企業の上級管理職や幹部などを意味する「エグゼクティブ(executive)」。近年、「エグゼクティブ人材」や「エグゼクティブ採用」などの言葉もよく耳にします。「エグゼクティブ」が付く役職名も多いなか、その使い分けがよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、エグゼクティブの意味やエグゼクティブ人材について、またエグゼクティブ人材の転職の特殊性やエグゼクティブコーチングなどについても解説します。
エグゼクティブ(executive)の意味とは?
「エグゼクティブ(executive)」とは、「実行力がある」「重役」「実行者」などの意味がある言葉です。ビジネスシーンでは、社長やCEOなどに近い存在となる、企業で重要な決定権を持つ上級管理職などを指します。ここでは、エグゼクティブの使われ方について見ていきましょう。
CEO(Chief Executive Officer)
「CEO(Chief Executive Officer)」は「最高経営責任者」を意味し、取締役の意向をもとに経営方針や経営戦略などに決定権を持つ存在です。アメリカでは社長を表す「President」とCEOを区別しますが、日本では明確な区分けがなく、代表取締役のことをCEOとする企業も多く見られます。
エグゼクティブサマリー
「エグゼクティブサマリー」とは、事業計画書(サマリー)の中で特に重要なポイントをまとめた要領・要綱を指します。この場合、「エグゼクティブ=重要な」といったニュアンスです。
エグゼクティブサマリーはほとんどの場合、事業計画書の初めに記載され、投資家に向けた企業のビジョンや財務数値予測、重要成功要因などを伝える資料として使用されます。
「特別な」「上級の」といった意味もある
ビジネスシーン以外では、「特別な」「上級な」「優雅な」といった意味でも使われます。例えば、飛行機やホテルなどで提供される贅沢なサービス「エグゼクティブシート」「エグゼクティブルーム」「エグゼクティブラウンジ」などが一例です。
また、「エグゼクティブ会員」には「ワンランク上の顧客」といったニュアンスがあります。エグゼクティブ会員に向け、より上質なサービスを提供する企業も多く見られます。
「エグゼクティブ」が付く役職
ここでは、CEO以外のエグゼクティブが付く役職5つについて解説します。
エグゼクティブマネージャー
エグゼクティブマネージャーとは、企業における上級管理職を指す言葉です。企業の意思決定を担うボードメンバーであり、描いたビジョンに向けた具体策を発案し、それらを実際に実現する行動力も必要です。
そのため、ただ上司としての経験がある、人柄が良いというだけでは務まらないポジションといえます。すでに決まっていることを正確にこなすのではなく、自ら発案しイレギュラーな出来事に対しても柔軟に対応できる能力も求められます。
エグゼクティブプロデューサー
エグゼクティブプロデューサーとは、テレビ局や映画制作会社などで制作の総指揮を執る役職で、制作総責任者とも呼ばれます。映画のエンドロールなどで「エグゼクティブプロデューサー」のクレジットを見たことがある人もいるでしょう。
実際に現場で細かい指示を出すのはプロデューサーで、エグゼクティブプロデューサーは予算の管理などを含む全体を俯瞰して見る立場の存在といえます。
エグゼクティブディレクター
エグゼクティブディレクターは、日本語で「常務取締役」や「専務取締役」にあたる役職。「重役」といった意味のあるエグゼクティブに、「指示者」という意味のディレクターを合わせた言葉です。CEOやCOOなどの下に位置する重要な役職で、代表者の不在時に補佐業務も担います。
そのため、常に自社の経営状況を把握し、問題意識や柔軟な考え方を持って仕事に取り組むことが求められます。企業全体の動きを見ながら、適切な指示を出せる能力が必要です。
アカウントエグゼクティブ
アカウントエグゼクティブとは、広告代理店の法人営業担当や企画担当を担う役職です。もともとは広告業界のみで使われていた言葉ですが、近年では人材業界やIT業界などでも使用されています。アカウントエグゼクティブはクライアントに対し、広告の企画立案や提案、制作進行、アフターフォローまでを一貫して担当するポジションです。
複数のクライアントを1人で担当するケースや、大きなクライアント1社のみを担当するなど仕事の仕方はさまざまです。指示を待つことなく自らクライアントへ提案を行うなど、行動力や積極性が求められます。
エグゼクティブエンジニア
エグゼクティブエンジニアとは、開発人員の統括業務に携わる役職です。企業のエンジニア各部門の開発者を統括する責任者といった存在で、同時進行で進む案件の調整・管理を行い、案件やプロジェクトが成功するよう支える役割があります。
エグゼクティブ人材の重要性が高まっている
近年、エグゼクティブ人材への需要がますます高まりを見せています。ここでは、その理由や背景について見ていきましょう。
エグゼクティブ人材とは?
