会社の労務管理においては、人事に関するさまざまな書類を作成し、保管しておく必要があります。「労働者名簿」もその1つであり、法律によって作成と保管が義務付けられているものです。
そのため、労働者名簿を含めた法定三帳簿について正しい知識を持っておくことも重要だといえます。また、労働者名簿は作成した後の保管も必須となっています。
今回は、労働者名簿について、基本的なルールと注意点や保管方法について説明していきましょう。
労働者名簿とは?
「労働者名簿」とは、会社が従業員を雇用したときに作成しなければならない書類です。
労働基準法によって作成が義務付けられており、従業員の氏名や生年月日、入社・退社にかかわる項目などを記しておく必要があります。
いわゆる「法定三帳簿」のうちの1つであり、労働者名簿は従業員が入社した際に1人分ずつ作成し、内容に変更が生じるたびに更新しなければなりません。
労働者名簿は人事・労務にまつわる業務を進めるうえで、欠かせない情報が集められているものなので、適切に作成して保管することが大切です。
法定三帳簿とは?
法定三帳簿とは、労働基準法によって作成と保管が義務付けられている書類のことであり、具体的には「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」のことを指しています。
それぞれの書類には記入すべき項目が決められており、3年間の保存期間が設けられているので注意しましょう。
書類の作成や保管を怠った場合には、処罰の対象になるケースもあるため適切な管理が求められます。
出勤簿とは?
「出勤簿」は、従業員の労働時間を適切に把握することを目的として作成する書類のことです。
記入すべき項目としては、氏名・出勤日・始業(終業)時刻・休憩時間となっています。
出勤簿についても、労働者名簿などと同様に従業員が最後に出勤した日から数えて、3年間の保存が義務付けられています。
タイムカードの管理もきちんと行って、記入事項に誤りや漏れがないように気をつけましょう。
賃金台帳とは?
「賃金台帳」は、従業員の賃金や労働日数にまつわる事項を記入した書類であり、労働者名簿とはことなり日雇労働者も対象となります。
賃金台帳に記入すべき項目としては、氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外労働時間数などに加えて、基本賃金・各種手当・控除金(所得税など)・実物給与(金銭以外に支給したもの)があげられます。
賃金台帳についても、ほかの書類と同様に最後に記入をしてから3年間の保存が義務付けられているのです。
労働者名簿に記入するべき項目
労働基準法によれば、労働者名簿の作成においては9つの項目を記入しておく必要があります。
氏名・生年月日・性別・住所といった基本的な情報をまずは記入します。
「業務の種類」では、その従業員が社内で担っている業務内容や役割を記しましょう。
特に従業員を30名以上雇っている場合には、それぞれの従業員が担当する業務の種類も記入する必要があります。
「履歴」とは、社内での昇進や異動についての項目であり、「雇用年月日」は従業員を雇い入れた日です。
「退職年月日と事由」では、会社都合だと解雇の理由を記入する必要があります。従業員の都合で退職した場合には記入の必要は特にありません。
「死亡年月日」については、死亡の原因を記入します。
名簿の対象となる労働者は?
労働者名簿は従業員を1人でも雇っていれば、作成する必要があります。
労働基準法第107条の定めでは、労働者名簿の対象となる労働者の範囲が決められています。
労働者名簿の作成が必要なケース
まず、会社の代表者や役員は労働者には該当しません。ただし、社会保険の被保険者には該当するため、労働者名簿を作成しておく必要があるのです。
正社員は会社に雇用されていることが明らかであるため、当然ながら作成の義務があります。
契約社員は一定期間の雇用契約ではあるものの、労働基準法第9条の労働者にあてはまるので労働者名簿を作成しておく必要があります。
アルバイトは契約社員と同様に、事業所に使用されて賃金の支払いを受けているので作成する必要があります。同じように、パートタイムも該当するので注意しておきましょう。
また、出向者の場合は移籍して出向している場合には出向先が名簿の作成義務を行いますが、在籍の形で出向している場合は出向元と出向先の両方で名簿の作成が必要です。
労働者名簿の作成が必要ないケース
労働者名簿の作成が必要ないケース派遣社員は賃金の支払いを派遣元の会社が行っているので、派遣先の会社においては労働者名簿を作成する必要はありません。
そして、日雇労働者については会社と日々雇用契約を結ぶ立場であるため、労働者名簿の作成は必要ありません。
労働者名簿の作成義務は、業務内容や雇用形態で決められているものではなく、事業所から賃金が支払われているかがポイントとなるのでしっかりと押さえておきましょう。
作成義務のある企業は?
