レイオフとは?実施の目的や効果、法的な規則、企業事例を解説

(画像=tadamichi/iStock)

企業が従業員を解雇する場合には、幾つかの形態があります。

その形態のひとつがレイオフです。

レイオフとは、「一時解雇」のことを指しています。

解雇という言葉が含まれているので、マイナスなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

しかし、企業や人事部門から見た場合、立派な人事施策のひとつなのです。

そこで、ここではレイオフの目的や効果、法律における規則から企業事例を解説していきます。

さらに、より詳しく知りたい経営者・人事担当者向けに、解雇の種類や、正当な解雇となる条件、日本のレイオフの現状についても解説します。

レイオフとは?

レイオフは、企業の業績が悪化した場合などに、「一時的」に従業員を解雇する仕組みです。

「一時的」とあるように、企業の業績が回復したときに従業員を再雇用するのが前提となっています。

「解雇する」「帰休させる」の意味である英語「layoff」が語源で、主にアメリカやカナダなどの企業で実施されている人事施策のひとつです。

リストラとの違いは?

また、企業が従業員を解雇する形態のひとつに「リストラ」もあります。

レイオフと同じカタカナ英語のため、正確な意味や双方の違いを理解していない人もいるのではないでしょうか。

リストラとは、企業や組織の再編成のタイミングにおいて、不要な従業員を解雇することを指します。

「再構築」を意味する英語「restructuring」(リストラクチャリング)が語源で、省略してリストラと呼ばれています。

日本では、1990年代初めのバブル経済の崩壊の際に、業績悪化から従業員を解雇することをリストラと表現したことから、言葉自体は広く浸透しています。

しかし、本来リストラは再構築という語源のとおり、企業や組織を整理して事業を発展させるための前向きな施策なのです。

レイオフは「一時的」な解雇で再雇用が前提となっているのに対して、リストラには再雇用の条件は含まれることはありません。

レイオフとリストラの違いは、「再雇用を前提としているか、いないか」の違いと覚えておきましょう。

レイオフの目的

再雇用が前提となるレイオフですが、なぜ「一時的」に従業員を解雇する必要があるのでしょうか。

ここでは、企業がレイオフを実施する目的について解説していきます。

1.優秀な人材の流出を防ぐ

レイオフを実施する一番の理由が、優秀な人材の流出を防ぐことです。

例えば、長期間に渡って勤務した従業員は、その業務における豊富な知識や経験、スキルを蓄積しています。

このような優秀な人材の流出を防ぐために、再度、従業員として雇用する仕組みをとっているのです。

例えば、高いスキルを持った優秀な人材が、競合他社にスカウトされた場合、企業にとっては大きなダメージになります。

レイオフには、このような企業のダメージを未然に防ぐ目的があるのです。

2.ナレッジ流出の防止

そして、流出してしまう恐れがあるのは、人材だけではありません。

事業を発展させていくうえで重要となる「ナレッジ」も対象となります。

ナレッジとは、長年培ってきた企業独自の業務知識やスキル、経験値のことを指しています。

例えば、ベテラン社員の経験知識や熟練職人の技術などがイメージに近いでしょう。

通常の解雇では、人材とともにナレッジが流出してしまいますが、レイオフは再雇用を前提としており、ナレッジの流出を防止する目的でも活用されることがあります。

なお、このナレッジを企業全体で共有して、業務に有効活用していく管理手法をナレッジマネジメントといいます。

知識や技術などのナレッジは会社にとって重要な財産でありながら、目に見えないため管理することが簡単ではありません。

そこで、こういったナレッジを埋もれさせず、有効活用する手段としてナレッジマネジメントが注目されているのです。

以下記事ではナレッジマネジメントについて詳しく解説しているので、興味がある経営者や人事担当者の方はぜひご覧ください。

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3.人件費の削減

レイオフを実施する目的として、人件費の削減もあげることができます。

優秀な人材を失いたくはないが、業績が思わしくなく給料を払える余裕がない。

企業のコストである人件費を削減することを目的として、レイオフを実施するようなケースです。

本当に限られた従業員だけで業務を続け、業績が上向きになった際にレイオフの対象者を受け入れるという流れです。

社員側にとってのレイオフのメリット

レイオフは解雇の一種で、社員側に負担をかけることに悩む経営者もいますが、実際には社員側にとっても悪いことばかりではありません。ここではレイオフによる社員側のメリットを3つ紹介します。

勤続年数や貢献度が考慮される

レイオフの際は、勤続年数や業績への貢献度が考慮されることが普通です。

例えば、会社側がレイオフの対象者を選ぶ際は、それまでの勤続年数を判断基準のひとつとして、ベテラン社員ほどレイオフを避けようとします。

また、レイオフ期間が終了して再雇用する際は、勤続年数が長く会社に貢献してきた人物を優先します。

このように、やむを得ずレイオフを実施する場合でも、従業員の会社への貢献に対して多少なりとも報いることが可能です。

厚い手当てが受けられる

レイオフを実施する際に特別手当や一時金などを支給するケースもあり、これは社員側にとってメリットと言えます。

会社によっては、レイオフの希望者を募り、早期に応募した人物に対しては何割か一時金を上乗せすることもあります。

レイオフされることは社員にとって負担をかけるのは事実ですが、手当を再出発の資金として活用できるなど、必ずしも悪いことだけではありません。

新しい選択肢の提示になる

レイオフは、別の選択肢があることを示すことにもなります。

レイオフの代わりにグループ会社や関連会社の職を提示するケースもありますが、これは社員にとって新しいキャリアを考えるきっかけになるでしょう。

解雇の種類と条件

レイオフとリストラを中心にして、企業が従業員を解雇する形態をみてきましたが、そもそも「解雇」には、どのような種類があるのでしょうか。

ここからは、労働基準法などで定めている解雇の種類やルール、条件などを解説していきます。

通常の解雇

企業(使用者)から従業員への申し出による労働契約の終了が、通常の解雇です。

しかし、企業が一方的に従業員の解雇を決められる訳ではありません。

労働基準法では、「従業員の解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできない」と定められています。

