派遣社員は、企業・働く側(労働者)双方にメリットがある働き方です。
企業側では、採用コストをかけずに必要とする即戦力を早期に確保でき、業務の変化に柔軟な対応が行えます。
働く側にとっても、契約期間とライフスタイルを両立させながら、自らのキャリアを活かせるのが魅力です。
派遣会社が間に入る契約なので、トラブル発生時のサポート体制が充実している点も見逃せません。
この記事では、人材派遣のシステムや正社員との待遇差、そして派遣社員側から見た働き方のメリット・デメリットについて解説します。
派遣社員とは
派遣社員とは、人材派遣会社(派遣元)と雇用契約を結んだ上で、他の企業(派遣先)に出向いて一定期間働く労働者です。
1966年設立の株式会社マンパワーグループが、企業を対象とした日本初の人材派遣会社といわれています。
2020年2月時点での派遣社員数は、約143万人です(総務省統計局「労働力調査(基本集計)2020年2月分」)。
1991年にバブル景気が崩壊して以降、経費削減のために新規採用を抑制し、リストラを断行する企業が増加しました。
一方、不足する人員を補う手段として、必要な期間だけ即戦力の提供を受けられる派遣社員を活用する流れも定着しました。
国の規制緩和により派遣対象業務の拡大が行われたことも、派遣社員が活躍する場が大きく広がったきっかけといえます。
近年では、短時間・単発といった多様な働き方で、自己実現やキャリアアップを図る派遣社員が増えているのも特徴です。
派遣社員の仕組み
派遣社員の雇用契約では、雇用主である派遣元と、実際に働く場所である派遣先の2社が登場するのが特徴です。
雇用契約の期間は、派遣期間の開始から終了までであり、1か月又は3か月単位での更新が主流とされています。
契約更新の有無は、業務量や業務評価によって判断されるのが基本です。給与は派遣元企業から支払われますし、労災保険や雇用保険・社会保険も派遣元で加入します。
派遣社員が行う業務は、派遣元と派遣先との間で締結される「労働者派遣契約」によって具体的に決められており、雇用契約書にも明記されています。
業務への指揮命令は、派遣先企業の担当者(基本的には上司にあたる人)が行うのが原則です。
担当外の業務を指示されることは基本的にありませんが、実際には付帯業務と解釈して引き受ける派遣社員が多いのが現状です。
正社員とは
正社員は、期間の定めがない(無期)労働契約で特定の企業や団体に雇用されている人です。
企業の中核的人材としてコア業務に携わるため、配置転換や転勤の可能性があります。
就業規則で定められた所定労働時間の上限(一般的には週40時間)まで勤務し、業務の進行によっては休日出勤や残業の指示を受けるケースもあります。
業務評価により昇給・昇格のチャンスも定期的に訪れますし、不祥事を起こさない限り解雇の心配はほぼありません。
役職の有無にかかわらず、企業の看板を背負う人間としての責任が伴うのが特徴です。
派遣の種類
派遣の種類は、多様な働き方を実現しやすい「登録型派遣」と、派遣先との関係が比較的深い「紹介予定派遣・無期雇用派遣」の3つに分類されます。それぞれの特徴について、簡単に説明します。
1.紹介予定派遣
派遣契約終了後に、派遣先に正社員や契約社員で直接雇用されることを前提に就業する仕組みです。
派遣期間は最長6か月、一般企業への応募と同様に面接が行われます。派遣期間中に、企業の特徴や仕事内容をじっくりと確認できるのがメリットです。
2.無期雇用派遣
派遣会社に直接採用され、派遣先の常駐スタッフとして就業する仕組みです。企業の人事異動と同様に派遣先が変更される可能性はありますが、新たな派遣先が見つかるまでの間の給与は保証されます。
派遣元での研修制度を通じて、勤務しながら業務の専門性を高めることができるのも魅力です。
3.登録型派遣
派遣期間中だけ派遣元との雇用関係が発生する仕組みで、派遣社員としては一般的な働き方です。選考目的での面接は行われませんが、顔合わせや打ち合わせという形で人物審査が行われる場面が多いのが実情です。
労働者派遣法とは
労働者派遣法は、派遣労働者の雇用安定やキャリア形成支援を主な目的とした法律です。2020年4月の法改正では、同一労働同一賃金の実現等を通じて、公正な待遇を確保することも目的に加えられています。
派遣契約終了後の直接雇用を促進することを目的として、同一の派遣先(事業所)に労働者を派遣できる期間は最長3年間に制限されています。
この期間制限が切れた翌日(抵触日)以降は、派遣社員を受け入れることはできません。同様に、ひとりの派遣社員が同一の派遣先で働ける期間も最長3年間に制限されています。
ただし、3か月を超える空白期間(クーリング期間)を設けることで、期間制限をリセットできます。
派遣社員が体系的なキャリアアップを実現できるよう、全ての派遣社員に対する教育訓練の実施や、キャリアコンサルティングの窓口設置も派遣元に対して義務づけられています。
2020年4月からは、派遣先の正社員を基準にする「派遣先均等・均衡方式」、又は同様業務に従事する一般労働者の待遇を基準にする「労使協定方式」のどちらかにより、派遣社員に公正な待遇を行うことも義務化されました。
正社員と派遣社員の違い
