採用面接で候補者の情報を効果的に引き出すための手法の一つとして「逆質問」があります。逆質問は多くの採用面接で行われているため、何を質問するか前もって準備してきている候補者も珍しくありません。逆質問の機会を上手く利用することで、面接の時間を一層有意義なものにできるでしょう。
この記事では、逆質問の目的や、良い例・悪い例について、主に企業側・採用担当者側の目線で解説します。
逆質問とは
逆質問とは、面接の最後などに「何か他にご質問はありますか?」と促された候補者が、逆に質問することです。逆質問の機会を上手く利用することで、候補者の疑問を解消できるだけでなく、その人のコミュニケーション能力を確認できるなど、さまざまな効果があります。
逆質問は面接で一般的に行われるため、あらかじめ逆質問のための質問を用意している候補者もいます。面接で逆質問の機会がなければ、準備していた質問ができず、候補者にとって不完全燃焼で面接が終わってしまうことにもなりかねません。
逆質問の機会をつくることは、候補者についての情報を十分に引き出すために不可欠といえます。
逆質問の目的
逆質問の機会を設けることには、どのような目的やメリットがあるのでしょうか。企業側にとっての主なメリットは以下の4つです。
- 意欲の確認
- ミュニケーション能力の確認
- 応募者の考えを知る
- 自社を知ってもらう
- それぞれ詳しく見ていきましょう。
候補者の意欲・志望度を知るため
逆質問を促す目的の一つは、候補者の意欲や志望度を確認することです。逆質問を促されても「特にありません」と答える人や、あまり意味のない質問をしてくる人は、面接に対する準備をあまりしておらず、意欲が低いことがうかがえます。
また自社への興味・関心の度合いが低く、自社への志望度が第二志望・第三志望など低いランクにあることも予想されます。
内定辞退を防止するためにも、逆質問によって意欲・志望度を確認することが重要です。
コミュニケーション能力を確認するため
候補者のコミュニケーション能力も、逆質問の内容からうかがうことができます。逆質問では、質問できることの自由度が高いため、質問の仕方や内容にその人のコミュニケーション力の高い・低いが現れやすいためです。
どんな質問を選ぶのか、どんな話し方で質問するのかによって、その人のコミュニケーション力をチェックできます。
自社について深く知ってもらうため
逆質問には、候補者の疑問を解消し、自社についての理解を深めてもらう目的もあります。面接官から一方的に質問したり説明したりするだけでは、候補者が気になっていることや知りたいことを解消する機会がないまま、面接が終わってしまうことになるでしょう。
候補者によって疑問に感じる点はさまざまです。面接官の説明だけで、すべての疑問を解消できるとは限りません。候補者側からの質問を広く受け付けることで、幅広い疑問点をカバーできます。
逆質問のよい例【アピール別】
候補者がどのような逆質問をしてくるのかによって、その人のプラス面やマイナス面をうかがうことができます。まずは良い面のアピールにつながる、つまりプラス面を感じ取れる逆質問の例をいくつか見ていきましょう。
意欲・志望度の高さをうかがえる逆質問
前述の通り、逆質問の内容から候補者の意欲・志望度の高さをうかがうことができます。例えば「業務に必要な情報」についての質問をする人は、自分が採用された後のことが具体的にイメージできていて、入社への意欲が高いことが推測できるでしょう。
具体例は以下の通りです。
- どのようなスキルを身につける必要がありますか?
- 業務開始前に勉強したおいた方がよいことはありますか?
- 業務に必要な資質は何ですか?
- 入社後はどのような業務を担当させていただけますか?
ミスマッチの防止につながる逆質問
候補者にとって逆質問は、「自分にマッチする会社かどうか」についての情報を得る貴重な機会です。例えば「社内の雰囲気・社風」など、ホームページからは分からない情報を引き出そうとする質問をすることで、マッチ度を確認するための情報を引き出せます。
企業側としては、そのような逆質問にも積極的に答えることで、採用ミスマッチを防止できます。候補者の情報を引き出すというよりも、こちらの情報を提供して、面接を有意義にするために重要な逆質問です。例えば以下のような質問が考えられます。
- 〇〇部はどのような雰囲気ですか?
- 御社の社風について、特に人間関係や仕事の進め方について教えていただけますか?
人間関係を構築するスキル・意欲を感じられる逆質問
人間関係を構築するスキルについても、逆質問の内容からある程度感じ取ることができます。例えば「会社の組織になじむために必要な情報」について質問する人は、協調性が高く、少なくとも会社になじむための意欲があると予想できます。具体的には以下のような質問です。
- 異なる部署同士で交流する機会はありますか?