エグゼクティブ人材とは、高い経営視点や問題解決スキルを持って業務を遂行できる人材のこと。これまで培ってきた知識や経験を活かし、新たな場所でキャリアを築いていこうと考えるエグゼクティブ人材が増えているようです。また、採用する側にとっても、経験値の高いエグゼクティブ人材は企業の成長に欠かせない人材です。
混同する言葉に「ハイクラス人材」がありますが、人材紹介会社や転職エージェントなどでは、「年収800万円以上」「年収1,000万円以上」のように表される人材。必ずしも年収だけが指標となるわけではありませんが、わかりやすい基準としてほかと差別化する意味で使われています。
エグゼクティブ人材が重要になっている背景
近年、エグゼクティブ人材へのニーズが高まりを見せています。その背景として、企業における後継者不足や企業のグローバル化・海外進出、M&Aなどの影響が挙げられます。後継者のいない企業では、事業継承のために外部から将来のリーダー候補となるエグゼクティブ人材を積極的に採用する動きが加速しています。
また、新しい市場開拓を求めて海外進出する日本企業も増えており、世界で活躍できるグローバルな人材の確保が急務となっています。そんなシーンでも、海外でのビジネス経験があるエグゼクティブ人材は引く手あまたといえるでしょう。近年増加しているM&Aでは外部経営者を採用することも多いため、CEOなどのエグゼクティブ人材はますます需要があるといえます。
既存の経営層にない新しい価値や経験を持つエグゼクティブ人材を迎え入れることで、これまでになかった企業価値を生み出すことができるでしょう。
エグゼクティブ人材の転職の特殊性
一般的なポジションの転職に比べ、エグゼクティブ人材の転職には特殊性が見られます。ここでは、それらの特殊性について紹介します。
エグゼクティブ人材が転職する理由
すでに十分なキャリアを手に入れているように見えるエグゼクティブ人材が転職する必要性はないように一見思えます。しかし、なかには転職先企業への興味ややりがい、裁量権の大きさなどを理由に転職を決めたというケースもあります。
また、年代によっても違いが見られ、30代などの若手では転職によって自分の市場価値を上げたいという人が多く見られます。一方、50代にもなると、自身のスキルや経験をどう活かすかといった視点を持つ人が多いようです。
希少性が高く採用難易度が高い
エグゼクティブ層になればなるほど求める人材が少なくなるので、エグゼクティブ人材の求人の母数は限られます。また、求めるスキルや経験のレベルが高いため、応募要件を満たす人材が少ないのも特徴です。希少性が高いエグゼクティブ人材の採用は難易度が高いといえます。さらに、経験値やスキルの高い人材の報酬はそれなりに高額になる点も否定できません。
経営に関わる需要なポジションのため、エグゼクティブ人材の求人を公開しない企業も多く見られます。競合他社に情報を知られたくないという意図もありますが、そのような事情もエグゼクティブ採用の希少性を高めているといえるかもしれません。
ミドル層が多い
求めるスキルや経験値などの条件が極めて高いエグゼクティブ層は、ミドル層に偏る傾向があります。将来を見据えて若手を採用したいケースでは、さらに難易度が上がる可能性があります。
エグゼクティブ人材を採用するポイント