つまり、業務を進めていくうえで重大な問題が労働者側にない限り、企業側の一方的な判断で解雇できないのです。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、社内の規則や秩序を著しく乱した従業員に対して、そのペナルティとして解雇することを指しています。

例えば、明らかに労働者に非がある問題や不祥事が発生した場合です。

企業は、社内の規則によって懲戒解雇を実施することができますが、通常の解雇と同様に、一方的な判断で解雇することはできません。

整理解雇

整理解雇とは、経済不況や経営悪化などの理由で企業が従業員を解雇することです。

レイオフは、この整理解雇に該当します。

普通解雇や懲戒解雇と違い、整理解雇は企業側の事情による解雇であることが大きな違いになります。

そのため、正当な理由による解雇であるかが、労働関連の法律によって厳しく判断されます。

正当な解雇となる条件

日本の労働関連の法律では、基本的に労働者の立場が手厚く保護されています。

そのため、レイオフなどで簡単に労働者を解雇することはできません。

整理解雇においては、正当な解雇と認められるには4つの条件があります。

  1. 人員整理の必要性
  2. 解雇回避の努力
  3. 雇用の人選の合理性
  4. 解雇手続きの妥当性

これら4つの条件を全て満たす必要はなく、整理解雇の内容を考慮のうえ、個別に妥当性が判断されます。

ここからは、4つの要件について解説していきます。

1.人員整理の必要性

企業が人員を削除する必要性があるのか、客観的に判断されます。

企業の収益や財務状況から判断して、明らかに従業員を雇うことができないケースが該当します。

例えば、生産性を高めるため、組織編成のため、というような根拠が不明瞭な理由は認められません。

2.解雇回避の努力

企業として、従業員の解雇を避けるための努力をしたかどうか、が問われます。

当然ながら、解雇された従業員は、経済的や社会的な損失を受けることになります。

そのため、雇う側の企業は、雇用を避けるための努力が求められるのです。

3.雇用の人選の合理性

また、整理解雇の対象となる人選についても公平でなければいけません。

人事担当者の主観や業務における過失によって解雇の対象者を決めてはいけません。

選定の基準が明確で、かつ客観的、合理的でなければいけません。

4.解雇手続きの妥当性

企業は解雇にあたって、正しい手順で進める必要があります。

例えば、労働者だけではなく、労働組合に対しても、解雇の時期や理由、方法などを十分に説明する義務があります。

十分な説明がなく、解雇の対象者が納得を得られなければ正当な整理解雇とは認められないのです。

日本のレイオフの現状

アメリカでは一般なレイオフですが、日本ではどの程度、実施されているのでしょうか。

実は日本では、ほとんど実施されていないのが現状です。

基本的に従業員の労働環境は、労働関連の法律によって手厚く保護されています。

前のパートにおいて「正当な解雇になるための条件」を説明したとおり、企業側の都合で簡単には解雇ができません。

レイオフはあくまでも解雇に該当するため、企業側がレイオフを実施するハードルは高いのです。

また、同じような意味合いで「一時帰休」があります。一時帰休とは、業績悪化などの理由により、労働者を在籍させたまま一時的に休業させる仕組みです。

一時帰休は労働者側の事情による休業のため、「平均賃金の60%以上の休業手当を保障する義務」が労働基準法によって定められています。

一時帰休は雇用契約を継続するため、人材やノウハウの流出を防ぐための手段として有効です。

海外のレイオフの現状と企業事例

一方で、アメリカやカナダでは、日常的にレイオフが実施されています。

例えば、IT業界の大手企業であるマイクロソフト社は、2017年に営業部門において約5,000人の人員削減を発表して、日本でもニュースに取り上げられました。

同じくIT業界のインテル社も、2016年に12,000人ものレイオフを実施しています。

レイオフの注意点

レイオフを実施するにあたっては、十分な注意が必要です。

一時解雇の対象となった従業員が納得せず、裁判沙汰になるケースも珍しくないからです。

対象の従業員の納得を得るための正当な理由と、その説明義務があります。

さらに、規則に従った形で、解雇の手続きを進めなければいけません。

例えば、解雇にあたっては、「少なくとも30日前に解雇の予告をする」と労働基準法に定められています。

予告の日数が30日に満たない場合、不足日数分の賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

このような法律の規則に従って、解雇の手続きを進める必要があるのです。

人事戦略には人事評価制度の見直しを

レイオフとは、一時的に社員を解雇することを指し、通常の解雇と違って再雇用を前提とする点が特徴です。レイオフには優秀な人材の確保やナレッジの流出防止ができるというメリットがあり、社員にとっても一時金が受け取れることがあるといった利点もあります。ただし、レイオフは法的には解雇であり、日本においてハードルが高いことから、現状はほとんど行われていません。

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