- サークル活動があるとのことですが、どのような方が参加されていますか?
- 社員にはどのような方がいらっしゃいますか?
候補者の長所についての理解が深まる逆質問
逆質問で、候補者の長所や強みについての理解が深まることもあります。「過去の経歴・経験」についてなど、履歴書やこれまでの面接では出てこなかった情報が逆質問の中に含まれる場合です。
例えば以下のような質問です。
- 私の長所は〇〇だと思っているのですが、御社の業務内容で特にどのような場面で発揮できるでしょうか?
- 1年ほど前からプログラミングを勉強しているのですが、業務で役立つ場面はありますか?
- 実は英語での日常会話やビジネスメールもできるのですが、今後役立つ可能性はありますか?
事前の調査や努力が感じられる逆質問
面接に向けた準備を十分に行っていることが感じられる逆質問もあります。
例えば事前に自社についてよく調べていることが分かる質問や、一次・二次面接で話した内容を踏まえた質問などです。
質問の内容はありきたりだとしても、よく準備された質問ができることから、「仕事の準備もよくできる人」であることがうかがえます。例えば以下のような質問です。
- 御社の事業の中でも特に〇〇に興味があるのですが、私も関わることができるでしょうか?
- 御社の〇〇の戦略は△△の点で優れていると思いますが、実際に勤務されている××様(面接官)から見ると、どのような印象ですか?
自社のビジョンへの共感・マッチ度の高さが感じられる逆質問
自社との相性についても、逆質問の内容からある程度推測できます。例えば自社のミッション・ビジョンやビジネス戦略に共感していることが逆質問から感じられるなら、自社とのマッチ度が高いことがうかがえます。
例えば以下のような質問を、心から言っていることが感じ取れる場合です。
- 御社の〇〇というビジョンに興味を持ったのですが、それが特にどのような部分に浸透しているのでしょうか。
- 御社の〇〇プロジェクトがここまで成功した要因は何だと思われますか?
逆質問の悪い例【印象が良くない理由別】
次に、悪い例の逆質問を見ていきましょう。逆質問の内容から、候補者のマイナス面や自社とのミスマッチが感じられる場合です。印象が良くない理由別に分けて紹介します。
仕事への熱意が感じられない逆質問
逆質問の内容から、仕事に対する熱意の低さや、自社への入社意欲の低さが感じられる場合もあります。例えば福利厚生など「待遇」についてばかり質問する人は、仕事そのものにはあまり興味を持っていない可能性があるでしょう。
例えば以下のような質問です。
- 残業は多いでしょうか?
- 御社の有給取得率はどのぐらいでしょうか?
- どのような種類の手当がありますか?
調査不足が感じられる逆質問
面接に向けた事前調査が不足していることが、逆質問の内容から分かる場合もあります。例えばホームページを見ればすぐに分かるようなことを質問する場合です。
例えば以下のような質問が当てはまります。
- 御社の経営理念は何ですか?
- 海外にもビジネス展開していますか?
- 事業所は何カ所ありますか?
コミュニケーション力の低さを感じさせる逆質問
逆質問から、コミュニケーション力の低さが感じられる場合もあります。その話し方はもちろん、内容からも、ある程度はコミュニケーション力を推測することが可能です。
逆質問の代表的なNG例として「特にありません」がありますが、これは熱意の低さだけでなく、質問を考えるスキルが低い=コミュニケーション力が低いことを意味する可能性もあります。他にも「意図が読みにくい質問」をしてくる人は、質問をしながらコミュニケーションをするスキルが低いかもしれません。例えば以下のような質問です。
- 社風を教えてください
- 職場はどんな雰囲気ですか?
- 御社の将来性についてどう思いますか?