ここでは、人事として採用を行う際に、エグゼクティブな人材かを見極めるポイントについて解説します。
高度な専門スキル・知識
上に立つ人材だからこそ、エグゼクティブ人材には誰にも負けない高度な専門スキルや知識が求められます。自社に関することはもちろん、競合他社やトレンド、雑学に至るまで、幅広い知識を持ち合わせているとさまざまなシーンで役立つはずです。
またあわせて、物事を筋道立てて考える論理的思考力も不可欠。エグゼクティブ層はあらゆるシーンで重要な決断を迫られることが多いので、論理的思考に基づいた問題解決力や深い洞察力が欠かせません。
マネジメント経験
マネジメントスキルは社会人として必要なスキルですが、エグゼクティブ人材にはさらに人やモノ、カネを適切に動かし、組織を運営してきた経験が必要です。組織を管理・運営する能力はもちろん、企業全体の目標を達成することが求められます。
若手の求人では業務に必要となる知識や資格を持っていることで採用される可能性もありますが、エグゼクティブ人材の採用では経験が重視されます。ただし、単に大きなチームを指揮して成果を出したというだけでなく、「部下を成長させた」「メンバーを巻き込んでチームとして成功した」など、人へ良い影響を与えてきたかも重要視されるポイントです。
将来を見据える力
エグゼクティブ人材には、企業の将来性や業界・市場の動向を見据える力も不可欠です。ビジネス環境が目まぐるしく変化するなか、将来を見据える先見性は非常に重要な能力。もちろん完璧な予測は難しいものの、先見性を持つことで時流に合った商品やサービスの開発が行えます。
また、あらゆる場面で決定権を持つエグゼクティブ人材は、先見性をもとに明確な根拠や論理を提示し、ステークホルダーを納得させて味方につけることも必要です。
目標設定の正確性
目標設定の正確性もエグゼクティブ人材の特徴の一つです。企業を成長させるためには、社員のパフォーマンスを最大限に引き出すマネジメントや人を適切に導くための目標設定が必要。自身はもちろん、社員のモチベーションを上げる目標を設定したり、それらを達成するための体制を作ったりなどの能力が欠かせません。
マネジメントに必要不可欠な人間性
エグゼクティブ人材には、マネジメントに必要不可欠となる人間性が求められます。いくら高いスキルや経験値を持っていたとしても、尊敬できる人間性でないと周りはついていきたいとは思わないでしょう。日頃から頼りになり、安心して仕事ができる包容力があるなど、エグゼクティブ人材には人として魅力的な面があることも大切なポイントです。
また、上の立場とはいえ社員と真摯に接し、円滑なコミュニケーションが取れることも重要。権限や報酬などによってある程度力を引き出すことは可能ですが、芯がぶれない魅力的な人間性がある人材には勝つことはできないものです。
柔軟性と実行力
変化の目まぐるしいビジネス環境においては、変化に柔軟に対応し、考えを実行に移せる人材が必要とされます。エグゼクティブ人材は、ビジネスチャンスを見逃すことなく、大きな視野を持って戦略を立てられる人材ともいえます。
例えば、状況の変化に応じて自身のマネジメントスタイルを調整する、変化をポジティブに捉える、必要に応じてプランを修正するなどの能力も必要です。
エグゼクティブ人材を採用するには?