労働者名簿の作成は会社の規模にかかわらず、すべての法人企業が対象となります。
従業員を1人で雇っていれば作成の義務があり、個人事業主も対象です。
労働基準法第107条によって、労働者名簿の作成は義務付けられているので、作成義務違反に該当すると30万円以下の罰金を受ける可能性もあります。
労働者名簿を含めた法定三帳簿は、会社の人事・労務管理の基本となるので、日頃からきちんと整備しておきましょう。
もし、労働者名簿を作成していなかったり、記入している内容に漏れがあったりした場合には、労働基準監督署から是正勧告を受ける場合もあります。
労働者名簿様式とテンプレート
労働者名簿の作成にあたっては、特に一定の様式や書式が決められているわけではありません。
記入項目が要件を満たしていれば、基本的にどのような形式でも構わないのです。厚生労働省のWebサイトでは、テンプレートを用意しているので、雛形として活用してみると良いでしょう。
労働者名簿の注意点
労働者名簿を作成するにあたっては、いくつかの注意点があります。
どのような点に気をつけるべきかについて見ていきましょう。
1. 事業場ごとに作成する
労働者名簿は会社の人事部門ですべてを作成するものではなく、事業場ごとに作成することが求められています。
本社以外にも支社や営業所などがあるときには、それぞれの事業場において名簿を作成しましょう。
2. 個人情報保護法の対象である
労働者名簿に記入されている内容は、氏名や住所など個人のプライバシーにかかわる部分が多く盛り込まれています。
そのため、個人情報保護法の対象となっており、従業員の個人情報を集める際には本人の同意が必要です。
また、集めた情報をどのような目的で使用し、使用範囲を限定することを説明しておかなければなりません。
労働者名簿の保存期間と更新頻度
労働者名簿を含めた法定三帳簿は、労働基準法第107条と第109条の定めによって、3年間の保存期間が設けられています。
ただし、どの時点から3年なのかは帳簿によって異なるので注意が必要です。
労働者名簿の場合であれば、従業員が退職をしたり解雇となったり、死亡したりしたときを起算日(期間を計算し始める最初の日)として3年間となります。
在籍をしている従業員の名簿と分けて管理をしておくと、混同するのを防げるはずです。
出勤簿は従業員が最後に出勤した日、賃金台帳は最後に給与を支払った日がそれぞれ起算日となります。従業員に異動や退職といった事由が生じたときには、すみやかに名簿を更新する必要があります。
労働基準法施行規則第53条では遅延なく更新することが明記されているので、その都度更新することを心がけておきましょう。
労働者名簿の保存方法
労働者名簿の保存については、労働基準法において特に決められているわけではありません。
紙の書類で保存をすることも可能ではありますが、書類の紛失の懸念があるため、CDやHDDなどの電子記録メディアで保存しておくと安心です。
従業員が多い場合は特に、書類での保管は場所をとる上に探すのに時間がかかるなど、業務効率が悪くなってしまいます。基本的には電子データで保存したほうが良いでしょう。
また、紙の書類や電子データの保管場所に困るというときには、人材管理ツールといったWeb上のシステムを用いることも認められています。
労働者名簿を電子化して情報管理の効率化を
法人企業の従業員において、労働者名簿は基本的に作成しなければいけません。作成した後も社内で管理する必要がありますが、保管方法は自社で決めることができますので、基本的には電子化させることをおすすめします。
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