よい逆質問をするコツ
よい逆質問の内容を準備するための、具体的な方法やコツを見ていきましょう。
逆質問のコツを把握しておくことは、採用担当者としても重要です。候補者がどのような準備をしてきているかを知ることができ、面接の際の参考になります。
一般的に知られているコツとして、以下の4つがあります。
事前にホームページをチェックする
よい質問をするためには、事前の調査が大切です。特にホームページの情報をよく見ておくことは、面接に望むための大前提ともいえます。 面接ではホームページで分からないことを聞くことが重要です。そのためには事業内容や採用条件など、ホームページで分かる範囲の情報は押さえておく必要があります。
面接官としては、ホームページに何が書かれているかを把握しておき、ホームページを事前によく見ているか・見ていないかを見極められるようにしておくことが重要です。
業界の動向・最新ニュースを押さえておく
応募する企業の業界について、最新ニュースなどを調べて動向を把握しておくと、逆質問の内容を決める際の参考になります。最新情報を把握していることが分かる質問をするなら、業界に興味があることが伝わり、志望度の高さが面接官にも伝わるでしょう。
業界全体だけでなく、応募する企業が競合他社と比較してどのような強みがあるか、どのような差別化がなされているかについても把握しておくことが重要です。面接官も最新ニュースを把握しておき、業界や自社の強みの知識について、候補者に後れを取ることがないようにする必要があります。
質問を5つ程度は考えておく
逆質問に使える質問は5つほど用意しておき、面接の流れに応じて使い分けることが重要です。面接での会話がどのような流れで進むのか、事前に完全に把握することはできません。逆質問に入る前に、逆質問で用意していたことの答えが出てしまうこともあるでしょう。一つしか質問を用意していなければ、逆質問の際に用意した話題が使えなくなってしまう可能性もあります。
面接の時間をできるだけ有意義にするためにも、少しでも多くの質問ができるようにしておきましょう。質問したいことを5つ程度用意しておき、それらの優先順位も決めて、優先度の高いものから使っていくことがポイントです。面接官は、時間に余裕がある限り何度か逆質問を促すことで、候補者の情報をできるだけ多く引き出すことができます。
簡潔に言えるようにしておく
質問の内容だけでなく「どのように質問するか」、つまり言い方もよく考えておくことが重要です。質問の内容がよくても、質問の仕方が要領を得ないと、コミュニケーション力が低いような印象を与えることになります。
できるだけ無駄な表現は省き、シンプルな言い方で質問できるよう、表現を磨き上げておくことが重要です。面接官も、逆質問の内容だけでなく話し方にも注目することで、コミュニケーション力を分析できます。
シーン別の逆質問のコツ
次に「一次・二次・最終」などシーン別の逆質問のコツを見ていきましょう。採用担当者としても、シーンごとに逆質問の内容をどのように評価すればよいのかを検討する際の参考になるはずです。
役員・最終面接の場合
最終面接では役員が参加することも多いため、経営者ならではの回答を得られる質問を用意することが重要です。例えば企業のミッション・ビジョンについてなど、現場の業務についての細かい話題ではなく、会社全体についての広い視点での質問ができます。
また細かいスキル面よりも、入社意欲など全体的な印象を見られることも多いため、逆質問の内容だけでなく話し方・質問の仕方からも志望度の高さが伝わるようにすることがポイントです。
一次・二次面接の場合
最終面接の前の一次面接・二次面接では、スキルレベルや業務上の適性など、現場で求められる部分を見られることが一般的です。現場で活躍する社員や管理職が面接官を担当することも多く、「現場になじめるか」など、業務の最前線で活躍する人から見た視点でチェックされます。
一次・二次面接の逆質問では、「現場の雰囲気」や「業務開始までの流れ」「求められるスキルレベル」などを確認できます。細かい条件などについての質問はできるだけ一次面接で済ませておき、二次面接では自分のスキルなどをアピールできるようにすることもポイントです。
転職の場合
転職・中途採用の面接では、前職よりも条件がよいかどうかを確認したいあまり、給与や残業についてなど待遇についての逆質問をしがちです。待遇についての質問が多いと、「待遇のこだわりが強そう」「待遇に少しでも不満があると辞めそう」などの印象を与える恐れがあります。
転職・中途採用の面接では、経験者の採用なら即戦力になるか、ポテンシャル採用なら学ぶ意欲はあるかを確認されることが多いため、その点を意識した逆質問をすることが重要です。
待遇の悪い点を探すようなネガティブな質問ではなく、例えば「どんな人が活躍できるか」「どんなスキルを身につける必要があるか」などポジティブな質問を心がけましょう。面接官も、「待遇面ばかり質問してくる候補者は要注意」という点を意識することがポイントです。
逆質問を活用して自分を上手くアピールしよう
逆質問は面接における重要な要素です。面接の最後に行われることも多いため、逆質問の内容は面接の「最後の印象」に大きく影響します。応募者側としても、事前にいくつかの質問を用意しておくなど十分な準備をしておき、逆質問で上手く自分をアピールできるようにしておくことが重要です。
企業側にとっても、逆質問の重要度は高いといえます。当記事で解説した通り、逆質問の内容から、候補者についてのさまざまな情報をうかがい知ることができます。面接では逆質問の時間を十分に取れるよう、時間配分に注意することが大切です。
逆質問の時間がなくなってしまうなら、候補者が準備してきたことを十分に引き出せないまま、面接が終わってしまうことにもなりかねません。逆質問を十分に活用して、面接を有意義な機会としていきましょう。
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