ここでは、エグゼクティブ人材を採用する方法について解説します。
転職エージェントを使う
企業がエグゼクティブ層に求めるレベルは高く、「組織を立て直したい」「海外事業部を立ち上げたい」「将来的に経営を担う人材になってほしい」など、明確な採用目的があるケースが多いものです。そのため、スキルや経験はもちろん、採用目的に見合った専門性も必要となります。
エグゼクティブ人材を採用する際には、転職エージェントを利用するのが主流です。企業の課題を把握し、経営戦略をしっかりと理解したうえで、マッチングする人材を探すことができるので効率的です。転職エージェントを利用するほどではないと思う企業もあるかもしれませんが、経営層の採用にはリスクが伴います。加えて採用活動にはコストや時間がかかることから、転職エージェントを利用するのは有効な方法といえます。
エグゼクティブサーチを行う
「エグゼクティブサーチ」とはエグゼクティブ層の人材を発掘して採用する方法で、別名「ヘッドハンティング」とも呼ばれています。もともとは外資系企業で積極的に取られていた方法ですが、グローバル化が進むなか、近年は日本企業でも採用されています。
クライアントからの依頼を受け、マッチする人材を探して紹介を行う企業のことを「エグゼクティブサーチファーム」といい、「ヘッドハンター」とも呼びます。経営層に加えてミドルマネジメントや優秀なエンジニアなどを紹介するファームも多いなか、エグゼクティブ層に特化したファームも存在します。
エグゼクティブコーチングとは?
「エグゼクティブコーチング」とは、経営層や上級管理職などを対象に実施されるビジネスコーチングのことです。円滑なコミュニケーションを取りながら、相手の内面の答えを引き出す手法などを学びます。将来を担う経営幹部候補者や経営者の相談相手を育成することを目的に、リーダーとしてのスキルを高め、多様性への対応力向上などが期待できます。
以下では、エグゼクティブコーチングをどのように行うのかをご紹介します。
基本的に1on1で行う
エグゼクティグコーチングの対象となるのはエグゼクティブ層で、将来のリーダー育成を目的に経営幹部候補者も含まれます。コーチングは基本的にコーチとクライアントによる1on1の個別面談形式で行われ、1回のセッションは60〜90分程度です。
ただし、チームビルディングを目的とする場合は、複数メンバーが参加するグループ形式で実施されるケースもあります。また、基本的に対面での実施ですが、オンラインやメール、電話などでサポートを受けられることも。特に決まったカリキュラムはないため、クライアントの目標や課題を一緒に分析・解決しながら進めます。
目的に合わせてテーマを絞り込む
エグゼクティブコーチングの目的は、目標や課題によって変わってきます。コーチとじっくりと対話し、自身で目標を定めることになるでしょう。そのためにも、コーチとクライアント間の密なコミュニケーションは欠かせません。目標が定まったら、具体的な進め方やフィードバックの方法などについても確認しておきましょう。
「苦手な人とのコミュニケーションの取り方」や「経営層の意思決定」「次世代リーダーの育成」などはテーマの一例です。また、プライベートの問題が仕事に悪影響を与えている場合には、稀にその内容について話し合うこともあります。
長期的に行う
コーチングは短期ではなく、長期的に行うことが重要です。一般的には月に1〜2回ほどのセッションを、半年から1年くらいの期間を設けて行います。短い場合でも最低3カ月は必要でしょう。その間に現状の評価や目標の再確認などを行い、次に必要となる行動を決定していきます。最後の2カ月間で事後ヒアリングを行い、フィードバック、最終報告といった流れで進みます。
成果の確認とフィードバック
コーチングで欠かせないのが成果の確認とフィードバックです。初めに設定した目標や途中見直した目標に対し、成果が出たか、どのような変化があったかを確認します。コーチによっては、成果をレポートとして渡してくれることもあるでしょう。
成果の確認やフィードバックがしやすいよう、目標や課題の見える化やフィードバック方法の明確化などがおすすめです。また、結果が出た場合でも、定着させられるようしばらくサポートを受けられるようにしておくと安心です。
エグゼクティブ人材を育て組織を活性化しよう
組織の意思決定に関与するエグゼクティブ人材には、高い能力やスキルが求められます。組織を引っ張るマネジメント力や将来を見据える力、柔軟な発想、行動力などが不可欠です。
そのため、転職時には高報酬が期待でき、ほかの業界への関心や裁量権の大きさなどを理由に転職する人も見られます。 エグゼクティブコーチングなども活用し、組織を活性化する人材として、日頃から能力やスキルを高める努力も必要でしょう。
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