2020年4月の労働者派遣法改正に伴い、派遣社員の同一労働同一賃金を実現する取り組みがスタートしました。
賃金以外でも不合理な待遇差の解消が求められているため、福利厚生面では正社員との差が縮まりつつあります。正社員と派遣社員との違いについて、雇用契約と待遇面に着目して解説します。
1.雇用関係
正社員は、所属する企業と直接雇用契約を結びます。一時的に別の企業で勤務する(派遣される)場合は、別途出向契約を締結するのが主流です。
派遣社員は、派遣元と雇用契約を結んだ上で、派遣先で実務に関する指揮命令を受けて勤務します。派遣元から、服務規律に関する助言指導を受けるケースもあります。
2.契約期間
正社員は雇用期間の定めがない契約を結んでいますが、入社後最長6か月間は試用期間であり、期間中の勤務成績によっては本採用に至らない場合があります。
一方、派遣社員は1か月又は3か月単位で雇用契約を結び、業務の進捗に応じて最長3年間にわたり更新していくのが一般的です。
3.給与・賞与・残業代
正社員と無期雇用派遣は月給制で、登録型派遣と紹介予定派遣は時給制で、それぞれ給与が支払われます。
残業代は各企業が定める基準で支払われますが、割増率は25%(休日出勤時は35%)が一般的です。
派遣社員には基本的に賞与が支払われませんが、派遣先によっては派遣社員にも寸志やインセンティブを支給するケースもみられます。
4.社会保険
週30時間以上の雇用契約で勤務する派遣社員は、正社員と同様に社会保険への加入が義務づけられます。
週20時間以上の勤務では雇用保険に加入することになりますが、501人以上が所属する派遣会社の場合は、社会保険への加入義務も生じます。なお、労災保険はすべての労働者が強制加入です。
5.有給休暇
正社員・派遣社員とも、雇用契約の開始日から6か月以上勤続し、かつ全労働日の8割以上出勤していれば有給休暇の付与対象です。
正社員や週30時間以上勤務する派遣社員は、初年度は10日間有給休暇が付与されます。週の所定労働時間が30時間未満の派遣社員でも、年間の所定労働日数に応じて有給休暇が付与されます。
派遣社員のメリット・デメリット
派遣社員は、希望条件に合う派遣先を選び、多様な働き方を実現できるのが魅力です。近年では求人難に伴い、未経験からチャレンジできる派遣先も増えています。
反面、有期雇用であることに起因するデメリットが存在するのも事実です。派遣社員から見た、働き方のメリット・デメリットを5個ずつ解説します。
1.メリット
1.働き方を選びやすい
短時間や単発での勤務など、自分のライフスタイルに合わせて働き方を相談して、派遣先を決められます。副業解禁の流れから、ダブルワークとして派遣社員での勤務を選択する人も増加傾向です。
2.未経験でもチャレンジできる
採用難が深刻化する中、未経験からチャレンジできる求人も増えています。直接応募とは異なり、派遣会社を通じて応募先情報を収集しやすいのも特徴です。
3.派遣会社がフォローしてくれる
就業開始後に待遇面や人間関係でトラブルが発生しても、派遣会社の担当者が中立的な立場でサポートしてくれます。研修メニューやキャリアコンサルティングの窓口も設置されているため、スキルアップにも最適です。
4.異動や転勤がない
勤務場所は雇用契約書によって指定されるため、契約期間中の異動・転勤がないのも安心材料の一つです。仮に勤務部署の変更が生じる場合でも、派遣会社から事前に打診があるので、意に沿わない配置転換を強いられることはありません。
5.サービス残業がない
派遣社員の勤務時間は契約書で明確化されており、残業代も派遣元が定める基準で全額支払われることもルール化されています。そのため、基本的にサービス残業が発生しません。
2.デメリット
1.昇給やボーナスがないことが多い
派遣社員は契約で定められた業務を遂行することだけを求められており、業務評価を前提とした昇給・ボーナスを期待できないのがデメリットといえます。給与交渉ができるのは、雇用契約を結ぶときに限られるのが実態です。
2.雇用が不安定になる場合がある
企業の人材不足を補う目的で派遣社員を活用していることから、正社員等の採用を機に契約終了を言い渡されるリスクがあります。雇用契約が勤務開始直前にキャンセルになる恐れがある点にも留意が必要です。
3.定年まで働けない
派遣社員が1つの事業所で勤務できるのは最大3年と決まっています。高いスキルを持っていても、年齢が増すにつれて紹介される仕事の数が少なくなるケースも見られるようです。そのため、派遣社員で定年まで働き続けることは難しいのが現状です。
4.社会的地位が低くみられる場合がある
派遣社員は有期雇用契約が主流であるため、経済的に不安定だと見られがちです。特別なスキルを持っている人でも、長期間安定して勤務できる正社員と比べると、社会的地位を低く見られる場合があることがデメリットといえます。
5.責任ある仕事を任せられにくい
派遣社員は自由な働き方を実現できる反面、企業にとっては短期間で契約を終了されるリスクが潜んでいます。派遣社員が多い職場を除いて、リーダーなど責任が伴う仕事を任せられる可能性が少ない点が、キャリアアップの障壁になり得ます。
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