完全失業率は、労働人口に占める完全失業者の割合を指します。完全失業率が上昇すると、世の中に多大な影響を及ぼすと問題視されています。
今回は、完全失業率の定義や計算方法、日本の失業率の推移について見ていきます。新型コロナウイルスによる景気悪化で、今後どのような問題が発生するのかもあわせて考えていきましょう。
完全失業率とは
完全失業率とは、労働人口に占める完全失業者の割合のことを指します。具体的には、以下のように計算します。
(完全失業者÷労働力人口)×100=完全失業率(%)
完全失業率は、国内の就業状況・失業者・失業率を把握するため、総務省統計局が毎月実施している労働力調査の統計指標です。全国の約4万世帯を標本調査しており、収集したデータは当該月の翌月末に公表されます。
完全失業率は、有効求人倍率とならび国内の雇用状況を表す統計です。また、景気悪化によって失業率は上昇するため、完全失業率は国内の景気のバロメーターのひとつとなっています。
完全失業者の定義
完全失業者とは、年齢が15歳以上である人口のうち以下の3つの条件を満たす人のことを指します。
- 就業者ではない(月末1週間に少しでも仕事をした)
- 仕事があればすぐに就業できる
- 現在、求職活動やその準備をしている
なお、労働人口と非労働人口の分類は以下のようになっています。詳細については次の章で詳しく見ていきましょう。
労働人口:従業者、休業者、完全失業者
非労働人口:学生、主婦、高齢者
労働人口の従業者と休業者については総務省統計局によってそれぞれ以下のように定義されています。
従業者:『調査週間中に賃金、給料、諸手当、内職収入などの収入を伴う仕事(以下「仕事」という。)を1時間以上した者。なお、家族従業者は、無給であっても仕事をしたとする。』
休業者:『仕事を持ちながら、調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち、
- 雇用者で、給料・賃金の支払を受けている者又は受けることになっている者。
なお、職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中の者も,職場から給料・賃金をもらうことになっている場合は休業者となる。雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づく育児休業基本給付金や介護休業給付金をもらうことになっている場合も休業者に含む。 - 自営業主で、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない者。
なお、家族従業者で調査週間中に少しも仕事をしなかった者は,休業者とはしないで,完全失業者又は非労働力人口のいずれかとした。』
つまり、仕事は探しているものの仕事に就くことのできない人のことを完全失業者と定義しています。
(引用元)総務省統計局
労働力人口と非労働力人口
労働力人口と非労働力人口とは、「働く意思のある人」と「働く意思のない人」に分類した際に使用する用語です。日本では、15歳以上の人口を労働者人口としていますが、前述の通り学生や主婦、高齢者なども非労働人口に含まれます。
少子高齢化が問題視される日本では、生産年齢人口の現象が懸念されています。2013年に7,901万人だった15歳~64歳生産年齢人口は、2060年には4,418万人まで減少することが総務省の調査によって予測されています。また、育児や出産、介護や看護などの知友から非労働人口も増加していくと考えられています。
総務省統計局「労働力調査」
完全失業率は、総務省統計局の「労働力調査」によって公表されています。国内の就業及び不就業の状態を明らかにする基礎資料取得を目的とし1946年9月から開始されました。
調査範囲は、国内に住む全人口ですが、外国政府の外交使節団・領事機関の構成員・外国軍人などやその家族は対象外となっています。「労働力調査」は標本調査として実施しており、国勢調査の約100万調査区から約2,900調査区を選定、さらにその調査区内から約4万世帯及びその世帯員を選定し、調査対象としています。なお、就業状態は世帯員のうち15歳以上の人口に対して調査しています。
収集したデータは、基礎調査票から集計し、全国結果と地域別結果のそれぞれが公表されます。
日本における完全失業率の推移
完全失業率の推移を『労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果』より読み解いていきましょう。
2024年平均の完全失業率は2.5%であり、完全失業者数は170万人と5万人減少しました。完全失業率について男女別で見ていくと、男性は2.8%であり、女性は2.1%という結果です。
2024年平均の就業者数は6813万人と、前年に比べ42万人増加しました。増加は27か月連続となります。男女別で見ていくと、男性は3704万人と前年比4万人の減少。女性は3109万と前年比46万人の増加となっており、女性の就業者数が著しく上昇したことがわかります。
続いて正規・非正規の職員の推移について見ていきましょう。正規の職員・従業員数は3688万人と、前年比で77万人増加で12か月連続の増加となっています。男女別で見ていくと、男性は2354万人と19万人の増加、女性は1334万人と58万人増加しています。
また、非正規の職員・従業員数は2144万人と前年比4万人増加と、2か月ぶりの増加でした。男性は700万人と前年比と同数、女性は1444万人と前年比3万人の増加が見られます。
最後に、2024年平均の非労働人口については、は4010万人と前年比で52万人減少しました。
(参照元)総務省統計局
失業率上昇が与える影響
失業率が上昇するということは、仕事をしたくてもできない人が増加するということです。景気の悪化はもちろん、世間に様々な影響を与えます。では、失業率の上昇により具体的にはどのような影響があるのか見ていきましょう。
自殺者の増加
失業率が上昇すると、自殺者も増える傾向にあります。自殺者が増える要因としては、経済や生活問題の増加が考えられます。失業したことによってメンタル面が不安定となり、うつ病などが原因で自殺するケースもあげられています。
1997年の山一證券倒産、1998年の日本長期信用銀行の経営破綻など、金融危機の状態に陥った1998年には国内の自殺者が初めて3万人を上回りました。直近では、2008年のリーマンショックの翌年の2009年に自殺者が急増しています。
自殺は社会にとって大きな損失となるため、社会全体として不安定となり、大きな弊害を生み出すと考えられます。
犯罪発生率の上昇
完全失業率と犯罪発生率は、相関係数が高いとされています。仕事がなくなると収入が減ってしまい、手っ取り早く収入を増やすため犯罪に手を染めるケースが増えるのです。犯罪が蔓延することで、治安が悪化し国民の生活が危険にさらされます。
万引きや車上荒らしといった金銭を盗む犯罪だけではなく、簡単に高収入を目指せる詐欺や違法取引などに加担してしまうケースも少なくありません。もちろん、犯罪はいけないことと分かっていながらも生活のためには抜け出せないのが現状です。
貧富の差の拡大
完全失業率が高くなることで貧富の差が拡大します。すでに世界の上位1%の富裕層が、残り99%の人々の富を合わせたよりも多くの富を所有しているということが国際非政府組織(NGO)・オックスファム・インターナショナルの調査によって明らかにされています。
仕事がなくなることにより収入の減った貧困層が増加することで、富裕層との収入格差はより一層広がると考えられています。また、景気悪化による非正規雇用の増加、大都市と地方圏の経済格差なども問題視されているのです。
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