合、企業は危機感を持って早めに対処する必要があります。 

静かな退職への対処法

ここからは、企業が行うべき静かな退職への対処法について解説します。

従業員のエンゲージメントを調査する

従業員に静かな退職の兆候が見られたら、まずは従業員エンゲージメントを調査しましょう。 

調査方法には個別面談やインタビューなどがあり、既存業務への満足度やキャリアプラン、現状抱えている不満や望む職場環境などについて深く掘り下げていきます。 

もし従業員エンゲージメントが低いという結果が出たら、なぜそのような結果になったのかを調査し、早急に改善を行うことが必要です。 

人事評価制度の見直しを行う

人事評価制度とうまく連携させることで、従業員エンゲージメントの向上を図れるでしょう。 

たとえば、業務の目標やコンピテンシーを軸とした項目を評価に組み込んでおくことで、取り組み状況や達成率などを正当に評価できます。公正に評価されることで、従業員のモチベーションはアップするはずです。 

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成果に見合った報酬テーブルを用意する

従業員が正当に評価されていると実感できるよう、企業は成果に見合った報酬テーブルを用意することも必要です。 

たとえさまざまなエンゲージメント向上のための施策を行なったとしても、最終的に成果が報酬に結びつかないと従業員のモチベーションアップは難しくなるでしょう。 

企業は人事制度を再構築することも視野に入れ、各人の目標や実績、成果に対する報酬などがきちんと結びついているかを確認する必要があります。 

キャリアパスに多様性を持たせる

エンゲージメントを高めるためには、従業員が望むキャリアプランを実現できるよう、キャリアパスに多様性を持たせることも重要です。 

属する組織でやりたいことがない場合や、自身のやりたいことがわからずキャリアプランが曖昧な場合などに、エンゲージメントが低くなる傾向があります。 

定期的に上司との面談やキャリアプランについてのインタビューなどを実施し、各人の希望を伝えられる機会を用意しましょう。 

人事評価制度を見直して静かな退職対策を

静かな退職とはキャリアアップを目指さず、必要最低限の仕事をする働き方です。静かな退職を行う従業員が増えることで企業の生産性は落ち、職場環境の悪化や優秀な人材の流出などの可能性も出てくるなど、企業にとっては防ぐべき事態といえます。

一方で、従業員エンゲージメントの低下理由が企業側にある場合もありますので、今一度、人事評価制度や労働環境などを見直し、早急に解決するようにしましょう。

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